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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<2016新春特別編・前編>ツール・ド・フランス2016を大展望 4賞ジャージ有力選手を紹介、日本人選手の出場は?

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレースファンのみなさま、新年あけましておめでとうございます。2016年もCyclistならびに「週刊サイクルワールド」をどうぞよろしくお願いします。ロード界は今年もグランツール、クラシック、ロード世界選手権、そしてリオ五輪…と注目のビッグレースが目白押し。そんなわけで、新春恒例となりました、「ツール・ド・フランス大展望」を今年も2回にわたってお届けします。<前編>では4つのリーダージャージの有力候補や、重要なポイントになりそうなステージ、そして2年ぶりとなる日本人選手出場の可能性に迫ります。

ツール・ド・フランス2015ではマイヨヴェールをペテル・サガン(左)、マイヨジョーヌとマイヨアポワをクリストファー・フルーム(中央)、マイヨブランをナイロアレクサンデル・キンタナが獲得した Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス2015ではマイヨヴェールをペテル・サガン(左)、マイヨジョーヌとマイヨアポワをクリストファー・フルーム(中央)、マイヨブランをナイロアレクサンデル・キンタナが獲得した Photo: Yuzuru SUNADA

史上初のモン・サン・ミシェル開幕

 昨年10月に発表されたツール2016のコースを改めて確認していきたい。

ツール・ド・フランス2016の全行程 Photo: A.S.O.ツール・ド・フランス2016の全行程 Photo: A.S.O.

 グランデパール(開幕地)には、モン・サン・ミシェルがツール史上初めて選出された。3週間のフランス一周の旅は、“西洋の驚異”とされるカトリック巡礼地で始まる。

 以降、フランス西部を南下し、第5ステージから中央山塊へ。大会前半のヤマ場となるピレネー山脈へと向かっていく。ピレネーの小国・アンドラ公国のアンドラ・アルカリスを目指す第9ステージが、今大会最初の頂上フィニッシュとなる。

 第2週からは東へ針路をとる。大注目は7月14日の第12ステージ、フランス革命記念日に“魔の山”モン・ヴァントゥの頂上フィニッシュが設けられたことだ。続く第13ステージでは、この大会最初の個人タイムトライアル(TT、37km)が待ち受ける。この週最終日となる第16ステージでは、ツール史上初めてプロトンがスイスの首都・ベルンへと足を踏み入れる。

 運命の第3週は、アルプスでの4連戦。第18ステージでは、ツールで12年ぶりに山岳個人TT(17km)が実施される。第19ステージのサン・ジェルヴェ・モン・ブランは、この大会最後の頂上フィニッシュ。登坂距離10km、平均勾配8%の上りが選手たちを苦しめる。事実上、総合争いにおける最後の勝負は第20ステージ。146kmとレース距離は短いが、4つの山岳を通過する難コース。第17~20ステージの4日間でツール2016の王者がほぼ決定する。

第20ステージで通過する山岳ポイント。フィニッシュ地・モルジヌへは約10kmのダウンヒル(右) Photo: A.S.O.第20ステージで通過する山岳ポイント。フィニッシュ地・モルジヌへは約10kmのダウンヒル(右) Photo: A.S.O.

 そして、パリ・シャンゼリゼでの第21ステージで、大会はフィナーレを迎える。

 総距離は3519km(ステージ平均167.6km)。平坦ステージ9、中級山岳ステージ1、上級山岳ステージ9(うち頂上フィニッシュ4)、個人TTステージ2、休息日2で構成され、チームTTや石畳ステージは設けられない。

各賞ジャージの有力選手と重要ステージ

 ここからは、4つのリーダージャージをめぐる争いの有力選手をピックアップし、そのポイントとなるステージを予想していきたい。ぜひ参考にしていただき、ツール2016の予習に活用してほしい。

マイヨジョーヌ(個人総合時間賞)

