国内屈指のシクロクロス大会に成長人と人との笑顔があふれる大会に 6年目を迎えた「Rapha スーパークロス野辺山」レポート

by 小俣雄風太 / Yufta OMATA
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 2010年に「野辺山シクロクロス」として長野県南牧村で初開催されたイベントは、今年「Rapha スーパークロス野辺山」として6回目を迎え、11月28、29の2日間で1099名のレーサーが走り、のべ4000人が会場を訪れた国内でも屈指のシクロクロスレースに成長を遂げました。6年目の「野辺山」の盛り上りと、大会がもつビジョンを、運営側の視点からレポートします。(Rapha Japanプレス 小俣雄風太)

雄大な八ヶ岳に見下ろされる滝沢牧場内のコース Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama雄大な八ヶ岳に見下ろされる滝沢牧場内のコース Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

シクロクロス人気のさきがけ

2010年に初開催された野辺山シクロクロス。女子の表彰台で笑顔がはじける Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama2010年に初開催された野辺山シクロクロス。女子の表彰台で笑顔がはじける Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 近年、日本ではシクロクロスの人気が高まっています。規模こそ小さいものの、競技人口は拡大し、そしてレースイベントの数も確実に伸びています。自転車メディアがシクロクロスを取り上げる割合も増え、秋から冬にかけ自転車愛好家のソーシャルメディア上では多くのシクロクロス会場で撮られた写真やコメントがあふれます。

 ブームと呼ぶにはいささか局所的かもしれませんが、国内におけるこのシクロクロス熱の高まりに野辺山シクロクロスが果たした役割は小さくありません。2010年、初開催の野辺山は400人ほどの参加者を集めるばかりでしたが、野辺山をきっかけとし、ファン要素を高めて構想された秋ヶ瀬の森バイクロアが2011年に、シクロクロス東京が2012年にそれぞれ始まるなど、国内の個性あるシクロクロスレースが最近の数年間に花開いています。野辺山シクロクロスが提示した「シクロクロスレースをプロデュースする」という形がこのブームに寄与しています。

大会オーガナイザーの矢野大介は2008年からこの野辺山を拠点に活動 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama大会オーガナイザーの矢野大介は2008年からこの野辺山を拠点に活動 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 信州に始まり、関西で定着していた国内のシクロクロスレースに、プロデュースを加えたのは大会オーガナイザーの矢野大介です。アメリカで育ち、アメリカの自転車カルチャーの中にいた彼は、一足先にブームを迎えていたアメリカ式のシクロクロスレースを持ち込みました。いまではお馴染みのカウベルや、それぞれにこだわりとスタイルのある飲食ブースの出展、デザイン要素をふんだんに取り入れた会場全体のブランディング、そしてウェブを通じての広範な情報発信。会場の滝沢牧場の牧歌的な空間と相まって、レースに出るのはもちろん、観戦だけでも楽しめるイベントに仕立て上げました。

牧場内の開放的な景色の中を走るコース Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama牧場内の開放的な景色の中を走るコース Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
野辺山の目指すレースの形は、観戦して楽しいこと Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama野辺山の目指すレースの形は、観戦して楽しいこと Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
初開催となった2010年のワンシーン。ギャラリーの数も大会と共に成長 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama初開催となった2010年のワンシーン。ギャラリーの数も大会と共に成長 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 初回の野辺山の運営開催は、日本のシクロクロスを作り上げてきた信州・関西の関係者の尽力なくしては語れないものです。シクロクロス発祥の地信州で培われてきた歴史と熱意、そして地域に根付いた高い水準のレース運営を毎週行ってきた関西シクロクロスのノウハウが合わさって実現したのです。野辺山は初回から南牧村の商工会のイベントとして地域の協力を仰ぐ形で開催しており、それまでシクロクロスを全く知らなかった村民がコースの設営や運営補助のボランティアとして関わっています。

