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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<139>現役最終年のカンチェッラーラ ツールを目指す別府 トレック・セガフレード 2016年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 今年10月のジャパンカップ サイクルロードレースの大活躍が記憶に新しいトレック ファクトリーレーシング。シーズン最終盤に見せた別府史之やバウケ・モレマ(オランダ)らの快走は、来シーズンに向け勢いをもたらしたことだろう。さらに、新シーズンを目前に新スポンサーとしてセガフレード・ザネッティ社が仲間入り。チーム名を「トレック・セガフレード」と改める。14カ国からなるバラエティに富んだメンバーと強固なチーム体制で2016年を戦うチームを展望する。

「トレック・セガフレード」で現役最後のシーズンに挑むファビアン・カンチェッラーラ(左)と、ツール・ド・フランス出場を目指す別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA「トレック・セガフレード」で現役最後のシーズンに挑むファビアン・カンチェッラーラ(左)と、ツール・ド・フランス出場を目指す別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA

セガフレード・ザネッティ社が3年のスポンサー契約

「トレック・セガフレード」の発表記者会見 Photo: Trek-Segafredo「トレック・セガフレード」の発表記者会見 Photo: Trek-Segafredo

 チームは12月16日、イタリア大手コーヒーチェーンであるセガフレード・ザネッティ社とコ・スポンサー(共同スポンサー)契約を結んだことを発表した。契約は2016年1月1日から3年間で、新シーズンから「トレック・セガフレード」の名で活動するとした。

 同社は首都圏を中心に日本国内にも34店舗を展開。全世界では600以上の店舗を持ち、メーン商品のエスプレッソのほか、酒類も提供する。ブラジルには世界最大規模の自家農園を保有するなど、世界各地のコーヒーの焙煎・抽出を行っている。世界約100カ国に生産・物流の拠点を有する「マッシモ・ザネッティ・ビバレッジ・グループ」内の一企業だ。

(左から)ルカ・グエルチレーナゼネラルマネジャー、ファビアン・カンチェッラーラ、マッシモ・ザネッティ氏 Photo: Trek-Segafredo(左から)ルカ・グエルチレーナゼネラルマネジャー、ファビアン・カンチェッラーラ、マッシモ・ザネッティ氏 Photo: Trek-Segafredo

 同日に行われた記者会見でマッシモ・ザネッティ氏は「子供の頃、父に連れられてジロ・デ・イタリアを観戦したことがある。マリアローザを着るファウスト・コッピと、イタリアチャンピオンジャージのミケーレ・バルトリにとても感動し、魅了された。その当時から、遅かれ早かれ私は自転車競技のスポンサーになろうと誓っていたんだ」とコメント。かつては世界最高峰のモータースポーツであるF1で故アイルトン・セナらをサポートした実績があるが、彼らに匹敵する活躍をチームに求めていきたいとも述べた。

 ゼネラルマネジャーのルカ・グエルチレーナ氏は、2014年のチーム活動開始時から長期的視野で強化を進めてきたことを強調しつつも、セガフレード・ザネッティ社とのスポンサー契約によって、有力選手獲得にさらなる投資ができるとの考えを示している。一部の海外メディアでは、すでに2016年のストーブリーグを見越し、移籍が噂される選手の名を挙げる動きも見られるが、それらがどれほど実現するのかも今後の焦点となりそうだ。

クラシックとジロを見据えるカンチェッラーラ

「トレック・セガフレード」のジャージ姿のファビアン・カンチェッラーラ Photo: Trek-Segafredo「トレック・セガフレード」のジャージ姿のファビアン・カンチェッラーラ Photo: Trek-Segafredo

 現在のサイクルロードレース界を代表するライダーである、ファビアン・カンチェッラーラ(スイス)。北のクラシックや個人タイムトライアルでたびたびライバルを圧倒し、数々の金字塔を打ち建ててきた。35歳となる2016年シーズンをもって、プロとしてのキャリアに幕を閉じることをすでに宣言している。

 今シーズンは、2月のツアー・オブ・オマーンでステージ1勝、3月のティレーノ~アドリアティコでは久々の個人TTステージ勝利と、序盤の好調で北のクラシックへの期待を抱かせた。しかし、2年ぶりの優勝を狙ったE3 ハーレルベークで落車し椎骨を骨折。ツール・ド・フランスに間に合わせ、第2ステージでマイヨジョーヌを獲得したものの、翌ステージで起きた大規模クラッシュに巻き込まれ、またしても椎骨の骨折(2カ所)を負った。ロード世界選手権への出場を念頭にブエルタ・ア・エスパーニャで戦線復帰したが、体調不良でリタイア。散々なシーズンとなってしまった。

