2016 新春インタビュー<1>リオ五輪でメダル獲得、そして東京へ ランプレ・メリダでさらに上を目指す新城幸也

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 本場ヨーロッパのプロロードレースで活躍する日本のエース、新城幸也。2015年はシーズン前半こそけがに泣いたが、後半に復活してブエルタ・ア・エスパーニャ初出場、世界選手権では2位争いの集団に最後まで残っての17位、そしてジャパンカップでは優勝争いを演じての3位と、大活躍をみせた。2015年は7年間所属し続けたチーム ヨーロッパカーを離れ、UCIワールドチームのランプレ・メリダに移籍する。新天地で再スタートを切る新城に、2016年にかける思いを聞いた。

プロ11年目のシーズンに挑む新城幸也(ランプレ・メリダ) Photo: Seishiro TAKIプロ11年目のシーズンに挑む新城幸也(ランプレ・メリダ) Photo: Seishiro TAKI

◇      ◇

ランプレのジャージ「意外と似合ってる」

――12月上旬にランプレ・メリダのチーム合宿を終えましたが、合宿ではどういう事をしたのですか?

 「合宿自体は4日間でした。ランプレはこの1回の合宿だけで、それ以外には走る合宿がないんですよ。今回やったのは、1日目の午前にメディカルチェック。午後は座学で、メーカーから来年の製品ははこうなりますという話とか。ほかには、ドクターとコーチから、来年の禁止薬物はこれが追加されますとか、2017年からワールドチームはUCIと一緒にパワーメーターのデータを管理するとか、そういう話です。あとはジャージとかのフィッティングですね」

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

――それが初日で、ほかの日は

 「監督とのミーティングです。監督が6人いるので、6人対1人で、全選手が時間を割り振ってやりました。あとはメカの人と話したり」

――昨年までのヨーロッパカーとは違う?

 「そんなに変わらないですね。1年間、仲間として走るので、和気あいあいとしています。まあ、ヨーロッパカーよりも真面目かもしれないですね。ヨーロッパカーはこういう合宿があったら絶対毎日飲んでますけど、今回は1日だけだったので(笑)」

――ランプレのジャージを着てみた感想は?

 「意外と似合ってるかなと思いました。変じゃなくて良かったです(笑)」

――フランスとイタリアで文化の違いは感じた?

 「パスタは美味しかったです。やっぱり食事はイタリアの方がいいですね」

――住むのはフランスのまま?

 「そうです。これから引っ越しとなると、家探しから始まって、新しい練習コースを探してと時間を取ってしまうので、そこはチームに話して、今の自宅に住むことにしました」

真新しいランプレ・メリダのジャージに袖を通した。バイクはメリダのリアクト Photo: Seishiro TAKI真新しいランプレ・メリダのジャージに袖を通した。バイクはメリダのリアクト Photo: Seishiro TAKI

ツール出場に向けたプログラム

――新しいチームでのポジション、役割は?

 「今までと正直、そんなに変わらないと思います。6月までのスケジュールが出ていて、1月のアジア選手権のあと、チームとしてはツアー・オブ・カタールから始まって、オマーン、パリ〜ニース、ミラノ〜サンレモ、バスク一周、アムステルゴールドレース、フレッシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュという感じです。ツール・ド・フランスに向けてのプログラムなので、6月までにいい走りをして、ツールに選ばれるようにしたいです」

――ジロ・デ・イタリアは予定に入っていない

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

 「僕は全くジロに関われないです。イタリアの選手がメーンでしょうね。2014年にヨーロッパカーがワールドチームだった時に走ったレースにほぼ近いスケジュールです。その時はツールでも調子が良かったので、ツールに出るためには良いプログラムですよね」

――ジロに出ないとなると、5月から6月にかけて開かれるツアー・オブ・ジャパンへの出場を期待しますが

 「うーん、まずチームがツアー・オブ・ジャパンに招待されて、そのあとのチーム発表を見てのお楽しみです。僕も今はわかりません(笑)」

――自分がリーダーとして走るレースはありますか?

