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私の落車<カルテ7>無数の落車を越えて マウンテンバイク・エリート選手が語るレース中の事故予防の心がけ

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 今回と次回の「私の落車」はいつもとちょっと趣向を変えて、いわゆる上級者のお話をインタビュー形式でお届けします。登場いただくのは、エリートクラス所属のマウンテンバイク選手のGさん。レース中&日常の両面において、落車体験と事故を起こさないために気をつけていることをお話しいただきました。

◇      ◇

【落車カルテ7】

Gさん(40歳 男性)
マウンテンバイク歴:19年(エリート所属)
落車歴:無数
けが歴:擦り傷、切り傷は無数、骨折はゼロ

Gさんはマウンテンバイク・クロスカントリーのエリート選手。ゲレンデ斜面のヒルクライムを上る(提供写真)Gさんはマウンテンバイク・クロスカントリーのエリート選手。ゲレンデ斜面のヒルクライムを上る(提供写真)

数え切れないほどコケました

――マウンテンバイク=”激しく下る競技”ってイメージがありますが、レース形式は複数ありますよね?

 以前は大きく分けて「ダウンヒル(DH)系」と「クロスカントリー(XC)系」に分かれていました。最近では、グラビティ系とかエンデュランス系という名称で呼ばれることが増えています。このふたつは、別競技と呼べるくらい使う技術が異なる種目です。

――石がゴロゴロしている悪路にコケたら痛そう…

ダウンヒル競技はフルフェイスのヘルメットに、全身プロテクターで競技に挑む Photo: Ikki YONEYAMAダウンヒル競技はフルフェイスのヘルメットに、全身プロテクターで競技に挑む Photo: Ikki YONEYAMA

 ご想像の通り、急坂を下るグラビティ系のほうが落車ダメージは大きいです。よって、プロテクターをまとって身体を守ります。僕の専門はアップダウンのコースを周回する「エンデュランス系」でして、プロテクターは装着しません。ヘルメットとグローブだけです。

 練習でもレースでも、とくに若い頃は数えきれないほどコケましたよ。少しでも速く先に行きたいので、過剰に攻めて下りのコーナーで前輪がズサッと滑って倒れるのがよくあるパターン。まあ、落車を想定して走っているので、すぐ起き上がって復帰しますが。

 危なかった落車で覚えているのは、上れるかどうかギリギリの上り坂でバランスを崩し谷側に足をついてしまい、滑落したことがあります。幸いにも身体が木に引っかかり、けがはなかったです。あと、表彰台がかかったレースで守りに入ってしまい、慎重に走り過ぎて落車したことも。後で映像確認したら、すごく腰が引けた走りをしていました(笑)。

――大けがをされたこともあるんでしょうね?

 擦り傷、切り傷は日常茶飯事ですが、大きなけがは一度も経験がありません。骨折もゼロです。もしかしたらアバラにヒビが入ったくらいはあったかもしれませんが、治療せずそのままです(笑)。エンデュランスは上りもあるので、平均スピードは20キロ台とロードレースより遅いのも一因でしょう。

 とはいえ、けがとは常に隣り合わせの競技です。「けがしない=強い選手」ということではなく、僕は運が良かっただけです。いくら強い選手でも、けがをしてしまうこともありますからね。

エンデュランス系といえども下り区間はある。砂利が浮く路面での転倒は考えただけでも痛そう(提供写真)エンデュランス系といえども下り区間はある。砂利が浮く路面での転倒は考えただけでも痛そう(提供写真)

転んでしまったときの心がけ

――レース中はどんなことに気をつけていますか?

