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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<149>ツール・ド・フランス2016のワイルドカード選出 全22チームは前回と同じ顔触れに

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 世界最大のサイクルロードレース、ツール・ド・フランスを主催するアモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)は3月2日、第103回目となるツールの出場全22チームを発表した。サイクルロードレースのトップシーンでは、6日のパリ~ニースでUCI(国際自転車競技連合)ワールドツアーが再開し、いよいよツールを見据えた戦いが本格化している。そこで今回は、7月に開催されるツール出場チームのうち、第2カテゴリーにあたるUCIプロコンチネンタルチームから選出されたワイルドカード(主催者推薦)4チームにスポットを当てる。

ツール・ド・フランスのワイルドカード4チームが選出された。(左から)フォルテュネオ・ヴィタルコンセプトのスティーヴン・トロネ、ディレクトエネルジーのトマ・ヴォクレール(写真は前年のチーム ヨーロッパカー時代)、コフィディス ソリュシオンクレディのナセル・ブアニ、ボーラ・アルゴン18のサム・ベネット Photo : Yuzuru SUNADAツール・ド・フランスのワイルドカード4チームが選出された。(左から)フォルテュネオ・ヴィタルコンセプトのスティーヴン・トロネ、ディレクトエネルジーのトマ・ヴォクレール(写真は前年のチーム ヨーロッパカー時代)、コフィディス ソリュシオンクレディのナセル・ブアニ、ボーラ・アルゴン18のサム・ベネット Photo : Yuzuru SUNADA

事実上、前回大会と同じ顔ぶれ

 今年のツールもUCI規定におけるグランツール規定に基づき、22チームが出場する。1チームあたりの出走ライダーは9人で、大会開幕時には198人がスタートラインに立つ。最上位カテゴリーとなる18のUCIワールドチームが自動選出され、第2カテゴリーのUCIプロコンチネンタルチームが、4枠のワイルドカードを争う。

 昨年はUCIワールドチームが17で編成されたこともあり、ワイルドカードは特例で5チーム選出されたが、今年は本来の形態に戻る。ツールのワイルドカード選出は、基本的に大会主催者のA.S.O.に委ねられ、出場を目指すチームはさまざまなロビー活動を展開してアピールを行う。ツールをはじめビッグレースで活躍できるだけの実力と実績を持つ選手が所属しているか、選手・スタッフをはじめチームに将来性はあるか、アンチ・ドーピングを謳うクリーンさを持ち合わせるか、などが評価の対象となる。

 その結果、今年はボーラ・アルゴン18(ドイツ)、コフィディス ソリュシオンクレディ、ディレクトエネルジー、フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト(以上フランス)がワイルドカードによる出場を決めた。名称が変わったチームもあるが、もう1チームのワイルドカードだったMTN・クベカもディメンションデータとしてUCIワールドチームに昇格しており、事実上、前回大会と同じ顔ぶれとなった。いずれもビッグレースで見せ場を作り、展開によっては勝利を狙えるだけのチーム力を持つ。UCIワールドチームと合わせ、現在のプロトンにおいて最も“ツール出場”にふさわしい22チームが揃ったといえよう。

ワイルドカード4チームに活躍の可能性は?

 出場チームの顔ぶれが前回と事実上同じだとはいえ、メーンスポンサーの交代や、限られた予算内での活動による体制の変化が毎年起きていることも押さえておきたい。なお、18のUCIワールドチームについては、本コーナーにて前回までお届けした2016年シーズン展望を参照いただきたい。

●ボーラ・アルゴン18

ボーラ・アルゴン18に所属する現ドイツロードチャンピオンのエマヌエル・ブッフマン(ツール・ド・フランス2015第11ステージ=2015年7月15日) Photo : Yuzuru SUNADAボーラ・アルゴン18に所属する現ドイツロードチャンピオンのエマヌエル・ブッフマン(ツール・ド・フランス2015第11ステージ=2015年7月15日) Photo : Yuzuru SUNADA

