「宇都宮クリテリウム」に参戦へ「弱虫ペダル サイクリングチーム」3月20日に初陣 渡辺航さん「一緒に盛り上がって」

by 平澤尚威 / Naoi HIRASAWA
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 自転車ロードレースに挑む高校生たちを描いた人気漫画「弱虫ペダル」の作品名を冠するロードレースチーム「弱虫ペダル サイクリングチーム」は、作者である渡辺航さんの「自転車競技を盛り上げたいという気持ち」から今年結成された。デビュー戦となる3月20日の実業団「宇都宮クリテリウム」に向け、渡辺さんがCyclistのインタビューに応じ、「チームがステップアップしていく姿を見て、一緒に熱くなって」と、漫画やアニメから興味をもった自転車ファンたちに応援を呼びかけた。

自転車ロードレース漫画「弱虫ペダル」の名を冠した新チーム「弱虫ペダル サイクリングチーム」を設立した、原作者の渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA自転車ロードレース漫画「弱虫ペダル」の名を冠した新チーム「弱虫ペダル サイクリングチーム」を設立した、原作者の渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA

「敗北」にもロードレースの面白さ

 「レースをたくさんの人に見てもらいたい」

 それが、渡辺さんが弱虫ペダル サイクリングチームを設立した理由だ。「弱虫ペダルを読んで自転車を好きになった人が、競技に興味を持った時に、憧れの対象や、目標にできるチームがあったほうが盛り上がる。弱虫ペダル サイクリングチームはその『ランドマーク』。レース観戦に来てもらって、ロードレースのドラマ性など、深いところも知ってもらいたい」という。

会場で観戦するロードレースの面白さを語った渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA会場で観戦するロードレースの面白さを語った渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA

 「敗北してもなお、ロードレースには面白さがある。自転車レースは、勝った人について報じられることが多くて、1人もしくは1チームの勝利に注目が集まる。けれど会場で観戦する側にとっては、応援する選手がどういう動きをしているか見えるので、『どうして勝てなかったのか』ということが見えたり、空気感やまわりの情報から分かったりする」

 会場でしか分からない楽しさもあるロードレース。ファン層が拡大し、会場に人が集まることで「自転車競技がメジャーなエンターテインメントになったらいいな」と渡辺さんは語る。

一目で分かる「総北っぽい」ジャージ

 弱虫ペダル サイクリングチームの設立は2月14日に発表された。弱虫ペダルを冠する自転車チームとしてはシクロクロスチームが2014-15シーズンから活動しているが、ロードレース参戦を決めたきっかけについて、渡辺さんはこう語った。

設立を発表した「弱虫ペダル シクロクロスチーム」 =2016年2月14日、ホテル グランパシフィック LE DAIBA Photo: Kyoko GOTO設立を発表した「弱虫ペダル シクロクロスチーム」 =2016年2月14日、ホテル グランパシフィック LE DAIBA Photo: Kyoko GOTO

 「自転車チームを結成するにあたって、最初はロードレースを考えていたけれど、人数や規模の問題で難しかった。慣れていないファンには、選手の識別も難しい。なので、まずはレース全体が見えてわかりやすいシクロクロスで、自転車競技を観戦してほしいという思いがあった。下地ができてきたので、そろそろロードレースチームを作ってもいのかなと思った」

 シクロクロスチームは白基調のジャージだったが、サイクリングチームは黄色基調で赤がアクセントになっている。これは弱虫ペダルの主人公、小野田坂道が所属する総北高校のジャージに似たカラーリングだ。

「弱虫ペダルシクロクロスチーム」のメンバーとして「シクロクロス東京」を走る前田公平選手 =2016年2月14日 Photo: Ikki YONEYAMA「弱虫ペダルシクロクロスチーム」のメンバーとして「シクロクロス東京」を走る前田公平選手 =2016年2月14日 Photo: Ikki YONEYAMA
総北高校ジャージで「シクロクロス東京2015」に出場し、完璧なガッツポーズを決めてゴールする渡辺航さん =2015年2月8日 Photo: Ikki YONEYAMA総北高校ジャージで「シクロクロス東京2015」に出場し、完璧なガッツポーズを決めてゴールする渡辺航さん =2015年2月8日 Photo: Ikki YONEYAMA

