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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<147>若きエースをツールの表彰台へ アージェードゥーゼール、エフデジ 2016年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 世界最大のサイクルロードレースであるツール・ド・フランスにおいて、大会の盛り上がりは、フランス人選手やフレンチチームの活躍と密接に関連する。近年、そのプレッシャーと戦い続け、一定の成果を残しているのがアージェードゥーゼール ラモンディアルとエフデジだ。ともに1990年生まれの若きフランス人エース、ロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)とティボ・ピノー(エフデジ)の台頭が両チームの躍進を支えている。今回は“フランスの雄”である2チームをセレクトし、ツールを中心に据えるシーズンを展望する。

アージェードゥーゼール ラモンディアルのロマン・バルデ(左)とエフデジのティボ・ピノー。ともにフランス籍チームで総合エースを務める若きフランス人選手 Photo: Yuzuru SUNADAアージェードゥーゼール ラモンディアルのロマン・バルデ(左)とエフデジのティボ・ピノー。ともにフランス籍チームで総合エースを務める若きフランス人選手 Photo: Yuzuru SUNADA

バルデの目標はツール総合5位以内

今シーズンはツール・ド・フランスの総合5位以内を目標とするロマン・バルデ =2016年2月15日 Photo: Yuzuru SUNADA今シーズンはツール・ド・フランスの総合5位以内を目標とするロマン・バルデ =2016年2月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 名実ともにアージェードゥーゼール ラモンディアルのエースに上り詰めたバルデ。ここ数年の活躍は目覚しいが、まだ25歳、力を伸ばす余地は十分にある。定評ある登坂力に加え、ライバルの隙を突く一気のアタック、ダウンヒルでのテクニックも魅力だ。課題を挙げるとすれば、個人タイムトライアル(TT)か。好走とブレーキの波が大きく、ステージレースの総合争いを左右する要因となっている。

 とはいえ、総合力ではグランツールで上位進出するだけの資質を持ち合わせている。初めてツールに出場した2013年は総合15位、2014年は6位。昨年は第18ステージで勝利を挙げ、総合9位とまとめたものの、大会序盤の遅れが響いた。

 今年は自己最高位となる総合5位以内を目標にすると宣言。出場が決まれば4度目のツールとなり、好成績を残すうえでは機が熟したと見ているという。今シーズンはすでにツアー・オブ・オマーン(UCI2.HC、2月16~21日)で総合2位に入るなど、シーズン序盤の調子は上々だ。また、昨年6位となったリエージュ~バストーニュ~リエージュでも、終盤の上りでアタックできれば勝機はあると分析。アルデンヌクラシックでも優勝を狙って臨む心積もりだ。

ツアー・オブ・オマーン2016で総合2位に入ったロマン・バルデ =2016年2月19日 Photo: Yuzuru SUNADAツアー・オブ・オマーン2016で総合2位に入ったロマン・バルデ =2016年2月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

ポッツォヴィーヴォは初のツール出場へ

総合エースの一角であるドメニコ・ポッツォヴィーヴォはツール初出場を狙う(ツアー・オブ・オマーン2016第5ステージ=2月20日) Photo: Yuzuru SUNADA総合エースの一角であるドメニコ・ポッツォヴィーヴォはツール初出場を狙う(ツアー・オブ・オマーン2016第5ステージ=2月20日) Photo: Yuzuru SUNADA

 バルデと並ぶ総合エースであるドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)。地元最大のレースであるジロ・デ・イタリアで毎年見せ場を作り、総合上位に食い込むが、昨年は第3ステージの下りで落車し、顔面を強打してリタイアを喫した。今年もジロに参戦し、悔しさを晴らそうと意気込む。

 そして、プロ12年目にして初めてのツール出場を予定。あくまでもジロにターゲットを設定しながら、その後の回復次第でツールをどう走るか決めたいとしている。「自由に走れると思うし、調子がよければ総合トップ10は狙える」とも述べる。

 今年で39歳を迎えるベテランのジャンクリストフ・ペロー(フランス)も、グランツールでは柱になる1人だ。こちらもジロが最初の目標となる予定で、ポッツォヴィーヴォとのダブルエース体制を敷く。両者の関係性に問題はなく、一緒に総合上位を目指す考えだ。

