大会史上最高の1万5000人が大歓声波打ち際のラインが導いたパワーズ2度目のV 「シクロクロス東京」エリート男子詳報

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 最終局面まで目を離せない大接戦を制したのは、今年の世界シクロクロス選手権で16位に入った全米王者の、その名の通りの“パワー”だった。2月14日、お台場海浜公園で行われた「シクロクロス東京2016」のメーンレース、エリート男子は、海外招待選手のジェレミー・パワーズ(アメリカ、ASPIRE RACING)が、国内2強の小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)、竹之内悠(東洋フレーム)を僅差で下し、2013年に続く大会2勝目を挙げた。会場にはこの日、大会史上最高の1万5000人が詰め掛け、大歓声が響き渡った。

シケイン(障害物)をバニーホップで飛び越えるジェレミー・パワーズ。パワーとテクニックを兼ね備えたワールドクラスの選手だ Photo: Kenta SAWANOシケイン(障害物)をバニーホップで飛び越えるジェレミー・パワーズ。パワーとテクニックを兼ね備えたワールドクラスの選手だ Photo: Kenta SAWANO

全日本王者の竹之内が序盤から攻撃

スタート直後の第1コーナー争いはパワーズ(右奥)が制した Photo: Kenta SAWANOスタート直後の第1コーナー争いはパワーズ(右奥)が制した Photo: Kenta SAWANO

 大会の最終レースとなるエリート男子は、国内外の招待選手と、国内シクロクロスのトップカテゴリーで上位の成績を残した選手のみが出場できる特別なレース。この日の午前は春の嵐で会場は雨と風に見舞われたが、午後になって天気は急速に回復。午後1時40分のスタートを迎える頃には青空が広がり、コース脇を観客の人垣が埋め尽くした。

 号砲とともに60分のレースがスタートし、最初のコーナーに先頭で飛び込んだのは、優勝候補の呼び声が高いパワーズだ。そのまま先頭をキープして、砂浜の波打ち際を一気に駆け抜けるサンドエリアに突入した。

林間エリアのぬかるんだ上り返しで、立木を使ってターンするパワーズ Photo: Ikki YONEYAMA林間エリアのぬかるんだ上り返しで、立木を使ってターンするパワーズ Photo: Ikki YONEYAMA
先頭で水たまりに入るパワーズ Photo: Kenta SAWANO先頭で水たまりに入るパワーズ Photo: Kenta SAWANO
大会史上最長となった砂浜区間。竹之内は先行する2人と異なるラインで突入した Photo: Ikki YONEYAMA大会史上最長となった砂浜区間。竹之内は先行する2人と異なるラインで突入した Photo: Ikki YONEYAMA

 しかしここで3番手から猛烈なチャージを見せたのが、全日本チャンピオンジャージを着る竹之内だ。トップスピードのまま先行2選手と異なるラインで砂浜の緩斜面を駆け下りると、一気に先頭へと躍り出た。このまま竹之内が先行し、2番手にパワーズ、3番手には今大会が引退レースになる第1回大会の覇者、ベン・バーデン(ベルギー、WCUP)という布陣で、レースは2周目に突入した。竹之内と並ぶ国内2強の一角、小坂は、スタートでやや出遅れ、先頭グループから離れた位置で序盤を戦った。

猛スピードで砂浜区間に入った竹之内 Photo: Ikki YONEYAMA猛スピードで砂浜区間に入った竹之内 Photo: Ikki YONEYAMA
砂浜区間でパワーズを竹之内が抜きにかかる Photo: Kenta SAWANO砂浜区間でパワーズを竹之内が抜きにかかる Photo: Kenta SAWANO
エリート男子のレースが始まる頃にはギャラリーがさらに増え、選手たちは大歓声の中を突き進んだ Photo: Yoshiyuki KOZUKEエリート男子のレースが始まる頃にはギャラリーがさらに増え、選手たちは大歓声の中を突き進んだ Photo: Yoshiyuki KOZUKE
3位争いは今大会が引退レースとなるバーデンが中心 Photo: Ikki YONEYAMA3位争いは今大会が引退レースとなるバーデンが中心 Photo: Ikki YONEYAMA
スタート直後に8位前後と出遅れた小坂光 Photo: Ikki YONEYAMAスタート直後に8位前後と出遅れた小坂光 Photo: Ikki YONEYAMA

