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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<142>リオ五輪男子ロード、日本の出場枠は「2」 ジロ・デ・イタリアのチーム選出で明暗

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 国際自転車競技連合(UCI)が1月18日、今年8月のリオデジャネイロ五輪自転車競技・ロード男子種目の出場枠を発表し、日本はロードレースの2枠を獲得した。日を同じくして、ジロ・デ・イタリアを主催するRCSスポルトは、ジロ・デ・イタリア2016(5月6~29日)のワイルドカード(主催者推薦)4チームを発表した。今回は、両レースに出場する国・地域とチームを紹介し、決定までの経緯に触れていく。

UCIロード世界選手権男子エリートで17位という結果を残し、トップレベルの実力を示した新城幸也(2015年9月27日) Photo: Yuzuru SUNADAUCIロード世界選手権男子エリートで17位という結果を残し、トップレベルの実力を示した新城幸也(2015年9月27日) Photo: Yuzuru SUNADA

個人TTは日本男子の出場ならず

 リオ五輪の自転車競技各種目の出場枠獲得に向けた争いが激しさを増すなか、ロードレースと個人タイムトライアル(TT)の男子ロード種目における出場枠が確定し、UCIから正式に発表された。

 ロードレースの出場枠は、UCIロード世界選手権と同様に、定められた期間内でのUCI国別ポイント順位で決定する。世界選手権との違いは、ポイント獲得対象期間が1年間である点(世界選手権は1月1日~8月中旬が基本)。リオ五輪男子ロード種目の場合は、2015年1月1日~12月31日が対象期間とされ、便宜上「NOCs(Nationality of Competitors)ランキング」と呼ぶ。

5人の出場枠を獲得したコロンビア。UCIロード世界選手権男子エリートでも多くのメンバーをそろえた(2015年9月27日) Photo: Yuzuru SUNADA5人の出場枠を獲得したコロンビア。UCIロード世界選手権男子エリートでも多くのメンバーをそろえた(2015年9月27日) Photo: Yuzuru SUNADA

 決定方法は、まずNOCs世界ランキング1~5位の国・地域に5人、同6~15位の国・地域に4人の出場枠が与えられる。同ランキング16位以下の国・地域は各大陸ランキングに回り、順位に応じてUCIによって割り当てられた出場枠を獲得することになる。日本が該当するアジアは、1位が3枠、2~4位が2枠。

 これらとは別に、2015年のアフリカ、アメリカ、アジアの各大陸選手権上位2カ国・地域に1枠が与えられる。この場合、世界または大陸ランキングによる出場枠に加算することができる(ただし1カ国5人を超えないことが条件)。また、ブラジルには開催国枠として2人の出場が保障される。

 次に個人TTについて。まず、2015年のUCIワールドツアー国別ランキング上位15カ国に1枠与えられる。16位以下の国・地域は、各大陸ランキングに回り、順位に応じてUCIによって割り当てられた出場枠を獲得することになる。アジアは上位2カ国に1枠与えられる。また、昨年のUCIロード世界選手権個人TTで、上位10カ国(10位までに複数の同国選手が入っている場合は、11位以下の最上位国に繰り下げ)に1枠が加算される。この種目における1カ国の最大出場人数は2人。

 これらの方式により、NOCs世界ランキング外だった日本男子は、同アジアランキングに回り、3位になったことでロードレースの2枠が確定。一方で、個人TTの出場権は獲得できなかった。

リオ五輪男子ロードレース出場枠

(カッコ内は個人TT出場枠)
【5人】
スペイン(2)、イタリア(2)、コロンビア(1)、イギリス(1)、ベルギー(1)
 
【4人】
フランス(2)、オランダ(2)、オーストラリア(2)、ドイツ(2)、ノルウェー(1)、ポーランド(2)、ポルトガル(1)、チェコ(2)、スロベニア(1)、スイス(1)
 
