MSN産経ニュース【金曜討論】より自転車のナンバー制は必要? 「税金無駄遣い」疋田智氏、「事故減少」岸田孝弥氏

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 東京都自転車対策懇談会は先月、自転車へのナンバープレート装着義務化を提言した。自転車の運転マナー向上が目的で、都は近い将来の条例化を視野に入れているが、実効性や制度新設で生じるコストの面で疑問の声もある。懇談会の副座長を務めた岸田孝弥・労働科学研究所主管研究員と、NPO法人「自転車活用推進研究会」理事の疋田智さんに、意見を聞いた。(磨井慎吾)

「一度廃止した制度をなぜ」 疋田智氏

自転車ツーキニストの疋田智氏自転車ツーキニストの疋田智氏

 –東京都が検討する自転車ナンバープレート制をどう思うか

 「一言でいえば、税金の無駄遣いだ。この制度に実効性を持たせるためには膨大なお金が必要になり、費用対効果の面から無理がある。都の人口約1300万人に対し自転車は約900万台もあり、さらに隣県から乗り入れる自転車もある。その全てにナンバープレートを配り、付けない人間に対して罰則を設けて取り締まりを行うには、ものすごい人手が必要だ」

 –ナンバープレート装着で事故減少につながるのでは

 「自転車先進国の欧州諸国にもナンバープレートはないが、自転車事故率は日本よりずっと低い。世界でも自転車ナンバープレート制で成功した例はない。昭和33年まで、日本には自転車鑑札という自転車税にともなうナンバープレート制度が存在していたが、自転車台数の激増で管理コストが膨大になり、廃止に至った経緯がある。一度寿命が尽きた制度を、あえて復活させる理由はあるのか」

 –自転車の運転マナーが悪いのは否定できない

 「日本の自転車環境には、歩道走行可、左側通行の不徹底、取り締まりが実質的にないこと、格安自転車の大量流通という4つのガラパゴス状況がある。歩道を走るから自転車に性能が求められず、安価で粗悪な自転車が大量に出回り、“たかが自転車”という意識が生まれてマナーの悪さや放置自転車などにもつながっている。だが最大の問題は、運転者教育の欠如だろう。取り締まるべき警察官が逆走・並走などを行っている状況も目にする。車道走行と左側通行の徹底だけで、相当の事故減少が見込める」

 –放置自転車対策でもある

 「都の放置自転車台数自体は減少している。本当に拙速に手を打つべき緊急事態なのか。まず、今ある仕組みを活用できないかを考えるべきだ。現状でも自転車には防犯登録が法律で義務づけられている。未登録への罰則追加などの法改正を働きかけて実効性を高めるなど工夫の余地は大いにある」

 –都は将来的な条例化を強く意識している

 「むしろ、無駄なコストや人件費を創出することをあえて望んでいるのかと疑いたくなる。この構想を推進する都青少年・治安対策本部は、警察庁のキャリア官僚が本部長や課長など幹部ポストに出向している警察色の濃い組織で、現在の交通安全課長も出向組の警察キャリアだ。在任中にこの構想の条例化に成功すれば、大量の警察官の天下り先を確保できるわけで、警察庁内では大きな功績と評価されるだろう。ただ、それで失われるのは都民のお金だ」

 【プロフィル】疋田智
 ひきた・さとし 昭和41年、宮崎県生まれ。45歳。東大文学部卒業後、TBSに入社。現在、同局プロデューサーとして「朝ズバッ!」担当部長を務める。自転車で通勤する“自転車ツーキニスト”を名乗り、「自転車の安全鉄則」「自転車はここを走る!」など著書多数。

「運転者に自覚を促す」 岸田孝弥氏

労働科学研究所の岸田孝弥氏労働科学研究所の岸田孝弥氏

 –なぜ今ナンバープレート装着義務化が必要なのか

 「東日本大震災後、自転車の有用性は改めて注目された。関東圏を中心に自転車の販売や利用が増えたが、事故などのデメリットも増大した。今後の自転車利用拡大を考えるなら、デメリットへの対策を取るべきだ。乗っている人間が思う以上に、自転車は危険な乗り物。自転車が車両であるということを運転者に改めて意識してもらうことが、何より必要だ」

 –視認性などの面で、事故防止効果に疑問の声もある

 「装着できる大きさや位置の問題から、歩行者などが見て常に読み取れるというわけにはいかないだろうが、ナンバープレートを付けているという事実により、運転者は人に見られていることを意識せざるを得ない。対歩行者事故が起きた際に、ひき逃げを防ぐ手がかりの一つになる」

 –ナンバープレート導入で事故が減るというデータはあるのか

 「欧米など諸外国にもない初めての試みだから、当然データはないし、確実に減るとはいえない。ただ、ナンバープレートを付けることで見られている自覚が生まれ、運転が抑制されるというのは当然考えられる。社会実験的な意味合いは強いが、やらないよりやった方がいい試みだ」

 –近隣県からの乗り入れも多いが、都単独での実効性は?

 「東京都のディーゼル車規制(平成15年施行)の実例がある。始める前は都単独で乗り入れ規制をやっても実効性がないと批判されていたが、施行されると成果を挙げた。行政がやる気になれば実効性は上がる。自転車の場合、周辺県からの乗り入れは主に通勤・通学だから、県境での検問以外に駐輪場などでのチェックを行えば、十分実効性はあるだろう。また首都である東京都が率先して始めることで、周辺県をはじめ全国への波及効果も期待できる」

 –制度新設でナンバー管理など多くのコストが発生する

 「新車分の登録については、販売時の手続きに組み込めばそれほど手間はかからないだろう。ナンバーの管理組織については、都の公務員を増やすというわけにはいかないから、都やその関係団体、自転車業界や利用者の代表らが中心になった第三者団体を作って管理することになるだろう」

 –利用者の負担は増える

 「これまで放置自転車など自転車の負の面への対策は、自転車を利用しない人も含めた都民の税金で行ってきたわけで、自転車利用者はメリットのみを享受する“ただ乗り”状態だった。自転車利用者に応分の負担を求めていくことが、これから必要になる」

 【プロフィル】岸田孝弥
 きしだ・こうや 昭和16年、東京都生まれ。70歳。日大大学院生産工学研究科管理工学専攻博士課程修了。専門は交通心理学。高崎経済大大学院教授、中京大教授などを歴任。著書に「マクロ・アーゴノミクス」などがあるほか、論文に「自転車事故の人的要因に関する研究」など。

MSN産経ニュースより)
 
自転車のナンバー制「賛成」が52% 一方で「マナー向上しない」も53%

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