 私の場合、落差がある下りなど、真正面(縦系)に向かって倒れるときは、ハンドルから手を離しません。「バイクもろとも、一緒に落ちるほうがいい」と仲間の間では言われています。なぜなら、バイクを手離してしまうと、バイクが上から覆いかぶさるように降ってきて、それでけがをすることもあるからです。

 それとは対照的に、木の切り株に突っかかって倒れるようにコケたり、コーナーで滑ったとき(横系)は手をハンドルから離し、クリートも外して自転車から離れるように倒れます。ケースバイケースなので、「このシチュエーションではこうコケるべし」と断言できませんが、横系の落車ではバイクは離してしまうほうがベターな気がします。

 ちなみに、マウンテンバイクではディスクブレーキがスタンダードですが、ローターが原因で皮膚を切るケースはレアケースだと思いますね。少なくとも、僕はあまり見聞きしません。

――状況に応じて技術を使い分けるということですね。では、心理的な心がけは?

シングルトラックのドロップオフにチャレンジ。思い切りも大切だ(提供写真)シングルトラックのドロップオフにチャレンジ。思い切りも大切だ(提供写真)

 僕は、レースの1周目でコケると、そのイヤな記憶を2周目の同じ場所まで引きずってしまうタイプです。そこで意識しているのは、落車したあとも、己の恐怖心に鞭打って積極的に攻めること。あえて突っ込み気味にいくんですよ。そうすると、2周目以降は大丈夫だったりします。

 練習通りにレースでも走ることを意識すると、よい結果につながりやすい。慎重になりすぎると、腰が引けてかえってコケてしまうものです。これは自分自身へのおまじないようのものでして、1周目でコケたけれど、そこから復活して表彰台に立てたこともあります。 ただ、練習を繰り返した、熟知したコースだからできることであって、公道ではしませんよ。危ないので、マネしないでくださいね。

危険な状況に陥らないのがベスト

――マウンテンバイク選手として、初心者サイクリストの方に伝えしたいことってなんでしょう?

 バイクコントロールの基本は「ブレーキ操作」ということ。インストラクターとして指導するときは、まずブレーキのかけ方から始めます。慣れないうちは、前輪をロックさせて前転したり、滑って転んだりしてしまいやすい。これはロードバイクも同じで、前輪が制御できなくなったら終わり。どんなに上手い人でもコケるしかありません。

 ですが、フロントがメーンブレーキであることは変わりません。肝は荷重のかけ方とタイミング。コーナリングに入る前までにしっかり減速し、曲がっている最中にブレーキを使わないのが安全です。しかし、コーナー中にスピードを落としたいときもあります。そんな時はフロントブレーキは握らず、リアブレーキをチョンチョンと触るくらいのイメージで減速します。

 上手い人は前後輪に強めにブレーキをかけても、ロック直前にABSのようにブレーキを離せるものですが、一朝一夕には身につかない技ではあります。

泥でぬかるんだ路面はさらに要注意だ(提供写真)泥でぬかるんだ路面はさらに要注意だ(提供写真)

――体重移動はどうすれば?

 スピードが出ている状態での急ブレーキは、思いっきり後ろに体重移動しましょう。腰をサドルの後ろにし、かつ下げること。この動作は知っているだけではできなくて、練習が必須。ほとんどの生徒さんは、「やっているつもり」でも、ぜんぜんできていないものです。

 あと、路面に砂利や砂が撒かれているとコケやすいです。前輪はグリップを失わないようにコントロールしつつ、自転車の真ん中(重心)に乗るのがおススメ。後輪を滑らたり、カウンター当てたりしながら曲がることもしますが、ちょっと上級者向けの技になりますね。

――そんな高等な技、自分にできる自信がありません…

 危険な状況に陥らないのがベストです。無茶な走行はせず、数秒先を予測して減速するクセをつけておくことですね。この意識はレースだけではなく、日常生活での自転車走行にも関係しますね。

(取材・編集 中山順司)

中山 順司中山 順司(なかやま・じゅんじ)

ロードバイクをこよなく愛するアラフォーブロガー。ブログ「サイクルガジェット」を運営。”徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。ローディの方はもちろん、これからロードバイクを始めようかとお考えの方が、「こんなコンテンツを読みたかった!」とヒザを打って喜ぶ記事をつくります。

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