【3人】
モロッコ(1)、カナダ(1)、アルゼンチン(1)、イラン(1)、ウクライナ(1)、ロシア(1)、デンマーク(1)
 
【2人】
アルジェリア(1)、南アフリカ、ベネズエラ(1)、アメリカ(2)、ブラジル、カザフスタン(1)、日本、韓国、オーストリア(1)、ベラルーシ(2)、トルコ(1)、リトアニア、エストニア、アイルランド、ラトビア、クロアチア、スウェーデン、ニュージーランド(1)
 
【1人】
エリトリア、エチオピア、ナミビア、ルワンダ、チュニジア、チリ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エクアドル、グアテマラ、メキシコ、プエルトリコ、香港、アラブ首長国連邦、アゼルバイジャン、ブルガリア、ギリシャ、ルクセンブルク、ルーマニア、セルビア、スロバキア

アジア選手権優勝で1枠を得たい日本女子

 なお、女子ロード種目は男子と対象期間が異なり、2015年6月1日~2016年5月31日の獲得ポイントによってランキングが決定する。ロードレースは、NOCs世界ランキング1~5位の国・地域に4枠、同6~13位に3枠、同14~22位に2枠が与えられる。また、アフリカ、アメリカ、アジアの各大陸選手権女子ロードレース優勝国には1枠加算される。

全日本ロードチャンピオンとして2016年を迎えた萩原麻由子 Photo: Sonoko TANAKA全日本ロードチャンピオンとして2016年を迎えた萩原麻由子 Photo: Sonoko TANAKA

 個人TTは、UCI国別ランキング上位15カ国に1枠与えられる。次に、昨年のUCIロード世界選手権個人TTの上位10カ国(10位までに複数の同国選手が入っている場合は、11位以下の最上位国に繰り下げ)に、1枠が加算される。この種目における1カ国の最大出場人数は2人。

 日本女子は現在、206ポイントで世界ランク25位につけているが、22位の台湾とは66ポイントの開きがあることから、1月23日のアジア選手権女子ロードレースで優勝し、1枠獲得は確定させたい状況にある。

古巣での活躍に意気込むポッツァート

 ジロ2016のワイルドカードは、バルディアーニ・CSF、NIPPO・ヴィーニファンティーニ、サウスイースト・ベネズエラ(いずれもイタリア)、ガズプロム・ルスヴェロ(ロシア)が獲得した。

 バルディアーニ・CSFは、前身のコルナゴ・CSFイノックス時代からのジロ常連チーム。所属選手はすべてイタリア人で、今年は17選手が所属。ジロでは最近3年間、毎年ステージ優勝者を輩出しており、各選手の積極性が光っている。2013年には、エースのステファノ・ピラッツィ(イタリア)が山岳賞を獲得。さまざまな実績を見ても、ワイルドカードには順当な選出だ。

 NIPPO・ヴィーニファンティーニはCyclistで既報の通り、昨年に続く2度目の選出。キャプテンでかつてのジロ王者、ダミアーノ・クネゴ(イタリア)を中心としたメンバーで、今年こそ初のステージ優勝を狙う。25歳前後の若い選手が多く、育成面やクリーンな競技姿勢も評価されていると見ていいだろう。昨年メンバー入りした石橋学を筆頭に、窪木一茂、山本元喜、小石祐馬の日本人選手は、実力で9人のロースターに名を連ねたいところだ。

