女子U23で史上初のメカニカルドーピングが発覚ベルギー期待の21歳ヴァンアールトが世界王者に UCIシクロクロス世界選手権

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 シクロクロス2015-16シーズンの世界王者を決めるUCI(国際自転車競技連合)シクロクロス世界選手権2016が1月30、31日、ベルギーのヒュースデン=ゾルダーで開催され、男子エリートでは地元期待の21歳、ワウト・ヴァンアールトが初優勝を飾った。2人が出場した日本勢はともに完走を逃し、小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)が54位、竹之内悠(Toyo Frame)が55位だった。

男子エリートのポディウム。左から2位ファンデルハール、優勝ヴァンアールト、3位パウエルス Photo: UCI / Graham Watson男子エリートのポディウム。左から2位ファンデルハール、優勝ヴァンアールト、3位パウエルス Photo: UCI / Graham Watson

豪雨に見舞われた難コース

 今大会の舞台は、モータースポーツのビッグレースでもおなじみのゾルダーサーキット。起伏に富んだレイアウトは、例年シクロクロスの会場としても活用される。2015-16シーズンは、昨年12月26日のワールドカップ第5戦が同地で行われ、その時は前回の世界選手権覇者であるマテュー・ファンデルポール(オランダ)が優勝している。

 シクロクロスのコースは土、芝といった不整地が中心で、一転舗装路を通過する場所もあり、路面が一定しないのが特徴。ゾルダーサーキットの1周3260mの周回コースは特に路面コンディションが安定せず、雨が降ろうものなら、一気に重くなる土と、各所に表れるぬかるみが選手たちを苦しめる。

 今大会は初日から雨続きとなり、ウェットコンディションでのレースとなった。どのカテゴリーでもコーナーでのスリップによる落車が相次ぎ、改めて世界選手権にふさわしい難コースであることが証明された。

男子エリート序盤の先頭争い。前からヴァンアールト、ファンデルハール、ファンデルポール Photo: UCI / Graham Watson男子エリート序盤の先頭争い。前からヴァンアールト、ファンデルハール、ファンデルポール Photo: UCI / Graham Watson

ベルギー勢とオランダ勢の覇権争い

 大会の最後を飾った男子エリート(規定60分)は、ベルギー勢とオランダ勢の勝負になると戦前から予想された。前回大会で優勝を争ったヴァンアールトとファンデルポールが今年も両国の主軸だ。

 1周目から早くもこの2人が先頭に立った。これに前回の銅メダリスト、ラース・ファンデルハール(オランダ)が加わって主導権争いを展開。やがて3人のペースが落ち着くと、後続の選手たちも次々に合流した。その中には、キャリア最終シーズンとして最後の世界選手権に挑むシクロクロス界の“レジェンド”スヴェン・ネイス(ベルギー)の姿も。4周目を終える頃には先頭パック(集団)は8人に膨らみ、ベルギー5人、オランダ3人の構図となった。本来は個人の脚力とテクニックが問われるシクロクロスだが、今回はチーム戦の様相もうかがえる。

一時は優勝争いにも加わったスヴェン・ネイス Photo: UCI / Graham Watson一時は優勝争いにも加わったスヴェン・ネイス Photo: UCI / Graham Watson

 大きな動きが起こったのは5周目。急坂区間を前に、ファンデルポールがコーナリングでミス。勢いを失ったところに突っ込んだヴァンアールトの前輪スポークに、ファンデルポールの足が嵌ってしまった。これで両者は大きくタイムロス。その間にファンデルハールがペースアップし、先頭パックが完全に崩壊。一気にファンデルハールの独走態勢となった。

 快調に飛ばすファンデルハールは、後続との差を一時は10秒以上に広げた。しかし、再び勢いを取り戻したヴァンアールトがライバルを次々とパスしながら徐々にタイム差を縮め、7周目に入りファンデルハールに合流。一方、ファンデルポールは追撃態勢に入りたいところだったが、下りコーナーでバランスを崩すなど、思うようにリズムがつかめない。そのまま、優勝争いはファンデルハールとヴァンアールトの一騎打ちとなった。

 最終の8周目に入っても両者は譲らず、互いにリードを奪おうとうかがいながらコースを進む。下りコーナーでファンデルハールが絶妙なバイクコントロールを見せたが、その直後の上り区間でヴァンアールトがアタック。バイクを担いでのランニングも織り交ぜながらファンデルハールを突き放した。そのまま最終コーナーをクリアすると、優勝を確信。何度も拳を握りしめ、フィニッシュラインまでのウイニングライドに浸った。

