勝利がもたらした熱狂と感動

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「ツアー・オブ・ジャパン」最終戦の東京ステージは、愛三工業レーシングチームの西谷泰治がゴールスプリントを制して優勝した =2012年5月27日「ツアー・オブ・ジャパン」最終戦の東京ステージは、愛三工業レーシングチームの西谷泰治がゴールスプリントを制して優勝した =2012年5月27日

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プロは“勝ってなんぼ”の存在。これを痛感したのは、今年5月に開催された「ツアー・オブ・ジャパン」でした。

 レースが開催された頃、まだ「Cyclist」はOPENしていませんでしたが、われわれ編集部は取材の練習も兼ねて全ステージに記者を派遣し、連日、速報記事とサイドストーリーを「MSN産経ニュース」に掲載しました(現在は「Cyclist」にも転載しています)。

 しかし、現場から連日送られてきたのは、外国人選手の優勝や活躍を伝える記事ばかり。せっかく日本で行われている国際レースなのに、第5ステージが終了した時点で日本人は1勝もできず、活躍も少ないのです。日本のレース関係者には違和感がないことかも知れませんが、「Cyclist」としては残念に思いました。もちろん、外国人が勝ったレースを伝える記事にも価値はありますが、それはあまり読まれないのが実情です。

 例えば、日本で行われるマラソンの国際大会で、日本人にあまり知られていないアフリカや欧州の選手たちが勝ち続けても、日本のマラソンファンはあまり嬉しくないし、盛り上がりません。新聞やテレビの扱いも小さくなり、世間の目に触れにくくなってしまいます。ロードレースの報道も状況は同じで、ファンのすそ野を広げるチャンスを失ってしまいます。

 そんな中で迎えた5月27日の最終・東京ステージ。「Cyclist」編集部は全員、レース会場で取材・観戦しました。そこで会った知人に、私はうっかり「日本人選手が勝てないから、ちっとも盛り上がらない」と不満を口にしてしまったのですが…なんと、その場に愛三工業レーシングのアドバイザーを務める別府始さんが居合わせたのです。

 私の“不謹慎”な発言を聞いた別府さんは、表情を曇らせつつ、険しい表情で「きょうは西谷が勝つ。ラストで必ず勝つんだ。大丈夫だ」と力強く言い切りました。私はさすがにキマリが悪くなって、あいさつもそこそこに、その場を立ち去りました。

 しかし最終周回の直線でスプリントが始まった時、NIPPOのエース、マッシミリアーノ・リケーゼ選手を西谷泰治選手がピッタリとマーク。最後の最後にリケーゼ選手を差しきり、見事に優勝を飾ったのです!

 会場は興奮と熱狂のるつぼと化し、感動に包まれました。私自身も目頭が熱くなり、「きょうのレースは本当に来て良かった。一生忘れないだろう」と思いました。

 あの熱狂と感動は、日本で行われる国際レースで、日本人選手が勝ったからこそ味わえたものでしょう。同時に、私は別府始さんの言葉を改めてかみ締め、愛三工業レーシングチームの選手や関係者がどれほど強い意志でこのステージに臨んだのかに、思いを巡らせました。そして、ロードレースでも野球やサッカーと同じように、活躍すべき人が活躍すれば、より多くのファンに喜びをもたらしてくれるのだと気付きました。
 
その日、記者が書き上げた冷静な分析記事を、私は少しドラマティックに脚色してニュースサイトに掲載しました。その記事は予想通り、とても多くの人に読まれました。こうした華々しい記事が掲載されること自体、ファンにとってもメディアにとってもハッピーですよね。(上) [ 続きの記事を読む

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