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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<146>ステージレースでの好成績を目指す イアム サイクリング、キャノンデール2016年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2015年シーズンのUCIワールドツアー・チームランキングで16位と17位だったキャノンデール プロサイクリングチーム(2015年はチーム キャノンデール・ガーミン)とイアム サイクリング。順位的には下位に終わったが、要所では中軸選手をしっかりと上位に送り込み、相応の結果を残した印象だ。今年さらなるジャンプアップを目指す両チームにフォーカスし、エースクラスの動向を押さえていく。

2016年はジャージのメーンカラーが変更されたイアム サイクリング(左)とキャノンデール プロサイクリングチーム Photo : Yuzuru SUNADA2016年はジャージのメーンカラーが変更されたイアム サイクリング(左)とキャノンデール プロサイクリングチーム Photo : Yuzuru SUNADA

上々のシーズン序盤を送るイアム

 2013年にチームが発足したイアム サイクリング。2年間のプロコンチネンタルチームとしての活動を経て、昨年からUCIワールドチームに昇格した。豊富な資金力とクリーンなチームスタイルが国際自転車競技連合(UCI)から評価されたという。

 ワールドツアー1年目は、ハインリッヒ・ハウスラー(オーストラリア)がシーズンイン直後の国内選手権ロードを制覇。1月下旬から2月上旬にかけてのチャレンジ・マヨルカ(スペイン、UCI1クラスのワンデーレース4連戦)でマッテーオ・ペルッキ(イタリア)が2勝と、チームを勢いに乗せた。

 7月のツール・ド・フランスでは、第17ステージでの逃げでタイムを大きく稼いだマティアス・フランク(スイス)が最終的に総合8位と健闘。9月のUCIロード世界選手権では、ジェローム・コッペル(フランス)が個人タイムトライアルで銅メダル獲得と、チームは一年を通じて成果を挙げてきた。

ツール総合8位と躍進したイアム  サイクリングのエース、マティアス・フランク(ツール・ド・フランス2015第10ステージ、2015年7月14日) Photo: Yuzuru SUNADAツール総合8位と躍進したイアム サイクリングのエース、マティアス・フランク(ツール・ド・フランス2015第10ステージ、2015年7月14日) Photo: Yuzuru SUNADA
UCIロード世界選手権の個人タイムトライアルで銅メダルを獲得したジェローム・コッペル(2015年9月23日) Photo: Yuzuru SUNADAUCIロード世界選手権の個人タイムトライアルで銅メダルを獲得したジェローム・コッペル(2015年9月23日) Photo: Yuzuru SUNADA

 そして迎えた今シーズン。1月31日のGPラ・マルセイエーズ(フランス、UCI1.1)でドリース・デヴェニンス(ベルギー)が優勝すると、2月3~7日のエトワール・ド・ベセージュ(フランス、UCI2.1)ではコッペルが最終ステージの個人TTを制し、総合でも優勝。この大会の第2ステージではペルッキがステージ2位に入っており、チームは上々の仕上がりをアピールした。

 また、オリカ・グリーンエッジから移籍加入のリー・ハワード(オーストラリア)は、1月31日のカデル・エヴァンス・グレートオーシャンロードレース(オーストラリア、UCI1.HC)で2位、強風のため21kmのクリテリウムに変更された2月14日のクラシカ・デ・アルメリア(スペイン、UCI1.1)では優勝と好調で、今後の戦いぶりも大いに楽しみだ。

エースを盛り立てるバランス重視の布陣

 昨シーズンまでのメンバーを多く残しながらも、あらゆるレースに対応すべく新たなメンバーを補強した。

北のクラシックでエースを務めるハインリッヒ・ハウスラー Photo: Yuzuru SUNADA北のクラシックでエースを務めるハインリッヒ・ハウスラー Photo: Yuzuru SUNADA

 シーズン序盤のいい流れを持続できるかどうかは、まず北のクラシックで試されることになる。エースはハウスラーが務める。期待された昨年は上位争いに絡むことができず、マルティン・エルミガー(スイス)に勝負を託す結果に終わったが、本来持つポテンシャルは高い。スプリントから逃げまであらゆるレース展開に対応でき、激しいレースになればなるほどチャンスが大きくなる。

