全日本王者の窪木一茂らが加入戦力強化で飛躍を狙うNIPPO・ヴィーニファンティーニ 全選手が集まり第1次キャンプ

by 田中苑子 / Sonoko TANAKA
  • 一覧

 イタリア籍のUCI(国際自転車競技連合)プロコンチネンタルチームとして、2016年に2シーズン目を迎えるNIPPO・ヴィーニファンティーニ。新加入の全日本チャンピオン・窪木一茂や福島晋一監督が参加して、12月中旬〜下旬にイタリアで開催された第1次トレーニングキャンプの様子をインタビューを交えながらレポートする。

2016年のNIPPO・ヴィーニファンティーニ Photo: NIPPO Vini Fantini2016年のNIPPO・ヴィーニファンティーニ Photo: NIPPO Vini Fantini

イタリア+日本のタッグを強化

 2016年、NIPPO・ヴィーニファンティーニは、引き続きイタリアの英雄、ダミアーノ・クネゴをキャプテンとして、ジロ・デ・イタリアなど世界のトップレースでの活躍を目標に、ワールドワイドに活動していく。チームには、初年度と比較すると大きな“2つ”の変化がある。

チームのキャプテン、ダミアーノ・クネゴ Photo: NIPPO Vini Fantiniチームのキャプテン、ダミアーノ・クネゴ Photo: NIPPO Vini Fantini

 1つ目は、より好成績を求めるために、オールラウンダーのグレガ・ボーレ(スロベニア)と登坂力のあるジャンフランコ・ジリオーリ(イタリア)という、即戦力として活躍が期待できる2選手が加入したことだ。そして2つ目は、全日本チャンピオンの窪木一茂をはじめ日本人選手やスタッフの数が増え、チームの登録国はイタリアであるが、今まで以上に“イタリアと日本、2つの国籍をもつチーム”としての色合いが濃くなったことだ。

 第1次トレーニングキャンプは、メーンスポンサーであるファルネーゼヴィーニ社の所在地、イタリア中部のアブルッツォ州で開催された。所属選手の大部分が前年からの継続ということもあり、和気あいあいとした雰囲気の中で進んでいた。新加入のボーレとU23アジアチャンピオンの小石祐馬は、NIPPOがUCIコンチネンタルチームとして活動していた2013年に所属しており、1年ぶりに懐かしいチームに“戻ってきた”ような感覚で、終始リラックスした表情を見せていた。

イタリア中部アブルッツォ州、アドリア海沿いのペスカーラ近郊で開催された第1次トレーニングキャンプ Photo: NIPPO Vini Fantiniイタリア中部アブルッツォ州、アドリア海沿いのペスカーラ近郊で開催された第1次トレーニングキャンプ Photo: NIPPO Vini Fantini
窪木一茂のためにデザインされた特別なデローザ製「PROTOS」を組む、チーフメカニックのアンドレア・ディマルコ氏 Photo: NIPPO Vini Fantini窪木一茂のためにデザインされた特別なデローザ製「PROTOS」を組む、チーフメカニックのアンドレア・ディマルコ氏 Photo: NIPPO Vini Fantini

ヨーロッパへの挑戦で真価が問われる窪木

 キャンプ終盤、少し緊張した面持ちの窪木が合流した。2015年のロードレース全日本チャンピオンの窪木は、冬季がオンシーズンであるトラック競技・中長距離種目でも国内トップクラスの実力を誇り、直前までトラック競技の日本ナショナルチーム合宿に参加していたのだ。

ロードレース全日本チャンピオン、窪木一茂 Photo: NIPPO Vini Fantiniロードレース全日本チャンピオン、窪木一茂 Photo: NIPPO Vini Fantini

 イタリアらしい底抜けに明るい雰囲気で歓迎された窪木は、キャンプの印象を「来ることができて良かった。レースで日本に来ている選手が多く、チームメートたちの名前と顔はすぐに一致し、覚えることができた。ラテン系の雰囲気は明るくて、楽しく過ごすことができたが、チームの公用語はイタリア語。まずは言葉を習得をしたい」と話した。

 窪木はトラック競技では団体追い抜きやポイントレースを得意とし、UCIワールドカップなど世界的なレースを転戦している。また中長距離の複合種目「オムニアム」で今夏のリオ五輪への出場を目指している。

