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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<144>“即戦力”新城幸也に高まる期待 多国籍チームのランプレ・メリダ 2016年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 昨年10月、新城幸也のランプレ・メリダ移籍というビッグニュースが日本のサイクルロードレース界を駆け抜けた。新天地でのチャレンジを決意した日本のエースに、多くのファンがエールを送り、ヨーロッパを中心とする世界のサイクルスポーツ界も注目した。今回は新城が移籍先に選んだランプレ・メリダの2016年シーズンを展望。国際色豊かな伝統のチームの方向性に目を向けたい。

オフシーズンはタイ合宿を行ったランプレ・メリダの新城幸也 =2016年1月1日 Photo: Miwa IIJIMAオフシーズンはタイ合宿を行ったランプレ・メリダの新城幸也 =2016年1月1日 Photo: Miwa IIJIMA

新城はアルデンヌクラシックでアピール

 シーズン初戦となった1月24日のアジア選手権ロードレースで銀メダルを獲得した新城。優勝までわずかに及ばず、悔しい結果となったが、長いシーズンを見通せば上々のシーズンインだったと言える。昨年の移籍発表以降は、12月上旬にチーム合宿、年末から年始にかけては恒例のタイ合宿で体づくりと、しっかり戦える態勢に仕上げた。

 今後の予定は、ツアー・オブ・カタール(2月8~12日、UCI2.HC)、ツアー・オブ・オマーン(2月16~21日、UCI2.HC)、パリ~ニース(3月6~13日、UCIワールドツアー)、ミラノ~サンレモ(3月19日、UCIワールドツアー)の出場を発表。その後はアルデンヌクラシック、そして7月のツール・ド・フランス、8月のリオデジャネイロ五輪へと向かっていく。

ランプレ・メリダのジャージに袖を通した新城幸也 Photo: Seishiro TAKIランプレ・メリダのジャージに袖を通した新城幸也 Photo: Seishiro TAKI

 2年ぶりの出場を目指すツール、メダル獲得を視野に入れるリオ五輪という大きなターゲットに向けては、アルデンヌクラシックでの走りがカギを握る。アルデンヌ初戦のアムステル・ゴールドレースは、2014年に10位に入りUCIワールドツアーポイントを獲得した得意のレース。この時期の走りでアピールすることで、ツールに臨む9人のメンバー入りにもつながってくる。

 もっとも、移籍が発表になった段階で、チームは新城を即戦力として迎えると明らかにしている。実力・実績を見ても、クラシックなどのワンデーレースを中心にエース候補であることは確実だ。昨年はリエージュ~バストーニュ~リエージュでの落車負傷がその後のスケジュールに大きく影響を及ぼし、ツール出場を果たせなかったが、アクシデントさえなければチームの主力としてビッグレースで活躍する姿が見られるはずだ。

 なお、イタリアチームへの加入となるが、昨年までのチーム ヨーロッパカー時代同様、生活の拠点はフランスに置く。トレーニング環境を変えずに走れることもプラスに働きそうだ。

総合エース候補たちが始動

ツアー・ダウンアンダー第2ステージの上りスプリントでディエゴ・ウリッシ(左)が2位に入った=2016年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADAツアー・ダウンアンダー第2ステージの上りスプリントでディエゴ・ウリッシ(左)が2位に入った=2016年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIワールドツアー初戦のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア、1月17・19~24日)には、ディエゴ・ウリッシ、フェデリーコ・ズルロ、マヌエーレ・モーリ(いずれもイタリア)、ルカ・ピベルニク、マルコ・クンプ(ともにスロベニア)、ルイ・メインティス(南アフリカ)、ツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(エチオピア)が出場した。

 総合こそウリッシの11位が最高だったが、そのウリッシが第2ステージの上りスプリントで2位。難所ウィランガ・ヒルでの勝負となるクイーンステージの第5ステージでも4位と活躍した。イタリア勢を中心に臨むと見られるジロ・デ・イタリアを見据え、総合エース候補がシーズンの初めから好走を見せた。

