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つれづれイタリア~ノ<65>ファンイベントも“けた違い” NIPPO・ヴィーニファンティーニのイタリア合宿に潜入<後編>

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 2月中旬から、世界中でロードレースシーンがヒートアップしています。すでに「NIPPO・ヴィーニファンティーニ」は、2月7日に開催された「G.P.コスタ・デリ・エトルスキ」でグレガ・ボーレ(スロベニア)が1勝を挙げ、また山本元喜は見事な逃げをみせるなど素晴らしいチームワークを発揮しました。今回はNIPPO・ヴィーニファンティーニの合宿レポート<後編>。イタリアならではの豪華で盛大なファンライドイベントの様子もお伝えします。

ファンライドスタート前の記念写真 Photo: Marco FAVAROファンライドスタート前の記念写真 Photo: Marco FAVARO

←<前編>「同じ釜の飯」で家族のように

ファンライドに警察のエスコート

 選手たちのメディカルチェックや機材、練習プログラムのチェックから幕を開けたチーム合宿。本格的なトレーニングを開始する前に、もう一つの“大仕事”が待っていました。それはファンイベントです。

 サイクリング界では1月になると、おそらくどのプロチームもファンやスポンサーに向けて盛大なプレゼンテーションを行っていますが、NIPPO・ヴィーニファンティーニのイベントの華々しさは、もはや“けた違い”。スポンサーを巻き込んだファンライドとチームプレゼンテーションの2大イベントが、今年は1月9日に開催されました。

ファンライドに参加したステファノ・ガルゼッリ氏 Photo: Marco FAVAROファンライドに参加したステファノ・ガルゼッリ氏 Photo: Marco FAVARO

 ファンライドは午前9時にスタート。宿泊先のホテルの前にはそうそうたる顔ぶれが集まりました。イタリア人もめったにお目にかかれないダヴィデ・カッサーニ氏(イタリアナショナルチーム監督)やステファノ・ガルゼッリ氏(2000年ジロ・ディタリア総合優勝)らイタリア自転車連盟の重鎮たち、そして国営放送など各メディアの関係者も目の前にいて、テレビで見る華やかな世界にいきなりワープした気分でした。さらに、このファンライドをエスコートするのが、なんとイタリア警察から派遣された自転車競技大会専門の白バイ隊だというのですから、驚きの連続です。

インタビューをうけるイタリアナショナルチームのダヴィデ・カッサーニ監督 Photo: Marco FAVAROインタビューをうけるイタリアナショナルチームのダヴィデ・カッサーニ監督 Photo: Marco FAVARO
イタリア警察の白バイ隊 Photo: Marco FAVAROイタリア警察の白バイ隊 Photo: Marco FAVARO

いきなり始まったタイムトライアル

 デローザ社から全員分の自転車として最高峰のカーボンバイク「プロトス」が用意されました。クリスティアーノ・デローザ社長の自転車は、なんと!ジロ・デ・イタリアの色、ピンクのプロトス。やはり伊達男にはピンクが似合います。

選手と参加者のために用意された自転車  Photo: Marco FAVARO選手と参加者のために用意された自転車  Photo: Marco FAVARO
クリスティアーノ・デローザ社長専用のピンクのデローザ Photo: Marco FAVAROクリスティアーノ・デローザ社長専用のピンクのデローザ Photo: Marco FAVARO
ファンライドの様子 Photo: Marco FAVAROファンライドの様子 Photo: Marco FAVARO

 ファンライドと言ってもコースはアップダウンが続き、スピードも速い。そしてグルッポ(集団)は一列ではなく、2列、3列に並んでも警察官は何も言わず、淡々と交通整理の仕事をしていました。参加者の安全を考慮し、反対車線の車を止める時もありました。でもイタリアでは誰も文句を言いません。白バイと自転車があると、それはレースを意味し、車は脇で止まるものだとみんな知っています。さすがはロードレース大会に慣れているイタリアならでの光景でした。

 しかし、次に起こった出来事にはもっと驚きました。幹線道路についたグルッポは足を止め、先頭を引いていた車からチームマネジャーのペロージ氏が、いきなりペアで行うタイムトライアル(TT)レースの実施を提案しました。しかも距離は5km! もちろん、みんな大賛成です。

ペアTTの様子 Photo: Marco FAVAROペアTTの様子 Photo: Marco FAVARO
ペアTTの様子 Photo: Marco FAVAROペアTTの様子 Photo: Marco FAVARO