チームのトレーニングに加わり、クネゴ(中央)らと走る日本チャンピオンジャージの窪木 Photo: NIPPO Vini Fantiniチームのトレーニングに加わり、クネゴ(中央)らと走る日本チャンピオンジャージの窪木 Photo: NIPPO Vini Fantini

 「2016年、トラック選手としては、まずはアジア選手権を狙っている。ポイントレースと団体追い抜きに出る予定で、どちらの種目でも優勝したい。団体追い抜きでは、アジアで一番になって世界選手権につなげたい」

 窪木のスピードには、NIPPO・ヴィーニファンティーニの監督やトレーナーたちも大いに注目している。数値上で考えるならば、チーム内トップクラスのスピードを誇り、ロードレースではチームタイムトライアルやゴールスプリントでの牽引役として期待が高まる。

測定を行う窪木一茂。チームは2016年より本格的なパワートレーニングを導入する Photo: NIPPO Vini Fantini測定を行う窪木一茂。チームは2016年より本格的なパワートレーニングを導入する Photo: NIPPO Vini Fantini
窪木一茂にとって“挑戦のシーズン”となる2016年が幕開けした Photo: NIPPO Vini Fantini窪木一茂にとって“挑戦のシーズン”となる2016年が幕開けした Photo: NIPPO Vini Fantini
全日本チャンピオンの窪木一茂がと日本のナショナルカラーに塗られた特別なデローザ製「PROTOS」 Photo: NIPPO Vini Fantini全日本チャンピオンの窪木一茂がと日本のナショナルカラーに塗られた特別なデローザ製「PROTOS」 Photo: NIPPO Vini Fantini

 しかし、窪木がこれまでにヨーロッパのロードレースを走ったのは、U23カテゴリー1年目のネイションズカップや、一昨年のポルトガルのレースのみで、経験不足は否めない。移籍に際し「ヨーロッパで走る挑戦権を手に入れることができた」と話す窪木に、大門宏監督は「全日本チャンピオンとしての真価が問われるのは、ヨーロッパで走るこれからだ」と話す。26歳の窪木にとって、大きな“挑戦”のシーズンとなるだろう。

 「(ヨーロッパの)路面やレースの特性もわからない。心配な面はあるけれど、福島監督と一緒に過ごすことになると思うので、いろいろなことを学んで早く吸収したいと思う。早い段階で様々な距離を縮めて、成績を残していきたい」と窪木は抱負を語った。

 日本がリオ五輪への出場枠を獲得できるかどうか、また国内選考で誰が出場権を得るか、状況がはっきりするのは2月。その頃に窪木の具体的なレーススケジュールが決まってくるが、ロードレースの初戦はオーストラリアで1月31日に開催されるカデル・エヴァンス・グレートオーシャンレース(UCI1.HC)と2月上旬のヘラルド・サンツアー(2.1)となる予定だ。オフシーズン明けの選手たちと比較し、トラック競技でコンディションをピークまで上げている窪木にとって、実力を示すチャンスとなる。

厳しい環境で切磋琢磨する日本人選手たち

エリートカテゴリー1年目となるチーム最年少の小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantiniエリートカテゴリー1年目となるチーム最年少の小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantini

 もう一人の日本人新規加入選手、U23アジアチャンピオンの小石祐馬は、日本の若手の中でも注目されている存在だ。U23最後の年だった2015年はベルギーを拠点に走り、大きな飛躍を遂げて今季、NIPPOに復帰した。小石にとってエリートカテゴリーも、プロコンチネンタルチーム所属ても1年目となるが、「何事も恐れず、いろいろなチャレンジをしたい」と話す。大門監督は小石に「エリートカテゴリー1年目だからといった甘えは許されず、世界を目指すなら、1年目からしっかりと成績を出さなければいけない」と声をかける。