 2009年にミラノ~サンレモ、ツール・デ・フランドルでともに2位に入ったハウスラーは、2013年にはヘント~ウェヴェルヘム4位を筆頭に安定して上位を確保。波に乗れば優勝を狙える力はある。クラシックシーズンが終われば、10月の世界選手権を目指すことにるだろう。オーストラリア代表チームではスプリントの最終発射台となる公算だ。

北のクラシックでキャリア最高のパフォーマンスを見せたベテランのマルティン・エルミガー(ツール・デ・フランドル2015、2015年4月5日) Photo: Yuzuru SUNADA北のクラシックでキャリア最高のパフォーマンスを見せたベテランのマルティン・エルミガー(ツール・デ・フランドル2015、2015年4月5日) Photo: Yuzuru SUNADA

 37歳のエルミガーは昨年、フランドル10位、パリ~ルーベ5位と、プロキャリア15年目にしてベストパフォーマンスを見せた。今年もチャンスとあらば優勝争いに加わることだろう。グランツールで見せる堅実なアシストも魅力だ。

 ステージレースでは、フランクが不動のエース。ツールでは昨年以上の順位を狙いたい。かつては個人TTで総合順位を落としがちだったが、近年はうまくまとめられる走力を身に付け、大きな遅れを喫することはない。山岳アシストにはコッペルや、ティンコフ・サクソから加入したオリヴァー・ツァウグ(スイス)らが控える。また、ハルリンソン・パンタノ(コロンビア)が、フランクに続く総合系ライダーとして成長している点も押さえておきたい。

 スプリントはペルッキ、ハウスラーのほか、ハワード、ヨナス・ヴァンフネヒテン(ベルギー)らが担当。22歳のソンドレ・ホルストエンゲル(ノルウェー)も成長が待たれる1人だ。タイムトライアルステージでも活躍が楽しみな選手が多く、一皮むけた印象のコッペルや元UCIアワーレコード保持者のマティアス・ブランドレ(オーストリア)らが快走を披露することだろう。

■イアム サイクリング 2015-2016 選手動向

【残留】
マルセル・アレッガー(スイス)
マティアス・ブランドレ(オーストリア)
クレモン・シュヴリエ(フランス)
ステフ・クレメント(オランダ)
ジェローム・コッペル(フランス)
シュテファン・デニフル(オーストリア)
ドリース・デヴェニンス(ベルギー)
マルティン・エルミガー(スイス)
ソンドレ・ホルストエンゲル(ノルウェー)
マティアス・フランク(スイス)
ジョナタン・フュモー(スイス)
ハインリッヒ・ハウスラー(オーストラリア)
レト・ホレンシュタイン(スイス)
ロジャー・クルーゲ(ドイツ)
ピルミン・ラング(スイス)
ハルリンソン・パンタノ(コロンビア)
シモン・ペロー(スイス)
マッテーオ・ペルッキ(イタリア)
ビセンテ・レイネス(スペイン)
アレクセイ・サラモティンス(ラトビア)
デイヴィッド・タナー(オーストラリア)
ヨナス・ヴァンフネヒテン(ベルギー)
ローレンス・ワーバス(アメリカ)
マルセル・ウィス(スイス)
 
【加入】
リー・ハワード(オーストラリア) ←オリカ・グリーンエッジ
ヴェガールスターク・ラーンゲン(ノルウェー) ←チーム ヨーケル
オリヴル・ナーセン(ベルギー) ←トップスポルト ヴラーンデレン・バロワーズ
オリヴァー・ツァウグ(スイス) ←ティンコフ・サクソ
 
【退団】
シルヴァン・シャヴァネル(フランス) →ディレクトエネルジー
トマス・デガント(ベルギー) →ワンティ・グループゴベール
ジェローム・ピノー(フランス) →引退
セバスチャン・ライヘンバッハ(スイス) →エフデジ
パトリック・シェリング(スイス) →チーム フォアアールベルク

即戦力を補強したキャノンデール

 昨年までのチーム キャノンデール・ガーミンから名称が変わったキャノンデール プロサイクリングチーム。2013年にイタリアを拠点とした同名のチームが存在し、現在も部分的にその流れを汲んでいるが、ガーミン・シャープと合併した2015年以降、運営母体はスリップストリーム・スポーツ社が担う。2003年に「5280/スバル」として発足したジュニア育成チームをルーツとし、2007年に同社が経営権を持つと、チーム スリップストリーム、チーム ガーミン・スリップストリーム、チーム ガーミン・サーヴェロなどと名前を変えながらトップシーンを走ってきた。