 ブエルタのリタイア直後にいったんはシーズンの終了を発表。だが、来シーズンへの準備に早くから着手できたことが奏功したのか、ジャパンカップでの来日が実現し、アシストとして元気な姿を披露した。

度重なるけがや体調不良を乗り越え、日本でレースに復帰したファビアン・カンチェッラーラ(ジャパンカップサイクルロードレース2015)  Photo: Yuzuru SUNADA度重なるけがや体調不良を乗り越え、日本でレースに復帰したファビアン・カンチェッラーラ(ジャパンカップサイクルロードレース2015)  Photo: Yuzuru SUNADA

 現役最終シーズンとなる来季も、これまで通りトップフォームで戦うことを宣言。決して“お別れツアー”にすることはないと述べる。最初のヤマ場は春のクラシック。3月のミラノ~サンレモを皮切りに、E3 ハーレルベーク、ツール・デ・フランドル、パリ~ルーベと得意のレースが待ち受ける。持ち前のパワーと独走力、ここ数年成果が表れている小集団スプリントで勝利をつかみたい。

 次なるターゲットは、ジロのマリアローザ獲得だ。5月6日の第1ステージはオランダのアペルドールンでの9.8km個人TT。この開幕ステージに全精力を注ぐ心積もりだ。ジロ参戦にあたり、「マイヨジョーヌが最も権威があるとするなら、きっとマリアローザは最も情熱的で、多くの感情が込められたもの。私はイタリアにルーツがありながら、これまでジロに参加する機会が少なかった。だからこそ実際に走って、この目で確かめてみたい」と話している。マリアローザ獲得なれば、3大ツール(ジロ、ツール、ブエルタ)すべてでリーダージャージを着用した選手となる。

 現状では、クラシックとジロまでしか考えにないとしており、第16ステージで地元スイスのベルンに到達するツールへの出場は未定。また、リオ五輪への出場は可能性として低いことも示唆している。

ヘシェダルの加入でグランツール路線を強化

 今年は総合7位となり、3年連続でツール総合トップ10入りを果たしたモレマを中心とするグランツール路線。2012年の総合優勝を筆頭に、合計3度のジロ総合トップ10入りを経験するベテランのライダー・ヘシェダル(カナダ)がチーム キャノンデール・ガーミンから、山岳アシストとして評価を高めたピーター・ステティナ(アメリカ)がBMCレーシングチームから移籍加入することは明るい材料だ。

ツール・ド・フランスでの総合争いをメーンターゲットにするバウケ・モレマ(ジャパンカップサイクルロードレース2015)  Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランスでの総合争いをメーンターゲットにするバウケ・モレマ(ジャパンカップサイクルロードレース2015)  Photo: Yuzuru SUNADA

 モレマは来シーズンもツールが最大の目標となりそうだ。長年の課題とされているTTだが、第13ステージに待ち受ける37km個人TTを上手くまとめられれば、安定した登坂力と合わせてパリ・シャンゼリゼでの総合表彰台も夢ではない。また、アルデンヌクラシックも得意としており、クラシックシーズンの走りを弾みにツールへと向かっていきたいところだ。

グランツールでのエース、アシストとしての活躍が期待されるライダー・ヘシェダル(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADAグランツールでのエース、アシストとしての活躍が期待されるライダー・ヘシェダル(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 ヘシェダルはジロでエースを務める公算。急峻な山岳で見せる積極的な姿勢は、若い選手のお手本ともなる。ツールではモレマのアシストとしても期待されている。ステティナは、今年4月のブエルタ・シクリスタ・アル・パイス・バスコ第1ステージで激しく落車し、膝に重傷を負った。復帰まで4カ月を要したが、10月にはジャパンカップで来日するなど、徐々に調子を上げてきている段階だ。

 2017年以降を見据え、北のクラシックを戦える選手の育成も急務。23歳のジャスパー・ストゥイヴェンや、トップスポルト ヴラーンデレン・バロワーズから加入のエドワード・トインズ(ともにベルギー)は、「カンチェッラーラの後継者」として期待される。ともにスプリント力もあり、ストゥイヴェンは今年のブエルタ第8ステージ優勝。トインズは今シーズン3勝をはじめ、上位フィニッシュすること多数。

 スプリンターでは、今年のジロでポイント賞を獲得したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)に加え、ツアー・オブ・ジャパン東京ステージを2年連続で勝利したニッコロ・ボニファジオ(イタリア)がランプレ・メリダから移籍し、厚みを増している。上れるスプリンターのファビオ・フェッリーネ(イタリア)も控え、あらゆるレース展開に対応できそうだ。

別府も主力の1人としてツール出場を狙う

 チーム結成メンバーの1人として、3シーズン目を迎える別府も来季への準備を着々と進めている。スペインでのチームトレーニングキャンプを終え、上々のコンディションで2016年を迎えられる手応えをつかんでいるという。

