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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<141>ブエルタ・ア・エスパーニャ2016コースを分析 “開幕戦”ダウンアンダー、サンルイス展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 シーズン最後のグランツールとなるブエルタ・ア・エスパーニャ2016のコースが発表された。スペイン北部を主な舞台とし、ブエルタ特有の急峻な山岳を次々と通過するルートが採用される。そこで、今回は全21ステージのルートをチェック。また、間近に迫った2つのシーズン開幕戦、ツアー・ダウンアンダーとツール・ド・サンルイスの展望もお届けしたい。

勾配10%超の上りが次々待ち構えるブエルタ

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016のコースマップ photo: Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2016のコースマップ photo: Unipublic

 ブエルタの主催者ウニプブリクは1月9日、スペインの首都マドリードで、第71回を迎える大会の全容を明らかにした。

 開幕はスペイン北西部・ガリシア州オウレンセ。29.4kmのチームタイムトライアル(チームTT)で戦いの火ぶたが切られる。大会序盤から高難易度のステージが続々と登場し、第3ステージのゴール地である3級山岳ミラドール・デ・エサロは約2kmの上りで最大勾配29%(平均勾配13.1%)に達する。第4ステージも2級山岳サン・アンドレス・デ・テイシドの頂上でフィニッシュを迎える。

 第7ステージまでガリシア州で走った後は、ピレネー山脈に向かって東に針路をとる。そこに立ちはだかるはカンタブリア山脈だ。第8ステージの1級山岳ラ・カンペローナ頂上フィニッシュは、ラスト8.3kmで平均勾配7.5%、最大24%の上り(これで平坦ステージ扱い!)。第9ステージ終盤の2級山岳アルト・デル・ナランコ、第10ステージは超級山岳ラゴス・デ・コバドンガの頂上フィニッシュで第1週目を終える。

急勾配の上りゴールながら、平坦ステージ扱いの第8ステージ photo: Unipublic急勾配の上りゴールながら、平坦ステージ扱いの第8ステージ photo: Unipublic
ラゴス・デ・コバドンガの超級山岳頂上にゴールする第10ステージ photo: Unipublicラゴス・デ・コバドンガの超級山岳頂上にゴールする第10ステージ photo: Unipublic

 第2週の初日、第11ステージを1級山岳ペーニャ・カバルガの頂上フィニッシュで終えると、カンタブリア山脈に別れを告げ、バスク州、そしてピレネー山脈へと突入する。スタート直後に入国するフランス領内を走る第14ステージは、3カ所の1級山岳を通過し、最後はツール・ド・フランスでもおなじみの超級山岳オービスク峠の頂上フィニッシュ。今大会のクイーンステージの呼び声が高い。第15ステージの1級山岳サジェント・デ・ガジェゴの頂上フィニッシュとあわせ、この2日間で総合争いが大きく動くことだろう。

超級山岳オービスク峠頂上フィニッシュの第14ステージ photo: Unipublic超級山岳オービスク峠頂上フィニッシュの第14ステージ photo: Unipublic
総合争いを左右しそうなレイアウトの第15ステージ photo: Unipublic総合争いを左右しそうなレイアウトの第15ステージ photo: Unipublic

 第16ステージからは、地中海に面したスペイン東部へと戦いの場を移す。2度目の休息日を経た第17ステージ、アルト・マス・デラ・コスタの1級山岳頂上フィニッシュは登坂距離4kmで平均勾配15%、最大勾配22%に達する激坂だ。第19ステージは今大会唯一の個人TT。39kmの長距離TTで総合上位陣にシャッフルが起きるか。

 総合争いにおける事実上の最終決戦は、第20ステージ。超級山岳アルト・デ・アイタナでの22kmに及ぶ上りで勝負が決するだろう。頂上で総合首位の証・マイヨロホに袖を通す選手は誰か。そして、恒例のマドリード市街地サーキットでのスプリントで3週間の戦いが幕を閉じる。

第19ステージは39kmの長距離タイムトライアル photo: Unipublic第19ステージは39kmの長距離タイムトライアル photo: Unipublic
第20ステージの頂上フィニッシュは22kmに及ぶ長い上り photo: Unipublic第20ステージの頂上フィニッシュは22kmに及ぶ長い上り photo: Unipublic

 3週間の内訳は平坦ステージ7(うち上りフィニッシュ2)、山岳ステージ12、個人TTステージ1、チームTTステージ1、休息日2、カテゴリー山岳51、頂上フィニッシュ10。レース総距離は3277.3km(ステージ平均156km)となっている。会期は8月20日~9月11日。

