2016 新春インタビュー<2>「表彰台圏内を狙って勝負」 欧州プロとしてオリンピックイヤーに臨む萩原麻由子

by 田中苑子 / Sonoko TANAKA
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 昨年7月、女子ロードレース界最高峰のステージレース「ジロ・ローザ」の第6ステージで独走優勝を遂げた全日本ロード女王の萩原麻由子(ウィグル・ハイファイブ)。2015年シーズンは快挙といえる勝利に沸き、世界の女子トップレーサーたちに肩を並べた。しかしその後は、9月にレース中の落車で鎖骨を骨折し、狙っていた世界選手権に出場できず、悔しさも残る一年となった。2016年はさらなる飛躍が期待されるとともに、4年に一度のオリンピックも迎える。萩原に新年の抱負を聞いた。

1月のアジア選手権に向け、単身タイに乗り込んでトレーニングを重ねた萩原 Photo: Sonoko TANAKA1月のアジア選手権に向け、単身タイに乗り込んでトレーニングを重ねた萩原 Photo: Sonoko TANAKA

ヨーロッパで初めて認めてもらえた

――欧州のプロチーム「ウィグル・ホンダ」(2016年はウィグル・ハイファイブへ改称)に所属して3年目となった2015シーズン。全日本選手権で優勝し、全日本女王として挑んだジロ・ローザでのステージ優勝、そしてミックスチームで出場したツール・ド・ブルターニュでのステージ優勝。総括するとどんなシーズンでした?

女子版ジロ・デ・イタリア(イタリア一周レース)の「ジロ・ローザ」で、日本人初のステージ優勝を成し遂げた Photo: Sonoko TANAKA女子版ジロ・デ・イタリア(イタリア一周レース)の「ジロ・ローザ」で、日本人初のステージ優勝を成し遂げた Photo: Sonoko TANAKA

 「“飛躍”のシーズンだったかもしれません。ようやく自分の走り、自分の表現ができるようになりました。コツをつかみ始めて、体力もつき、結果を出すことができました。でも、最後に骨折…悪いこともありましたが、総括すると、ヨーロッパに渡って初めて良いことがあった、“まとも”と言えるシーズンでした」

――シーズンのハイライトはジロ・ローザでの優勝だったと思います。そのときの心境は?

 「チームメートたちに喜んでもらえたことが嬉しかった。チームが違っていても、いろいろな選手や監督から褒めてもらいました。今まで話したことがない人にも声をかけてもらって。初めて『ヨーロッパで認めてもらうことができた』と思えて本当に嬉しかったです」

ステージ優勝のゴール後、チームメートが次々に萩原を祝福 Photo: Sonoko TANAKAステージ優勝のゴール後、チームメートが次々に萩原を祝福 Photo: Sonoko TANAKA
ステージ優勝の表彰を待つ萩原 Photo: Sonoko TANAKAステージ優勝の表彰を待つ萩原 Photo: Sonoko TANAKA

経験の積み重ねが生んだ好成績

――その直後のツール・ド・ブルターニュでも区間優勝し、立て続けに2つのUCIレースで優勝しました。好成績の裏側に、何か変わったことがありましたか?

 「成績が出た理由は、これまでの経験の積み重ねだと思います。ようやくヨーロッパのレースカレンダーやレース内容に慣れてきました。レースだけでなく、生活環境やチーム、ヨーロッパの文化…すべてに慣れてきたように思います」

――渡欧当初の感覚を「今までの常識がまったく通用せず、右と左すら違うのではないか?と思った」と話されていましたよね。慣れることは、簡単なようで、とても大変だったと思います

欧州プロ3年目、レース前に元世界女王のブロンジーニ(イタリア)とふざけ合う Photo: Sonoko TANAKA欧州プロ3年目、レース前に元世界女王のブロンジーニ(イタリア)とふざけ合う Photo: Sonoko TANAKA
強豪選手がひしめくチームにおいても、すでに気後れはない Photo: Sonoko TANAKA強豪選手がひしめくチームにおいても、すでに気後れはない Photo: Sonoko TANAKA

 「自分の性格もあって、慣れるのに時間がかかってしまいました。2年目になって、ようやくやらなきゃいけないことがわかり、3年目になって、それをこなすことができるようになりました。(女子のロードレース界は)やるべきことをちゃんとこなせないと、排除される世界で、イス取りゲームのようなところです。1年目に解雇されてもおかしくなかったと思います」

レース前、黙々と準備をこなす萩原 Photo: Sonoko TANAKAレース前、黙々と準備をこなす萩原 Photo: Sonoko TANAKA

――時間をかけてでも慣れることができたのが、大きな成功の秘訣だったんですね

 「当時、ウィグル・ホンダが誕生したばかりのチームだったことも良かったと思います。1年目から2年目にかけて、所属していた選手はほとんど同じで、同じメンバーでチームを成長させたいという運営側の思惑がありました。最初は話すのも怖い、言葉も通じない、レースでも走れないという状態だったので、チームメートたちは『なんだあいつは?』と思ったはずです。自分も疲れてしまって、チームメートの輪に入りたくなかった。でも、みんな良くしてくれ、2年目から少しずつ変わっていきました。そして、与えられた仕事をこなせるようになると周りが驚きました。エース級の選手ばかりのチームだったので、アシストとして走れる選手が必要だったことも幸いしました」

Photo: Sonoko TANAKAPhoto: Sonoko TANAKA

失敗から得た学び

――2015シーズンはどのような目標を立てていましたか?