男子エリートで悲願の初優勝を果たしたワウト・ヴァンアールト Photo: UCI / Graham Watson男子エリートで悲願の初優勝を果たしたワウト・ヴァンアールト Photo: UCI / Graham Watson

 ジュニア時代から世代のトップを走り続けてきたヴァンアールト。2年前にはアンダー23(23歳未満)で世界一を手中に収めているが、エリートでは初のマイヨアルカンシエルを獲得した。エリートとしてルーキーシーズンだった前回は、同い年のファンデルポールの後塵を拝し銀メダルに終わっていた。今シーズンはワールドカップで総合優勝を収めたものの、後半戦に入り調子が下降。たびたびファンデルポールに敗れていただけに、見事に雪辱した格好となった。

最後の世界選手権を戦ったスヴェン・ネイス  Photo: UCI / Graham Watson最後の世界選手権を戦ったスヴェン・ネイス  Photo: UCI / Graham Watson

 終盤に後れを取ったファンデルハールは、前回に続いて勝利を逃した。自信のあるスプリント勝負に持ち込むことができず、銀メダルを受け取ったポディウムでは悔しさを隠せなかった。

 3位にはケヴィン・パウエルス(ベルギー)が入り、“レジェンド”ネイスは4位。ファンの歓声に応え、両手を振りながらフィニッシュし、最後の世界選手権を終えた。また、2連覇を狙ったファンデルポールは5位に終わった。

■UCIシクロクロス世界選手権 男子エリート結果
1 ワウト・ヴァンアールト(ベルギー) 1時間5分52秒
2 ラース・ファンデルハール(オランダ) +5秒
3 ケヴィン・パウエルス(ベルギー) +35秒
4 スヴェン・ネイス(ベルギー) +39秒
5 マテュー・ファンデルポール(オランダ) +47秒
6 ダヴィド・ファンデルポール(オランダ) +1分3秒
54 小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロス) -2Lap
55 竹之内悠(Toyo Frame) -2Lap

女子エリートは22歳のデヨンフが初優勝

 1月30日に行われた女子エリート(規定40分)では、4選手が終盤まで熾烈な優勝争いを展開。最後は、アタックを成功させ独走に持ち込んだタリタ・デヨンフ(オランダ)が初のマイヨアルカンシエルを獲得した。スタートでミスを犯し、後方からのレースを余儀なくされたが、1人また1人と選手を抜き去り、トップへと躍り出る本人も驚きの勝利となった。

 2位にはカロリン・マーニ(フランス)、優勝候補筆頭に挙げられていたサンネ・カント(ベルギー)は3位に終わった。日本勢唯一の参戦となった與那嶺恵理(フォルツァ・ヨネックス)は、7分36秒差の34位で完走を果たした。

女子エリート優勝のタリタ・デヨンフ Photo: UCI / Graham Watson女子エリート優勝のタリタ・デヨンフ Photo: UCI / Graham Watson
女子エリートのポディウム。左から2位マーニ、優勝デヨンフ、3位カント Photo: UCI / Graham Watson女子エリートのポディウム。左から2位マーニ、優勝デヨンフ、3位カント Photo: UCI / Graham Watson

■UCIシクロクロス世界選手権 女子エリート結果
1 タリタ・デヨンフ(オランダ) 41分03秒
2 カロリン・マーニ(フランス) +14秒
3 サンネ・カント(ベルギー) +24秒
4 ソフィ・デボエ(オランダ)
5 ニッキ・ハリス(イギリス) +32秒
6 サブリナ・ストゥルティエンス(オランダ) +36秒
34 與那嶺恵理(フォルツァ・ヨネックス) +7分36秒

女子アンダー23で坂口聖香が21位

男子ジュニア優勝のイェンス・デッケル Photo: UCI / Graham Watson男子ジュニア優勝のイェンス・デッケル Photo: UCI / Graham Watson

 男女のエリートのほか、男女合わせて3つの年代別カテゴリーでマイヨアルカンシエルが争われた。

 大会最初の競技となった男子ジュニア(規定40分)では、イェンス・デッケル(オランダ)が優勝。日本から出場の織田聖(Above Bike Store Cycle Club)は、クラッシュやパンクが重なり6分39秒差の59位。

 今回から設けられた女子アンダー23(規定40分)は、エヴィ・リチャーズ(イギリス)が圧勝。坂口聖香(パナソニックレディース)は終盤に順位を上げ、4分27秒差の21位となった。