 ブエルタらしく、山岳の比重が高いステージ構成だ。一方で、平坦ステージにも頂上フィニッシュが設けられ、スプリンターには難しい局面もあるだろう。現時点では、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、ヨアンエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ)らが参戦の意思を明らかにしている。

2015年は総合2位だったホアキン・ロドリゲス(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA2015年は総合2位だったホアキン・ロドリゲス(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第15ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA
総合エースとして臨む可能性の高いナイロアレクサンデル・キンタナ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第9ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA総合エースとして臨む可能性の高いナイロアレクサンデル・キンタナ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第9ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA

 また、ブエルタの直前にリオ五輪(ロードレース8月6日、個人タイムトライアル8月10日)を迎えることも、戦線に影響しそうだ。ジロ・デ・イタリアやツールだけではなく、五輪の走りや結果を受けてブエルタ出場の判断を下す選手やチームもあるだろう。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 ステージリスト

8月20日(土) 第1ステージ オウレンセ・テルマル.バルネアリオ・デ・ライアス~パルケ・ナウティコ・デ・カストレロ・デ・ミーニョ 29.4km(チームTT)
8月21日(日) 第2ステージ オウレンセ・カピタル・テルマル~バイヨーナ 159km(平坦)
8月22日(月) 第3ステージ マリン~ドゥンブリア.ミラドール・デ・エサロ 170km(中級山岳、頂上フィニッシュ)
8月23日(火) 第4ステージ ベタンソス~サン・アンドレス・デ・テイシド 161km(中級山岳、頂上フィニッシュ)
8月24日(水) 第5ステージ ビベイロ~ルーゴ 170km(平坦)
8月25日(木) 第6ステージ モンフォルテ・デ・レモス~ルイントラ.リベラ・サクラ 163km(中級山岳)
8月26日(金) 第7ステージ マセダ~プエブラ・デ・サナブリア 158.3km(中級山岳)
8月27日(土) 第8ステージ ビジャルパンド~ラ・カンペローナ.バジェ・デ・サベコ 177km(平坦、頂上フィニッシュ)
8月28日(日) 第9ステージ システィエルナ~オビエド.アルト・デル・ナランコ 165km(中級山岳、頂上フィニッシュ)
8月29日(月) 第10ステージ ルゴネス~ラゴス・デ・コバドンガ 186.6km(山岳、頂上フィニッシュ)
8月30日(火) 休息日
8月31日(水) 第11ステージ コルンガ.ムセオ・フラシコ~ペーニャ・カバルガ 168.6km(平坦、頂上フィニッシュ)
9月1日(木) 第12ステージ ロス・コラレス・デ・ブエルナ~ビルバオ 193.2km(中級山岳)
9月2日(金) 第13ステージ ビルバオ~ウルダクス-ダンチャリネア 212.8km(中級山岳)
9月3日(土) 第14ステージ ウルダクス-ダンチャリネア~オービスク-グレット 195.6km(山岳、頂上フィニッシュ)
9月4日(日) 第15ステージ サビニャニゴ~サジェント・デ・ガジェゴ.アラモン・フォルミガル 120km(山岳、頂上フィニッシュ)
9月5日(月) 第16ステージ アルカニス~ペニスコラ 158km(平坦)
9月6日(火) 休息日
9月7日(水) 第17ステージ カステリョン~ルセーナ.カミンス・デル・ペニャゴロサ 173.3km(山岳、頂上フィニッシュ)
9月8日(木) 第18ステージ レケナ~ガンディア 191km(平坦)
9月9日(金) 第19ステージ サビア~カルプ 39km(個人タイムトライアル)
9月10日(土) 第20ステージ ベニドルム~アルト・デ・アイタナ.エスカドロン・エヘルシト・デル・アイレ 184km(山岳、頂上フィニッシュ)
9月11日(日) 第21ステージ ラス・ロサス~マドリード 102.5km(平坦)

デニスとポートがチームメートに

 待ちに待った2016年シーズンの幕が開ける。サイクルロードレースシーズン開幕戦としてすっかりおなじみとなった、ツアー・ダウンアンダーとツール・ド・サンルイスをチェックしていこう。

 UCI(国際自転車競技連合)ワールドツアー第1戦、ツアー・ダウンアンダーは真夏のオーストラリア・南オーストラリア州の州都であるアデレードと近郊都市が舞台。1月17日、恒例のアデレード市街地クリテリウム「ピープルズ・チョイス・クラシック(UCI非公認レース)」で大会がスタートする。

総合争いが繰り広げられる第5ステージ Photo: Tour Down Under総合争いが繰り広げられる第5ステージ Photo: Tour Down Under