 「これはもう、ロードレースなので。『総北っぽい』『弱虫ペダルっぽい』と一目でわかるし似ているけれど、ちょっと違うデザインにしました。シクロクロスからステップアップしている感じも出したかった」

黄色基調に赤いアクセントのチームウェアでの練習風景(弱虫ペダル サイクリングチーム提供)黄色基調に赤いアクセントのチームウェアでの練習風景(弱虫ペダル サイクリングチーム提供)

 ジャージの袖口やショーツの裾には、自転車競技では世界王者の証としておなじみの「アルカンシェル」のようなストライプがあしらわれている。しかし配色は全く別物。これは総北のライバル校である箱根学園の青、京都伏見高校の紫、熊本台一高校のピンク、広島呉南工業高校の緑というジャージカラーを並べたもの。「そのような『発見』をちりばめています」と、ファンが楽しめる要素をジャージデザインに取り入れた。

ゆくゆくはチームから五輪選手を

チーム作りの目標や、長期的な展望を語る渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWAチーム作りの目標や、長期的な展望を語る渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA

 目指すのは、中高生が憧れて、目標にするようなチームづくり。そうした活動を通じて「若い選手が成長してくるといいな」と期待を込める。

 チームの活動期間については「最低でも3年はやるつもり。そこで次の展開を考える」という。「ファンのみなさんも忙しいし、活動が1年で終わったら、その間にレースを見に来られるか分からない。何年かやっていることで、『一回、観戦に行って見ようかな』というチャンスも増える」と、レースに触れるきっかけを提供していく考えだ。

 チームは実業団で2番目のカテゴリーとなるE1で最初のシーズンを送るが、活動を積み重ねていくなかでトップカテゴリーであるJプロツアーに昇格することも視野に入れている。「ゆくゆくは、うちのチームから強くなって、オリンピックや世界に羽ばたくような選手が育ってくれたらいいなと思っている」という長期的な展望もある。「どんどんステップアップしていくさまを目撃して、ファンの皆さんにも一緒に熱くなってもらいたい」と、チームを盛り上げていくつもりだ。

「レース中も選手に声を届けて」

 今シーズンの目標は「もちろん総合優勝」だという。「レースを見る側からすれば、応援するチームが勝利すれば興奮するし、熱があがると思う」。願うのは、チームが一体となって勝利をファンに届けることだ。

 一方で「勝たなければいけないというプレッシャーがかかるのは大変だと思う」と語る。毎年シクロクロスで数レースに出場している渡辺さんが、あるレースで表彰台を狙える4番手を走っていた時のこと。「前の2人がミスして、『このままいけ~』って思った瞬間、めちゃ守りの走りになった(笑) それを経験して、勝つ人のメンタルって大変なものなんだなと実感した」と、体験談を交えて選手たちの心情を推し量った。

愛車のトレック「エモンダSLR」でのトレーニング後に「Cyclist」のインタビューに応じた渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA愛車のトレック「エモンダSLR」でのトレーニング後に「Cyclist」のインタビューに応じた渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA

 E1でライバルになりそうなチームを聞くと、渡辺さんは「全部です」と答えた。「ロードレースは強い選手だけではなく『運をもっている人』『レースに向けて上手に調整ができた人』が勝つし、展開や戦略によって誰が勝利を掴むかはわからない」と気を引き締める。「他チームから攻撃を受けることもあるだろうけれど、そういったものをはねのけてほしい」と選手たちの活躍に期待した。

笑顔を見せながらインタビューに応えた渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA笑顔を見せながらインタビューに応えた渡辺航さん Photo: Naoi HIRASAWA

