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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<143>オリカ・グリーンエッジが絶好のシーズンイン ジャイアント・アルペシンの選手は次々に手術

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 いよいよ開幕したサイクルロードレース2016年シーズン。日本国内の自転車界はアジア自転車競技選手権に湧いているが、海外に目を向けると開幕戦としておなじみとなったツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)、ツール・ド・サンルイス(アルゼンチン)で激戦が繰り広げられた。今回は、ダウンアンダーで最高のシーズンインを果たしたオリカ・グリーンエッジのチーム展望と合わせ、サンルイスや、トレーニングキャンプで交通事故に見舞われたチーム ジャイアント・アルペシンの続報もお届けする。

ツアー・ダウンアンダーでステージ2勝ずつ挙げたオリカ・グリーンエッジのカレブ・イーウェンとサイモン・ゲランス。ゲランスは4度目の総合優勝を果たした Photo: Yuzuru SUNADAツアー・ダウンアンダーでステージ2勝ずつ挙げたオリカ・グリーンエッジのカレブ・イーウェンとサイモン・ゲランス。ゲランスは4度目の総合優勝を果たした Photo: Yuzuru SUNADA

主役になったゲランスとイーウェン

 1月17日から24日まで開催された、UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアー第1戦ツアー・ダウンアンダー。秒差の勝負を制し総合優勝を収めたのは、名実ともにオリカ・グリーンエッジのエースであるサイモン・ゲランス(オーストラリア)。第3、4ステージ連勝が奏功し、4度目の栄冠を勝ち取った。

 さらには、弱冠21歳のスプリンター、カレブ・イーウェン(オーストラリア)も本領発揮。大会初日のUCI非公認クリテリウム「ピープルズ・チョイス・クラシック」も含めると、ステージ3勝。今大会の参加スプリンターでは、ナンバーワンであることを実証した。

大会4度目の総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(ツアー・ダウンアンダー2016第6ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA大会4度目の総合優勝を果たしたサイモン・ゲランス(ツアー・ダウンアンダー2016第6ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 自国開催のレースだけあって、オリカ・グリーンエッジは毎年ベストメンバーを組んで臨んでいる。その観点から、今シーズンはゲランスとイーウェンがチームの軸となっていくと見てよさそうだ。

 ゲランスは昨年、シーズンイン直前にマウンテンバイクトレーニングで落車し腕を骨折。復帰目前の春にも同様の負傷に見舞われ、シーズンインが4月にずれ込んだ。得意とするアルデンヌクラシックでは結果を残せず、その後のツール・ド・フランスでも第3ステージで落車に巻き込まれリタイア。9月の世界選手権では6位入賞を果たしたが、この時はチームメートのマイケル・マシューズ(オーストラリア)との連係ミスがあるなど、散々な1年となってしまった。

 再起をかける今シーズンは、最高の形でスタートを切った。今年は、アルデンヌクラシックとリオデジャネイロ五輪をメーンターゲットに戦う。

 ジュニア時代から大器と言われ、同国自転車界の至宝とされているイーウェン。ダウンアンダーで見せた低い姿勢からのスプリントは、観る者に衝撃を与えた。165cmと、プロトン内でひときわ小柄な体躯をカバーする特徴的なライディングフォームで、これからファンを魅了し続けていくことだろう。

顔がハンドルバーの高さまで下がるほどの前傾姿勢でスプリントするカレブ・イーウェン(ツアー・ダウンアンダー2016第1ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA顔がハンドルバーの高さまで下がるほどの前傾姿勢でスプリントするカレブ・イーウェン(ツアー・ダウンアンダー2016第1ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年は、ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージでグランツール初勝利。着々と成長の階段を上っている。チームはイーウェンに対し、引き続き育成を重視したプログラムを組む方針で、レース数をコントロールしながら勝利を狙っていくこととなる。予定では、5月のジロ・デ・イタリアに出場。スプリンターが主役となるであろう、10月のUCIロード世界選手権(カタール)は、今年からUCIワールドチーム所属選手にも門戸が開かれる、アンダー23(23歳未満)カテゴリーでのマイヨ・アルカンシエルを目指す可能性を示唆している。

グランツール総合争いも視野に

 オリカ・グリーンエッジといえば、スプリントとクラシックがお家芸。2012年のチーム発足当時から、この2つで勝利を量産してきた。

上れるスプリンターの代表格、マイケル・マシューズ(ジロ・デ・イタリア2015第3ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA上れるスプリンターの代表格、マイケル・マシューズ(ジロ・デ・イタリア2015第3ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 イーウェンと並んでエーススプリンターを務めるのがマシューズ。平坦だけでなく登坂力もあり、現在のプロトンにおける上れるスプリンターの代表格。脚質的に、終盤に厳しい上りが待つミラノ~サンレモやアムステル・ゴールドレースが狙い目。また、昨年は世界選手権で銀メダルを獲得するなど、ビッグレースでの好成績も光った。

 今シーズンは、チーム ジャイアント・アルペシンからルカ・メズゲッツ(スロベニア)が移籍加入。イーウェンを含む3人のスプリンターが、どのようなバランスを図りながらシーズンを送るのかも注目だ。

