総合力を試されるショートコースコンマ差の戦いを制し井手川直樹が3連勝 「ダウンヒルシリーズ」第8戦・菖蒲谷森林公園

  • 一覧

 マウンテンバイク(MTB)のシリーズ戦「ダウンヒルシリーズ」の第8戦が12月19、20日に兵庫県たつの市の菖蒲谷(しょうぶだに)森林公園で開催され、PRO(プロ)クラスは井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)が制し、シリーズ3連勝を飾った。(SLmedia 平野志磨子)

3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。レース後には「心身ともに充実していますからね!」と笑顔を見せた Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA3連勝を決めた井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。レース後には「心身ともに充実していますからね!」と笑顔を見せた Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

「押し上げ」が代名詞のショートコース

 2016年2月6、7日に宮崎県国富町の法華嶽DHコースで開かれる最終戦を残し、年内最後となるレースの舞台は菖蒲谷森林公園。年間を通してダウンヒル(DH)、クロスカントリー(XC)イベントを開催している関西ではよく知られた会場ということと、アクセスの良さもあって、東は東京、西は熊本から、今季最多の120人近い参加者が集まった。そのうち48人が兵庫県。地元ライダーの支持の強さがうかがえる。

ゴール直前に設けられた川越えジャンプをクリアする井上貴裕 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAゴール直前に設けられた川越えジャンプをクリアする井上貴裕 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
多くのライダーが苦戦した第1コーナー。転倒者が続出し、タイムに大きな影響を与えるセクションだった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA多くのライダーが苦戦した第1コーナー。転倒者が続出し、タイムに大きな影響を与えるセクションだった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 大会初日の19日、朝の気温は0度近くまで下がった。キーンと冷え切って霜の降りたメーン会場に、ライダーたちが集まってくる。今年から恒例となった朝一のライダーズミーティングが、2日間の大会の始まりの合図。昨年とはコースとメーン会場が変更され、公園の奥にある砂利の駐車場がメーンエリアになり、10を越えるメーカーやショップブースがずらりと並んだ。

メーン会場は昨年から変更して、公園内奥のエリアを使用した。日が射すと暖かい Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAメーン会場は昨年から変更して、公園内奥のエリアを使用した。日が射すと暖かい Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
自転車イベントに精通するチームリアルから、地元のMCアケが菖蒲谷の実況を担当した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA自転車イベントに精通するチームリアルから、地元のMCアケが菖蒲谷の実況を担当した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 会場には搬送施設がなく、スタート地点までの「押し上げ」が菖蒲谷の代名詞にもなっている。そんななか、今回用意されたのは楽に押し上げてたっぷり下るレイアウト。スタート直後のダウンヒルらしい急斜面に始まり、ラインの選び方によって難易度の変わるドロップオフ、タイトなコーナー、オフキャンバー、上り返し、人工のジャンプセクションなどが詰まっており、ショートコースながら総合的な技術力が問われる。

引退した斉藤亮へセレモニーを開催

 初日のタイムドセッションでは、予想通りプロライダーは全員が1分切り。そんななか、唯一52秒990というタイムを叩き出した井手川がトップに立ち、54秒853の阿藤寛(Topknot Racing)、55秒776の向原健司(MAGURA/KABUTO/RR)が続いた。

いつも混戦になるエリート男子クラスでは、試走は1本だけという1999年DHアジアチャンピオンの竹本将史(TREK JAPAN)が59秒403を出し、ベテランの貫禄とスキルを見せつけた。

ダウンヒルシリーズオフィシャルDJとしても活躍する竹本将史(TREK JAPAN)。さすがの走りでエリートクラス2位となった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAダウンヒルシリーズオフィシャルDJとしても活躍する竹本将史(TREK JAPAN)。さすがの走りでエリートクラス2位となった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
いつもはワークスチームのメカニックとしてCJを転戦するジャイアントの岡田壮太郎、今回はエキスパートクラスに参戦 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAいつもはワークスチームのメカニックとしてCJを転戦するジャイアントの岡田壮太郎、今回はエキスパートクラスに参戦 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 タイムドセッション終了後には、11月に引退を発表したXCプロライダー斉藤亮(Bridgestone Anchor Cycling Team)の引退セレモニーを開催。XCライダーとして、公式戦だけでなく合宿などで何度も菖蒲谷を訪れていたという斉藤。思い出深いこの会場へダウンヒルシリーズ開催のタイミングでたまたま遊びに来たことから、セレモニーが企画された。