新加入、U23ロードレースアジアチャンピオンの小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantini新加入、U23ロードレースアジアチャンピオンの小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantini
2015年、日本人史上最年少となる22歳でジロ・デ・イタリアに出場した石橋学 Photo: NIPPO Vini Fantini2015年、日本人史上最年少となる22歳でジロ・デ・イタリアに出場した石橋学 Photo: NIPPO Vini Fantini
ガッツのある走りで見せ場を作る山本元喜 Photo: NIPPO Vini Fantiniガッツのある走りで見せ場を作る山本元喜 Photo: NIPPO Vini Fantini
所属する日本人選手とダミアーノ・クネゴ、新規加入のグレガ・ボーレ Photo: NIPPO Vini Fantini所属する日本人選手とダミアーノ・クネゴ、新規加入のグレガ・ボーレ Photo: NIPPO Vini Fantini

 前年から継続して所属する2人の日本人選手、石橋学と山本元喜にとっても、厳しい環境のなかで戦うのは同じことだ。同年代の若い外国人選手たちと切磋琢磨し、存在感を示すことが求められ、生き残りをかけたシーズンとなるだろう。

福島晋一氏が監督デビュー

 キャンプは毎日、午前中にトレーニングを行い、夕方や夜には栄養学などの座学が組み込まれることが多かった。またキエーティ・ペスカーラ大学スポーツ医学研究所との連携は3シーズン目を迎え、トレーニングの合間を縫って、選手たちはメディカルチェックや各種測定に臨んだ。

様々な測定が行われた第1次トレーニングキャンプ Photo: NIPPO Vini Fantini様々な測定が行われた第1次トレーニングキャンプ Photo: NIPPO Vini Fantini
革靴のスポンサーがキャンプを訪れ、選手たちが好みの靴を選んだ Photo: NIPPO Vini Fantini革靴のスポンサーがキャンプを訪れ、選手たちが好みの靴を選んだ Photo: NIPPO Vini Fantini
チームに所属し3シーズン目を迎えた福井響メカニックがデローザ工房でバイクを組む Photo: NIPPO Vini Fantiniチームに所属し3シーズン目を迎えた福井響メカニックがデローザ工房でバイクを組む Photo: NIPPO Vini Fantini
デローザの創始者であるウーゴ・デローザ氏を囲んでチームメカニックたちが記念撮影 Photo: NIPPO Vini Fantiniデローザの創始者であるウーゴ・デローザ氏を囲んでチームメカニックたちが記念撮影 Photo: NIPPO Vini Fantini

 フランスでの2年間の指導者研修を終えて、チームに加入した福島晋一監督は、「この時期のキャンプは、チームメートやスタッフの顔を覚えて、親睦を図るのが目的。でも今回のキャンプは、日本のチームではまずやらないようなカリキュラムが組み込まれていたことが印象的だった。選手も勉強をしないといけない。栄養学やスポーツ医学、トレーニング理論を学べば、“なぜこのトレーニングが必要なのか”ということを理解できる。それを知ってトレーニングを行うことはとても大切」とキャンプの印象を話した。

第1監督であるベテラン、ステファノ・ジュリアーニ氏と談笑する福島晋一監督 Photo: NIPPO Vini Fantini第1監督であるベテラン、ステファノ・ジュリアーニ氏と談笑する福島晋一監督 Photo: NIPPO Vini Fantini

 42歳まで現役選手として活躍し、世界各国に多くのコネクションをもつ福島氏。監督としてのキャリアを歩むにあたり、いくつかの選択肢があったというが、NIPPO・ヴィーニファンティーニを選んだ理由は第一に「プロコンチネンタルチームであったこと」だ。

 「世界のトップレースを走るチームに身を置くことは大事。そこに身を置き続けられれば本物であり、そこで食べていきたい。監督業は経験がすべて。監督1年目となる今年は、1つでも多くの経験を積んで、それをチームの結果につなげたい」

 そして、チームが日本人の育成を掲げていることも大きかった。家族のような雰囲気のなか、イタリア人監督も日本人選手のことを温かく指導しており、福島監督は「日本人選手たちはとても恵まれた環境にいる」とも話す。チームでは、自身の経験を生かしながら若い日本人選手たちを育成することが大きな役目となる。

ダミアーノ・クネゴと並んで登坂区間を走る小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantiniダミアーノ・クネゴと並んで登坂区間を走る小石祐馬 Photo: NIPPO Vini Fantini
笑顔をみせる山本元喜 Photo: NIPPO Vini Fantini笑顔をみせる山本元喜 Photo: NIPPO Vini Fantini