 2014年から3年連続でのツール出場を決めたドイツ籍のチーム。過去のドーピング問題でファンやスポンサー企業が次々と離れていった同国自転車界において、2010年のチーム発足から地道に活動してきた。その甲斐あって、2012年にジロ・デ・イタリア、2013年にブエルタ・ア・エスパーニャに初出場。そしてツールと、着実に階段を上ってきた。前回ツールでは、第11ステージで現ドイツロードチャンピオンのエマヌエル・ブッフマンがステージ3位に入った。

 注目選手はブッフマンのほか、ベテランのヤン・バルタ(チェコ)。さらに、25歳のスプリンター、サム・ベネット(アイルランド)は一冬越えて評価が急上昇。ステージ優勝の可能性を大いに秘めている。

●コフィディス ソリュシオンクレディ

コフィディス ソリュシオンクレディの総合エース候補、ダニエル・ナバロ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ=2015年9月6日) Photo : Yuzuru SUNADAコフィディス ソリュシオンクレディの総合エース候補、ダニエル・ナバロ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ=2015年9月6日) Photo : Yuzuru SUNADA

 今年で活動20年目を迎えた伝統のチーム。2009年まではUCIプロチーム(UCIワールドチームの前身)として走ってきたが、2010年以降は同プロコンチネンタルチームとなっている。だが、チームの歴史や実力は折り紙つきで、フランスで開催されるUCIワールドツアーを中心に数多くのレースで主催者推薦を勝ち取っている。また、メーンスポンサーのコフィディス ソリュシオンクレディ社は、ブエルタのスポンサー企業としてもおなじみ。

 このチームで2シーズン目となるナセル・ブアニ(フランス)が絶対的スプリンター。アグレッシブな走りで勝利を量産するが、ツールのステージ優勝とは縁遠い。過去2回の出場では、いずれも大会序盤にリタイア。今回はステージ優勝はもちろん、山岳ステージを乗り切ってパリ・シャンゼリゼでの勝利も狙いたい。クライマーのダニエル・ナバロ(スペイン)は2013年に総合9位。今回も総合エースを務めるだろう。

●ディレクトエネルジー

2015年まではイアム サイクリングに所属していたシルヴァン・シャヴァネルがディレクトエネルジーに加入(ジロ・デ・イタリア2015第18ステージ、2015年5月28日) Photo : Yuzuru SUNADA2015年まではイアム サイクリングに所属していたシルヴァン・シャヴァネルがディレクトエネルジーに加入(ジロ・デ・イタリア2015第18ステージ、2015年5月28日) Photo : Yuzuru SUNADA

 世界中のサイクルロードレースファンが、このチームのツール出場を望んだことだろう。前身のチーム ヨーロッパカーのメーンスポンサー撤退から、一時は解散の危機に陥ったが、フランスの電気・天然ガス供給企業であるディレクトエネルジー社がチームを救った。規模縮小により、エースクラスの他チーム移籍が目立ったが、フランス人選手を中心に、傘下の育成チームからの生え抜きを加え、心機一転して今シーズンを迎えている。

 チームの顔は、“社長”の愛称で慕われる国民的英雄のトマ・ヴォクレール(フランス)。平坦・山岳問わず逃げを試みる姿勢で、今年も派手な走りを見せてくれるだろう。12年ぶりに古巣復帰を果たしたシルヴァン・シャヴァネル(フランス)も、ヴォクレールに負けないアクティブさで大会を盛り上げるはずだ。この2人を中心に、スプリントではブライアン・コカール、総合ではロマン・シカール(ともにフランス)が実質的なエースとなる。

●フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト

フォルテュネオ・ヴィタルコンセプトの総合エースとして期待されるエドゥアルド・セプルベダ(ツアー・オブ・オマーン2016=2016年2月18日) Photo : Yuzuru SUNADAフォルテュネオ・ヴィタルコンセプトの総合エースとして期待されるエドゥアルド・セプルベダ(ツアー・オブ・オマーン2016=2016年2月18日) Photo : Yuzuru SUNADA

