4月から「シエル・ブルー・カノヤ」でプロ活動へ金メダルとリオ五輪出場枠獲得へ トラック世界選に挑む上野みなみ&塚越さくらインタビュー

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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トラック世界選手権での活躍を誓う塚越さくら(左)と上野みなみ Photo: Kyoko GOTOトラック世界選手権での活躍を誓う塚越さくら(左)と上野みなみ Photo: Kyoko GOTO

 自転車トラック競技・女子中距離のダブルエース、上野(うわの)みなみと塚越さくら(ともに鹿屋体育大学大学院)が、3月2~6日にロンドンで開催される「2016UCIトラック世界選手権大会」に出場する。今年8月のリオデジャネイロ五輪出場へカギを握る重要な大会であり、さらに2人にとっては、4月に設立する新プロチーム「CIEL BLEU KANOYA」(シエル・ブルー・カノヤ)を発表後、初めて臨むレース。上野は前回の世界選の女子ポイントレースで獲得した銀メダルを上回る「金」を、塚越は五輪種目のオムニアムで日本の出場枠獲得を目指す。

ナショナルチーム合宿で最終調整

 2月下旬、伊豆ベロドロームで行なわれたトラック日本ナショナルチームの合宿で、上野と塚越はロンドン世界選への最終調整に励んでいた。

トラック日本ナショナルチームの合宿風景 =2016年2月25日、静岡県伊豆市の伊豆ベロドローム  Photo: Kyoko GOTOトラック日本ナショナルチームの合宿風景 =2016年2月25日、静岡県伊豆市の伊豆ベロドローム  Photo: Kyoko GOTO
世界選手権でのメダル獲得に向けて、「楽しんで走れたときに良い結果が出る。緊張感をもちつつ楽しみたい」と話す上野みなみ Photo: Kyoko GOTO世界選手権でのメダル獲得に向けて、「楽しんで走れたときに良い結果が出る。緊張感をもちつつ楽しみたい」と話す上野みなみ Photo: Kyoko GOTO

 昨年2月にパリで開かれたトラック世界選手権で銀メダルに輝いた上野は、今大会に向けて「欲はある。逆にいえば、変に焦ってしまっている部分もあって、『本当に強くなっているのかどうか』とか複雑な思いがあった。でもここまで来たらやるしかない。いま出せる力を出し切りたい」と意気込みを示した。

 さらに、出場する「団体追い抜き」ではチームとして日本記録の更新を、「個人追い抜き」でも長年塗り替えられていない日本記録の更新を目標に掲げている。

「気負わず、今まで通りの自分の走りをしたい」と話す塚越さくら Photo: Kyoko GOTO「気負わず、今まで通りの自分の走りをしたい」と話す塚越さくら Photo: Kyoko GOTO

 一方、塚越は自身が出場するオムニアムについて「アジア選手権の結果で日本は(五輪出場枠を得られる)ぎりぎりの国・地域別世界ランキング18位に入ることができたが、世界選手権で逆転される可能性がある。しっかりと自分の良い走りをしなければならない」と厳しい表情を見せた。また「オリンピック枠が取れたとしても、自分が出場できるとは決まっていないが、その枠を獲得しなければ自分にもチャンスが回ってこない。日本代表として出場枠を取る役割をしっかり果たせるよう、体調を崩さず万全な体制で臨みたい」と決意を語った。

無限の可能性を表す「青い空」

「シエル・ブルー・カノヤ」のチーム設立発表会で記念撮影に収まる(左から)高宮正嗣ゼネラルマネジャー兼監督、宇和野みなみ、塚越さくら、黒川剛・鹿屋体育大自転車競技部監督「シエル・ブルー・カノヤ」のチーム設立発表会で記念撮影に収まる(左から)高宮正嗣ゼネラルマネジャー兼監督、宇和野みなみ、塚越さくら、黒川剛・鹿屋体育大自転車競技部監督

 鹿屋体育大に同期で入学し、自転車競技部で活躍してきた上野と塚越は、ともに同大の大学院へ進んで競技生活を続行。大学院を卒業する今春以降、新たな活動母体としてシエル・ブルー・カノヤに所属する。同大自転車競技部の黒川剛監督や部関係者、スポンサーなどが尽力し、2人に東京五輪で活躍させることを念頭に結成したまったく新しい形態のトラック中長距離種目専門プロチームだ。チーム設立の発表は2月9日、スポンサーのメルセデス・ベンツの新車発表会に合わせて行なわれた。シエル・ブルーの意味はフランス語で「鹿屋の青い空」。鹿屋体育大のある鹿児島県鹿屋市を拠点に活動する。