 栄光の黄色いジャージに袖を通すのは誰か。

 昨年のツールでは“ファンタスティック4”が目玉となったが、そのうちの3人、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム)、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が今年も軸となりレースが展開されていくだろう。そこに、ツール初出場を予定している昨年のブエルタ・ア・エスパーニャ王者、ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム)が加わり、“新・ファンタスティック4”が中心になると見ている。

前回王者のクリストファー・フルーム(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA前回王者のクリストファー・フルーム(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 なかでも、前回王者のフルームが最有力候補と言えそうだ。好調時に見せる、一瞬でライバルを蹴散らす山岳でのアタックは驚異的。また、第13ステージに待つ個人TTの距離が37kmあり、長距離TTを得意とするフルームにピッタリなところも見逃せない。8月のリオ五輪では個人TTでの金メダル獲得を目指しており、ツールでお手並み拝見といきそうだ。このステージでライバルに差をつけるようであれば、その後のステージでもフルームの独壇場となる可能性が高い。

登坂力と第3週の強さが持ち味のナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA登坂力と第3週の強さが持ち味のナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 前回総合2位のキンタナは、3週目の強さが知られるところ。疲労の色が見え隠れするライバルたちを尻目に、次々と攻撃に出る姿を今年のツールでも見られることだろう。頂点に立つためには、第13ステージの個人TTでフルームら有力選手にタイム差を広げられないことが重要となる。また、エンジンが温まる前の第1週に遅れを喫することなくレースを進めていきたい。

今シーズン限りでの引退を表明しているアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADA今シーズン限りでの引退を表明しているアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADA

 2016年シーズン限りでの引退を表明し、最後のツールとなることを公言しているコンタドールは、何としても王座奪還で有終の美を飾りたい。こちらもカギを握るのは第13ステージか。かつて得意としていた個人TTでフルームと同等、または上回る走りを見せれば、勝負は一気に面白みを増す。先手で優位に立ち、大会終盤のアルプスで直接対決に持ち込めるか。

グランツール初制覇を成し遂げたファビオ・アールが初参戦する(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADAグランツール初制覇を成し遂げたファビオ・アールが初参戦する(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロ・デ・イタリア総合優勝を狙うヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)に代わって、アスタナのエースを務めるアールは4つの頂上フィニッシュを征服できるかがポイント。個人TTを上位でまとめる走力はあるだけに、フルームらとの差を上りで挽回できれば初出場初優勝も見えてくる。

 ティージェイ・ヴァンガードレン(アメリカ、BMCレーシングチーム)は、得意のTTで上位に立ち、その後の山岳でも粘りの走りで上位をうかがいたいところだ。前回まで3大会連続で総合トップ10入りを果たしているバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)は、鬼門の個人TTいかんで総合表彰台が狙えそう。前回総合6位のロベルト・ヘーシンク(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ)は、大会前半のピレネーステージから好位置をキープしてアルプスに臨みたい。

 地元フランス勢は、ロマン・バルデ(アージェードゥーゼール ラモンディアル)、ワレン・バルギル(チーム ジャイアント・アルペシン)、ティボ・ピノー(エフデジ)の3選手が期待を一身に背負う。いずれも、ステージごとに調子の波を減らし、安定して上位をキープできるかどうか。

 こうして見ていくと、個人TTの出来がマイヨジョーヌを争ううえで大きなウエイトを占めてくることは間違いなさそうだ。

マイヨヴェール(ポイント賞)

 9つある平坦ステージでは、スプリンターが主役となる。ステージの難易度に応じてポイント配分が異なり、平坦ステージは上位選手に与えられるポイントが大きくなる。

 マイヨヴェール5連覇がかかるペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ)は、世界王者の証・マイヨアルカンシエルでツールに参戦。ここ2年はステージ優勝を挙げられていないが、確実な上位フィニッシュと中間スプリントポイントでの“貯金”が奏功している。ピュアスプリンターと比較し、登坂力に勝るのは強み。必要とあれば逃げグループに潜り込んで中間スプリントをトップ通過してしまうことさえある。基本的な戦い方はこれまでと同様と見られるが、今年は3年ぶりのステージ勝利もほしいところだ。