 チーム方針で、クライマーや、クラシックに強い選手を多く採用したことも特徴といえる。2月11~14日のツール・メディテラニアン(フランス、UCI2.1)でステージ1勝を挙げ、総合でも3位に入ったヤン・バークランツ(ベルギー)や、昨年のツール第8ステージ勝利のアレクシー・ヴュイエルモーズ(フランス)もステージレース、アルデンヌクラシックで上位を狙える選手だ。

フランス自転車界で将来を嘱望されるアレクシー・グジャール(ツアー・ダウンアンダー2016第4ステージ=2016年1月22日) Photo: Yuzuru SUNADAフランス自転車界で将来を嘱望されるアレクシー・グジャール(ツアー・ダウンアンダー2016第4ステージ=2016年1月22日) Photo: Yuzuru SUNADA

 また、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージを独走で制した22歳のアレクシー・グジャール(フランス)は、フランス自転車界の希望の星として将来を嘱望されている。グランツールやアルデンヌクラシックで勝利を収められる逸材として期待が高い。彼のようなスター候補生もしっかりと押さえておきたい。

■アージェードゥーゼール ラモンディアル 2015-2016 選手動向

【残留】
ゲディミナス・バグドナス(リトアニア)
ヤン・バークランツ(ベルギー)
ロマン・バルデ(フランス)
ジュリアン・ベラール(フランス)
ギヨーム・ボナフォン(フランス)
ミカエル・シュレル(フランス)
マキシム・ダニエル(フランス)
ニコ・デンツ(ドイツ)
アクセル・ドモン(フランス)
サミュエル・デュムラン(フランス)
ユベール・デュポン(フランス)
ベン・ガスタウアー(ルクセンブルク)
ダミアン・ゴダン(フランス)
アレクシー・グジャール(フランス)
パトリック・グレーチュ(ドイツ)
ユーゴ・ウル(カナダ)
カンタン・ジョレギ(フランス)
ブレル・カドリ(フランス)
ピエールロジェ・ラトゥール(フランス)
セバスティアン・ミナール(フランス)
マッテーオ・モンタグーティ(イタリア)
ジャンクリストフ・ペロー(フランス)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア)
クリストフ・リブロン(イタリア)
セバスティアン・テュルゴ(フランス)
ヨハン・ヴァンスーメレン(ベルギー)
アレクシー・ヴュイエルモーズ(フランス)
 
【加入】
フランソワ・ビダール(フランス) ←シャンベリー シクリズムフォーマーション(アマチュア)
シリル・ゴティエ(フランス) ←チーム ヨーロッパカー
ジェス・サージェント(ニュージーランド) ←トレック ファクトリーレーシング
 
【退団】
リナルド・ノチェンティーニ(イタリア) →スポルティング・タヴィラ

ツール表彰台へ返り咲きを目指すピノー

 ラ・フランセージュデジュー時代から数えて20シーズン目を迎えた伝統のチーム、エフデジ。こちらもアージェードゥーゼール ラモンディアルと同様に、フランス人選手を中心としたメンバーで構成され、シーズン最大のターゲットにはもちろんツールを掲げる。熱血漢のゼネラルマネジャー、マルク・マディオ氏の指揮の下、自国開催レースでの勝利を至上命題に戦い続けている。

 国際自転車競技連合(UCI)によるワールドチーム規定上限の30人で構成されるメンバーだが、その絶対エースとなるのがピノー。バルデと同じ25歳だが、これまでの実績ではピノーが上を行く。そのハイライトは2014年ツール。山岳ステージでの快走が光り、総合3位に輝いた。