「シエル・ブルー・カノヤ」のユニフォームをまとった上野みなみ選手 (提供:CIEL BLEU KANOYA ProCycling Team)「シエル・ブルー・カノヤ」のユニフォームをまとった上野みなみ選手 (提供:CIEL BLEU KANOYA ProCycling Team)
「シエル・ブルー・カノヤ」のユニフォームをまとった塚越さくら選手 (提供:CIEL BLEU KANOYA ProCycling Team)「シエル・ブルー・カノヤ」のユニフォームをまとった塚越さくら選手 (提供:CIEL BLEU KANOYA ProCycling Team)

 プロチームとして活動することについて、上野は「自転車に集中できる環境が整ったことをありがたく思う一方、これからは給料をもらって走ることになるので、プロとしての自覚をもち、しっかり成績を残していきたい」とコメント。塚越も「トラック中心のチームを立ち上げてもらえたことはとてもうれしい。これからはプロとして色々な人からのサポートを受けて走るので、今まで以上に自転車に向き合ってより良い成績を残し、サポートしてくれている方々に結果で恩返ししていきたい」と心境を語った。

トラック日本ナショナルチームの練習風景 Photo: Kyoko GOTOトラック日本ナショナルチームの練習風景 Photo: Kyoko GOTO

 もちろん、プレッシャーも大きい。上野は「期待に応えられるか? 気持ちが持たなかったら…という不安もあったが、(新チーム設立を発表して)自分たちを応援してくれる人たちの存在を感じたら、頑張ろうという気持ちになった。いまは楽しみな気持ちの方が強い」と周囲への感謝の気持ちをパワーに変える。塚越も「サポートしてくれる方々は『あまりプレッシャーに感じないように』と言ってくださるので、自分らしく今まで通りの走りが出来たらいいと思っている」と淡々とした口調で語った。

 リオ五輪出場は、チーム設立初年度に訪れる大きなチャンスだ。塚越は「五輪出場はチーム自体が注目してもらえるチャンス。より知名度が上がって、多くの人から支援してもらえることになるかもしれない。そのチャンスをしっかりつかめるように頑張りたい」と、プロとしての意気込みを示した。

リオは東京への通過点

 リオ五輪の先には、2020年東京五輪というさらなる大舞台が待っている。4年後に向けて彼女たちはどう戦い、どのようなビジョンを描いているのか。

練習中の塚越さくらと(先頭)と上野みなみ Photo: Kyoko GOTO練習中の塚越さくらと(先頭)と上野みなみ Photo: Kyoko GOTO
練習中の上野みなみ Photo: Kyoko GOTO練習中の上野みなみ Photo: Kyoko GOTO

 「五輪出場の枠をとるための大変さを、この2年間痛感している」という上野。「リオ五輪に出場できたら、もちろん成績も出したいが、いま持っている最大限の力を出しつつ五輪がどういうものかを感じ取り、それを東京五輪につなげたい。と、リオが東京五輪に向けた通過点であることを強調した。

 「最終目標は東京五輪で成績を残すこと。リオが終わったら一度切り替えて、自分の弱点ややるべきことを見つめ直してトレーニングをしたい」

練習中の塚越さくら Photo: Kyoko GOTO練習中の塚越さくら Photo: Kyoko GOTO

 塚越も「団体種目の出場は厳しい状況で、チームでリオ五輪を経験するのは難しい。せめて個人種目だけでも誰かが五輪に行き、どんな環境なのかを経験することがとても重要。その経験をチームに還元して、東京五輪ではチームも個人も全種目で日本チームが出られるような体制を作っていきたい」とビジョンを語った。

「トラック競技を間近で見てほしい」

 自転車競技で五輪メダル数が最も多いトラック競技だが、「ロードレースやMTBなどと比べ、少しマイナーなイメージがある」と塚越。競技を観戦できる場が限られている事情もあるが、スピード感や迫力、各種目のルールの面白さ、手に汗握るレース展開など「他の競技にはない魅力がある」と強調する。

「一度トラック競技を見に来てほしい」と話す塚越さくら(左)と上野みなみ Photo:Kyoko GOTO「一度トラック競技を見に来てほしい」と話す塚越さくら(左)と上野みなみ Photo:Kyoko GOTO

 「トラック競技の面白さをより多くの人に知ってほしいと思って走っている。それには自分たちが成績を残し、注目してもらうことが一番近道。そのために私たちも頑張ろうと思う」という上野。「4月にはここ(伊豆ベロドローム)で全日本選手権が開催されるので、ぜひ一度、自分の目でトラック競技を見てほしい。わからないことがあったら、近くにいたらルールでもなんでも教えます!」と笑顔で呼びかけた。

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