 実はこのTT、イベントに隠されていたサプライズでした。何も知らされていなかった白バイ隊ですが、交通状況を目で確認し、スケジュール変更をあっさりと承認しました。さすがはイタリア警察、危なくなければ、すべてよし! 2時間以上に及んだファンライドは無事に終了しました。

プレゼンテーション会場は18世紀の劇場

ライドの後でダミアーノ・クネゴを囲む参加者 Photo: Marco FAVAROライドの後でダミアーノ・クネゴを囲む参加者 Photo: Marco FAVARO

 お昼にゴールしたグルッポは、食事会場へ移動。レストランは自転車関係者で埋め尽くされています。もはやプロコンチネンタルチームの領域を超えた光景です。

 午後になると、全員がチームの公式プレゼンテーション会場へ移ります。会場となるのは中世の街、キエーティ市内の歴史的劇場(1818年建設、460席)。会場は詰めかけたファンがあふれるほどの賑わいを見せました。

 キエーティ市長を始め、アブルッツォ州知事、イタリア自転車連盟会長も駆けつけ、NIPPOの吉川芳和常務、イタリアアパレールメーカーのベネトン経営陣ら各経済界の代表者も参加。いかにチームが期待されているかが見てとれます。

 劇場と言えばオペラ。最後はジャコモ・プッチーニ作曲「トゥーランドット」の有名な歌曲、「誰も寝てはならぬ」の大合唱でプレゼンテーションが幕を閉じました。

劇場に入りきれないファンたち Photo: Marco FAVARO劇場に入りきれないファンたち Photo: Marco FAVARO
プレゼンテーションの後のアフターパーティ Photo: Marco FAVAROプレゼンテーションの後のアフターパーティ Photo: Marco FAVARO

疲労回復に赤カブジュース

 プレゼンテーションの翌日、本格的な練習が開始されました。アブルッツォ州は交通量が少なく、アップダウンも多い。日本でいうならば、道の広い伊豆半島のような地形です。標高2000mを超える山もあり、練習環境としてはなかなかよくできた場所です。海風も強いので、北のクラシックレースの準備にも使えます。

トレーニング前にアドバイスを伝えるガルゼッリ氏 Photo: Marco FAVAROトレーニング前にアドバイスを伝えるガルゼッリ氏 Photo: Marco FAVARO

 初めての練習メニューでは最大出力(パワー)を測定します。トレーナーのジャンニ・テンドラ氏が、選手のすぐそばを走りながら各選手にトレーニングを指示。モニタリングシステムを使ってパワーを計測していました。

ローテーションをしながらアップをする選手 Photo: Marco FAVAROローテーションをしながらアップをする選手 Photo: Marco FAVARO
オンラインでパワー出力を測定するトレーナー Photo: Marco FAVAROオンラインでパワー出力を測定するトレーナー Photo: Marco FAVARO
赤カブジュースを飲む山本選手 Photo: Marco FAVARO赤カブジュースを飲む山本選手 Photo: Marco FAVARO

 そして選手たちには、さらなる重要な課題が課せられました。それは疲労回復に効くと期待されている赤カブ(レッドビート)ジュースの実力も試すことでした。注射による疲労回復剤の投入が禁止されていることから、自然で安全に疲労を回復させる食べ物の研究が進められています。味に関しては…コメントは人それぞれでした。

選手たちに挨拶するアマチュアたち Photo: Marco FAVARO選手たちに挨拶するアマチュアたち Photo: Marco FAVARO

 最後に、機材の耐久テストです。アマチュアレーサーを含め、私たちが安全に道路を走行できるのは、プロ選手達が自ら実験材料となっているおかげだと言えるでしょう。

 スポンサーの一つ、日本のタイヤメーカーIRCの最新タイヤの耐久性と耐パンク性の実験も行われていました。日本に住んでいると知らない方も多いと思いますが、イタリアの道路はとにかく荒れています。アスファルトがすべりやすい上に、メンテナンスが細部までいきわたらないため、場所によって大きな穴が空いています。この悪条件の中で、私たちが安全に使うタイヤの研究が行われていました。こうして初日の練習は5時間にわたりました。

 合宿はその後、雪が降るまで続き、一部の選手がオーストラリアに向けて出発しました。ここから各選手それぞれの生活が始まりますが、合宿はお互いの絆を高めあうために必要不可欠なものだとよくわかりました。今回の取材を終え、改めてNIPPO ヴィーニファンティーニの取り組みはすごいと感じました。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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