コースの設営には地元南牧村商工会の村民たちがあたった Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyamaコースの設営には地元南牧村商工会の村民たちがあたった Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
毎年好評の大会オリジナルグッズはカウベル、ビールグラス、Tシャツすべて完売 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama毎年好評の大会オリジナルグッズはカウベル、ビールグラス、Tシャツすべて完売 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
走っても観戦しても楽しいイベント作りが、シクロクロスシーンのさらなる興隆のカギ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama走っても観戦しても楽しいイベント作りが、シクロクロスシーンのさらなる興隆のカギ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

6年を経て変わったこと

UCIエリートレースではハイレベルな選手たちの応酬に会場が湧く Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross NobeyamaUCIエリートレースではハイレベルな選手たちの応酬に会場が湧く Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 この初回から、第6回大会を開催した今年までの間に、色々なことが変わってきています。一番の変化は、エリートのレースをUCI(国際自転車競技連合)認定レースとして国際基準に則ったレースにしたこと。フライオーバー(立体交差)の導入、土・日の2日間開催として多くの方に楽しんでもらえるようにしたこと。人口3000人弱の南牧村にとって、2日間で人口以上の人々が訪れるRapha スーパークロス野辺山はいまや冬の一大イベントです。

 大会2年目の2011年にUCIレースとして登録したのは、国内シクロクロスの競技の側面をより強化するため。UCIレースがあることで、世界を目指す日本人選手がUCIポイントを獲得でき、世界選手権出場につながるUCIランキングの上昇に貢献できます。メジャー競技とは言えないシクロクロスで、選手には海外のUCIレースを転戦できるほどのサポート体制がないのが現状です。国内にUCIレースを増やすことで、国内選手がUCIポイントを獲得し、世界選手権のスタート位置を一列でも前にできれば、よりフラットな視点で日本のシクロクロス競技の世界的なレベルを知ることができます。とりわけ、ジュニアやU23の選手たちにとっては、世界での位置を正しく見極めることが将来を切り拓くよすがとなります。

UCI女子レースに参戦したオーストラリアチャンピオンのリサ・ジェイコブス(RAPHA-FOCUS) Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross NobeyamaUCI女子レースに参戦したオーストラリアチャンピオンのリサ・ジェイコブス(RAPHA-FOCUS) Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
2015年大会のレース運営を支えた審判団。日本各地からブレーンが集結 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama2015年大会のレース運営を支えた審判団。日本各地からブレーンが集結 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 野辺山では2日間で2戦のUCIレースを開催し、今シーズン(2015-16)は関西と東北を合わせ合計4つのUCIレースが国内で開催されました。UCIレースの開催には技術的な問題のほか金銭的な負担も主催者に大きくのしかかりますが、現在、UCIレース化に前向きな各地の主催者が来年以降の登録に向けて動き出していると聞いています。日本でUCIレースが増えれば、1週間の滞在で3つないしは4つのレースを走れる可能性もあり、海外からの選手の招致にも有利に働きます。

初日2位に入ったベン・ベルデンは前週の関西マキノから着実にUCIポイントを獲得した Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama初日2位に入ったベン・ベルデンは前週の関西マキノから着実にUCIポイントを獲得した Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 実際に、今年の野辺山初日に2位に入ったベン・ベルデン(ベルギー、WCup Stoemper)は、前週の関西マキノ前に来日してUCIレースを走り、野辺山でも活躍してUCIポイントを稼ぎました。海外選手の参加を集めることは競技全体のレベルを向上させ、選手の意識を活性化させるだけでなく、観戦者にもハイレベルなレースに息をのむスペクタクルを提供します。

海外から選手が参戦するUCIレースが、国内レースのレベルアップにも寄与 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama海外から選手が参戦するUCIレースが、国内レースのレベルアップにも寄与 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
アメリカのシクロクロススター、ティム・ジョンソンによるライドスクールは大好評 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyamaアメリカのシクロクロススター、ティム・ジョンソンによるライドスクールは大好評 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

大会成功の指針はコミュニケーション

第1回大会から実況を務めるMCがらぱさん。楽しいレースづくりに欠かせない存在 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama第1回大会から実況を務めるMCがらぱさん。楽しいレースづくりに欠かせない存在 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 アマチュアライダーが、自身が参加して楽しく、そして観戦しても楽しめるというレースを開催することは、シクロクロスシーンの興隆に重要な要素です。国内各地から集まるフードスタンドや、レースをわかりやすく伝えてくれるMC、会場の音楽や八ヶ岳の麓というロケーションに野辺山がこだわる理由です。