バルディアーニ・CSFが出場した2015年のジロではニコーラ・ボエムがステージ優勝を挙げた(ジロ・デ・イタリア2015第10ステージ) Photo: Yuzuru SUNADAバルディアーニ・CSFが出場した2015年のジロではニコーラ・ボエムがステージ優勝を挙げた(ジロ・デ・イタリア2015第10ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA
昨年のジロに初出場し経験を積んだNIPPO・ヴィーニファンティーニの石橋学(ジロ・デ・イタリア2015第8ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA昨年のジロに初出場し経験を積んだNIPPO・ヴィーニファンティーニの石橋学(ジロ・デ・イタリア2015第8ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA
2016年ジロの出場チームに自動選出されたサウスイースト・ベネズエラ(ジロ・デ・イタリア2015第1ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA2016年ジロの出場チームに自動選出されたサウスイースト・ベネズエラ(ジロ・デ・イタリア2015第1ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 サウスイースト・ベネズエラは昨年、イタリア国内で開催されるUCI HCクラスと1クラスのレース上位選手に配分されるポイント合計で競う「コッパ・イタリア」でチーム総合優勝を遂げた。「総合優勝チームには翌年のジロ出場権を与える」とのレギュレーションにより、自動選出された。

 今年は、イタリアの英雄でもあるフィリッポ・ポッツァートが2012年以来(当時ヴィーニファンティーニ・セッレイタリア)4年ぶりにチームへ復帰。自らチームジャージをデザインする熱の入れようで、自身の活躍はもとよりチーム全体の底上げにも意気込みを見せる。コンディションに問題がなければ、当然ジロのスタートラインに並ぶことだろう。また、21歳のヤクブ・マレチュコは、次世代の強力スプリンターとしてイタリア自転車界が期待する逸材だ。

ガスプロム・ルスヴェロがグランツールデビュー

ヨーロッパツアーを中心に活動してきたルスヴェロがグランツールデビューを果たす(トレ・ヴァッリ・ヴェルジーネ=2015年9月30日) Photo: Yuzuru SUNADAヨーロッパツアーを中心に活動してきたルスヴェロがグランツールデビューを果たす(トレ・ヴァッリ・ヴェルジーネ=2015年9月30日) Photo: Yuzuru SUNADA

 そして一番のサプライズと言えるのが、ガスプロム・ルスヴェロの選出だ。昨シーズンまでルスヴェロとして活動してきたチームは、ロシア自転車競技連盟が主導する国家プロジェクト。所属選手はすべてロシア人選手で、ロードに限らず、トラックやマウンテンバイクなど、自転車競技各種目の部門を設け、ほぼナショナルチームに近い形をとっている。実態としては同じロシア籍のUCIワールドチームであるチーム カチューシャに近いが、このチームのロード部門はトラック中距離種目との兼用選手が多く在籍する。

 それもあって、脚質的にスプリンターやTTスペシャリストがそろっているのが特徴だ。なかでも注目は、23歳のスプリンターであるイヴァン・サヴィツキー(ロシア)。昨年6月の途中加入ながら年間8勝(加入前含む)と、チーム全体の勝利数の半数を挙げている。2012年のUCI登録以来、一貫してUCIプロコンチネンタルチームとして活動してきたが、ついにグランツールデビューを果たす。

 ワイルドカード選出にあたり、大会ディレクターのマウロ・ヴェーニ氏は「非常に多くのチームから出場希望が届き、選ぶのが難しかった」「世界各地からの出場希望に目を通しながら、その可能性を模索してきたと同時に、改めてイタリア自転車界を守りたいとの思いがあった」と述べた。ワイルドカード唯一の海外籍チームとなるガスプロム・ルスヴェロについては、「ジロ全体の国際展開における戦略の1つ」と説明し、2013、2014年のコロンビア、2015年のCCCスプランディ・ポルコヴィツェ(ポーランド)選出時と同様の考え方であるとしている。

ジロに出場したあとの6月に、禁止薬物の陽性反応が出たダヴィデ・アッポッローニオ(ジロ・デ・イタリア2015第4ステージ) Photo: Yuzuru SUNADAジロに出場したあとの6月に、禁止薬物の陽性反応が出たダヴィデ・アッポッローニオ(ジロ・デ・イタリア2015第4ステージ) Photo: Yuzuru SUNADA