 そして迎えた今シーズンは、大きな転換期となる。これまでチームリーダーとしてグランツールをメーンに戦ったライダー・ヘシェダル(カナダ)がトレック・セガフレードへ、ダニエル・マーティン(アイルランド)がエティックス・クイックステップへそれぞれ移籍。しかし、両輪の離脱を補えるだけの大型補強に成功したのも事実だ。

2度の総合2位と相性のいいジロを狙うリゴベルト・ウラン(ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ、2015年5月29日) Photo: Yuzuru SUNADA2度の総合2位と相性のいいジロを狙うリゴベルト・ウラン(ジロ・デ・イタリア2015第19ステージ、2015年5月29日) Photo: Yuzuru SUNADA

 グランツールで多くの実績をもつリゴベルト・ウラン(コロンビア)がエティックス・クイックステップから、ピエール・ローラン(フランス)がチーム ヨーロッパカーから加入。総合トップ10、さらには総合表彰台も計算できる強力なオールラウンダーが、早速チームを引っ張ることになるだろう。現時点では、ウランが2013、2014年に総合2位と相性抜群のジロ・デ・イタリアを、ローランがツールを走る見込みだ。

フランス人のピエール・ローランはツールを狙う(ツール・ド・フランス2015第19ステージ、2015年7月24日)  Photo: Yuzuru SUNADAフランス人のピエール・ローランはツールを狙う(ツール・ド・フランス2015第19ステージ、2015年7月24日)  Photo: Yuzuru SUNADA
新加入しツアー・ダウンアンダーを走ったヴァウテル・ウィッペルト(2016年1月24日) Photo: Yuzuru SUNADA新加入しツアー・ダウンアンダーを走ったヴァウテル・ウィッペルト(2016年1月24日) Photo: Yuzuru SUNADA

 また、スプリントから山岳まで幅広く走ることができるサイモン・クラーク(オーストラリア)がオリカ・グリーンエッジから、北のクラシックでエース候補に名乗り出るマッティ・ブレシェル(デンマーク)がティンコフ・サクソからそれぞれ加わった。ドラパック プロフェッショナルサイクリングからは、昨年のツアー・ダウンアンダー第6ステージを制したヴァウテル・ウィッペルト(オランダ)が移籍するなど、経験豊富な選手たちも即戦力となる。

 新加入組がすでに結果を残し始めており、アヴァンティ レーシングチームから移籍のパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)が同国選手権個人TTを制覇し、直後のツアー・ダウンアンダーでも総合10位。オプタムp/bケリーベネフィットストラテジーズから加わったマイケル・ウッズ(カナダ)はダウンアンダーで総合5位と大健闘した。

将来を嘱望されるタレントも

グランツールの総合エース候補になるアンドルー・タランスキー(ツール・ド・フランス2015第18ステージ、2015年7月23日) Photo: Yuzuru SUNADAグランツールの総合エース候補になるアンドルー・タランスキー(ツール・ド・フランス2015第18ステージ、2015年7月23日) Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年から引き続きチームに残る選手では、アンドルー・タランスキー(アメリカ)が筆頭に挙げられる。山岳、個人TTともに得意とし、グランツールではブエルタ・ア・エスパーニャで2012年総合7位、ツールでは2013年に総合10位に入っている。昨年はツール総合11位。今年はグランツール総合トップ10返り咲きを目指すシーズンとなる。

 ラムーナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)は、スプリント、個人TT、逃げと何でも来い。昨年は世界選手権ロードレースの銅メダルで、その走りに一層の評価を得た。

 23歳のダヴィデ・フォルモロ(イタリア)は、昨年のジロ第4ステージ勝利。山岳での強さを証明し、今後はステージレースの総合成績を意識していくことになる。同様に、スピードのあるトムイェルト・スラフトール(オランダ)、ジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)も1週間程度のステージレースでは好成績を連発しており、ビッグレースへの期待が膨らむ。