マイヨアルカンシエルを着てマイヨヴェール5連覇に挑むペテル・サガン(アブダビ・ツアー2015) Photo: Yuzuru SUNADAマイヨアルカンシエルを着てマイヨヴェール5連覇に挑むペテル・サガン(アブダビ・ツアー2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 “サガン的戦術”を可能とする選手を挙げるとするならば、アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)の2人か。「上れるスプリンター」として、平坦・上りあらゆるコースレイアウトでスプリント力を発揮する。あとは、どれだけポイント賞争いに色気を見せるか。いずれもチームオーダーで総合系ライダーのアシストを任されるケースもあり、すべてのステージで自由を与えられるかは未知数だ。

代表的な「上れるスプリンター」の一人であるアレクサンドル・クリツォフ(ツール・デ・フランドル2015) Photo: Yuzuru SUNADA代表的な「上れるスプリンター」の一人であるアレクサンドル・クリツォフ(ツール・デ・フランドル2015) Photo: Yuzuru SUNADA
ツール・ド・フランス2015ではポイント賞3位だったジョン・デゲンコルプ(ミラノ~サンレモ2015) Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス2015ではポイント賞3位だったジョン・デゲンコルプ(ミラノ~サンレモ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は2015年大会でステージ4勝を達成。最終ステージのパリ・シャンゼリゼでのフィニッシュも制し、長年の悲願を達成した。グライペルのねらいはあくまでもステージ優勝で、グリーンのジャージにはさほど興味を示さない。しかし平坦ステージが多い大会序盤で勝利を量産し、ジャージを着続けるようなことがあれば、そのスタンスに変化が見られるかもしれない。

 5年ぶりのマイヨヴェール奪還を目指すのは、ディメンションデータに移籍したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)。新たな環境での再出発に、アシスト陣のお膳立ても含めて準備を整える。マーク・レンショー(オーストラリア)、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)らがスプリントトレインを形成し、絶好のポジションからカヴェンディッシュが放たれれば、ステージ優勝を重ね、ポイント賞戦線に名乗りを挙げることだろう。

前回はステージ4勝を挙げたアンドレ・グライペル(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA前回はステージ4勝を挙げたアンドレ・グライペル(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA
新天地でマイヨヴェール奪還を狙うマーク・カヴェンディッシュ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA新天地でマイヨヴェール奪還を狙うマーク・カヴェンディッシュ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 同様に環境を変えてシーズンを迎えるマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は、体調不良で出場を逃した前回からの雪辱戦となる。昨年、カヴェンディッシュらを撃破するなど、プロデビュー前からスピードはワールドクラスの域に達するフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア)がチームメートとなり、2枚看板でツール本番に臨むことも考えられる。

 フレンチスプリンターのブライアン・コカール(ダイレクトエナジー)、アルノー・デマール(エフデジ)、ナセル・ブアニ(コフィディス ソリュシオンクレディ)らも虎視眈々と勝機をうかがう。

マイヨアポア(山岳賞)

2015年は総合優勝のクリストファー・フルームがマイヨアポワを獲得した Photo: Yuzuru SUNADA2015年は総合優勝のクリストファー・フルームがマイヨアポワを獲得した Photo: Yuzuru SUNADA

 頂上フィニッシュが4つと、前回(5つ)より減っていることもあり、総合系ライダーだけでなく逃げを得意とする選手にもチャンスがあると見られる。また、総合争いから大きく遅れをとるクライマーが山岳賞争いにシフトしてくる可能性もある。

 一方で、総合争いが活性化するようだと、山岳ステージでの逃げがスムーズに決まらず、上級山岳でのポイントが総合上位陣の手に渡るケースも考えられる。

 開幕時から山岳賞だけを狙って走る選手は多くないだけに、大会全体の流れと運が大きな要素となってくる。

マイヨブラン(新人賞)