 大会2日目の午前中に実施された男子アンダー23(規定50分)は、エリ・イゼルビット(ベルギー)が、アダム・トゥパリック(チェコ)との一騎打ちを制し優勝。沢田時(ブリヂストンアンカー)は、4分7秒差の34位だった。

女子アンダー23優勝のエヴィ・リチャーズ Photo: UCI / Graham Watson女子アンダー23優勝のエヴィ・リチャーズ Photo: UCI / Graham Watson
男子ジュニアのポディウム。2位クリスピン、優勝デッケル、3位ボネ Photo: UCI / Graham Watson男子ジュニアのポディウム。2位クリスピン、優勝デッケル、3位ボネ Photo: UCI / Graham Watson

■UCIシクロクロス世界選手権 男子ジュニア結果
1 イェンス・デッケル(オランダ) 43分5秒
2 ミカエル・クリスピン(フランス) +35秒
3 トマ・ボネ(フランス) +1分0秒
4 ケヴィン・クーン(スイス) +1分17秒
5 トーマス・ピドコック(イギリス) +1分22秒
6 ヤコブ・ドリゴーニ(イタリア) +1分27秒
59 織田聖(Above Bike Store Cycle Club) +6分39秒

■UCIシクロクロス世界選手権 女子アンダー23結果
1 エヴィ・リチャーズ(イギリス) 41分34秒
2 ニコラ・ノスコヴァ(チェコ) +35秒
3 マウド・カプゼインス(オランダ) +47秒
4 シーナ・フレイ(スイス) +53秒
5 ナジャ・ハイグル(オーストリア) +1分30秒
6 エレン・ノーブル(アメリカ) +1分42秒
21 坂口聖香(パナソニックレディース) +4分27秒

■UCIシクロクロス世界選手権 男子アンダー23結果
1 エリ・イゼルビット(ベルギー) 51分18秒
2 アダム・トゥパリック(チェコ) +1秒
3 クインテン・ヘルマンス(ベルギー) +5秒
4 ティース・アールツ(ベルギー) +11秒
5 クレメント・ルッソ(フランス) +12秒
6 フェリペ・オルツ(スペイン) +15秒
34 沢田時(ブリヂストンアンカー) +4分7秒

女子アンダー23のポディウム。左から2位ノスコヴァ、優勝リチャーズ、3位カプゼインス Photo: UCI / Graham Watson女子アンダー23のポディウム。左から2位ノスコヴァ、優勝リチャーズ、3位カプゼインス Photo: UCI / Graham Watson
男子アンダー23のポディウム。左から2位トゥパリック、優勝イゼルビット、3位ヘルマンス Photo: UCI / Graham Watson男子アンダー23のポディウム。左から2位トゥパリック、優勝イゼルビット、3位ヘルマンス Photo: UCI / Graham Watson

ベルギーの女子選手が電動モーターを不正使用

 UCIは30日に声明を出し、同日に行われた女子アンダー23のレースで「技術的な詐欺行為」があったことを明らかにした。電動モーターによる補助動力の不正使用を意味しており、さらに調査を進めていくとしている。表彰台に上がった選手は該当していないことも明記している。

 ベルギーのスポーツメディア「Sporza」が報じたところによると、技術的詐欺が行われたバイクはフェムケ・ヴァンデンドリーシュ(ベルギー)のものだとした。今シーズンはベルギー選手権とヨーロッパ選手権で同カテゴリーを制した実力者。今大会は、終盤のメカトラブルで途中リタイアしていた。

 UCIコーディネーターのピーター・ヴァンデンアベール氏は、「コミッセールがスタート時とレース中のピットでチェックを行い、機械的な不正行為を発見した」と説明。また、かつてシクロクロスで女王に君臨したマリアンヌ・フォス(ラボ・リヴ ウィメンサイクリングチーム)は、「ライダー(ヴァンデンドリーシュ)の意思だったのかを確認する必要がある。誰かが、例えば彼女の身近な人物による行為である可能性もある」と指摘し、慎重な調査を求めている。

 これを受け、ヴァンデンドリーシュが取材に応じ、涙ながらに自らによる機材ドーピングを否定。不正行為がなされたバイクは友人のものだと述べた。さらに、「私が友人に譲ったものであり、日頃私が使用しているバイクと同じものだ。トラックに一緒に搭載していたため、メカニックが私のバイクと勘違いしたのだと思う」と経緯を推察している。

 サイクルスポーツ史上初となったメカニカルドーピング発覚。UCIによる真相解明が待たれる。

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