ツール・ド・フランス2015第20ステージでアルプ・デュエズ頂上ゴールを制したティボ・ピノー =2015年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス2015第20ステージでアルプ・デュエズ頂上ゴールを制したティボ・ピノー =2015年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一時はダウンヒルで大スランプに陥り、2013年のツールではそれが途中リタイアの一因となったが、今ではそれも克服され、山岳での安定感と同時に勝負強さも身につけた。個人TTをまとめられる走力もあり、総合順位を落とさないあたりも強みだ。昨年のツールでは序盤の不調が響いたが、第20ステージではアルプ・デュエズを制するなど大会期間中に状態を修正する器用さも見せた。今年は2014年を上回るベストリザルトを狙いたい。

 シーズン序盤は、2月3~7日のエトワール・ド・ベセージュ(フランス、UCI2.1)で総合3位、2月17~21日のヴォルタ・アオ・アルガルベ(ポルトガル、UCI2.1)では総合4位とまずまずの結果を残している。ビッグレースは、3月9~15日のティレーノ~アドリアティコ(イタリア)出場が予定されており、急峻な山岳でどのような走りを見せるかが注目される。

デマールは北のクラシックとツールを狙う

 2014年までは“懸念材料”としてたびたび話題に上った「エーススプリンター問題」。アルノー・デマール(フランス)と、ナセル・ブアニ(フランス、現コフィディス ソリュシオンクレディ)という、ともに勝利を量産してきた強力スプリンターをどう扱うかは、マディオ氏の悩みの種でもあった。結果的にブアニとの確執が表面化し、2011年のロード世界選手権アンダー23世界王者でもあるデマールをチームに残すことを選択した。

スプリンターであり北のクラシックも得意とするアルノー・デマール(ツール・ド・フランス2015第4ステージ=2015年7月7日) Photo: Yuzuru SUNADAスプリンターであり北のクラシックも得意とするアルノー・デマール(ツール・ド・フランス2015第4ステージ=2015年7月7日) Photo: Yuzuru SUNADA

 もっとも、マディオ氏が常に野望として掲げるパリ~ルーベで勝利を狙える点で、デマールを評価した向きが強い。デマール自身も将来はルーベで勝つことを夢見ており、両者の目指すところが一致した。

 そのデマールは、ツール・メディテラニアン第2ステージでシーズン初勝利を挙げ、今年も勝利量産体制へと突入する。そして最初のヤマ場は北のクラシック。最高成績は2014年のヘント~ウェヴェルヘム2位。その上は優勝だけだ。

 数多くの勝利を収めてきているが、グランツールのステージ優勝には縁遠い。ピノーの総合成績が最優先のため、スプリントトレインが組みにくいチーム事情も関係しているが、そろそろチャンスをつかんでもいいはずだ。

急成長中のエース候補が続々

 ピノーやデマールだけに頼らないチーム力も、今シーズンは武器となりそうだ。

新人賞争いが期待される25歳のケニー・エリッソンド(ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ=2015年5月29日) Photo: Yuzuru SUNADA新人賞争いが期待される25歳のケニー・エリッソンド(ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ=2015年5月29日) Photo: Yuzuru SUNADA

 総合系では、昨年のジロ総合9位のアレクサンドル・ジェニエスや、2013年ブエルタ第20ステージで魔の山アングリルでの死闘を制したケニー・エリッソンド(ともにフランス)に期待がかかる。特に、エリッソンドは今年25歳。出場するレースによっては、新人賞候補にも名乗りを挙げるだろう。

 スプリントでは、今年23歳のマルク・サロー、同じく22歳のロレンゾ・マンザン(ともにフランス)がチャンスをうかがう。デビューイヤーの昨年、ともにプロ初勝利を収め、今年も序盤戦から上位フィニッシュを繰り返している。ケヴィン・レザ(フランス)は、デマールの発射台としてだけでなく、展開次第では自らも勝負に打って出る。

 こうした若い選手たちが活躍できる背景には、経験豊富なベテランがしっかりと支えていることも見逃せない。昨シーズン、ピノーの側近を務めたスティーヴ・モラビト(スイス)や、たびたびの逃げでおなじみのジェレミー・ロワ(フランス)といった選手たちが、“縁の下の力持ち”としていぶし銀の働きを見せる。