 「僕がオーダーを出したのは、アムステルです。10位は取ったので(2014年)、目標は10位以上ですね。得意なレースなので、できれば表彰台に乗りたいです」

パワートレーニングに初挑戦

――トレーニング面では何か変わりますか?

 「ご存知の通り(自転車を見て)、パワーメーターが付いていますからね。とうとう新城幸也がパワーメーターを使う時が来ました(笑)」

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

――どういう風に使っていますか?

 「チームに1人、ルッカというコーチがいて、彼が全員のパワーデータをチェックします。クラウドに毎日データを入れて、ユーザーを共有して、向こうが見にくる感じですね」

――何か今やっているメニューは?

 「何も言われていないです。『いつもどおり準備してきて』って。僕もパワートレーニングは初めてなので、メーターにパワーが出なかったり慣れないことばかりで、設定したら今度は心拍計のバンドを忘れたりとか。これまではジャージを着て走っていただけなので、いろいろ勉強中です」

――メーターの出力を見て感じることは

 「全くないです。僕はただチームに管理されているからやっているだけであって、チームも僕がどれだけの出力で走っているのか分かっていないですし、見ている段階ですね」

移籍の理由

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

――ヨーロッパカーには外国人ながら7年間在籍しました

 「もちろん居心地が良かったからです。僕に対する信頼もありましたし、移籍する理由が全くなかったです。何も知らない状態で入った僕を、ツールも5回出て、3大ツールも走らせてもらって、すごく経験をさせてもらい、強くしてもらいました。チームが嫌いで出た訳じゃないです」

――そのチームを離れる決心をした理由は?

 「一つはチームの規模が縮小されることです。それと、2016年はリオ五輪がありますよね。リオに出て、メダルを取りたいんですよ。そういうところで勝負するとなると―昨シーズンは世界選手権やブエルタで最後の3、40人には残れるんですけど、その次の段階を目指すべきだなと思いました」

――なるほど、メダル!

 「メダルを取れば2020年の東京五輪まで、いろんな注目を集めますから。東京でメダル、じゃなく、東京の前から目立たないと。今までは全部自分で(トレーニングを)やってきたんですけど、メーターを付けられて管理されることで、もう一つ上に行けるかなと」

――移籍はひとつの賭けになる?

 「賭けではなく、何か僕が変えなければいけない時だったと思います。ヨーロッパカーでは毎年、成績や走る位置が上がっていたので、さらにもう一つ上というところで、移籍が手助けかなと」

「簡単な勝利」はない

――昨シーズンは4月に骨折がありました

 「ツールに関しては痛手でしたね。でもブエルタを走る機会にもなったし、世界選、ジャパンカップと最後までいい調子で走ることができたので、それはそれで良かったなと思います」

ブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン一周)に初出場して完走。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアとあわせて、日本人選手で初めて、世界3大ステージレース全ての出場・完走を果たした Photo: Miwa IIJIMAブエルタ・ア・エスパーニャ(スペイン一周)に初出場して完走。ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリアとあわせて、日本人選手で初めて、世界3大ステージレース全ての出場・完走を果たした Photo: Miwa IIJIMA

――これで3大ツールを全て経験したわけですが、それぞれ違いはありましたか?

 「全部色が違いますよ。ジロはコースがスペクタクルで、寒くて、華やか。ツールとは違うお祭りで、ジロは町が頑張って作っているような感じですね。ブエルタは暑い、それと道が広い。あとブエルタのセキュリティが一番弱いので、グランツールを見に行きたい人はブエルタがおすすめです。ツールなんて絶対チームバスのそばとか近寄れないですからね」

――ちなみに一番好きなレースは

 「もちろんツールです。あんなに沢山の人の中で走れるのって、そうそうないです。それが3週間続く。世界選も五輪もすごい人だったけど、1日だけ。ツールは3週間続いて、最後シャンゼリゼにゴールする。ツールが一番非日常ですね」