 斉藤はシーズン後に急な引退発表をしたため公のセレモニーが行われていなかった。花束を渡し「お疲れさま」という言葉をかけるための簡単なものではあったが、参加者やDHプロライダーが集まった。斉藤の口から語られる引退への経緯や今の気持ちに耳を傾け、同い年で共にマウンテンバイク(MTB)界を引っ張ってきた井手川から感謝の言葉が送られた。

“ハードテールの神”がプロに挑戦

穏やかに晴れた週末、押し上げのコースながら参加者は午前中いっぱいまで試走を繰り返した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA穏やかに晴れた週末、押し上げのコースながら参加者は午前中いっぱいまで試走を繰り返した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 大会2日目の20日も気温は低かったが、空は晴れ渡った。朝からライダーが試走を重ねるにつれ、ドライな路面が掘れて少しずつ滑りやすくなっていく。パンクやコースアウト、川ポチャが続出するなか、エリートクラスでは土曜日のタイムドセッションを走らなかったため早々に出走した増田直樹(DTC)が55秒311を記録。タイムドセッションの総合ランキングで見ると、井手川、阿藤に次ぐ3位のタイムだった。

 増田はどんなコースにもハードテールバイクで挑むことから“ハードテールの神”と呼ばれ、ショートダウンヒルレースを荒らしてきた。タイムドセッション1位で最終走者の竹本はこれを上回れず、56秒128。レース後、「できるだけ減速しないように走りました。ゴールした後は最終走者がゴールするまでドキドキしながら待ちました。ハードテールでもここまでできるっていうのを、これからも見せつけていきたいと思います!」と話した。

 第2戦のSRAMPARKで3位、第4戦の福井和泉では2位と1つずつ順位を上げていた増田は、プロクラスへ挑戦する「下克上」のチャンスを初めて手にした。そしてプロクラスの1番走者でスタート。フィニッシュ後、ニヤリと笑って出したタイムは、先ほどの55秒という自身のタイムを2秒近く縮めた53秒682。これぞ“神”の真骨頂か。

第5戦の瑞穂大会で負傷して以来、3戦ぶりに登場した加藤将来(AKI FACTORY/ACCEL) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA第5戦の瑞穂大会で負傷して以来、3戦ぶりに登場した加藤将来(AKI FACTORY/ACCEL) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
小学生ライダーは他のライダーを興味深そうに観察。右から山本一晴(nu style/よしむたMTBクラブ)、山本パパ、古城栄翔 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA小学生ライダーは他のライダーを興味深そうに観察。右から山本一晴(nu style/よしむたMTBクラブ)、山本パパ、古城栄翔 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

気迫と集中力で上回った井手川

上部の第2コーナーを立ち上がる浦上太郎(Transition Airline/Cleat) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA上部の第2コーナーを立ち上がる浦上太郎(Transition Airline/Cleat) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 しかし、プロライダーも意地の走りを見せた。「苦手なコースです」と話した浦上太郎(Transition Airlines/Cleat)は55秒345と伸びなかったものの、タイムドセッションでは中盤で転んでしまったという井本はじめ(SRAM/LITEC)が52秒065で、前日の井手川のタイムを上回る。「(優勝賞金の)10万円を持って家に帰らないといけないんです!」と話した2009年の全日本チャンプ、向原は53秒567で届かず。阿藤は53秒642だった。