■エフデジ 2015-2016 選手動向

【残留】
ウィリアム・ボネ(フランス)
セバスティアン・シャヴァネル(フランス)
アルノー・クールテイユ(フランス)
ミカエル・ドゥラージュ(フランス)
アルノー・デマール(フランス)
ケニー・エリッソンド(フランス)
ムリーロ・フィッシャー(ブラジル)
アレクサンドル・ジェニエス(フランス)
マチュー・ラダニュス(フランス)
ジョアン・ルボン(フランス)
オリヴィエ・ルガック(フランス)
ピエールアンリ・ルキュイジニエ(フランス)
ロレンゾ・マンザン(フランス)
スティーヴ・モラビト(スイス)
ヨアン・オフレド(フランス)
ローラン・ピション(フランス)
セドリック・ピノー(フランス)
ティボ・ピノー(フランス)
ケヴィン・レザ(フランス)
アントニー・ルー(フランス)
ジェレミー・ロワ(フランス)
マルク・サロー(フランス)
ブノワ・ヴォグルナール(フランス)
アルチュール・ヴィショ(フランス)
 
【加入】
オッドクリスティアン・エイキング(ノルウェー) ←チーム ヨーケル
マルク・フォルニエ(フランス) ←シクロクラブ・デ・ノージャンシュルオワーズ(アマチュア)
ダニエル・ホーエルゴール(ノルウェー) ←チーム ヨーケル
イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア) ←チーム マルセイユ13・KTM
ジェレミー・メゾン(フランス) ←クラブシクリスト エチュープ(アマチュア)
セバスチャン・ライヘンバッハ(スイス) ←イアム サイクリング
 
【退団】
ダヴィド・ブシェ(ベルギー) →クレラン・ファストグッドサービス コンチネンタルチーム
アントニー・ジェラン(フランス) →引退
アルノルド・ジャヌソン(フランス) →コフィディス ソリュシオンクレディ
フランシス・ムレ(フランス) →フォルチュネオ・ヴィタルコンセプト
ジュシー・ヴェイッカネン(フィンランド) →引退

今週の爆走ライダー-ジェス・サージェント(ニュージーランド、アージェードゥーゼール ラモンディアル)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今シーズン、トレック ファクトリーレーシングから移籍加入した。チーム レイディオシャック時代から5年間同じチームで走ってきたが、層が厚いチームにあって望むようなチャンスが得られず、変化を求めた。

アージェードゥーゼール ラモンディアルに加入し、ツアー・オブ・カタールに出場したジェス・サージェント =2016年2月12日 Photo: Yuzuru SUNADAアージェードゥーゼール ラモンディアルに加入し、ツアー・オブ・カタールに出場したジェス・サージェント =2016年2月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年4月のツール・デ・フランドル。逃げグループで快調に走っていたところに不運が襲った。ニュートラルサービスカーに接触され、鎖骨を骨折してしまった。復帰に3カ月以上を要し、チーム内での居場所まで失ってしまった。

 新チームと結んだ2年契約は、自身にとってメリットが大きいと喜ぶ。昨シーズンのように万一のアクシデントに見舞われ、活躍の場がなかったら…。2年契約であれば、チームにアピールする時間は十二分にあると考えている。

 かつてはトラックのパーシュート(追抜)種目で活躍。2008年北京と2012年ロンドンの五輪では、両大会ともチームパーシュート(団体追抜)で銅メダルを獲得したほか、トラック世界選手権でも4つのメダルを獲得している。ロードでは個人TTを得意とし、ステージレースでの総合優勝経験もある。

 これからは個人TTに加え、北のクラシック要員としてもチームから期待されている。そして、ツール初出場とリオ五輪のロードレース代表入りも視野に入れる。

 走りに不安はない。いま、レースやトレーニングと同様に彼が重視しているのは、フランス語の習得だ。フランス人選手が大多数を占めるチームにあって、フランス語を話せるかどうかは一人のライダーとして死活問題。コミュニケーションがとれなければ、目標とするレースへの出場すら危うくなる。

 チームメートやスタッフとの意思疎通がしっかりとできるようになった先に待つのは、ビッグレースでの勝利かもしれない。フレンチチームで歩む新たなキャリアには、大きな可能性が秘められている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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