世界を目標に走り続ける王者【レース詳報】不調で苦戦も「気持ちで押し勝った」竹之内悠 全日本シクロクロスを5連覇

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 一気の逆転劇だ。12月7日に行われた全日本シクロクロス選手権、男子エリートのレース前半、4連覇中の竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)はライバルの先行を許して苦しい表情を浮かべていた。しかし後半のスパートで先頭に追いつくと、攻めの走りでライバルを突き放して5連覇を達成。「全日本は優勝以外意味がない。今年も切符を取れた」と話す王者の目は、変わらず世界へと向いている。

ゴールで掲げた手を広げ5連覇をアピールする竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) Photo: Ikki YONEYAMAゴールで掲げた手を広げ5連覇をアピールする竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) Photo: Ikki YONEYAMA

メリハリが重要なコース

 第21回を迎えた全日本シクロクロスは、長野県飯山市の長峰スポーツ公園で開催された。JR飯山線の信濃平駅から徒歩圏内、北陸新幹線の飯山駅からも近く、アクセスに優れた会場だ。昨年の飯山での大会は深い雪の中でのレースとなったが、今年は好天に恵まれた。しかし前夜から朝にかけて降った雨によりコースの一部でぬかるみが深くなり、泥エリアでの乗車率が大きく下がることになった。

 1周2.9kmのコースは元全日本王者の三船雅彦さんが監修した。三船さん曰く「乗り・降りのメリハリが重要」なコース。平坦でスピードの出る区間も少なくないが、勝負どころでぬかるんだ難所が待ち構える。コース中盤の小山の上り下りは、押し担ぎの割合が増え、選手のスタミナを大きく削るセクションになった。

前半は今季好調の小坂がリード

95人が一気にスタートした男子エリート。小坂が先頭で第1コーナーへ Photo: Ikki YONEYAMA95人が一気にスタートした男子エリート。小坂が先頭で第1コーナーへ Photo: Ikki YONEYAMA

 60分(8周回)で行われた男子エリートは竹之内のほか、今季好調の小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム)や、マウンテンバイクの全日本王者・山本幸平(トレック ファクトリーレーシング)が有力視された。5連覇がかかる竹之内だが、脚の肉離れの故障を抱えており、レース前の1週間はほとんど練習できないまま本番を迎えていた。

 スタート直後にまず飛び出したのは小坂。竹之内が一時先頭を取るものの、すぐに小坂が先頭を奪い返して、前半戦は小坂がレースをリードした。竹之内は苦しい表情でじわじわ後退し、2周目後半には山本が2番手に浮上。4周目には小坂が2番手の山本との差を10秒以上に広げ、このままゴールまで突っ走るかと思われた。

1周目序盤で竹之内が先頭に立つ Photo: Ikki YONEYAMA1周目序盤で竹之内が先頭に立つ Photo: Ikki YONEYAMA
すぐに小坂が先頭を奪い返す Photo: Ikki YONEYAMAすぐに小坂が先頭を奪い返す Photo: Ikki YONEYAMA
序盤はズルズル後退した竹之内。後ろから山本が迫る Photo: Shusaku MATSUO序盤はズルズル後退した竹之内。後ろから山本が迫る Photo: Shusaku MATSUO
2周目に山本が2番手に浮上 Photo: Ikki YONEYAMA2周目に山本が2番手に浮上 Photo: Ikki YONEYAMA
小坂は地元・宇都宮からの応援団も Photo: Ikki YONEYAMA小坂は地元・宇都宮からの応援団も Photo: Ikki YONEYAMA
レース前半は苦しいレースになった竹之内 Photo: Ikki YONEYAMAレース前半は苦しいレースになった竹之内 Photo: Ikki YONEYAMA
ピットでバイク交換する山本 Photo: Ikki YONEYAMAピットでバイク交換する山本 Photo: Ikki YONEYAMA
2位に十数秒の差をつけた小坂 Photo: Ikki YONEYAMA2位に十数秒の差をつけた小坂 Photo: Ikki YONEYAMA

後半に集中力を発揮した竹之内

 しかしレース後半に入った5周目、後退していた竹之内が徐々にペースを上げ始める。一時は離された山本に追いつくと、抜きつ抜かれつの攻防を見せながら、先頭の小坂との差も詰め始めた。6周目、ぬかるんだ区間で手間取った小坂に竹之内が一気に追いついてパス。山本も先頭に追いつき、ここから1周は3人の先頭パックで激しい攻防が繰り広げられた。