 25歳以下の選手が対象のホワイトジャージ。今年は1991年以降生まれで総合最上位の選手がジャージ着用の栄誉にあずかる。

ゴールデンエイジが新人賞を“卒業”することでマイヨブランの有力候補になったワレン・バルギル Photo: Yuzuru SUNADAゴールデンエイジが新人賞を“卒業”することでマイヨブランの有力候補になったワレン・バルギル Photo: Yuzuru SUNADA

 ここ数年プロトンを支えてきた「ゴールデンエイジ」、1990年生まれの選手たちが新人賞を“卒業”。大きな変化のときがやってきた。

 ちなみに、1991年以降生まれで前回の最上位は、総合14位だったバルギル。今年は最も新人賞に近い位置にいるといえそうだ。対抗馬は1992年生まれ、アダムとサイモンのイェーツ兄弟(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)あたりか。

日本人選手出場の可能性は?

 最後に、日本人選手がツールに出場する可能性と、出場チームについて押さえておきたい。

 日本人選手のツール出場が実現すれば、2014年以来2年ぶりとなる。なかでも有力なのは、UCIワールドチームで走る2選手。

 新城幸也(ランプレ・メリダ)は、7年間所属したチーム ヨーロッパカー(2009年から2年間はBボックスブイグテレコム)を離れ、UCIワールドチームのなかでも伝統のあるチームへの移籍を果たした。イタリア籍ながら国際色豊かなチーム。首脳陣も即戦力として期待しているといい、ツール出場を前提にシーズンを過ごすことだろう。メンバー入りすれば2年ぶり7回目の出場となる。

ランプレ・メリダへ移籍する新城幸也は、新天地でのツール出場を狙う(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADAランプレ・メリダへ移籍する新城幸也は、新天地でのツール出場を狙う(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 2009年以来7年ぶりの出場を目指すのは、別府史之(トレック・セガフレード)。近年はジロ・デ・イタリアを軸に据えたレースプログラムを設定していたが、今年はツールを意識したスケジュールを求めていくとしている。昨年はジロ完走に加え、ツールのロングリスト(最終候補選手)入りをしており、平坦・山岳を問わずオールラウンドに走る器用さでチームを引っ張る。エースを支えるアシストとして、そしてチャンスとあれば逃げを試みる姿をフランスでの3週間で見せられるか。

2009年以来7年ぶりの出場を目指す別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA2009年以来7年ぶりの出場を目指す別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA

 出場チームについては、第1カテゴリー(UCIワールドチーム)の18チームは自動選出される。

出場確定チーム

アージェードゥーゼール ラモンディアル(フランス)
アスタナ プロチーム(カザフスタン)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
キャノンデール プロサイクリングチーム(アメリカ)
ディメンションデータ(南アフリカ)
エティックス・クイックステップ(ベルギー)
エフデジ(フランス)
イアム サイクリング(スイス)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・ソウダル(ベルギー)
モビスター チーム(スペイン)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チーム ジャイアント・アルペシン(ドイツ)
チーム カチューシャ(ロシア)
チーム ロットNL・ユンボ(オランダ)
チーム スカイ(イギリス)
ティンコフ(ロシア)
トレック・セガフレード(アメリカ)

 残る4つの椅子を第2カテゴリー(UCIプロコンチネンタルチーム)が争う。有力なのはフランスを本拠地とし、ツール出場実績も豊富なコフィディス ソリュシオンクレディ、ダイレクトエナジー(旧・チーム ヨーロッパカー)、フォルトゥネオ・ヴィタルコンセプト(旧・ブルターニュ・セシェ アンヴィロヌモン)の3チーム。過去2年間出場しているボーラ・アルゴン18(ドイツ)も戦力が充実しており、選出される可能性が高い。

◇         ◇

 <後編>では、各ステージのレース展開を予想していきます。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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