 「ジロ・ローザでの区間優勝と、全日本選手権ロードレースでの優勝が目標でした」

――1年前の2014年もジロ・ローザで区間3位という結果を残していましたね

Photo: Sonoko TANAKAPhoto: Sonoko TANAKA

 「そうです。2014年のジロ・ローザで区間3位に入り、初めての表彰台を経験しました。でも、そのとき“3位”はすぐに忘れられてしまうと痛感しました。勝たないかぎり、この世界では認めてもらえない。ここで生き残るためには、成績が不可欠です。得意な山岳ステージのあるジロ・ローザで勝利したいと思いました」

――そして、見事に2つの目標を達成されました。その分、シーズン終盤の鎖骨骨折がとても悔やまれますが…

 「本当に浮き沈みの大きかったシーズンだったと思います。じつは鎖骨を折った前週は自分のなかでうまくバランスがとれず、まともに練習もできないような状態で、コーチに練習を止められていました。コーチが練習メニューを立ててくれていますが、“もっともっと”と思って、自分で勝手にやってしまったことがあり、すれ違いが生じていたんです。人に決められることが嫌いな性格もあって…。でも、やってはダメなことがわかり、失敗からたくさんの学びも得ました」

シーズン前半の課題はリオ五輪出場枠獲得

――いよいよ欧州4年目の2016シーズンが始まりますね。欧州プロとして初めて迎えるオリンピックイヤーでもあります。抱負を聞かせてください

 「まずはアジア選手権で優勝して、リオ五輪の出場枠を獲得したいと思います」

――エリート女子のロードレースでは、アジア選手権の優勝国に出場枠が与えられるんですよね

2015年のアジア選手権では、個人タイムトライアルで銀メダルを獲得したが、ロードレースでは10位と惨敗に終わった Photo: Sonoko TANAKA2015年のアジア選手権では、個人タイムトライアルで銀メダルを獲得したが、ロードレースでは10位と惨敗に終わった Photo: Sonoko TANAKA

 「とにかくリオ五輪の出場枠を獲得することが、前半の大きな課題です。5月31日までのポイントで決まりますので、アジア選手権で枠がとれなかった場合は、得意な上りのレースなど、ポイント獲得の可能性が高いレースに的を絞って狙っていきたい。チームにはその希望を伝えていますし、もしチームとのレーススケジュールが合わなければ、ナショナルチームやミックスチームでのレース参戦も考えています」

――4年前に初出場したロンドン五輪では、レースに加われない辛い経験をされました。それが今の萩原選手の糧となっていると思いますが、リオ五輪ではどんなレースをしたいですか?

 「先頭集団でのゴールが目標です。表彰台圏内を狙って、勝負したいです」

――オリンピック以外の目標はどうでしょうか?

 「大きなワンデーレースで表彰台を狙いたいと思います。チーム内で与えられた仕事をしながら、最後まで残って自分も勝負に加わりたい。ジロ・ローザのようなステージレースでは、今度は総合成績でも上位をめざしたいと思います。総合成績では、総合的な力が問われます。また全日本選手権での優勝も大事な目標です。リオ五輪の枠が獲得できた場合、国内の選考でも勝たないといけません。全日本選手権で勝って、自他ともに認められる形でリオ五輪に挑みたいです」

2015年末、タイで合宿中の萩原麻由子に話を聞いた。チームはスポンサーの交代により2016年から「ウィグル・ハイファイブ」となる Photo: Sonoko TANAKA2015年末、タイで合宿中の萩原麻由子に話を聞いた。チームはスポンサーの交代により2016年から「ウィグル・ハイファイブ」となる Photo: Sonoko TANAKA

骨折からの復調を実感

――昨年末には、鎖骨骨折からのリハビリを兼ねて、タイで約1カ月間のオフトレーニングをされましたね

 「振り返ると、約4週間のタイ合宿はあっという間でした。(滞在するナーソンリゾートのオーナー)中川さんや、ノイさんをはじめとする宿舎の皆さん、日に日に増えていった練習仲間の皆さん、全ての方々にお世話になり、とても良い乗り込みを行うことができました。朝から日暮れまで走り、いつまでも続く平坦、激坂を含む山岳コース、高速のバイクペーサー、先頭交代、じつに様々な種類の練習を積むことができました。また中川さんの絶妙なペーサーや、新城(幸也)さんの走りといった経験が成す技術を直に学べることも絶好の機会でした」

タイでは毎日200km近く乗り込んだ Photo: Sonoko TANAKAタイでは毎日200km近く乗り込んだ Photo: Sonoko TANAKA
トレーニング中、休憩に立ち寄る Photo: Sonoko TANAKAトレーニング中、休憩に立ち寄る Photo: Sonoko TANAKA

――鎖骨骨折からの回復状況はどうですか?

 「鎖骨骨折により低下したコンディションや、左右の筋肉バランスの乱れも、乗り込みと実戦に近い走行練習により、復調を実感できています。自分より速い男子選手たちと練習することは簡単ではありませんし、練習仲間には随分迷惑を掛けてしまいましたが、仲間がいるから成し得た練習に感謝しています」

――いよいよ、シーズンが始動しますね! 今はどんな心境ですか?

Photo: Sonoko TANAKAPhoto: Sonoko TANAKA

 「2016年の欧州シーズンへ向けても、タイで非常に良いトレーニングを積むことができました。残りあと数週間に迫るアジア選手権へ向け、不安もありますが、今はアジア選手権やシーズンインが楽しみという感覚です。しっかりと仕上げをして臨みたいと思います」

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