キッズライダーも多数参戦ショートコースを攻略した井手川直樹が連勝 「ダウンヒルシリーズ」第7戦・吉無田高原

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 マウンテンバイク(MTB)のシリーズ戦「ダウンヒルシリーズ」の第7戦が11月21、22日、熊本県御船町の吉無田高原で開催された。6分を越える超ロングコースだった第6戦・富士見パノラマ大会から一転、優勝タイムが40秒台というショートコースが舞台に。エリートクラスの若手選手が優勝争いに食い込むなど激戦が繰り広げられるも、コースを完全攻略したベテランの井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)が、富士見パノラマに続き二度目を勝利を手にした。(SLmedia 平野志磨子)

プロクラス優勝の井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。ベテランならではの集中力を決勝の一本で見事に発揮した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAプロクラス優勝の井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)。ベテランならではの集中力を決勝の一本で見事に発揮した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

九州ダウンヒルの名舞台

コンパクトにレイアウトしたフィニッシュエリアには16のブースが並んだ Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAコンパクトにレイアウトしたフィニッシュエリアには16のブースが並んだ Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 阿蘇の外輪山の外れにある吉無田高原DHコースは、20年以上前からMTBイベントが開かれてきた九州ダウンヒルシーンの名舞台だ。今年はメーカーが5ブース、九州のショップが8ブース、地元の飲食店が2ブースと計15ブースが出展。いつになく賑やかなフィニッシュエリアが、九州のMTB熱の高さを物語っていた。

 大会初日の土曜日は、小雪が舞った昨年とは打って変わってポカポカ陽気。コースが設定された丘は見渡す限りカヤと笹が生い茂り、スタートからフィニッシュまで一度も森のなかに入らない不思議な景色のなかにある。路面は火山灰の影響で真っ黒。表面の土は滑りやすく、しかしコツを掴めばグリップする。

昨年より1ヶ月早い時期での開催となった吉無田大会。初日は素晴らしい天候に恵まれた Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA昨年より1ヶ月早い時期での開催となった吉無田大会。初日は素晴らしい天候に恵まれた Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
高原を覆う笹とすすきの中に作られたコース。「ストレスなく、気持ちよく!」がコンセプト Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA高原を覆う笹とすすきの中に作られたコース。「ストレスなく、気持ちよく!」がコンセプト Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 今年は昨年とはレイアウトを変え、レース時にのみ使用する高速のジェットコースターセクションを採用。スタートしてから直線を駆け下り、大きな右コーナーと上り返しを経て、連続バーム、2つのテーブルトップ、最終コーナーという構成だ。

“鬼”の本村と17歳・田丸が拮抗

第2コーナーを抜ける井本はじめ(SRAMLITEC)。ローカルはドライでもマッドタイヤを使うのが吉無田流だが、初日はセミスリックを使用していた Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA第2コーナーを抜ける井本はじめ(SRAMLITEC)。ローカルはドライでもマッドタイヤを使うのが吉無田流だが、初日はセミスリックを使用していた Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 タイムドセッションでは、昨年の吉無田を制した井本はじめ(SRAM/LITEC)が45秒171のタイムで1位。2位には0.445秒差で井手川が、そして3位にはここ数戦表彰台から遠ざかっていた安達靖(SRAM/LITEC)が入った。

 全クラスの総合リザルトで見ると、PROクラス4位の阿藤寛(Topknot racing)に続いて、1つ下のカテゴリーとなるエリートクラスの福岡県・本村貴之(delsol/cleat/トクサガミネ)、広島県・田丸裕(SRAM/LITEC rising)が入った。本村は現在42歳。30代からレースを始めたが、「練習の鬼」と呼ばれるほどに練習を積み、ジャパンシリーズでも予選でエリートクラスでひと桁に入る実力の持ち主だ。