 新戦力と既存の若い選手が融合し、チームは新たな成功を重ねていくことだろう。

■キャノンデール プロサイクリングチーム 2015-2016 選手動向

【残留】
ジャック・バウアー(ニュージーランド)
アルベルト・ベッティオール(イタリア)
ネイサン・ブラウン(アメリカ)
アンドレフェルナンドサントス・カルドソ(ポルトガル)
ジョゼフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア)
アレックス・ハウズ(アメリカ)
ベンジャミン・キング(アメリカ)
クリスティアン・コレン(スロベニア)
セバスティアン・ラングフェルド(オランダ)
アラン・マランゴーニ(イタリア)
モレーノ・モゼール(イタリア)
ラムーナス・ナヴァルダウスカス(リトアニア)
クリストファー・シェルピング(ノルウェー)
トムイェルト・スラフトール(オランダ)
アンドルー・タランスキー(アメリカ)
ディラン・ファンバーレ(オランダ)
ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア)
ルーベン・ツェブントケ(ドイツ)
 
【加入】
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド) ←アヴァンティ レーシングチーム
マッティ・ブレシェル(デンマーク) ←ティンコフ・サクソ
サイモン・クラーク(オーストラリア) ←オリカ・グリーンエッジ
ローソン・クラドック(アメリカ) ←チーム ジャイアント・アルペシン
フィリップ・ガイモン(アメリカ) ←オプタムp/bケリーベネフィットストラテジーズ
ライアン・ミューレン(アイルランド) ←アンポスト・チェーンリアクション
ピエール・ローラン(フランス) ←チーム ヨーロッパカー
トムス・スクインス(ラトビア) ←ヒンカピー レーシングチーム
リゴベルト・ウラン(コロンビア) ←エティックス・クイックステップ
ヴァウテル・ウィッペルト(オランダ) ←ドラパック プロフェッショナルサイクリング
マイケル・ウッズ(カナダ) ←オプタムp/bケリーベネフィットストラテジーズ
 
【退団】
ハニエルアレクシス・アセベド(コロンビア) →チーム ジェイミス
トム・ダニエルソン(アメリカ) →未定
ネイサン・ハース(オーストラリア) →ディメンションデータ
ラッセノーマン・ハンセン(デンマーク) →ストルティングサービスグループ
ライダー・ヘシェダル(カナダ) →トレック・セガフレード
エドワード・“テッド”・キング(アメリカ) →引退
ダニエル・マーティン(アイルランド) →エティックス・クイックステップ
マテイ・モホリッチ(スロベニア) →ランプレ・メリダ

今週の爆走ライダー-マイケル・ウッズ(カナダ、キャノンデール プロサイクリングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 シーズン初戦のツアー・ダウンアンダーでは、難コースの第3ステージと、ウィランガ・ヒルの頂上を目指した第5ステージでともにステージ3位。再三のアタックでレースを盛り上げ、最終的に総合5位とセンセーショナルな新チームデビューとなった。

ツアー・ダウンアンダー2016で活躍し総合5位に入ったマイケル・ウッズ(右) =2016年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADAツアー・ダウンアンダー2016で活躍し総合5位に入ったマイケル・ウッズ(右) =2016年1月21日 Photo: Yuzuru SUNADA

 これまではUCIアメリカツアーを主に転戦。昨年8月のツアー・オブ・ユタでは第5ステージを制し、総合2位。この時の快走で一躍注目を集めた。

 ライダーとしてのキャリアは5年目。その経歴は異色だ。スポーツマンとしてのバックボーンは、若き日のアイスホッケーと陸上競技。走りでは体格のハンディがないと判断すると、陸上・中距離選手としての快進撃が始まる。2005年に1500mでアメリカ大陸ジュニアチャンピオン、翌年には同種目で世界ランキング50位入りを果たすほどのトップランナーだった。

 800mから3000mまでこなすスピードマンだった一方で、専門的な指導を受けずに走り続けたことが引き金となり、故障を繰り返すようになった。走れない時のトレーニングとして出会ったのが自転車だったという。

 ロードレースに転向後は少しずつ結果を積み重ね、ついに今年、世界に挑戦するときがやってきた。アイスホッケー、陸上競技では届かなかった領域に到達した今もなお、可能性は無限に広がる。

 今年10月には30歳となる“オールド・ルーキー”。彼の歴史は始まったばかり。戦いの軌跡を記すための空白のページは、数多く残されている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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