 そんな中、昨今の野辺山が特に力を入れるのが女性カテゴリーとキッズカテゴリー。UCIレースをはじめ、まだまだ少ない女性カテゴリーの参加人数を増やすことは競技レベルの向上のほか、単純にスタートで大人数が入り乱れるシクロクロス本来の姿でレースを楽しめることも意味します。やはりレースを通じて前後にライバルがいるというのは、苦しくとも楽しいものです。キッズカテゴリーについては、レースの結果はもちろん、『野辺山に来て自転車レースを走った』という体験を重視しています。自身の頑張りのほか、父や母が一生懸命にレースを走る姿を見た子どもたちの胸に、野辺山での時間が末長く刻まれれば、きっと自転車を好きになってくれるはずです。その中から将来の選手が生まれるかもしれません。

緊張した面持ちのキッズレーサーたちが、この日の思い出を大切にできますように Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama緊張した面持ちのキッズレーサーたちが、この日の思い出を大切にできますように Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
一般女子カテゴリーも20人を超える参加があり、今後の盛り上がりに期待がかかる Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama一般女子カテゴリーも20人を超える参加があり、今後の盛り上がりに期待がかかる Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
幼稚園以下のキッズが対象となるキンダーガーデンカテゴリーは参加費無料・当日エントリー可能に設定 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama幼稚園以下のキッズが対象となるキンダーガーデンカテゴリーは参加費無料・当日エントリー可能に設定 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 2012年には、滝沢牧場に隣接する「八ヶ岳ふれあい公園」内に、大会の収益を村に還元する形でシクロクロスコースを常設。レースのない11月以外にも野辺山を訪れたサイクリストが自由にオフロードコースを楽しめるようにしています。キッズコースも設けられており、村の子どもたちのライドセッションも不定期ながら開催されています。

 各地でシクロクロスが開催されるようになった今日、それでも首都圏や関西圏から決して近いとは言えない野辺山へ多くのシクロクロッサーに足を運んでいただいています。レースを運営するのは実行委員会ですが、レースを、そしてレース会場の雰囲気を作り上げるのは最終的に人です。人と人との距離が近い自転車競技で、最もそれが顕著なシクロクロスにおいて、笑顔があふれるライダーや観衆同士のコミュニケーションこそがRapha スーパークロス野辺山の成功の指針なのです。

仮装祭りでもあるシングルスピードクラスは毎年盛り上がるカテゴリーのひとつ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama仮装祭りでもあるシングルスピードクラスは毎年盛り上がるカテゴリーのひとつ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
シングルスピードクラスに参加した仮装ライダーたち Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyamaシングルスピードクラスに参加した仮装ライダーたち Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama
冠雪の八ヶ岳をめがけて走るダイナミックなコースをライダーたちは楽しんだ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama冠雪の八ヶ岳をめがけて走るダイナミックなコースをライダーたちは楽しんだ Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

 幸いにも、今年もたくさんの笑顔を会場で見ることができました。どうぞ参加されたみなさんは(すでに行われているかもしれませんが)それぞれの地域で、仲間や友人にご自身の野辺山での経験を雄弁に語ってください。それは、私たち運営側の人間が広報用の言葉にしたくてもできない、生きた経験であり言葉です。それがそのまま、シクロクロスの魅力を語るものになっていることを、私たちは願ってやみません。

 全日本選手権が終了し、シクロクロスシーズンも後半戦に入りました。観戦では1月末に大一番の世界選手権が、参戦では1月にも日本各地でレースがあり、2月にはシクロクロス東京が開催されます。まだまだ続くシーズンを、楽しみましょう!

苦しいレースの後には、なぜか笑顔が待っているのがシクロクロクロスの不思議 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama苦しいレースの後には、なぜか笑顔が待っているのがシクロクロクロスの不思議 Photo: Kei Tsuji / Rapha Super Cross Nobeyama

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