2016 新春インタビュー<3>スポーツバイクを知ってもらう拠点に 「レシオ・アンドシー」責任者の瀬戸慶太さん

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 自転車をテーマとするコミュニティカフェ「RATIO&C」(レシオ・アンドシー)は、ブリヂストンサイクルが東京・外苑前のショールームを全面リニューアルし、2015年11月末にオープンした新しい店舗だ。サイクルショップの機能も併せ持つが、取り扱う車種はクロモリフレームのシティバイクのみ。店内は、おしゃれなカフェに自転車が展示されているといった印象だ。この新コンセプトの店舗は今年、どのように展開されるのか? 「いいんです。とりあえずコーヒー飲みに来てください」と笑う同店の責任者、瀬戸慶太さんに話を伺った。

「レシオ・アンドシー」を案内してくれた瀬戸慶太さん Photo: Kyoko GOTO「レシオ・アンドシー」を案内してくれた瀬戸慶太さん Photo: Kyoko GOTO

自然な形で自転車の魅力を伝える場所

──オープンして1カ月以上が経ちましたが、反響はいかがですか?

「レシオ&シー」の外観 Photo: Kyoko GOTO「レシオ&シー」の外観 Photo: Kyoko GOTO

 「オープン直後の週末は2日間でおよそ250人の来客がありました。平日でもコンスタントに120人ほどの来客があり、自転車のショールームだった前身の『バイクフォーラム青山』と比べると何倍にも増えています」

 「以前のバイクフォーラムは、訪れる人の半分が『アンカー』など特定の車種を見る目的で来店していましたが、残りの半分の人たちは『なんだろう』と思って入ってきて、関心を持ってもらうまでには至りませんでした。その点、レシオ・アンドシーは自転車に興味のないお客さんもカフェとして利用してもらうことができます。そのようなお客さんからも『かっこいいい自転車だね』という反応を感じ取れているので、いまはとても自然な形で自転車の魅力を伝えることができていると思います」

休日の「RATIO&C」の店内。幅広い客層でにぎわっていた Photo: Kyoko GOTO休日の「レシオ・アンドシー」の店内。幅広い客層でにぎわっていた Photo: Kyoko GOTO
コーヒーはスペシャリティコーヒーのショップとして有名な「ONIBUS」(オニバス)が手掛ける Photo: Kyoko GOTOコーヒーはスペシャリティコーヒーのショップとして有名な「ONIBUS」(オニバス)が手掛ける Photo: Kyoko GOTO
ケーキなど、焼き菓子類も置いている Photo: Kyoko GOTOケーキなど、焼き菓子類も置いている Photo: Kyoko GOTO

──サイクルショップというよりもカフェの印象が強いですね

休憩に訪れたサイクリスト。店内にあるユニークな自転車置き場に自転車をとめる Photo: Kyoko GOTO休憩に訪れたサイクリスト。店内にあるユニークな自転車置き場に自転車をとめる Photo: Kyoko GOTO

 「そもそもスポーツバイクって買う前に『存在を知る』『乗ってみたいと思う』ことから始まるでしょう。ならば、そこから提案すべきだと考えました。買うことを前提とするのではなく、『これいいな』と思って見てもらえるだけでもいい。『自転車屋だけど自転車屋っぽくない場所』を作ることで、自転車ユーザーの間口を広げたいと思いました」

──お店を訪れる客層は?

 「自転車愛好者の方はもちろん、そうではない方も多く訪れるようになりました。ファミリー層や、場所柄もあって外国人のお客さんもよく来られます。カップルや夫婦で来店し、男性が自転車を見ている横で女性がコーヒーを飲んでくつろいでいる、という姿も見かけます」

店内には外国人の姿も目立った。自転車まわりのアクセサリーや国産のハンドメイド雑貨など、自転車以外のアイテムも販売している Photo: Kyoko GOTO店内には外国人の姿も目立った。自転車まわりのアクセサリーや国産のハンドメイド雑貨など、自転車以外のアイテムも販売している Photo: Kyoko GOTO
ファミリーも訪れていた Photo: Kyoko GOTOファミリーも訪れていた Photo: Kyoko GOTO

 「たいていの場合、自転車は男性の興味に反して女性からは理解が得られなかったりしますよね。そういった自転車に関心のない人にも違和感なく滞在してもらうことがレシオ・アンドシーのねらいなので、とりあえず流れを作るという意味では成功していると思います」

ユーザーが気付き始めた自転車の選択肢

──取り扱う自転車をクロモリフレームのシティバイク「ネオコット」に絞った理由は?

