サンケイスポーツ紙 連載よりオールスター決勝1位入線も失格、ファンの無念さを知り反省 井上茂徳氏『私の失敗』<3>

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 私がデビューしたのは1978年。そのときすでに中野浩一さんは世界で活躍していました。目標どころか、あこがれの存在でした。とはいえ、一緒に走ったときはお互い真剣勝負。ゴール前では勝つために全力で抜きにいきました。3年後には中野さんを追い込んでタイトルを獲れるまでになりました。

<2>世界の中野に勝ってしまった、88年の高松宮杯決勝

一枚岩の九州が分解 自分の思い貫く

第44回日本選手権の決勝戦。井上氏は中野浩一氏と決別した =1991年3月、一宮競輪場(JKA提供)第44回日本選手権の決勝戦。井上氏は中野浩一氏と決別した =1991年3月、一宮競輪場(JKA提供)

 しかし、1991年の一宮ダービー(日本選手権、愛知・一宮競輪場)では、ライン構成において予想外の事態が起こりました。

 九州から決勝に進出したのは私、中野さん、江嶋康光、平田崇昭、小川博美の5人。中野さんの意向は「福岡は4人でまとまる。シゲ(私)は千葉の鈴木誠の後ろに行けばいい」というもの。「シゲは日本一のマーク屋なのだから、一番強い自力型の後ろで勝負すればいいんだ」。

 新聞記者からは「大阪の金田健一郎に福岡4人が付けることになった」と聞かされました。それでも私は周りに左右されなかった。鈴木誠には同じ東日本ラインで茨城の坂巻正巳が付くので、私は目標を金田に絞りました。

 レースは久留米の先導役を買って出た平田が中野さんを連れて先制し、これを鈴木が強引にたたいた。金田-私がまくり上げて行ったら鈴木誠に大きくブロックされて…。金田と私は落車してしまいました。結局、鈴木の後ろにいた坂巻にVロードが開けました。

 それまで九州は“一枚岩”で結束してきましたが、このときばかりは「中野さんなりの考えがあるのなら私も私なりに-」と自分の思いを貫きました。

 それが発端で「今後はお互い好きに走ろう」ということになり、その年7月のふるさとダービー福井では私と中野さんは吉岡稔真の番手で競ることになった。しかし、私には反省すべき点があったので、そんなことをいつまでも続けようとは思わなかった。後々には争う構図ではなく、中野さんと並んで自然にラインを形成しています。戦いの中で自分の気持ちを表現できたと思います。

一か八か インに突っ込み

 ほろ苦い思い出は他にもあります。幻の優勝、決勝で1着失格になった1992年の名古屋オールスターです。全盛期だった吉岡稔真に私が付けて、3番手には平田崇昭。松本整を連れた海田和裕がジャン(残り1周半を知らせる打鐘)で前に出て先行しました。

 吉岡は後方に下げてから一気に仕掛ければよかったのに、そのときばかりはなぜか中途半端で。海田のペースになり、まくり上げた吉岡のスピードはいつものそれではなかった。伸びがなく、なかなか進まなかったところ、鈴木誠にブロックされて失速。そこで私はインコースに突っ込んだ。

 ただ惰性がついていないから、番手の松本に当たったら降りて来られて閉め込まれる。そうなったら終わりです。勢いがついていて余裕があれば松本に当たっても行けただろうけど、当たって抜きにいったら優勝はない。そこで前を見たら、逃げている海田の内が空いた。優勝するには一か八かそこに突っ込んで行くしかないと。

 「うッ!」。私が内に差し込むと同時に海田が降りてきた。明らかにインコースが閉まっていたところを強引に入って行ったわけじゃない。インから抜け出た私は1位で入線したのですが、内側追い抜きで審議の対象に。祈りを込めて判定を待った。審判からは、海田の内が空いていない状態で私がインコースに入ったとみなされ、失格です。すごく悔しかったけど、勝負した結果だから…と自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせました。

 引退して車券を買う側になり、失格や落車事故があったときの無念さを知りました。あの名古屋の一戦ではファンに迷惑をかけてしまった。深く反省しましたね。

福光俊介
井上 茂徳(いのうえ・しげのり)

1958(昭和33)年3月20日生まれ、57歳。佐賀県出身。78年に日本競輪学校41期生としてデビュー。81年の立川オールスター制覇を皮切りに、特別競輪(現GI)優勝は通算9回。グランプリ優勝は3回。88年に高松宮杯を制し、競輪界初のグランドスラム(特別競輪全冠)を達成した。99年3月に現役を引退。通算成績は1626戦653勝、優勝154回。生涯獲得賞金は15億6643万4532円。現在は競輪解説者として活躍している。

SANSPO.COMより)

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