――ジャパンカップは惜しい3位でした

 「パンクしてなければ…みんな譲れよって話ですよね(笑)。まぁそんなことはないんですけど(笑)。ジャパンカップは、日本人としていつか勝たなきゃいけないですよね」

最後まで優勝を争ったジャパンカップ2015(左が新城)。前輪がスローパンクしながらもゴールスプリントに挑んで3位に入った Photo: Naoi HIRASAWA最後まで優勝を争ったジャパンカップ2015(左が新城)。前輪がスローパンクしながらもゴールスプリントに挑んで3位に入った Photo: Naoi HIRASAWA

――本当に惜しかったです

 「だからプロのレースはどんなレースでも、簡単な優勝はないんです。時々ギフトとか譲ったとかいう話はあるけど、あれはお互い利害が一致して、お互いギリギリだからこそ、最後スプリントしないでいるわけで、前に2人いる後ろには198人がいるんです。そこにいる時点でパワーを最大限発揮しているということで、それをプレゼントとか簡単な言葉では片付けられないですよね」

若い選手は頑張りが足りない

――プロ10年目を終え、だいぶベテランになってきました

 「いえいえ、まだまだ勉強することはたくさんありますよ。この世界、年齢はあまり気にしないですよね。ヨーロッパに行ったら、皆同い年みたいなものですから」

――新城選手に続く世代が育っていない問題があります。どの辺りに原因があると思いますか?

 「うーん、もっと頑張れよとは思います。東京(五輪)まで4年じゃないですか。4年前の僕の位置にいる若い選手っていないですから」

――それは…頑張りが足りない?

 「はい。今はパワーメーターもあるし、何ワットで何分走ればこうって、答えが全部出ていますよね。もちろん簡単なことじゃないですけど、その課題を1年1年クリアしていけばいい話です。ただヨーロッパに行ったら、最後の1時間は50km/hでずっと走っているわけですけど、日本のレースで50km/hで巡航しているレースなんてないじゃないですか。それは無理ですよね」

――そういう環境に身を置いていかないといけない?

 「環境ありきだし、自分もありきだし。大門(宏)さんが今、NIPPOで若手を連れて行ってますけど、あれ以上の環境はないですよ。あとは個人の問題ですよね。自転車は最後の駆け引きになると才能は必要です。でもある一定のレベルまでは、才能は関係ないと思います。ペダルを漕いだ分、返ってきますからね。僕はそう思います」

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

ツールは10回走りたい

――これからの新城幸也は、どうなっていきますか?

 「新城幸也、第2章ですね。浅田(顕)さんに『ウォーミングアップは終わり』って言われましたし(笑)。3大ツールに全て出たので、次は3大ツールで1勝ずつが目標です。なので、まだまだ一杯走らなきゃいけないです」

――あと10年くらいは選手を続ける

 「ツールは10回走りたいですね。単純な計算で200人出走で、21ステージで、10回出たら1人1回(ステージ優勝が)割り当たるじゃないですか(笑)」

――何歳くらいまで選手を続けたいと思っていますか?

Photo: Seishiro TAKIPhoto: Seishiro TAKI

 「できることならずっとやりたいですよ。東京までは自分のために走りたいですね。みんなは若い世代って言いますけど、東京で走れる選手って、たぶん僕です。僕の4年前のところを走っている若者がいないので、今からやれば間に合うって言いますけど、間に合わないですよ」

――選手をやることに疲れたりはしていない?

 「全くないです。始めたのが18歳なので、頭も体も全然疲れてはいないです。まだ自転車に乗るのも楽しいですし、毎年新しい自転車をもらえるのはすごく楽しいし、モチベーションになります。一般の人は毎年自転車を買うのは大変ですからね」

――ちなみに、メリダのレース用バイク「リアクト」はどうですか?

 「コストパフォーマンスが高いと思います。これをフレーム価格30万円ちょっとで出せるのが、メリダの強みですね」

――トレーニング中の楽しみは?

 「いやもう無限ですよ。ハンドルの握り方一つ、ペダリングの仕方一つで全然違うし、それを突き詰めるのが楽しい。体調によってパフォーマンスは変わるけれど、毎レース最低限走らなきゃいけないレベルはあるので、調子が悪くても仕事はできるように、それはもう日頃からの研究・練習の成果ですね」

(取材協力:ボルボ・カーズ港・中央)

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