再びパワーズが先頭に

 2周目に入っても砂浜区間で抜群のスピードを見せる竹之内だが、パワーズも落ち着いた走りで追い上げる。3周目の、2人が並んだ状態で砂浜に突入すると、竹之内が砂に乗り上げて一瞬失速した隙に、パワーズが再び先頭に立った。

 序盤のラップタイムを基準に、周回数は11周に決定された。その後、レース中盤はパワーズが竹之内との差を15秒前後にまで開き、一時は独走態勢に入ったかに見えたが、思うようにペースは上がっていかない。3番手のバーデンは変わらず、4番手にはスタートで出遅れた小坂が上がり、上位争いはほぼこの4人に絞られた。

砂に車輪を取られた竹之内。これを見逃さずパワーズが再び先頭に立った Photo: Ikki YONEYAMA砂に車輪を取られた竹之内。これを見逃さずパワーズが再び先頭に立った Photo: Ikki YONEYAMA
フライオーバー(立体交差)をジャンプしながら越えるジェレミー・パワーズ Photo: Yoshiyuki KOZUKEフライオーバー(立体交差)をジャンプしながら越えるジェレミー・パワーズ Photo: Yoshiyuki KOZUKE
レインボーブリッジを背に先頭を走るパワーズ Photo: Ikki YONEYAMAレインボーブリッジを背に先頭を走るパワーズ Photo: Ikki YONEYAMA
バニーホップでシケインを越えるティム・アレンティム・アレン(アメリカ、FEEDBACK SPORTS) Photo: Ikki YONEYAMAバニーホップでシケインを越えるティム・アレンティム・アレン(アメリカ、FEEDBACK SPORTS) Photo: Ikki YONEYAMA
フライオーバーでエアーを決めるティム・アレン Photo: Ikki YONEYAMAフライオーバーでエアーを決めるティム・アレン Photo: Ikki YONEYAMA

本命3人の激しいバトル

 レース後半、差が開きすぎない位置で様子をうかがっていたという竹之内が、逆襲を開始した。残り4周で一気に差を詰め、残り3周に入ってすぐにパワーズを追い抜き、先頭に立った。その後方では「最初出遅れたが、踏めてる感じがあった」という小坂が、バーデンをパスして3番手に浮上した。

残り4周の後半、スパートをかけた竹之内が一気にパワーズに迫る Photo: Kenta SAWANO残り4周の後半、スパートをかけた竹之内が一気にパワーズに迫る Photo: Kenta SAWANO
単独で3番手に立ち、先行するパワーズと竹之内を追う小坂 Photo: Kenta SAWANO単独で3番手に立ち、先行するパワーズと竹之内を追う小坂 Photo: Kenta SAWANO
再び先頭に立った竹之内と、それを追うパワーズ。後方に小坂の姿も見える Photo: Ikki YONEYAMA再び先頭に立った竹之内と、それを追うパワーズ。後方に小坂の姿も見える Photo: Ikki YONEYAMA

 先頭に立った竹之内だが、砂浜区間の終盤、深い砂の上りで砂に車輪を取られるミスで、一瞬スローダウンを喫してしまう。自転車を押しながら走行ラインをブロックして先頭は守ったものの、この隙に小坂が竹之内とパワーズに追いつくことに成功した。序盤から1つ1つ追い上げて勢いに乗る小坂は、残り2周に入ると林間エリアで一気にアタック。ついに先頭へと躍り出た。

残り2周、ついに小坂が先頭に躍り出た。抵抗の少ない観客ギリギリの一本ラインを走る Photo: Ikki YONEYAMA残り2周、ついに小坂が先頭に躍り出た。抵抗の少ない観客ギリギリの一本ラインを走る Photo: Ikki YONEYAMA

 竹之内はこの周、再び砂浜区間の後半でミスを犯して3番手に後退。竹之内の後ろにつけていたパワーズも一瞬スローダウンを余儀なくされ、小坂が後続に若干の差を開く形に。日本人初優勝の期待を背に、小坂が先頭のまま最終周回へ突入した。

