工具はともだち<83>デリケートなスポーツサイクルにこそ正しいトルクレンチ選びを

by 重田和麻 / Kazuma SHIGETA
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力を可視化するKTCのデジタル型トルクレンチ「デジラチェ」の体感キット。少し力を込めただけですぐに10ニュートンを超える Photo: Kyoko GOTO力を可視化するKTCのデジタル型トルクレンチ「デジラチェ」の体感キット。少し力を込めただけですぐに10ニュートンを超える Photo: Kyoko GOTO

 これまでさまざまなタイプの工具についてご説明してきた「工具の選び方」も、いよいよ最後となりました。ご紹介するのは、もはやスポーツサイクルのメンテナンスには必須アイテムと言っても過言ではない「トルクレンチ」です。ただ、トルクレンチの選び方をお伝えするにはいろいろ前置きもありますので、2回にわたって説明していきます。

「強く締めときゃ大丈夫」は間違い

 フレームやパーツにカーボン素材が多用されているロードバイク。ボルトを締める際、結構「強く締めときゃ大丈夫!」とか思っていませんか? そんな方はまず自分の自転車のボルトの周りをよく見て下さい。トルク指定の表示を発見できると思います。そして、そこに示されている締め付けトルクは、多くが5N・m~8N・m程度と、10N・mを切る小さな値なのです。

クランプボルトクランプボルト
サドルの調整部分サドルの調整部分
シートポストの調整部分シートポストの調整部分

 「トルク」と言われてもピンとこない方のために、まずトルクとは何かをお話ししますね。

正確には、Lはボルトの回転軸から力点(力をかける点)までの距離ですが、ここでは説明を容易にするため、レンチの全長をLと表現している正確には、Lはボルトの回転軸から力点(力をかける点)までの距離ですが、ここでは説明を容易にするため、レンチの全長をLと表現している

 トルクというのは、図のように、ボルトの中心(回転軸)から力点までの距離LにFの力を掛けた時に得られる回転力Tのことで、1m先に1N(ニュートン)の力を掛けた時に得られる回転力を1N・mと言います。「ニュートン(N)」と言われてもなかなかピンとこないですね。国際単位系(SI)で定められた単位で、1Nをkgに(無理やり)換算すると約0.1kgになります(本当は質量と重さは違うのですが、それを書き出すと長くなるのでここでは省略します)。

 つまり1N・mとは、回転軸の中心から1m先に0.1kgの重りがぶら下がっているくらいの力だとイメージして下さい。

 難しいことはとりあえず置いておいて、自転車で指定されているトルクというのは、10N・m以下とおおむね小さく、あまり大きな力で締める必要はないということです。

自転車にとってトルクレンチは「保険」

 そのような小さなトルクは手の感覚だけではなかなか分かりません。さらにトルクは長さによって変わり、同じ力を掛けた場合でも力点までの距離が長くなるほど大きなトルクが発生します。つまり使うレンチの長さや持つ位置で変わってしまうのですから、感覚だけで締め付けるのは非常に難しいと言えます。

 そしてカーボン素材は締めすぎると変形し、何度も締めすぎると最終的には割れてしまいます。整備の際に割れるのであればまだましですが、ライド中に割れたりすれば大きな事故につながりかねません。そうした観点からも、自転車整備においてトルクレンチは必須なのです。

 私はよく「保険だと思って(トルクレンチを)買って下さい」と言います。締めすぎてカーボン素材でできたパーツを壊すことを考えたら、トルクレンチを買っておいた方が安心できますし、結局、パーツを壊すよりも安くつくかもしれませんからね。

「トルクレンチ」の機能はさまざま

 では、本題のトルクレンチの選び方ですが、まずはその種類からご紹介します。

ビーム型トルクレンチビーム型トルクレンチ

 一般的に「プレート型」や「ビーム型」と呼ばれるタイプは、ある一定の力を加えた時に発生する金属の歪みをプレート上に刻まれた目盛で読み取るものです。

 機構が単純な分、意外に正確で安価なものが多いのですが、力点位置を正確にするためにグリップがカタカタ動くので、使い方には少し慣れとコツがいります。また、プレートを真上から読まないと数字がずれてしまうことがあるので、さまざまな角度で作業をする自転車にはあまり向いているとは言えません。

 次にダイヤル型と言われるもの。こちらは真ん中についたダイヤルの目盛でトルク値を判読します。このタイプは置き針がついていて、ピーク値のトルクを確認できることと、比較的正確なのが長所ですが、大きく重量があり、価格が高いといった短所があります。

ダイヤル型トルクレンチダイヤル型トルクレンチ
プレセット型トルクレンチプレセット型トルクレンチ

 そして、あらかじめ設定したトルクに達すると「カチッ」と音がして作業者に知らせる、プレセット型。最近よく使われるトルクレンチで、さまざまなメーカーから発売されています。同じトルクで何本もボルトを締め付けるような連続作業に適しています。このタイプには単能型と調整可能なタイプがありますが、単能型は自転車ユーザーが使うことはあまりないでしょう。

自転車ユーザーにおすすめの「デジタル型」

 最後にご紹介するのがデジタル型。プレセット型やダイヤル型はスプリングやカムといった機械的な機構でトルクを測定するのに対し、デジタル型はレンチに掛かる力をセンサーで電気的な信号に変換して測定するもので、締付けトルクを数字で読み取ることが可能です。

KTCのデジタル型トルクレンチ「デジラチェ」KTCのデジタル型トルクレンチ「デジラチェ」

 KTC(京都機械工具)のデジラチェなら設定したトルクに達すると音と光で作業者に知らせます。数字が読み取れるダイヤル型と設定トルクを知らせてくれるプレセット型の機能を併せ持ったトルクレンチなのです。

 いろいろな種類があるトルクレンチですが、この中で自転車ユーザーに一番おすすめするのはデジタル型です。その理由も含め、次回は自転車整備に必要なトルクレンチの選び方と、使用の際の注意点などをご説明します。

Cyclistロゴ入りエプロン付き「デジラチェ工具セット」発売

Cyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShopCyclist × KTC オリジナルデジラチェ工具セット Photo: SANKEI netShop

 CyclistとKTCとのコラボレーションによる自転車メンテナンス向け「オリジナルデジラチェ工具セット」が産経netShopから発売されました。

 デジタル式トルクレンチに、収納用ブローケースや、自転車整備に活躍する5つの付替え用ビットソケット、ソケットホルダー、さらにCyclistとKTCのロゴが入ったオリジナルショートエプロンが付属しています。価格は4万3869円(税込)で、セット内容を別々に購入するよりもグッとお得な設定になっています。

 特にカーボン製のフレームやパーツを使用している方は、ボルトの締め過ぎによる破損リスクも高いため、これを機にデジラチェを導入してみてはいかがですか?(産経デジタル)
→「オリジナルデジラチェ工具セット」商品販売ページ(産経netShop)

重田和麻(しげた・かずま)

KTC(京都機械工具)入社後、同社の最高級ツール「nepros」(ネプロス)の立ち上げに携わった後、販売から企画、商品開発とさまざまな立場で同商品と歩みを共にしてきた。スポーツ自転車は初心者だが、工具についてはプロフェッショナル。これまでの経験を生かして、色々な角度からサイクリストに役立つ工具の情報を提供する。

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