 昨年までの「ブルターニュ・セシェ アンヴィロヌマン」といえば、お分かりの方も多いだろう。こちらも2014年から3年連続のツール出場。これまでは毎ステージの逃げで見せ場を作ってきたが、この冬は大幅な戦力補強に成功し、“戦えるチーム”として充実している。

 なかでも、総合上位を狙える存在として期待されるのがエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン)。今シーズン序盤は1月のツール・ド・サンルイス(アルゼンチン、UCI2.1)で総合2位、2月のツアー・オブ・オマーン(UCI2.HC)で総合11位。現在は負傷で戦線を離脱しているが、ツール本番までには間に合わせてくるだろう。また、クリスアンカー・ソレンセン(デンマーク)、スティーヴン・トロネ(フランス)といった国内ロードチャンピオンが加入。22歳のケヴィン・ルダノワ(フランス)は、昨年のUCIロード世界選手権アンダー23ロードレースの優勝者でもある。

 チームや選手を知ることは、サイクルロードレースの醍醐味を味わううえで必要不可欠。それがツールに直結するとあれば、なおのことあらゆる情報を集めておきたい。7月2日、世界遺産モン・サン・ミシェルでグランデパールを迎えるそのときまでに、世界各地で行われるレース動向をチェックしながら、ツールの予習を進めていこう。

ツール・ド・フランス2016出場チーム(チーム名後ろのカッコは登録国)

【UCIワールドチーム】
アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
キャノンデール プロサイクリングチーム(アメリカ)
ディメンションデータ(南アフリカ)
エティックス・クイックステップ(ベルギー)
エフデジ(フランス)
チーム ジャイアント・アルペシン(ドイツ)
イアム サイクリング(スイス)
チーム カチューシャ(ロシア)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・ソウダル(ベルギー)
チーム ロットNL・ユンボ(オランダ)
モビスター チーム(スペイン)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チーム スカイ(イギリス)
ティンコフ(ロシア)
トレック セガフレード(アメリカ)
 
【UCIプロコンチネンタルチーム】
ボーラ・アルゴン18(ドイツ)
コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)
ディレクトエネルジー(フランス)
フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト(フランス)

今週の爆走ライダー-ロジャー・クルーゲ(ドイツ、イアム サイクリング)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 3月6日に閉幕したUCIトラック世界選手権。6種目合計ポイントで争われるオムニアムは、最終種目のポイントレースで順位が一気に入れ替わる大混戦になった。そんな中で、勝負強さを発揮して銀メダルを獲得したのがクルーゲ。ロードとの兼任ライダーでもある彼にとって、初めての世界選手権メダルとなった。

トラック世界選手権のマディソンで銀メダルを獲得したロジャー・クルーゲ =2016年3月5日 Photo: Yuzuru SUNADAトラック世界選手権のマディソンで銀メダルを獲得したロジャー・クルーゲ =2016年3月5日 Photo: Yuzuru SUNADA

 自身でも驚く活躍だ。前週までロードで活動し、トラック用のピストバイクではわずか数日しか準備ができなかった。この冬はトラックを主体にトレーニングを積んできたとはいえ、準備不足の不安が大きかったという。メダル獲得を決めたポイントレースでは、優勝争いを繰り広げていたフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)と、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チーム スカイ)が見合う間隙を縫って積極的に攻撃。2008年の北京五輪では銀メダルを獲った得意種目で、大胆な走りが成功を生んだ。

 3月9日からのティレーノ~アドリアティコ(UCIワールドツアー)でロードに復帰する。トラック世界選手権で主役だったガヴィリアやマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)とのマッチアップが待ち受ける。ロードではアシストとして堅実な走りが評価されてきたが、今回はスプリント勝利を狙う心積もりだ。

 ティレーノ後はミラノ~サンレモ、北のクラシックを転戦。6月からリオデジャネイロ五輪に向けて、トラックの準備に入ることを宣言した。キャリア最高の1年とする大きなチャンス。“その気”になった30歳から目が離せなくなりそうだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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