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“自転車革命都市”ロンドン便り<34>海外都市を走るハウツー 旅の準備から“ローカルルール”のポイント、おすすめアプリまで

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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ヨーロッパなどではクルマの停止線より前に自転車が信号待ちをするスペースを設けている国や地域も多い。信号のタイミングを読んで無理がない限り前にすり抜ける。イギリスは自転車も右折レーンに入るので、ここでレーン変更もできる Photo: Yoko AOKIヨーロッパなどではクルマの停止線より前に自転車が信号待ちをするスペースを設けている国や地域も多い。信号のタイミングを読んで無理がない限り前にすり抜ける。イギリスは自転車も右折レーンに入るので、ここでレーン変更もできる Photo: Yoko AOKI

 あけましておめでとうございます。2016年の自転車的目標はもうお決まりでしょうか。もしまだであれば、「今年は自転車で外国を走ってみる!」というのはいかがでしょう。距離的にも時間的にも長いツーリング旅もいいですが、まずは1週間程度の都市滞在旅や、南の島のリゾートでの休暇に自転車を加えてみると、いかに自転車が旅の質を高めてくれるか実感できておすすめです。やみつきになること請け合いです。

 というわけで、今回は自転車に荷物満載のロングツーリングというよりは海外の都市などを走ることを念頭に、注意事項やコツをまとめてみました(わたし自身の旅先自転車体験は、ヨーロッパと北米の都市は多いですが、その他の地域は弱いですのでそこはお含みおきください)。

<1>旅の準備

 自転車の調達は、「飛行機輪行」などで自分のバイクを持っていく、あるいは前回ご紹介した自転車シェアSNS「スピンリスター」を使う、あるいはオーソドックスに地元ショップのレンタサイクルを借りるなどが主な方法かと思います。旅先の気候に合わせた自転車用の服装や靴、グローブなどを用意するのもお忘れなく。

<2>自転車の法規をチェック!

 ヨーロッパと北米、中国や東南アジアについては、車道のどちら側を走るかという違いがあっても、交通標識などは日本のものとそう大きくは変わらないので、常識的に判断していけば通じると言えます。

一方通行は自転車にも厳しく適応されるので、このような「ただし自転車をのぞく」サインがなければきちんと守ること。自転車も車両というルールは厳しい Photo: Yoko AOKI一方通行は自転車にも厳しく適応されるので、このような「ただし自転車をのぞく」サインがなければきちんと守ること。自転車も車両というルールは厳しい Photo: Yoko AOKI

 日本の自転車常識と大きく違う点は歩道走行。これはどこの国でも原則絶対ダメと考えておいてください(歩道上に自転車レーンがある場合はもちろん除きます)。歩行者にたしなめられたりもします。同様に一方通行の逆走は自転車も絶対禁止。自転車道の整備が進む中、各国で一通の逆走が可になっている区間も増えつつありますが、“基本ダメ”と肝に命じてください。自転車はいわゆる原チャリ(原付バイク)と同じような扱いだと考えるとわかりやすいかもしれません。

 日本では横断歩道でクルマや自転車が歩行者に譲るという法律は運転免許試験が終わった瞬間に忘れられているようですが、イギリスでは横断歩道を渡りたそうな歩行者がいたら、自転車もきちんと止まって譲ります。でもフランスの横断歩道は日本と同じような感じなのでこれは国や地域によるようです。

 そして、ヘルメット。オーストラリアとニュージーランド、カナダの一部でヘルメット着用が強制で、かぶっていないと数万円の罰金刑になることもあるそうなので要注意です。アメリカ合衆国は州や地域によって条例などで義務付けられているけれど実際守っている人は多くないなど、ばらつきがあるので事前にチェックを。ヨーロッパは18歳以上はヘルメットフリーですが、言わずもがな個人の判断です(イギリスでのヘルメット義務化議論については過去の記事もご覧ください )。ヘルメットをかぶっている人がほとんどいない自転車大国オランダでも、ロードバイクのトレーニングをしている人たちは被っていました。