 チーム初戦の宇都宮クリテリウムに向けては、「開幕戦なので落車やけがに気をつけてもらいたい。でも勝ってほしいしなぁ…」。複雑な心境を吐露しながらも、「クリテリウムは力やテクニックの差が出るので、勝利をもぎとってほしい」とチームにエールを送った。

 また、会場でレース観戦するファンには、「クリテリウムはワンウェイのレースと違い、選手たちの姿を何度も見られるので、レース観戦の初心者でも面白いと思う。レース中も選手に届くので、声をかけて応援してほしい」と呼びかけた。

◇         ◇

弱虫ペダルを迎え撃つE1の強豪チーム

 弱虫ペダル サイクリングチームが参戦する実業団「Jエリートツアー E1クラス」は、「Jプロツアー」に次ぐアマチュア最高カテゴリー。日本各地の強豪チームがしのぎを削り、ハイレベルな戦いが繰り広げられる。シーズン開幕を控え、弱虫ペダルを迎え撃つ東西の強豪チームを紹介しよう。

■クラブシルベスト

堺クリテリウムに出場したクラブシルベストの選手ら =2015年5月17日 (クラブシルベスト提供)堺クリテリウムに出場したクラブシルベストの選手ら =2015年5月17日 (クラブシルベスト提供)

 2015年のJエリートツアーでチーム総合優勝を飾った「クラブシルベスト」は、大阪と京都に計3店舗を展開するロードバイク専門店「シルベストサイクル」の実業団チームとして2004年に設立された。

 元モスクワ五輪代表で、60歳ながら現役E2選手の山崎敏正・統括店長が代表を務める。平均年齢も40歳と高く、フルタイムサラリーマンだけで構成された“大人アスリート”のチームで、選手たちは時間を切り詰め、効率を突き詰めて限界に挑んでいる。

 注目選手は2015年のE1年間3位の「まつけん」こと松木謙治選手、同5位の「てっちゃん」藤岡徹也選手、そして“50代最強”の「いのきん」猪又靖選手ら。女子のJフェミニンツアーを走る「キリちゃん」渕上記理子選手もチームの顔だ。

 今季の目標に「Jエリートツアー連覇」を掲げ、弱虫ペダル サイクリングチームに対しては「強力な素晴らしいチームなので、昨年優勝を争ったVCフクオカさんとのように、お互いを尊敬し高めあいながら、正々堂々と戦いあいたい」とコメントしている。

■LinkTOHOKU(リンク東北)

「石川サイクルロードレース」に出場したリンク東北の選手たち =2015年7月19日(リンク東北提供)「石川サイクルロードレース」に出場したリンク東北の選手たち =2015年7月19日(リンク東北提供)

 2014年10月に実戦デビューした「LinkTOHOKU」(リンク東北)は、積極的に動き「魅せるレース」を心掛けている。所属する12選手のうち、学生時代に自転車競技経験があるのは3人だが、スケート、デュアスロンなどで国体や世界選手権参加といった経歴を持つメンバーが在籍している。全員アニメ好き。

 チームの代表は鵜沼誠さんが務める。キャプテンは、30代半ばから自転車競技を始め数年で急激に成長した半澤雄高(ゆたか)選手。「スイーツ大好きヒルクライマー」高橋義博選手が上りのエースで、国体の団体追い抜き1位など中長距離で活躍した渡邉正光選手が平坦のエースを担う。

 弱虫ペダル サイクリングチームの参戦について、鵜沼代表は「漫画・アニメの世界だけでなく、自転車業界全体のことを考え『実際のレース』に進出していただいたことに感謝している。選手の実績からJエリートツアーの『大本命』と思われているが、ライバルがいなければ盛り上がらない。開幕戦の宇都宮クリテリウムで弱虫ペダルチームに勝利し、箱根学園的なポジションを務められるよう頑張ります」と意気込みを語った。

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