グランツールで総合を争える実力を示したヨアンエステバン・チャベス(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第6ステージ) Photo: Yuzuru SUNADAグランツールで総合を争える実力を示したヨアンエステバン・チャベス(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第6ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年のブエルタでは、ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア)が総合5位という成績を収めた。ここ数年、グランツールでの総合上位入りを視野に入れて進めてきたチーム強化が、少しずつ実り始めている。今年のグランツール路線は、ジロとブエルタがチャベス、ツールはアダムとサイモンのイェーツ兄弟(イギリス)が総合エースを務めることで決まっている。

 彼らのアシストとして、ルーベン・プラサ(スペイン)をランプレ・メリダから、アメツ・チュルカ(スペイン)をカハルラル・セグロスRGAからそれぞれ獲得。実績豊富なベテランが若きオールラウンダーを盛り立てる。

 ジュニア時代からトラック種目で鍛えられた選手が多いのも、このチームの特徴。特にTTスペシャリストが多く、チームTTで力を発揮する点も見逃せない。ルーク・ダルブリッジやマイケル・ヘップバーン(ともにオーストラリア)、ベテランのスヴェイン・タフト(カナダ)らを中心に、世界選手権ではチームTTでの初優勝を狙ってくることだろう。

■オリカ・グリーンエッジ 2015-2016 選手動向

【残留】
ミヒャエル・アルバジーニ(スイス)
サム・ビューリー(ニュージーランド)
ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア)
マウヌス・コー・ニールセン(デンマーク)
ミッチェル・ドッカー(オーストラリア)
ルーク・ダルブリッジ(オーストラリア)
カレブ・イーウェン(オーストラリア)
サイモン・ゲランス(オーストラリア)
マシュー・ヘイマン(オーストラリア)
マイケル・ヘップバーン(オーストラリア)
ダミアン・ホーソン(オーストラリア)
ダリル・インピー(南アフリカ)
イェンス・クークレール(ベルギー)
マイケル・マシューズ(オーストラリア)
クリスチャン・メイヤー(カナダ)
スヴェイン・タフト(カナダ)
アダム・イェーツ(イギリス)
サイモン・イェーツ(イギリス)
 
【加入】
アレクサンダー・エドモンドソン(オーストラリア) ←チーム ジャイコ・AISワールドツアーアカデミー アンダー23(アマチュア)
ジャック・ヘイグ(オーストラリア) ←チーム ジャイコ・AISワールドツアーアカデミー アンダー23(アマチュア)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク) ←ティンコフ・サクソ
ルカ・メズゲッツ(スロベニア) ←チーム ジャイアント・アルペシン
ルーベン・プラサ(スペイン) ←ランプレ・メリダ
ロバート・パワー(オーストラリア) ←チーム ジャイコ・AISワールドツアーアカデミー アンダー23(アマチュア)
アメツ・チュルカ(スペイン) ←カハルラル・セグロスRGA
 
【退団】
アダム・ブライス(イギリス) →ティンコフ
サイモン・クラーク(オーストラリア) →キャノンデール プロサイクリングチーム
リー・ハワード(オーストラリア) →イアム サイクリング
ブレット・ランカスター(オーストラリア) →引退(チーム スカイ・スポーツディレクター就任)
キャメロン・メイヤー(オーストラリア) →ディメンションデータ
イェンス・モウリス(オランダ) →ドラパック プロフェッショナルサイクリング
イヴァン・サンタロミータ(イタリア) →スカイダイブドバイ プロサイクリングチーム・アルアハリクラブ
ピーテル・ウイーニング(オランダ) →ロームポット・オランジェペロトン

サンルイスはキンタナ兄弟が総合ワン・スリー

 1月18日から24日まで、アルゼンチンで開催されたツール・ド・サンルイス(UCI2.1)は、山岳ステージで好走を見せたダイエルウベルネイ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)がプロキャリア初の総合優勝。兄のナイロアレクサンデル・キンタナも総合3位に入り、兄弟での総合表彰台確保に成功した。

兄のナイロアレクサンデル・キンタナ(先頭)と弟でチームメートのダイエルウベルネイ・キンタナが好走(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo:  Movistar Team兄のナイロアレクサンデル・キンタナ(先頭)と弟でチームメートのダイエルウベルネイ・キンタナが好走(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo: Movistar Team
総合表彰台に上がった(左から)エドゥアルド・セプルベダ、ダイエルウベルネイ・キンタナ、ナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo:  Movistar Team総合表彰台に上がった(左から)エドゥアルド・セプルベダ、ダイエルウベルネイ・キンタナ、ナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo: Movistar Team

 ダイエルウベルネイは、大会最初の山岳ステージだった第4ステージ(140km)で、優勝のエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、フォルチュネオ・ヴィタルコンセプト)から1分31秒差の4位に入ると、クイーンステージの第6ステージ(159.5km)でミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ プロチーム)、兄のナイロアレクサンデルと熾烈なステージ優勝争い。ステージこそロペスに譲ったが、自身も3位。第1ステージのチームTT(21km)で2位に入った際の貯金を生かして総合トップに浮上し、そのままリードを守り抜いた。地元アルゼンチンで快走を見せたセプルベダは総合2位だった。