スタート直後、最も急で直線の第一セクションを走る井本はじめ(SRAM/LITEC) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAスタート直後、最も急で直線の第一セクションを走る井本はじめ(SRAM/LITEC) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
2014年度の開幕戦以来、勝利から遠のいている阿藤寛(Topknot Racing)。貪欲な走りだったが4位となった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA2014年度の開幕戦以来、勝利から遠のいている阿藤寛(Topknot Racing)。貪欲な走りだったが4位となった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
緊張感漂うプロクラス本戦、加藤将来はこのオフキャンバーを我慢できず、コースアウトしてしまった。多くの観客の前で、コースアウトした地点まで正しくバイクを押し上げて再スタート。拍手が起こった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA緊張感漂うプロクラス本戦、加藤将来はこのオフキャンバーを我慢できず、コースアウトしてしまった。多くの観客の前で、コースアウトした地点まで正しくバイクを押し上げて再スタート。拍手が起こった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 最終走者は井手川。「試走のときから、1人だけ気迫が違った」と周りのライダーが言うほどの集中力で叩き出したのは52秒018。井本との差、たった0.047秒は気持ちの差か。フィニッシュ直後の「最高です!」という言葉とともに、KONA(コナ)の2016年モデル「PROCESS(プロセス) 153DL」に乗っての初レースで優勝。第6戦富士見パノラマ(長野)、第7戦吉無田高原(熊本)に続く3連勝を決めた。

PROクラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAPROクラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 井手川は表彰式で「菖蒲谷には初めて来ましたが、いろんなスキルが必要なテクニカルなコースでした。環境もすごく良くて、冬の間こういう所で修行して、夏のシーズンに備えるのもいいんじゃないかと思います。僕たちも全国を回りながら、プロというプライドを持ちながら、プロらしい走りを見せていきたいなと思っています」と笑顔で話した。

末政がXCクラスとエリート女子を制覇

 昨年の菖蒲谷大会でXCライダーのための「菖蒲谷CUP」がサブイベントとして開催され、そこから今年のダウンヒルシリーズ全戦における「XCバイククラス」が誕生した。長年XCの公式戦を開催するこの会場の歴史もあって、今年もWエントリーを含め、中学生女子ライダーからXCチャンピオン末政実緒(SRAM/LITEC)までがこのクラスにエントリー。その末政が、1分2秒791で優勝を飾った。

 続いて1分3秒148の0.357秒差で山田将輝(Limited846/LITEC)が2位に入った。本来はXCライダーでありながら今年からダウンヒルシリーズに積極的に参戦し、下りのスキルを驚くほど身につけ、著しい成長を見せたライダーとなった。3位は1分4秒823で郷丸勝範選手(ちゅう吉福山DH部)。

2015年に最も成長したライダーの1人である山田将輝(Limited846/Litec)。今季はスポーツ、エキスパートから勝ち上がり、エリートライダーに昇格した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA2015年に最も成長したライダーの1人である山田将輝(Limited846/Litec)。今季はスポーツ、エキスパートから勝ち上がり、エリートライダーに昇格した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
XCバイククラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAXCバイククラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 エリート女子クラスは末政が「1分が切りたかった!」と言いながらも、1分1秒150で優勝を飾った。エキスパート男子クラスは、第6戦富士見パノラマでスポーツクラスから昇格したばかりの渡辺耕平(wheelsoulbikeworks)がただ1人1分を切る58秒363のタイムで優勝。スポーツ男子クラスは広島県の浅野雅博(サザンクロス)が、ファーストタイマー男子クラスでは「ちゅう吉福山DH部」の河本章が優勝した。

エリート男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエリート男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
スポーツ男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAスポーツ男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
エキスパート男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエキスパート男子クラス表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
参加者らの集合写真 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA参加者らの集合写真 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

MTBレース ダウンヒル ダウンヒルシリーズ

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

  • タイム
    アルプデュエズ01 ディスク

    ディスクブレーキで伝統の走りを進化

  • リブ
    AVAIL ADVANCED

    走る好奇心を止めない リブの新型‟無敵”ロードバイク

  • インプレッション一覧へ

    連載