工具はともだち<86>製品の精度や出来栄えを決める「機械加工」 工具の作り方<その2>

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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 新たなテーマとして取り上げている「工具の作り方」。前回は大きく4つある工程のうち、レンチの形をつくる「塑性加工」をご紹介しました。今回は次の工程である「機械加工」をご紹介します。

鍛造後の加工品(KTC)鍛造後の加工品(KTC)
機械加工後の加工品(KTC)機械加工後の加工品(KTC)

最初の工程である「塑性加工」を経て、ある程度の形状ができ上がると、次は細かい形状を作ったり、精度を出して仕上げをします。ひと言で「機械加工」と言っても、実際は様々な工法があります。おおまかに分類すると「切削(せっさく)」と「研削(けんさく)」に分かれます。

 また切削には、回転したワーク(加工する物)に刃物をあてて削る加工方法と、回転するドリルなどの刃物をワークにあてて削る加工方法があります。要は、ワークが回るか刃物が回るかの違いです。

「NC旋盤」という旋盤で機械加工を行う(KTC)「NC旋盤」という旋盤で機械加工を行う(KTC)

切削と研削で細かい仕上げ

 回転したワークに刃物をあてて削る加工方法を「旋削」と言い、「旋盤」という工作機械を使います。工具の場合はラチェットやソケット、エクステンションバーなどの外形を整えるのに使用されます。KTCのネプロスなどのきれいな流線型はこの工法で仕上げられます。

美しい流線型の仕上げが施されたネプロス(KTC)美しい流線型の仕上げが施されたネプロス(KTC)

 その他にもありますが、切削は刃物で削る、研削は砥石などで削るという違いがあります。切削は形状をつくるため、研削は主に表面の仕上げや刃物の刃付けなどに使われます。

 また、ドリルなどの刃物をワークに当てて削る加工は、「フライス盤」や「ボール盤」という機械で加工しますが、最近では様々な刃物(機械によっては100種類以上の刃物)を自動的に切り替えて、いくつもの工程を行う「マシニングセンター」という便利な工作機械があります。ラチェットの本体など複雑な形状も1台の機械で加工できたりします。

 こうした工作機械の進化は昔だと再現しにくかったような形状でも加工を可能にしてくれるので、より機能的なデザインの工具が作れるようになりました。

 それでも、実際は刃物の形状や大きさなどにより加工がしづらい形状もあって、設計側と生産側で揉める事もしばしば。でも、それがものづくりの面白さであるのかもしれません。
 
話が少し脱線しましたが、その他、刃物を回転させるのではなく、直線的に動かして削る方法もあります。スパナやめがねレンチの口径部の仕上げに使われるブローチ加工が主なものです。この工法はブローチという刃物をスライドさせてワークを削るのですが、スパナやめがねレンチの口径はこの工程で1/100mm単位の精度を出しています。

切削のイメージイラスト切削のイメージイラスト
研削のイメージイラスト研削のイメージイラスト
ブローチのイメージイラストブローチのイメージイラスト

各メーカーの腕の見せ所

 この様に多種多様な工法を組み合わせて形状を作る機械加工ですが、工程のあり方ひとつで製品の精度や出来栄え、コストにも大きく影響してしまいます。ですから、どんな工法を利用するか、順番はどうするかなどといった点がメーカーの腕の見せ所になるのです。

 こうした工法や工程は日々改善されていて、同じ形状の製品でも違う作り方で作られていることはよくあります。数年前に生産された工具と、同じ形状の最近生産された工具を見比べると、微妙に形状が違ったりすることがあるので、そんなところを見つけるのも意外と面白いかもしれませんね。
 
機械加工の工程が終わると、ほぼ工具として使えそうな形状が出来上がります。しかしながら、この状態では本当の意味で工具の機能が備わっているとは言えません。

 その点も含め、次回は工具に魂を吹き込むと言っても過言ではない「熱処理」の工程をご紹介します。

Cyclistロゴ入りエプロン付き「デジラチェ工具セット」発売

Cyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShopCyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShop

 CyclistとKTCとのコラボレーションによる自転車メンテナンス向け「オリジナルデジラチェ工具セット」ができました!

 デジタル式トルクレンチに、収納用ブローケースや、自転車整備に活躍する5つの付替え用ビットソケット、ソケットホルダー、さらにCyclistとKTCのロゴが入ったオリジナルショートエプロンが付属しています。価格は4万3869円(税込)で、セット内容を別々に購入するよりもグッとお得な設定になっています。
(産経デジタル)
→「オリジナルデジラチェ工具セット」商品販売ページ(産経netShop)

重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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