ヨーロッパは自転車の二列縦隊走行は基本OK。道路の幅によっては1列で長く数珠つなぎになっているよりもクルマにとっては抜きやすいので、状況に応じて1列と2列を使い分けることがサイクリストにも奨励されている Photo: Yoko AOKIヨーロッパは自転車の二列縦隊走行は基本OK。道路の幅によっては1列で長く数珠つなぎになっているよりもクルマにとっては抜きやすいので、状況に応じて1列と2列を使い分けることがサイクリストにも奨励されている Photo: Yoko AOKI
日本ほどは多くないけれどヨーロッパにもある車歩道を示す標識はこのタイプ。クルマの流れが速い幹線道路沿いに多い Photo: Yoko AOKI日本ほどは多くないけれどヨーロッパにもある車歩道を示す標識はこのタイプ。クルマの流れが速い幹線道路沿いに多い Photo: Yoko AOKI

 ヨーロッパに多いラウンドアバウト(ロータリー式交差点)の走り方は、押さえておくとよいポイントです。あとは、パリは最近、赤信号時でも自転車の右折(日本での左折に相当)に限り、安全を確認後に走行が可能になりました。体験できたら面白そうです。

<3>法規未満の「街のルール」を読む

手信号を使おう。手信号も地域によってバリエーションはあるけれど、曲がる方向を手で示すなど、基本は一緒。さらにわざと大きく後ろを振り返って後続車に進路変更の意思を見せたり、可能ならアイコンタクトをして指先で軽く会釈するなど饒舌に Photo: Yoko AOKI手信号を使おう。手信号も地域によってバリエーションはあるけれど、曲がる方向を手で示すなど、基本は一緒。さらにわざと大きく後ろを振り返って後続車に進路変更の意思を見せたり、可能ならアイコンタクトをして指先で軽く会釈するなど饒舌に Photo: Yoko AOKI

 意外に大切なのがコレ。日本でも都市を移るとクルマの運転のローカルルールがガラリと変わることがありますが、まさにそれです。旅先で走り始めたら、まわりの自転車乗りの様子をよく観察して、街の掟(おきて)を発見・吸収しましょう。とくに、歩行者やバスを含め、道路を行き交うクルマや自転車がどこでどう譲りあうのか・譲らないのか、その結果不満そうにしているのか・納得しているのか…路上の阿吽(あうん)の呼吸ポイントを読み取るのが安全のために大切です。

 とくにヨーロッパの都市は、程度の差はあれ、どこも歩行者がかなりワイルドで、信号が何色であろうと信号がなかろうと、隙があれば渡らないのは恥とばかりにガツガツ突っ込んで来ます。こちらを伺う視線を感じたら来るかもしれないと用心し、時には気合を見せて牽制することも自衛のために必要です。

 郊外に出ると道で乗馬中の人に会うこともしばしばあると思います。馬にはとくに注意をしてください。馬は自転車に驚くことが多いようで(オオカミの群れか何かと本能的につながるのかもしれません)、パニックを起こして騎手を振り落とし、ひとりで暴走してどこかでクルマと衝突…という話も聞きます。見かけたら徐行し、後ろからなら騎手にやさしいトーンで声をかけて知らせ、できるだけ距離を開けてゆっくりと抜きます。

馬を見かけたら即徐行。観光地を回る馬車馬などはよく慣れているけれど、警察官が乗る馬でさえ、自転車は馬を驚かせるから近づかないようにとキツく注意されたことがあります Photo: Yoko AOKI馬を見かけたら即徐行。観光地を回る馬車馬などはよく慣れているけれど、警察官が乗る馬でさえ、自転車は馬を驚かせるから近づかないようにとキツく注意されたことがあります Photo: Yoko AOKI
自転車は盗まれるのが普通と思っておいて間違いなし。できればこのような自転車用駐輪ラックに、Dロックなど断ち切りにくい金属のロックで2箇所固定を。ホイールやサドルだけ、最近はデュアルコントロールレバーなどコンポの一部をとられることもあるので高級車は最大限の注意を Photo: Yoko AOKI自転車は盗まれるのが普通と思っておいて間違いなし。できればこのような自転車用駐輪ラックに、Dロックなど断ち切りにくい金属のロックで2箇所固定を。ホイールやサドルだけ、最近はデュアルコントロールレバーなどコンポの一部をとられることもあるので高級車は最大限の注意を Photo: Yoko AOKI