「3コーナー」と呼ばれた大きなカーブを走る安達靖(SRAM/LITEC) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA「3コーナー」と呼ばれた大きなカーブを走る安達靖(SRAM/LITEC) Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 一方の田丸は17歳。今年からSRAM/LITECの育成チーム「rising」に所属している有望株だ。ホームコースであるMIZUHO MTB PARKで開かれた第5戦では、クラス優勝を期待されながらも下垣大樹(Lapierre/重力技研)に敗れ、惜しくも2位となっている。西のライダー2人の負けられない闘いが、毎回激戦となるエリートクラスの今回の見所だ。

昼休みに開催されたTopknotミーティングには、自身がプロデュースしたソックスの愛用者をたくさん集めた阿藤寛。そろそろ勝利が欲しい Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA昼休みに開催されたTopknotミーティングには、自身がプロデュースしたソックスの愛用者をたくさん集めた阿藤寛。そろそろ勝利が欲しい Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
多くのライダーを戸惑わせた「高速直線」セクション。すこしでもラインを誤ると、ライダーは冷や汗をかくことになる。浦上太郎(Transition AirlinesCleat)の表情は余裕なのか、それとも苦笑いか Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA多くのライダーを戸惑わせた「高速直線」セクション。すこしでもラインを誤ると、ライダーは冷や汗をかくことになる。浦上太郎(Transition AirlinesCleat)の表情は余裕なのか、それとも苦笑いか Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

激戦のエリートクラスで田丸が初優勝

スタートヒルで出走に備えるのはXCバイククラスに参戦した岡山優太(MASAYA Bicycle Works) Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAスタートヒルで出走に備えるのはXCバイククラスに参戦した岡山優太(MASAYA Bicycle Works) Photo:DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 日曜日は100%の雨予報となったが、試走時間が終わる頃に20分ほどお湿り程度の雨が降り、天候は回復した。

 しかしコースは不気味に濡れてしまった。少しの雨でも影響は少なくなかったようで、試走とは変わってしまった路面コンディションに、滑ってコースアウトする選手も。

 注目のエリートクラスでは、前日のタイムドセッションを走らなかった木村宏一(nu style海月)が、早い段階で47秒128という好タイムをマーク。その後しばらくタイムは更新されなかったが、残り2人の時点で、田丸がそれまでトップタイムを守っていた木村を2秒近く上回る45秒520というタイムでフィニッシュ。コース脇で大きな歓声が上がった。

激戦のエリートクラスを制した田丸裕(SRAMLITEC rising)。ジャンプ中もペダリングし続ける積極的な走りを披露した Photo: ⒸDOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA激戦のエリートクラスを制した田丸裕(SRAMLITEC rising)。ジャンプ中もペダリングし続ける積極的な走りを披露した Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 そしてすぐに本村がスタート。目視ではどちらが速いか分からない、負けず劣らずの走りでフィニッシュ。次の瞬間、MCが45秒672とタイムを読み上げると、コースをじっとみつめていた田丸に安堵の笑みが浮かび、ブースエリアから大きな拍手が送られた。

 第1戦十種ヶ峰では5位、第2戦SRAM PARKでは9位、その後練習中のケガを乗り越えながらも、第5戦で2位と悔しい思いをしてきた若者が、エリートクラス初優勝。そして念願だったPROクラスに挑戦する「下克上」の権利を得た。

1秒以内にひしめく大接戦

 PROクラスでは、「下克上」田丸が45秒060とエリートクラス優勝時よりもタイムを伸ばしてフィニッシュ。そして、地元熊本が生んだトップライダーであり、タイムドセッションでは120%の境地を目指した結果、最下位に沈んだ浦上太郎(Transition Airlines/Cleat)がスタートした。

フィニッシュ手前に用意されたジャンプを飛ぶ浦上太郎 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAフィニッシュ手前に用意されたジャンプを飛ぶ浦上太郎 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 「どれくらいのスピードなら曲がれるかを考えてスピードを落とすのではなく、できるだけスピードを上げたうえで、どうやったら曲がれるかを考えています」というレース前のコメント通り、初の44秒台、44秒850というタイムを出す。

