レーサーMOCOのガールズトーク<5>大台ヶ原はおとぎの国 魔法の言葉に包まれたヒルクライム大会

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 9月8、9日、奈良県吉野郡の上北山村で開催された「大台ヶ原ヒルクライム大会」にゲストライダーとして参加させていただきました。この大会は、言葉の持つパワーを実感する2日間となりました。それは、「おかえりなさい」という言葉。どこかくすぐったさも感じる響きに、こんなにも心満たされるなんて…。私は吉野のおとぎの国からなかなか抜け出せないまま、日々を過ごしています。だって、このヒルクライム大会、凄くすご~く素敵すぎたんだもの!

厳しい上り坂に挑むゲストレーサーのMOCOさん(右)と選手たち厳しい上り坂に挑むゲストレーサーのMOCOさん(右)と選手たち

 実は、この大会には、私は東京から片道600Kmの道のりを一人で車を運転して会場へと向かいました。初めて参加する大会、初めて訪れる吉野の地。ワクワクしつつ、心細く不安な気持ちもちょっぴりありました。

「ヒルクライム大台ヶ原」で力走するMOCOさん「ヒルクライム大台ヶ原」で力走するMOCOさん

 しかしレースでは、そんな私の胸の内をスッキリ晴れやかにしてくれる魔法の言葉たちが飛び交っていたのです。

 スタートから序盤、住宅地を抜けるコースでは、村民の皆さんが家の前から「行ってらっしゃい」「気を付けてね!」「頑張ってね~っ!」と、手作りの旗や横断幕で応援してくれるのです。もう、私は嬉しくなっちゃって、その度に「行ってきま~すっ!」と大きな声で応えて、手を振りかえしました。

 驚いたのは、気が遠くなるほどの厳しく長いヒルクライムレースを終えて、選手達が下山をしたときです。スタートからおよそ5時間も経っているのに、なんと、まだ住民の皆さんが沿道から声援をくれるじゃないですか! 口々に「お疲れ様」「頑張ったね!」「えらかったね~!」と拍手で迎えてくれます。横断幕は、裏返して「おかえりなさい」の大きな文字に変身。川を挟んだ向こう岸からも、ずっと手を振ってくれる。もう先ほどまでの苦しいヒルクライムの疲れなんて吹っ飛んじゃう!

コース脇には温かい言葉の横断幕がいくつも掲げられたコース脇には温かい言葉の横断幕がいくつも掲げられた

 さらに、「この村に来てくれて、ありがとうね」「また、来年も待っているからね~」とお母さんたちが笑顔で声を掛けてくれました。私も、走り終えた選手達もみんな口々に「こちらこそ、ありがと~っ!」と返事をし、終わらないありがとうのリレーが始まるのです。

 「おかえりなさい」という言葉は不思議。安心してそこにいる事ができる言葉。私は道中一人で寂しい気持ちを抱えていたから、なおさら強く感じたのかもしれない。今年は照れ臭くって言えなかった「ただいま!」の言葉を、来年は言えるようになっているかな!?

前夜祭のトークショーにゲストとして出演した三浦恭資さん(右)とMOCOさん(中央)前夜祭のトークショーにゲストとして出演した三浦恭資さん(右)とMOCOさん(中央)
福西力村長(前列左)や、大会を支えたスタッフとともに記念撮影福西力村長(前列左)や、大会を支えたスタッフとともに記念撮影

 この上北山村の会場付近には宿泊施設がほとんどありません。そのため、遠方からの参加者を迎え入れる施設は、小学校の体育館や村役場を開放して休息所として使ってもらうようにしているとの事。それに、もっと驚いたのは、数年前まで村民のみなさんのお宅にも、宿泊する選手を迎え入れていたというのです。これって「田舎に泊まろう」(テレビ番組)のリアル版って事よね!?

 見知らぬ選手を自宅に招き、寝床を用意し泊まらせてあげて、大会へと送り出す。これぞ「自転車乗りへのおもてなし文化」。選手の立場で見るならば、田舎のおばあちゃんの家へ遊びに行って、翌日に控えたレースのお話をして、ワイワイみんなでご飯を食べて、それが夏の一大スペシャル行事になっちゃう感覚でしょう。そんな事が実現できていたのも、村人の皆さんの広い心や、大会運営側との信頼関係があってこそ。まさに村総出で作り上げているヒルクライム大会なのです。

 残念ながら民家での宿泊は、村民の高齢化により体力的にも大変になってしまったため、終了となったそうです。しかし、そのホスピタリティは上北山村に根ざし、脈々と受け継がれています。東京で暮らす私は、こんなに温かくて広い心が残っている上北山村の気風を知り、なんだか心が真綿でほっこり包まれたような感覚になりました。

 国内のヒルクライム大会の中でもとりわけ難コースだと言われている大台ヶ原。上っている最中は辛いけれど、最高に楽しい大会です。皆さんもぜひ、参加してみてください。ファミリーでも楽しめる大会です。山深き豊かな自然と、温かなハートが待ってくれています。

“小さな村の大きなイベント” 「ヒルクライム大台ヶ原」の舞台裏

MOCOMOCO
本名:笹本智子。クリエイティブプロデューサー&サイクルロードレーサー。実業団チーム「竹芝サイクルレーシング」からJフェミニンツアー参戦中。2011年は年間ランキング3位の強豪選手。1980年生まれ、静岡県掛川市出身。(株)REBOX所属。公式ホームページ:http://chari-moco.com/

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