MTN・クベカからランプレ・メリダに加入し、ツアー・ダウンアンダーに出場したルイ・メインティス=2016年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADAMTN・クベカからランプレ・メリダに加入し、ツアー・ダウンアンダーに出場したルイ・メインティス=2016年1月20日 Photo: Yuzuru SUNADA

 総合16位で終えたメインティスは、MTN・クベカから加入した。23歳ながら昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合エースに抜擢され、総合10位と健闘。新たなチームでもグランツールを中心にシーズンを送ると見られ、ターゲットはツールになると公言している。また、昨年はリエージュ~バストーニュ~リエージュでも終盤にアタックするなど見せ場を作って11位に入っており、クラシックレースでの上位進出にも期待が膨らむ。

 ダウンアンダーと同様、シーズン開幕戦として注目されたアルゼンチンでのツール・ド・サンルイス(1月18~24日、UCI2.1)には、マッティーア・カッタネオ、ダヴィデ・チモライ、ロベルト・フェラーリ(いずれもイタリア)、ヤン・ポランツェ、マテイ・モホリッチ(ともにスロベニア)、イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ)が参戦。山岳ステージで上位フィニッシュを繰り返したコシェヴォイが総合5位に入っている。

伝統のチームに若手が充実

 ランプレがスポンサーを務めるこのチームがトップシーンに参入したのは1990年。名実ともにプロトンの古豪だ。これまで、2001年にジルベルト・シモーニ(イタリア)、2004年にはダミアーノ・クネゴ(イタリア、現・NIPPO・ヴィーニファンティーニ)がジロを制し、いまもなおイタリアのトップチームとして走り続けている。

エチオピア人のツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(先頭)ら多国籍な顔ぶれのランプレ・メリダ =ツアー・ダウンアンダー第1ステージ、2016年1月19日 Photo: Yuzuru SUNADAエチオピア人のツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(先頭)ら多国籍な顔ぶれのランプレ・メリダ =ツアー・ダウンアンダー第1ステージ、2016年1月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、近年はチームの国際化が進んでいる。今年は所属選手が24人と、UCIワールドチームで最も小規模だが、メンバーは11カ国で構成され、多国籍チームとしての色合いが強い。地元イタリアはもちろん、東欧・アジア・アフリカの有力選手たちをそろえている点は、メーンスポンサーのランプレ社と、スポンサードと同時にバイク供給を行うメリダ社の世界戦略にリンクしていることをうかがわせる。

 今シーズンに向けた戦力補強を見ると、31歳の新城、27歳のマルコ・クンプ(スロベニア)を除く4選手がチーム創設後に誕生した1992~1994年生まれの若い選手。1992年生まれのメインティスの実績が一歩抜けている印象だが、将来性を加味したスカウティングは今後のチームスタイルに大きな影響を与えそうだ。

2015年のツール・ド・フランスに総合エースとして臨んだルイ・コスタ=2015年7月14日 Photo: Yuzuru SUNADA2015年のツール・ド・フランスに総合エースとして臨んだルイ・コスタ=2015年7月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年から継続して所属する選手では、ルイ・コスタ(ポルトガル)の存在を忘れてはならない。2013年の世界王者は、現チーム入り以降目標としているツールでの結果を残せずにいるが、ステージレースとクラシックレースではしっかりと上位に食い込んでいる。今年もビッグレースで表彰台に立つシーンがたびたび見られるはずだ。そして、今年こそ好成績が欲しいツールは、メインティスとのダブルエース態勢で戦うことになりそうだ。

 スプリンターでは、昨年のジロ2勝のサーシャ・モドロ、昨年のパリ~ニースで第5ステージを制し、その後のミラノ~サンレモでも8位に食い込んだダヴィデ・チモライ(ともにイタリア)が主軸となる。ベテランのロベルト・フェラーリ(イタリア)も控え、勝利量産を狙う。