6周目、竹之内が一気に小坂に追いつく Photo: Ikki YONEYAMA6周目、竹之内が一気に小坂に追いつく Photo: Ikki YONEYAMA
小坂をパスした竹之内が先頭に Photo: Ikki YONEYAMA小坂をパスした竹之内が先頭に Photo: Ikki YONEYAMA
激しい先頭争い。再び小坂が先頭に Photo: Ikki YONEYAMA激しい先頭争い。再び小坂が先頭に Photo: Ikki YONEYAMA
泥区間では山本が先頭に立つ Photo: Ikki YONEYAMA泥区間では山本が先頭に立つ Photo: Ikki YONEYAMA

 残り2周となった7周目、先頭でアタックする竹之内に対し、2番手の小坂が泥のキャンバーの下りで転倒。この落車でブレーキトラブルも起こしたという小坂が、先頭争いから脱落した。勢い付いた竹之内は山本との差も広げて最終周回へ入り、前半の苦戦を吹き飛ばすような、王者の風格漂う走りで5連覇のゴールを切った。

残り2周、竹之内が泥で不安定な路面でスパート。この直後に小坂が落車 Photo: Ikki YONEYAMA残り2周、竹之内が泥で不安定な路面でスパート。この直後に小坂が落車 Photo: Ikki YONEYAMA
小坂が脱落し2人となった先頭 Photo: Ikki YONEYAMA小坂が脱落し2人となった先頭 Photo: Ikki YONEYAMA
落車とメカトラで大きく遅れた小坂 Photo: Ikki YONEYAMA落車とメカトラで大きく遅れた小坂 Photo: Ikki YONEYAMA

 「気持ちで押し勝った」とゴール後に話した竹之内。レース前半は本当に調子が悪く、一時はリタイアも考えたという。しかし開き直ってのアタックで先頭に追いつき、「フッと力が抜けて、そこからは気持ちの勝負やなと思った」と逆に攻勢に出た。これがライバルのミスを誘い、最後は一気に勝負を決めた。同時に「チームで勝てた」とも話す。レースを諦めかけたとき、冷静なスタッフワークに助けられたという。

 1週間後には再びヨーロッパに渡り、ワールドカップを転戦する。「今後も世界を目指して走っていく」という言葉と裏腹に、本場で結果を残すには自ら「全てが足りない」という厳しい戦いが続く。「チャンピオンという切符(日本チャンピオンジャージ)があるから、海外に挑戦できる。日本のシクロクロス界を引っ張っていけるように頑張りたい」と改めて決意を語った。

男子エリート表彰 Photo: Ikki YONEYAMA男子エリート表彰 Photo: Ikki YONEYAMA
5連覇の金メダルをアピールする竹之内。ヘルメットもチャンピオン仕様 Photo: Ikki YONEYAMA5連覇の金メダルをアピールする竹之内。ヘルメットもチャンピオン仕様 Photo: Ikki YONEYAMA

19歳の坂口聖香が新女王に

 40分(5周回)で争われた女子エリートは26人の選手がスタートラインに並んだ。朝まで降った雨と、直前に行われた男子ジュニアのレースの影響で土がぬかるみ、テクニカルなコンディションとなった。

 序盤から坂口聖香(パナソニックレディース)ら6人の選手が後続と差を開き、1周回終了時には20秒以内に6人が連なる展開に。しかし坂口は先頭を譲ることなくペースを上げ、これを宮内佐季子(Club La. sista Offroad Team)が追い、後方では與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX)と武田和佳(Liv)による3位争いが繰り広げられた。

女子エリート1周目、ディフェンディングチャンピオンの豊岡が先頭に出る Photo: Ikki YONEYAMA女子エリート1周目、ディフェンディングチャンピオンの豊岡が先頭に出る Photo: Ikki YONEYAMA
1周目後半で先頭に立った坂口 Photo: Ikki YONEYAMA1周目後半で先頭に立った坂口 Photo: Ikki YONEYAMA
2位を走る元女王・宮内 Photo: Ikki YONEYAMA2位を走る元女王・宮内 Photo: Ikki YONEYAMA
3位争いをする武田と與那嶺 Photo: Shusaku MATSUO3位争いをする武田と與那嶺 Photo: Shusaku MATSUO

 宮内が17秒差まで迫ったが、ミスをしない走りで先頭を守り抜いた坂口が優勝を飾った。また、終盤まで激しく順位を入れ替えた3位争いは與那嶺が勝利した。表彰式で3人は「ミスをしない走りがポイントのレースだった」と口々にコメント。優勝した坂口は「この後もシーズンが続き、ロードレースも走るので頑張りたい」と述べた。

初優勝を飾った坂口 Photo: Ikki YONEYAMA初優勝を飾った坂口 Photo: Ikki YONEYAMA
女子エリート表彰 Photo: Shusaku MATSUO女子エリート表彰 Photo: Shusaku MATSUO