 福島監督は、欧州の中でもなじみが深くホームタウンと言えるフランス・ノルマンディー地方に居住し、そこに窪木一茂と山本元喜が滞在する予定。さらには地元アマチュアチームに所属する徳田鍛造や、引き続き福島監督が代表を務めるボンシャンスの選手も利用するという。レースの多いベルギー・フランドル地方や、パリ郊外の日本ナショナルチームのサービスコルス(拠点)にも近く、欧州で活動する日本のロードレース関係者にさまざまなメリットをもたらすことが期待されている。福島監督の初戦は窪木と同様にオーストラリアでの2戦となる予定。月の半分はレースで指揮を執るとても忙しいシーズンとなるだろう。

ペスカーラのビーチ沿いから公式ビデオの撮影が行われた Photo: NIPPO Vini Fantiniペスカーラのビーチ沿いから公式ビデオの撮影が行われた Photo: NIPPO Vini Fantini
ドローンを使い本格的に行われた公式ビデオの撮影 Photo: NIPPO Vini Fantiniドローンを使い本格的に行われた公式ビデオの撮影 Photo: NIPPO Vini Fantini

必要なのはさらなる“好成績”

 キャンプ終盤になると所属全選手が揃い、真新しいウェアに身を包んで写真やビデオの撮影が行われた。そしてキャンプ最終日はヴィーニファンティーニの発泡酒で乾杯。それぞれに2016年への期待を胸に、クリスマスや新年を祝いながら別れた。

32歳、自転車業界最年少のゼネラルマネジャー、フランチェスコ・ペロージ氏 Photo: NIPPO Vini Fantini32歳、自転車業界最年少のゼネラルマネジャー、フランチェスコ・ペロージ氏 Photo: NIPPO Vini Fantini

 プロコンチネンタルチーム1年目の昨季はジロ・デ・イタリアに初出場し、UCIレースで11勝を挙げた。「けっして悪いシーズンではなかった」と32歳の業界一若いゼネラルマネジャー、フランチェスコ・ペロージ氏は振り返る。ジロではクネゴとダニエーレ・コッリ(イタリア)のエース選手2人が落車リタイアとなってしまったが、その反面、プロ1年目のリカルド・スタッキオッティ(イタリア)のツール・ド・北海道で総合優勝を果たし、ニコラス・マリーニ(イタリア)のUCIレースで区間4勝を挙げるなど、明るい話題にも満ちていた。

 ペロージ氏はマーケティングやチームイメージも重視しており、「2015年はレース主催者やスポンサー、ファンにとてもいいイメージを与えることができた」とチームの活動を評価している。そして2016年、「自分たちに必要なのはさらなる“好成績”だ」と意気込んでいる。

 日本人選手の育成や、若い選手たちの活躍も非常に大事な課題だが、2015年は度重なる落車に見舞われたクネゴの“復活”もチームは必ず成し遂げたい。チームは1月7日から第2次キャンプに臨む。そこでは、間近に控える実戦を意識して厳しいトレーニングが組み込まれる。

キャンプ最終日、チームキャプテンのダミアーノ・クネゴと全日本チャンピオンの窪木一茂がファンティーニの発泡ワインをグラスに注ぐ Photo: NIPPO Vini Fantiniキャンプ最終日、チームキャプテンのダミアーノ・クネゴと全日本チャンピオンの窪木一茂がファンティーニの発泡ワインをグラスに注ぐ Photo: NIPPO Vini Fantini
いつも和気あいあいと仲のいいスタッフたち。監督4人、マッサージャー5人、メカニック5人、医師2人、トレーナー2人、さらに複数の運営スタッフや専門スタッフが関わる Photo: NIPPO Vini Fantiniいつも和気あいあいと仲のいいスタッフたち。監督4人、マッサージャー5人、メカニック5人、医師2人、トレーナー2人、さらに複数の運営スタッフや専門スタッフが関わる Photo: NIPPO Vini Fantini
2016年が素晴らしいシーズンになることを祈り、みんなで乾杯をしたキャンプ最終日 Photo: NIPPO Vini Fantini2016年が素晴らしいシーズンになることを祈り、みんなで乾杯をしたキャンプ最終日 Photo: NIPPO Vini Fantini

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

チームNIPPO

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載