 19日からは全6ステージにわたるステージレースへ。スプリンターが主役の第1ステージ(130.8km)を経て、第2ステージ(132km)は上れるスプリンターや逃げのスペシャリストが名勝負を繰り広げてきたスターリングの周回コース。続く第3ステージ(139km)もフィニッシュ手前5.7kmに1級山岳が控える注目コース。

 そして、総合争いを動かすのは今回もウィランガ・ヒルの頂上フィニッシュとなる第5ステージ(151.5km)。登坂力に長けた選手たちがリーダージャージの座をかけて、熱い戦いを見せるはずだ。

 出場は18のUCIワールドチームと、オーストラリア籍のUCIプロコンチネンタルチームであるドラパック プロフェッショナルサイクリング、同国選抜チーム「UniSA・オーストラリア」の全20チーム(1チーム7人)。前回王者のローハン・デニス、移籍加入でチームメートとなったリッチー・ポート(ともにオーストラリア、BMCレーシングチーム)、過去3度総合優勝しているサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼール ラモンディアル)らが総合優勝候補に挙げられる。カレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、トレック・セガフレード)ら強力スプリンターも参戦予定だ。

2015年は総合優勝を争った(右から)リッチー・ポートとローハン・デニスがチームメートとして出場する(ツアー・ダウンアンダー2015第5ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA2015年は総合優勝を争った(右から)リッチー・ポートとローハン・デニスがチームメートとして出場する(ツアー・ダウンアンダー2015第5ステージ) Photo : Yuzuru SUNADA
ツール・ド・サンルイス2016第6ステージ Photo: tour de sanluisツール・ド・サンルイス2016第6ステージ Photo: tour de sanluis

 18日に開幕するツール・ド・サンルイスは、アルゼンチンで行われるUCIアメリカツアー2.1クラスのステージレース。総合争いのポイントは、21kmのチームTTで争われる第1ステージ、終盤に1級山岳を上る第4ステージ(140km)、1級山岳頂上フィニッシュの第6ステージ(159.5km)。例年、シーズン序盤からエンジン全開の南米勢と調整途上のUCIワールドチーム勢が互角の戦いを演じる。

 出場は29チーム(1チーム6人)。UCIワールドチームから7チーム、同プロコンチネンタルチームから6チームが参戦。ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)といったビッグネームのほか、前回大会でスプリント2勝を挙げブレイクのきっかけを作ったフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)も参戦。NIPPO・ヴィーニファンティーニからは山本元喜がメンバー入りしている。

今週の爆走ライダー-ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、トレック・セガフレード)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2年ぶりのUCIワールドチーム返り咲きにあたり、この冬はかつてないほどハードなトレーニングを積んできた。だから、1月7日のオーストラリア選手権個人TT(40.9km)で優勝のデニスから4分20秒差の10位と惨敗したときには落ち込みを隠せなかった。

 だが、その努力に間違いがなかったことを3日後に証明する。同選手権ロードレース(183.6km)。最大で21人に膨らんだ逃げグループから飛び出すと、フィニッシュまで80kmを残してライバルを振り切って独走を開始。メーン集団に対して最大で11分のリードを広げたことが奏功し、大会史に残る大逃げを決めてみせた。

2016年1月10日に開催されたオーストラリア選手権ロードレースを制したジャック・ボブリッジ(中央) Photo: Trek-Segafredo2016年1月10日に開催されたオーストラリア選手権ロードレースを制したジャック・ボブリッジ(中央) Photo: Trek-Segafredo

 ジュニア時代からトラックで頭角を現し、2011年にマークした4分11秒114の4km個人追抜世界記録はいまだ破られていない。団体追抜を含め、五輪・世界選手権で数多くのメダルを獲得してきた。ロードでも、2009年には個人TTでアンダー23世界王者、2011年にはオーストラリアロード王者になった。しかし、ビッグレースでの結果には思うように結びつかず、トップチームとの契約を失った昨シーズンは、自国のコンチネンタルチームで過ごした。それでも、ツアー・ダウンアンダー第1ステージで逃げ切り勝利に加え、山岳賞を獲得するなど、その存在を誇示し続けてきた。

 トップシーンでの再デビューにあたり、「感謝してもし尽せない」と新たなチームへの思いを口にする。当面はトラックと並行するつもりで、リオ五輪では団体追抜の金メダル獲得を見据える。

 そして、緑と金のストライプがあしらわれるロードのナショナルチャンピオンジャージは、ツアー・ダウンアンダーでお披露目の予定だ。ひときわ晴れやかなオーストラリアカラーが、真夏の日差しでより輝きを増すことだろう。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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