U23最終シーズンの沢田時が王座奪還

1周目の中盤で一気に先頭に出た沢田 Photo: Ikki YONEYAMA1周目の中盤で一気に先頭に出た沢田 Photo: Ikki YONEYAMA

 50分(6周回)で争われた男子U23は、昨年大会で4位に沈んだ沢田時(ブリヂストンアンカー)が1周目からトップに立ち、2年ぶりの優勝を飾った。スタートでは出遅れたものの、コース前半のぬかるんだ折り返しで先頭に立つと、「リズムを崩さないよう、早め早めで降りて押した」という走りで終始安定したペースを刻み、そのまま一度も先頭を譲らなかった。

 戦前は接戦が予想されたが、「(みんなが期待するよりも)面白くないレースにするのが目標だった」という沢田が、意気込みどおりに大差をつけてフィニッシュ。後方では、ジュニアから昇格1年目の竹内遼(WESTBERG/ProRide)との争いを制した前年覇者の横山航太(シマノレーシング)が2位、竹内が3位となった。

テクニカルなセクションでは早めにランニングに切り替えたという沢田 Photo: Ikki YONEYAMAテクニカルなセクションでは早めにランニングに切り替えたという沢田 Photo: Ikki YONEYAMA
シケインでの横山と竹内の2位争い Photo: Ikki YONEYAMAシケインでの横山と竹内の2位争い Photo: Ikki YONEYAMA
チャンピオンヘルメットを手渡されご機嫌の沢田 Photo: Ikki YONEYAMAチャンピオンヘルメットを手渡されご機嫌の沢田 Photo: Ikki YONEYAMA
男子U23表彰 Photo: Ikki YONEYAMA男子U23表彰 Photo: Ikki YONEYAMA

男子ジュニアは織田聖が初優勝

男子ジュニア優勝の織田。ゴール後バイクを持ち上げてアピール Photo: Shusaku MATSUO男子ジュニア優勝の織田。ゴール後バイクを持ち上げてアピール Photo: Shusaku MATSUO

 40分(5周回)で争われた男子ジュニアは、序盤から織田聖(Above Bike Store Cycle Club)ら5人が後続を大きく引き離す展開に。なかでも織田のペースが落ちることなく、2位の日野竜嘉(松山星稜高校)との差を徐々に開いていった。

 残り1周回で後続に1分以上のタイム差をつけた織田は、終始落ち着いた走りでテクニカルセクションをクリア。圧倒的な力を見せつけて優勝し、日本チャンピオンジャージに袖を通した。織田は表彰式で、「得意なコースでした。来年からU23に上がりますが、そこでも着に絡める走りができるようにしたい」とコメントした。

男子ジュニアの織田、ゴール後に父親、チームオーナーとアピール Photo: Ikki YONEYAMA男子ジュニアの織田、ゴール後に父親、チームオーナーとアピール Photo: Ikki YONEYAMA
男子ジュニア表彰 Photo: Shusaku MATSUO男子ジュニア表彰 Photo: Shusaku MATSUO

男子エリート結果(0.20km+2.90km×8Lap)
1 竹之内悠(ベランクラシック・エコイ) 1時間04分17秒
2 山本幸平(トレック ファクトリーレーシング) +26秒
3 小坂光(宇都宮ブリッツェン シクロクロスチーム) +1分07秒
4 丸山厚(BOMA RACING) +3分07秒
5 武井亨介(フォルツァ・ヨネックス) +3分54秒
6 濱由嵩(SPEEDVAGEN CYCLOCROSS TEAM) +3分58秒

女子エリート結果(0.20km+2.90km×5Lap)
1 坂口聖香(パナソニックレディース) 48分17秒
2 宮内佐季子(Club La. sista Offroad Team) +17秒
3 與那嶺恵理(サクソバンクFX証券・YONEX) +1分01秒

男子U23結果(0.20km+2.90km×6Lap)
1 沢田時(ブリヂストンアンカー) 50分09秒
2 横山航太(シマノレーシング) +18秒
3 竹内遼(WESTBERG/ProRide) +21秒

男子ジュニア結果(0.20km+2.90km×5Lap)
1 織田聖(Above Bike Store Cycle Club) 43分34秒
2 日野竜嘉(松山聖陵高校) +1分27秒
3 梶鉄輝(Sonic Racing/市立伊丹高校) +2分15秒

※記事掲載時、日本自転車競技連盟のレース直後の発表(コミュニケ)に基づき、男子ジュニアの周回数を6周回(6Lap)と記載していましたが、正しくは5周回(5Lap)でした。

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