 一方、ジロ選出が成らず大打撃を受けているチームもある。ここ数年の常連だったアンドローニジョカットリ・シデルメック(イタリア)は、昨シーズン起きたファビオ・タボッレとダヴィデ・アッポローニオ(ともにイタリア)の禁止薬物陽性が大きく影響したことは確実。ゼネラルマネージャーのジャンニ・サヴィオ氏は、この決定を不服だとしている。そして、今年5月にはチームの将来に関する最終決定を行う意向を示した。

 また、今年の開幕3ステージがオランダで行われることに合わせ、出場に意欲を見せていた同国のUCIプロコンチネンタルチーム、ロームポット・オランジェペロトンも選出されず、グランツールデビューはお預けとなった。

 なお、RCSスポルトはジロ以外の主催レースのワイルドカードも発表。ティレーノ~アドリアティコ(3月9~15日)は、アンドローニジョカットリ・シデルメック、バルディアーニ・CSF、ボーラ・アルゴン18(ドイツ)、カハルラル・セグロスRGA(スペイン)、CCCスプランディ・ポルコヴィツェの5チームを選出。ミラノ~サンレモ(3月19日)は、アンドローニジョカットリ・シデルメック、バルディアーニ・CSF、ボーラ・アルゴン18、CCCスプランディ・ポルコヴィツェ、コフィディス ソリュシオンクレディ(フランス)、サウスイースト・ベネズエラ、チーム ノヴォノルディスク(アメリカ)の7チームを選出した。

 いずれのレースについても、18のUCIワールドチームは自動選出されている。

今週の爆走ライダー-今週の爆走ライダー-ルーベン・ツェブントケ(ドイツ、キャノンデール プロサイクリングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ドイツ中西部の都市・デュッセルドルフでの開催が決まったツール・ド・フランス2017のグランデパール(開幕ステージ)。過去のドーピング問題を乗り越え、ドイツの新たな世代の台頭が生んだ歴史的決定とも言われるが、誰よりも強い思いでこの時を待ちわびる選手が存在する。

 22歳のツェブントケにとって、デュッセルドルフは特別な街。それもそのはず、母のクラウディアさんはドイツ社会民主党の議員であり、デュッセルドルフ市長の1人なのだ(同市はいくつかの地域ごとに市長を置く複数市長制をとり、さらに市全体を統括する上級市長が設けられる)。

2014年の世界選手権男子U23ロードにドイツ代表として出場したルーベン・ツェブントケ Photo: Yuzuru SUNADA2014年の世界選手権男子U23ロードにドイツ代表として出場したルーベン・ツェブントケ Photo: Yuzuru SUNADA
ツアー・ダウンアンダーのチームプレゼンテーションに臨んだルーベン・ツェブントケ(2016年1月16日) Photo: Yuzuru SUNADAツアー・ダウンアンダーのチームプレゼンテーションに臨んだルーベン・ツェブントケ(2016年1月16日) Photo: Yuzuru SUNADA

 思いもよらぬ縁だが、「デュッセルドルフのグランデパール選出に、私は何ひとつ影響を与えていないよ」と苦笑い。それでも、日頃のトレーニングコースがレースに採用される見通しとあって、大きな興奮を覚えている。

 だが、話題性や温情でツールのスタートラインに立とうとは思わない。「ホームタウンでツールを迎えるためには、今シーズンがキャリアにおいて最も重要な1年になるだろうね」と、実力でその座をつかむ意気込みだ。

 脚質はスプリンター。アメリカの育成チームで走っていた2014年には、ツアー・オブ・アルベルタ(カナダ、UCI2.1)の第1ステージで、ビッグネームを撃破する大金星を挙げた。総合でも3位となり、一躍話題となった。これからはオールラウンダーを目指して、体をシャープにすることが目標だ。

 「デュッセルドルフは美しい街なんだ」。そう言って輝かせる眼差しの先には、ツール2017という大きな野望が広がる。夢に向かって走る彼の未来は、希望に満ち溢れている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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