工具はともだち<85>高強度のレンチを作り出す「塑性加工」 工具の作り方<その1>

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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鍛造成形によるロングめがねレンチ(KTC)鍛造成形によるめがねレンチ(KTC)

 これまで様々な工具の選び方をご紹介してきましたが、皆さんそもそも工具ってどうやって作られているかご存知ですか? ということで、今回から数回にわたって工具の作り方についてお話しします。工具の種類によって作り方は色々ありますが、まずは皆さんになじみの深いスパナやめがねレンチの作り方をご紹介します。

 レンチ類の工程には大きく4つあり、レンチの形をつくる「塑性(そせい)加工」、精度を出したり仕上げをしたりする「機械加工」、工具に硬さやねばりを出す「熱処理」、そして防錆などのために施される「表面処理」があります。その中で、レンチの形を作る「塑性加工」について詳しく説明します。

自転車用工具は強度が重要

薄口コンビネーションレンチ(KTC)薄口コンビネーションレンチ(KTC)

 塑性加工とは、材料(工具の場合は工具用の鋼材)が変形して戻らない領域(塑性域)まで力を加えることで成形する製法をいいます。ただ、一般的にスパナやめがねレンチの場合、こうした塑性加工以外にもプレスで鉄板を打ち抜くものや、レーザー加工機で切り抜かれる場合もあります。

 こうしたものは組立家具などにあらかじめ付属してくるアイテムが身近ですが、自転車用工具にも結構見受けられます。これらは比較的安価に作れる工法であることと、厚みのある工具で対応できない場合には便利なのですが、やはり強度面で難があります。そのため、レンチ類には「鍛造」(たんぞう)という塑性加工が用いられることが一般的です。

密度を高めて強度を引き出す鍛造成形

 読者の皆さんは案外、鋳物(いもの)、つまり鋳造(ちゅうぞう)で作られていると思われている方も多いのではないかと思いますが、スパナやめがね等のレンチ類に鋳造が使われることは、まずありません。

鍛造成形によるデザインペダルレンチ(KTC)鍛造成形によるデザインペダルレンチ(KTC)

 鋳造はドロドロに溶かした鉄を鋳型に流し込んで形を作りますが、鍛造は一つの鉄の塊を叩いて形を作ります。鍛造は鉄の塊を叩く事で密度を高めていますので、同じ形を鍛造と鋳造で作ったとすると鍛造の方が高密度でより強くなります。薄さと強さの両方を求められるレンチにとって、これは大きな違いなのです。

ソケットの金属繊維の流れソケットの金属繊維の流れ

 さらに鍛造の大きな利点は「金属繊維」が断ち切られる事なく、形状に沿って流れることです。「金属繊維」とは金属の糸のことではなく、簡単に言えば金属組織のつながりや流れのことで、「鍛流線」(たんりゅうせん)とも言い、英語では「ファイバーフロー」と訳されます。鋳造には鍛流線のようなものは無く、鍛造に比べ安価な工法なのですが、もろいため、レンチの生産には高い強度を生み出す鍛造が用いられるのです。

高熱、高圧で最終成形

工具を加工する大型の機械「エアスタンプハンマー」工具を加工する大型の機械「エアスタンプハンマー」

 そして、レンチ類に用いられる鍛造は主に「熱間鍛造」と言われ、鋼材を約1000℃に熱した後に成形します。KTCではこの鍛造に「エアスタンプハンマー」という設備を使用し、約1000tもの圧力を加えて成形しています。硬い金属も熱した上にこれだけの力が加わることで、あっという間にレンチの形状になってしまいます。

 鍛造と鋳造の違い、お解りいただけましたでしょうか。次回はこうしてできた加工品を工作機械で加工する「機械加工」の工程をご紹介します。

Cyclistロゴ入りエプロン付き「デジラチェ工具セット」発売

Cyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShopCyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShop

 CyclistとKTCとのコラボレーションによる自転車メンテナンス向け「オリジナルデジラチェ工具セット」が産経netShopから発売されました。

 デジタル式トルクレンチに、収納用ブローケースや、自転車整備に活躍する5つの付替え用ビットソケット、ソケットホルダー、さらにCyclistとKTCのロゴが入ったオリジナルショートエプロンが付属しています。価格は4万3869円(税込)で、セット内容を別々に購入するよりもグッとお得な設定になっています。

 特にカーボン製のフレームやパーツを使用している方は、ボルトの締め過ぎによる破損リスクも高いため、これを機にデジラチェを導入してみてはいかがですか?(産経デジタル)
→「オリジナルデジラチェ工具セット」商品販売ページ(産経netShop)

重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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