 そして自転車泥棒。ロンドンについてはこれも過去記事に書きましたが、ロンドンほどでなくても世界の大都市では自転車泥棒が元気に活躍していると考えたほうがいいでしょう。これも街で他の自転車がどのようなロックでとめられているのかを観察し、必要とあればロックを買い足して用心してください。

<4>自己主張して走る

 日本ではスーパーのレジの人とあまり話さないけれど、欧米ではよく話すように、道路上でも欧米の人はよくコミュニケーションをします。手信号やジェスチャー、アイコンタクトや顔の表情を日本の10倍は使って、自分の進みたい方向などを伝えて自己主張をしましょう。それが事故を防ぐために大きく貢献すると実感しています。そして譲ってもらったら片手を上げて、片手を上げる余裕がなければ口パクと笑顔でお礼を。

<5>アプリを使いこなそう

 無料で使える世界カバーの地図プロジェクト「オープンストリートマップ(OSM)」の自転車版、「オープンサイクルマップ」をダウンロードしてWi-Fi不要で使えるスマートフォンアプリが多数出てきています。わたしは「View Ranger」という無料アプリをよく使っているのでおすすめします。iOS、アンドロイド共によく対応しています。

神アプリと褒めたい都市ナビアプリ「Citymapper」で自転車用のルートをだしてみた図。交通量の少ない通りを優先して選ぶこともできる神アプリと褒めたい都市ナビアプリ「Citymapper」で自転車用のルートをだしてみた図。交通量の少ない通りを優先して選ぶこともできる
ロンドン同様、訪れるたびに自転車インフラがみるみる進歩しているパリ。左側通行の国から訪れると、最初の半日は右左折時に苦労するのは変わらない… Photo: Yoko AOKIロンドン同様、訪れるたびに自転車インフラがみるみる進歩しているパリ。左側通行の国から訪れると、最初の半日は右左折時に苦労するのは変わらない… Photo: Yoko AOKI

 大都市であれば、「Citymapper」という無料ナビアプリがiOS・アンドロイド対応で、もはや神アプリレベルです。ロンドン、NYC、パリ、ベルリン、バルセロナ…対応都市が増えていて、地下鉄やバスなどでの移動のほか、自転車でのナビも提供されていてすばらしいです。Wi-Fi接続でルートを割り出したら、そのルートを手元のスマホなどにダウンロードして移動中に使うこともできます。

<6>念のため

ウィーンも自転車レーンが新しくたくさん作られてきているけれど、どうもオランダのようには練れていない印象でつながりがとても悪く、まだ走りにくかった。次回に期待したい Photo: Yoko AOKIウィーンも自転車レーンが新しくたくさん作られてきているけれど、どうもオランダのようには練れていない印象でつながりがとても悪く、まだ走りにくかった。次回に期待したい Photo: Yoko AOKI

 基本中の基本ですが、自分の旅行保険が旅先での自転車乗車中の事故をカバーしているか、自分の治療費などはもちろん、第三者への賠償責任保険がついているかどうかを確認しておきましょう。

 そして、最終的には自分の判断が大切だということも蛇足ながら付け加えさせてください。西洋の価値観では個人がルールよりも上位に来ます。自転車まわりのルールやインフラも、個人が安全のためなどに必要だと判断したら破られることを前提に作られているし、人々もそれを許容する傾向が強いので、ゆるい局面がしばしば見受けられます。あまりこだわらず、その場その場で自分や周りの人のハピネスを最大化できる判断をすることが歓迎されます。抽象的な表現で恐縮なのですが、きっと海外ライド中にこれを痛感することがあると思います。

◇         ◇

 自転車でこそ見られる街の素顔、自転車でないと見られない風景、そしてそこに暮らす人々の価値観や生き様までを短時間に味わえるのが自転車のある旅だと思います。まだの方は、ぜひ今年はチャレンジしてください。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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