店内にディスプレイされるネオコットのモデルバイク Photo: Kyoko GOTO店内にディスプレイされるネオコットのモデルバイク Photo: Kyoko GOTO

 「自転車を競技として乗る場合は重量や剛性といった要素が重要になりますが、ふだんの暮らしに自転車を溶け込ませるとなると、“自転車のある生活=豊かな生活”という提案が重要だと考えました。私たちが考える豊かさとは、自転車がもたらす快適かつ環境に優しい生活はもちろん、良いものを長く、大切に使うことで生まれる『愛着』も意味します。それを考えたときに、私たちのプロダクトの中で一番ふさわしいのがクロモリフレームのネオコットでした」

 「細身のクロモリは、いまなお一定の人気があります。愛着をもって長く使う。それがクロモリのもつクラシカルなスタイルの魅力であり、この先もずっと変わらないものです。少々高価ではありますが、オリンピックでも使われたというクオリティの確かさもあります。加えてパイプの加工から溶接、塗装まで埼玉の上尾工場で行っているので、お気に入りの1台を完全オーダーメードで作れるという強みもあります。ネオコットで自転車の魅力の原点を伝えていきたいと考えています」

──自転車の選択肢は多様化している?

「レシオ・アンドシー」の責任者、ブリヂストンサイクルの瀬戸慶太さん Photo: Kyoko GOTO「レシオ・アンドシー」の責任者、ブリヂストンサイクルの瀬戸慶太さん Photo: Kyoko GOTO

 「5、6年前にブレーキのないピストバイクがブームとなり、社会問題になりましたよね。非常に危険な走行行為ですが、自転車のスタイリングだけを見れば、あのブームはカスタムすることで自分らしさを表現できるという、自転車の新たな可能性を世間に提示したと思います」

 「いまやピストバイクは下火になりましたが、あのブームは自転車を日常生活に取り入れるという新風を吹き込みました。街中を見ていると、通勤や日常の移動手段としてロードバイクに乗っている人は非常に増えています。そこにはピストバイクからロードバイクに移行した層はもちろん、彼らの姿を見てスポーツバイクの存在を知ったという人たちもたくさんいます」

サイクルカジュアルのアパレルブランド「narifuri」(ナリフリ)のウエアやバッグも並ぶ Photo: Kyoko GOTO通勤などにも使いやすいサイクルカジュアルのアパレルブランド「narifuri」(ナリフリ)のウエアやバッグが並ぶ Photo: Kyoko GOTO

 「また、その間に健康ブーム、ガソリンの高騰、そして震災など、さまざまな要因で自転車通勤の機運が高まり、サラリーマン世代を中心にスポーツバイクが普及しました。東京に限っていえば、自転車の活用は急速に進んでおり、人口の約6割が自転車を活用しています。もともとママチャリも含めて活用はされていますが、スポーツバイクの行動範囲の広さ、利便性や楽しさに気付いた人が増えているように思います」

 「そういう意味では日本も、本格的なスポーツバイクかママチャリといった狭い選択肢だけでなく、自転車に乗る人、乗り方が多様化してきたと思います。レシオ・アンドシーの狙いはまさにそこで、ストイックなスポーツではなく、単なる移動手段でもない、日常生活への自転車の取り入れ方を提案していきたいと思っています」

2016年春に向けてイベントを本格稼働

──レシオ・アンドシーの構想には3年を要したそうですが、そのような変化の兆しを感じていたのですか?

店名の由来にもなっているギアがオブジェになっている Photo: Kyoko GOTO店名の由来にもなっているギアがオブジェになっている Photo: Kyoko GOTO

 「そうですね。そういう意味では、2009年にも端を発するようなキャンペーンは行っていました。自転車の可能性というか、スポーツバイクの違う側面を提示しようとしたんですが、うまくいかなかった部分もあり、少し時期が早かったのかなと思います」

 「私たちも試行錯誤を重ね、ようやく現在の形にたどり着きました。そういう意味で、この5年間は自転車を取り巻く環境が大きな変化を遂げた期間だったと思います」

──「レシオ・アンドシー」の今後の展開について教えてください。

 「今後は自転車オーダーの受注が本格的に稼働しますし、春に向けてさまざまなイベントも企画しています。でも、まずは誰もが入りやすい居心地の良い場所にすることが課題ですね」

自然と自転車に関心が寄せられる Photo: Kyoko GOTO自然と自転車に関心が寄せられる Photo: Kyoko GOTO

 「自転車やコーヒーが好きな人はもちろん、店の前を通りかかった人にカフェとして利用してもらうだけでもいいんです。自転車を知る、乗る楽しさを知る、そして『ここに来るといろんな人に出会える』と思ってもらえるような、自転車の拠点にしたい。単に商品を販売するのではなく、どういう顧客体験を提案できるかがカギ。私たちも経験値を積んで精度を上げながら、次の展開へつなげていきたいと思います」

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