タイトなS字に進入する安達靖。トップから7位までの選手が1秒以内にひしめく大混戦。一瞬も気が抜けないレイアウトだった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAタイトなS字に進入する安達靖。トップから7位までの選手が1秒以内にひしめく大混戦。一瞬も気が抜けないレイアウトだった Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 続く阿藤、安達は45秒台でこのタイムに届かず。残るは2人。井手川がフィニッシュし、「44秒770!」と浦上を上回るタイムを出すと会場は一瞬静まりかえったのち、大歓声に包まれた。最終走者の井本は、レース後に「ペダルがはまらなくて…」と語ったように上り返しでもたつき、フィニッシュタイムは46秒457。この瞬間、第6戦富士見パノラマに続き、井手川の優勝が決まった。

 レース後、井手川は「コースが短いから、精神的にも技術的にも難しい。ショートコースでは、ミスしないように守って走っても勝てないから」と話し、会場については「“よしむたキッズ”と呼ばれる子どもたちがたくさんいて、こういう環境があることが素晴らしいと思います。コースが全てじゃない。環境が大事。(浦上)太郎君みたいなライダーがまた熊本から生まれるように、僕も応援しています」と話した。

ローカルライダーが育つ環境

 今回の総エントリーは85人。そのうち小学生が10人、中高生を含めると16人と、18歳以下の参加者が全参加者の2割弱を占めた。昨年もたくさんのキッズが参加していたが、今年はそれを上回った。

PRO表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAPRO表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 会場内には常設の「体験コース」「パンプトラック」「ダートジャンプコース」があり、週末になるとここに走りに来る子どもたちがたくさんいる。その子どもたちが競い合い、そしてローカルライダーが育っていくという形が出来上がりつつある。

 試走中には、走るラインを決めきれず、プレッシャーで泣き出してしまった地元キッズライダーに、井手川が一緒にコースを見に行ってアドバイスをする光景も見られた。

箕面マウンテンバイク友の会の代表をつとめる中川弘佳(Lovespo.com)も参戦 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA箕面マウンテンバイク友の会の代表をつとめる中川弘佳(Lovespo.com)も参戦 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
コースで唯一のクイックを攻略する浦上太郎。ライダーによって解釈の違いが顕著に現れ、観客を沸かせた Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAコースで唯一のクイックを攻略する浦上太郎。ライダーによって解釈の違いが顕著に現れ、観客を沸かせた Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA

 年に一度プロライダーがやってきて自分たちと同じコースを走り、圧倒的な速さを見せつける。それをコース脇で見つめるキッズ達の目が、憧れで輝いていたのを見て、「ダウンヒルシリーズ」が目指す形に少しずつ近づいているのかもしれないと、強く感じた大会となった。

エリート女子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエリート女子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
エキスパート男子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエキスパート男子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
エキスパート女子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWAエキスパート女子表彰式 Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA
「ダウンヒルシリーズ」第7戦・吉無田高原に出場した選手たち Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA「ダウンヒルシリーズ」第7戦・吉無田高原に出場した選手たち Photo: DOWNHILL SERIES/Hiroyuki NAKAGAWA


他クラス優勝者
XCバイククラス:岡山優太(MASAYA Bicycle Works) 56秒274
ファーストタイマー男子クラス:大栗秀介(人生下り坂) 53秒530
スポーツ女子クラス:荒木昌子 1分45秒718
スポーツ男子クラス:川本大輔(ちゅう吉福山DH部) 48秒638
エキスパート女子クラス:崎野真子 1分00秒814
エキスパート男子クラス:山田将輝(Limited846/LITEC) 48秒094
エリート女子クラス:末政実緒(SRAM/LITEC) 50秒467

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