パワーズは波打ち際のラインをテスト。この時は前に出られなかったが、これが最終周回の布石に Photo: Ikki YONEYAMAパワーズは波打ち際のラインをテスト。この時は前に出られなかったが、これが最終周回の布石に Photo: Ikki YONEYAMA
応援旗や応援ボードを持って小坂に声援を送る宇都宮ブリッツェンの応援団 Photo: Ikki YONEYAMA応援旗や応援ボードを持って小坂に声援を送る宇都宮ブリッツェンの応援団 Photo: Ikki YONEYAMA

重い砂をパワーで押し切ったパワーズ

 しかしパワーズは諦めなかった。長い砂浜区間までに再び小坂の背中をとらえると、波打ち際のラインに飛び出して一気に小坂を抜き去った。波打ち際の濡れた路面は、轍が掘れておらず安定して走れるが、砂は重くパワーが必要だ。そんな難しいラインを勝負どころであえて使ってのアタック。実は前の周回でこのラインを試しており、最終局面で繰り出した用意周到な一手だった。

最終周回、先頭の小坂をパワーズがピッタリとマーク Photo: Ikki YONEYAMA最終周回、先頭の小坂をパワーズがピッタリとマーク Photo: Ikki YONEYAMA
パワーズがラインを変えて小坂を抜きにかかる Photo: Ikki YONEYAMAパワーズがラインを変えて小坂を抜きにかかる Photo: Ikki YONEYAMA
パワーを要する重い路面をものともせず、三たび先頭に立ったパワーズ(左) Photo: Ikki YONEYAMAパワーを要する重い路面をものともせず、三たび先頭に立ったパワーズ(左) Photo: Ikki YONEYAMA
笑顔でゴールに飛び込んだパワーズ。2度目のシクロクロス東京優勝を決めた Photo: Kenta SAWANO笑顔でゴールに飛び込んだパワーズ。2度目のシクロクロス東京優勝を決めた Photo: Kenta SAWANO

 三たび先頭を奪い取ったパワーズは、この位置をゴールまで譲らず、大観衆の声援に包まれたフィニッシュラインへ飛び込んだ。「暑くてタフなレースだったけれど、後半も安定して走ることができた」とパワーズはレース後に語った。

 パワーズにわずか1秒差でゴールした小坂は、日本人初優勝には届かなかったものの、自身としては初めてシクロクロス東京の表彰台を獲得。前半に破竹の連勝劇を見せた躍進のシーズンを、世界レベルに迫る好走で締めくくった。小坂はまた、今シーズンのJCX(ジャパンシクロクロス)シリーズの総合優勝にも輝いた。

 竹之内は先頭から15秒差の3位でゴール。古傷の脚の痛みに加え、ベルギーのW杯で右手を痛めるなど本調子でなく、終盤にミスを重ねて後退した。「前半にもっとペースを上げて差をつけたかったけれど、そうすると(序盤のラップタイムを元に算出される)周回数がもう1周増えてしまうので、今のコンディションでもう1周は無理だった」と振り返った。

コンディションが万全でないなか、序盤からトップ争いを展開した竹之内 Photo: Ikki YONEYAMAコンディションが万全でないなか、序盤からトップ争いを展開した竹之内 Photo: Ikki YONEYAMA
この大会を引退レースとするバーデンは4位。観客とハイタッチしながらゴールした Photo: Ikki YONEYAMAこの大会を引退レースとするバーデンは4位。観客とハイタッチしながらゴールした Photo: Ikki YONEYAMA
シクロクロス東京2016・エリート男子の表彰台。(左から)2位の小坂光、優勝のジェレミー・パワーズ、3位の竹之内悠 Photo: Kenta SAWANOシクロクロス東京2016・エリート男子の表彰台。(左から)2位の小坂光、優勝のジェレミー・パワーズ、3位の竹之内悠 Photo: Kenta SAWANO

エリート男子結果
1 ジェレミー・パワーズ(アメリカ、ASPIRE RACING) 59分02秒
2 小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) +1秒
3 竹之内悠(東洋フレーム) +15秒
4 ベン・バーデン(ベルギー、WCUP) +25秒
5 ギャリー・ミルバーン(オーストラリア、Trek championsystem) +3分59秒
6 ティム・アレン(アメリカ、FEEDBACK SPORTS) +4分34秒
7 丸山厚(BOMA RACING) +5分02秒
8 門田基志(TEAM GIANT) +5分35秒
9 前田公平(弱虫ペダル シクロクロスチーム) +5分42秒
10 ザック・マクドナルド(アメリカ、Streamline Insurance Services) -1LAP

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