 昨年のこの大会でブレイクしたスプリンターのフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)は、今年も第2ステージで勝利。前日の第1ステージでもチームTTでの勝利に貢献している。

昨年の大会でブレイクしたフェルナンド・ガヴィリアが今年もステージ優勝を挙げた(ツール・ド・サンルイス2016第2ステージ) ©Etixx - Quick-Step / Tim de Waele昨年の大会でブレイクしたフェルナンド・ガヴィリアが今年もステージ優勝を挙げた(ツール・ド・サンルイス2016第2ステージ) ©Etixx - Quick-Step / Tim de Waele

 この大会にはNIPPO・ヴィーニファンティーニも出場し、山本元喜が第2ステージでエスケープ。ラスト500mまで逃げ続け、あわやステージ優勝かという見せ場を作った。また、第5ステージでも終盤にアタックを見せるなど好走を披露。最終的にはトップから49分45秒差の113位で終えたが、充実した内容で収穫の多いレースとなった。

 なお、第5ステージ残り40km付近で、約40人が絡む大クラッシュが発生。メーン集団先頭を走っていたアドリアーノ・マローリ(イタリア、モビスター チーム)が路面のくぼみにタイヤを取られ落車し、後続が次々と巻き込まれてしまった。これにより、マローリが頭部を強打し、医療的措置による昏睡状態に置かれたほか、ガヴィリアが上腕部の骨折、ロドリゴ・コントレラス(コロンビア、エティックス・クイックステップ)が右膝周辺を15針縫う裂傷を負うなど、多くの選手が負傷する事態となった。マローリはすでに回復傾向にあり、首都ブエノスアイレス市内の病院へと移された。

デゲンコルプはレース復帰の見通し立たず

 23日にスペイン・カルペで起きたチーム ジャイアント・アルペシンの6選手を巻き込んだ交通事故。選手たちはトレーニングキャンプでのライド中に起きたアクシデントによって大けがを負った。

 チーム発表によると、ワレン・バルギル(フランス)は舟状骨(手首)骨折、マックス・ヴァルシャイト(ドイツ)は脛骨(すね)と手の親指を骨折、フレドリク・ルドヴィグソン(スウェーデン)は肋骨の打撲と複数の擦過傷、ラモン・シンケルダム(オランダ)は肩甲骨骨折と複数の擦過傷。4選手とも帰国しており、バルギルとヴァルシャイトは手術に臨む見込みだ。

ジョン・デゲンコルプ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ) Photo: Yuzuru SUNADAジョン・デゲンコルプ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 けがの度合いが特にひどかった選手のうち、チャド・ハガ(アメリカ)は頸部(首)と顎の裂傷の縫合手術を終え、数日中に眼窩骨折の手術を受ける。ジョン・デゲンコルプは、大腿部裂傷と左手人差し指の縫合、前腕部骨折の手術を相次いで受けた。

 イタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙が報じたところによると、切断寸前だったデゲンコルプの人差し指は、形成外科の名医であるペドロ・カバダス医師が執刀したという。今後の回復具合を見ながらドイツへ帰国する予定。レース復帰の見通しは立っておらず、昨年大活躍したクラシックシーズンを棒に振る可能性が高い。

 なお、クルマを逆走運転し事故を引き起こした73歳のイギリス人女性は、起訴されたのち釈放されている。

今週の爆走ライダー-ダイエルウベルネイ・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 プロキャリア初の総合優勝となったツール・ド・サンルイス。セプルベダとの総合20秒差という争いは、ステージ優勝こそなかったが終始安定した走りが勝因となった。

 第5ステージでチームメートのマローリが落車リタイア。兄のナイロアレクサンデルも巻き込まれるなど、チームには動揺が走った。「ナイロが落車負傷したことによって、総合争いの責任が私にめぐってきた」と当時の状況を振り返る。今シーズンから同僚となったダニエル・モレノ(スペイン)がアルゼンチンに自宅を持ち、土地勘があったことは大きな味方になった。モレノのアドバイスを聞きながらレースを進めたという。

 頂上フィニッシュの第6ステージでは、同国の友人であるロペスとキンタナ兄弟がデッドヒート。兄のアシストを受け、しっかりと走り切った先にはリーダージャージが待ち受けていた。

初の総合優勝を挙げたダイエルウベルネイ・キンタナ(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo:  Movistar Team初の総合優勝を挙げたダイエルウベルネイ・キンタナ(ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ) Photo: Movistar Team

 すでにグランツールで結果を残してきた偉大な兄の存在は、何ひとつ負担になっていない。むしろ強くなるための原動力だと言い切る。「ナイロは私の目標だ。彼が達成してきたことであれば、私にもできるのではないかと思うんだ。そのために、一歩一歩進んでいくつもりだよ」。

 勝つ喜びを知った弟。それを支えた兄。コンビネーションが機能した今、これからのトップシーンで脅威となる可能性は高い。キンタナ兄弟の快進撃が、まさに始まったと言えそうだ。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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