2015年のジャパンカップクリテリウムを制した別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA2015年のジャパンカップクリテリウムを制した別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA

 ここ数年はジロをメーンにレーススケジュールを設定してきたが、10月のツール・ド・フランスさいたまクリテリウム関連イベントの席で「ジロを外したレースプログラムを希望したいと思っている。フランスでの拠点近くを走るクリテリウム・ドゥ・ドーフィネにも出たいし、そこで結果を出してツールのメンバー入りを果たしたい」とコメントするなど、スキル・シマノ時代の2009年以来となるツール出場を意識した姿勢を見せる。

 定評のあるスピードのみならず、登坂力への評価も高まり、グランツールやアルデンヌクラシックでもチームの主力となっている別府。今年は完走したジロのほか、ツールのロングリスト(出場候補選手)に名を連ねていたところを見ても、来シーズンのビッグレース多数出場に寄せられる期待は大きい。

トレック・セガフレード 2015-2016 選手動向

【残留】
エウジェニオ・アラファーチ(イタリア)
フリアンダビ・アレドンド(コロンビア)
別府史之(日本)
ファビアン・カンチェッラーラ(スイス)
マルコ・コレダーン(イタリア)
スティーン・デヴォルデル(ベルギー)
ローラン・ディディエ(ルクセンブルク)
ファビオ・フェッリーネ(イタリア)
マルケル・イリサル(スペイン)
バウケ・モレマ(オランダ)
ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)
ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ)
グレゴリー・ラスト(スペイン)
フランク・シュレク(ルクセンブルク)
ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)
ボーイ・ファンポッペル(オランダ)
リカルド・ツォイドル(オーストリア)
アイマル・スベルディア(スペイン)
 
【加入】
ジュリアン・ベルナール(フランス) ←SCOディジョン(アマチュア)
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア) ←チーム バジェットフォークリフツ
ニッコロ・ボニファジオ(イタリア) ←ランプレ・メリダ
ライダー・ヘシェダル(カナダ) ←チーム キャノンデール・ガーミン
キール・レイネン(アメリカ) ←ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム
ピーター・ステティナ(アメリカ) ←BMCレーシングチーム
エドワード・トインズ(ベルギー) ←トップスポルト ヴラーンデレン・バロワーズ
 
【退団】
マシュー・ブッシュ(アメリカ) →ユナイテッドヘルスケア プロフェッショナルサイクリングチーム
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク) →エティックス・クイックステップ
ダニエル・マコーネル(オーストラリア) →MTB専念
ヘイデン・ルールストン(ニュージーランド) →トラック専念
ジェス・サージェント(ニュージーランド) →アージェードゥーゼール ラモンディアル
ファビオアンドレトマス・シルヴェストレ(ポルトガル) →レオパード デヴェロップメントチーム
ヘルト・ステーヒマンス(ベルギー) →引退
ダニー・ファンポッペル(オランダ) →チーム スカイ
クリストフ・ヴァンデワッレ(ベルギー) →未定
カルヴィン・ワトソン(オーストラリア) →アンポスト・チェーンリアクション

今週の爆走ライダー-ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック ファクトリーレーシング)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年のブエルタ第8ステージでスプリントを制しプロ初勝利。前年のブエルタでもたびたびスプリントステージで上位進出し、勝利は時間の問題と言われていたが、1年後に悲願達成となった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2015でプロ初勝利を挙げたジャスパー・ストゥイヴェン Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ2015でプロ初勝利を挙げたジャスパー・ストゥイヴェン Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし、勝利の代償は大きかった。ポディウムでの盛大な祝福の後、左手首の痛みに耐えられなくなってしまった。病院での診断結果は舟状骨骨折。翌日には大会を去らなければならなかった。それでも、「すぐにレースに戻ってくるよ」との言葉通り、シーズン終盤には2レースに出場。けがが癒え、新たなシーズンを待ちわびる。

 ジュニア時代から才能をいかんなく発揮してきた。2009年にはジュニアロード世界選手権優勝、翌年にはパリ~ルーベ・ジュニアでも勝利。2011年には、パリ~ルーベ・エスポワール(U23)2位。アンダー23カテゴリー時代はアクセル・メルクス氏の指導を受け、その父であるエディ・メルクス氏が将来性に太鼓判を押すなど、大切に育てられてきた。

 プロ入り後2年間はレース数を抑えてきたが、これからはより高みを目指して大きなレースへと臨むことだろう。「カンチェッラーラの後継者」候補として、長きにわたってトップで活躍する選手を目指す。その第一段階は、カンチェッラーラが有終の美を飾るためのお膳立てだ。

 幾人もの“至宝”を生むベルギー・フランドル地方から、また1人ビッグタレントが生まれようとしている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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