■ランプレ・メリダ 2014-2015 選手動向

【残留】
マッテーオ・ボーノ(イタリア)
マッティーア・カッタネオ(イタリア)
ダヴィデ・チモライ(イタリア)
ヴァレリオ・コンティ(イタリア)
マリオ・コスタ(ポルトガル)
ルイ・コスタ(ポルトガル)
クリスティアン・ドゥラセク(クロアチア)
フェン・チュンカイ(台湾)
ロベルト・フェラーリ(イタリア)
ツガブ・ゲブレマリアム・グルマイ(エチオピア)
イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ)
サーシャ・モドロ(イタリア)
マヌエーレ・モーリ(イタリア)
プシェメスワフ・ニエミエツ(ポーランド)
ルカ・ピベルニク(スロベニア)
ヤン・ポランツェ(スロベニア)
ディエゴ・ウリッシ(イタリア)
シュー・ガン(中国)
 
【加入】
新城幸也(日本) ←チーム ヨーロッパカー
マルコ・クンプ(スロベニア) ←アドリアモービル
ルイ・メインティス(南アフリカ) ←MTN・クベカ
マテイ・モホリッチ(スロベニア) ←チーム キャノンデール・ガーミン
シモーネ・ペティッリ(イタリア) ←ウニエウロ・ウィリエール
フェデリーコ・ズルロ(イタリア) ←ユナイテッドヘルスケア プロサイクリングチーム
 
【退団】
ニッコロ・ボニファジオ(イタリア) →トレック・セガフレード
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) →モビスター チーム
ルーベン・プラサ(スペイン) →オリカ・グリーンエッジ
フィリッポ・ポッツァート(イタリア) →サウスイースト・ベネズエラ
マクシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン) →エティックス・クイックステップ
ホセロドルフォ・セルパ(コロンビア) →引退
ラファエル・バルス(スペイン) →ロット・ソウダル

今週の爆走ライダー-ルイ・メインティス(南アフリカ、ランプレ・メリダ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2013年のUCIロード世界選手権。アンダー23(23歳未満)ロードの終盤、単独でトップを追走したその走りは、見る者に十分なインパクトを与えた。追いつくことができず銀メダルに終わったが、本人も満足の快走劇。そのときの王者はモホリッチ。奇しくも、互いの移籍先でチームメートとなった。

 プロ2年目の2014年シーズンからは、出場するレースでは次々と上位フィニッシュ。同年のブエルタでグランツール初出場を果たしたが、大会前には総合上位入りするのではないかとの前評判さえあった。その勢いは昨シーズンも維持。リエージュで見せた粘りやブエルタで証明した力は、南アフリカはもとより、アフリカ大陸のサイクリング界の“可能性”をも体現している。

2015年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合10位に入ったルイ・メインティス =2015年9月6日 Photo: Yuzuru SUNADA2015年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合10位に入ったルイ・メインティス =2015年9月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 筆者は昨年のブエルタ閉幕後、スペイン・マドリードの空港で彼と遭遇し、しばし語り合った。当初は前所属のMTN・クベカ(現ディメンションデータ)との契約延長を予定していたが、それを撤回してのランプレ・メリダへの移籍。これについて、「UCIワールドチームから2年契約のオファーが届いたと同時に、シーズン中はイタリアを拠点としているから、環境を変えずとも名だたるチームに行けることが魅力的だったんだ」と理由を語ってくれた。そして「走りのスタイルは変わらないし、もっと強くなるよ。ブエルタ総合10位は大きな自信になったんだ」と続けた。

 突然話しかけた日本人にも丁寧に応じる優しさと、身長173cmの小柄な体躯からみなぎる自信。23歳という若さも加味すると、この先、強くなる以外の道は考えられない。この移籍がさらなる転機となるのか、それが今年1年で明かされることになる。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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