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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<135>キンタナとバルベルデでグランツールとクラシックに照準 モビスター チーム 2016年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレース2015年シーズンにおける、UCIワールドツアー個人・チーム両ランキングで1位を占めたモビスター チーム。個人ではアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)が2位に200ポイント以上の差をつけ、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア)らの活躍もありチームランキングでも首位を確保。そこで今回は、王国・スペイン唯一のUCIワールドチームとして奮闘する同チームの2016年シーズンを展望。ベテランと若手の融合が進み、高まるチーム力にスポットを当てたい。

モビスター チームのダブルエース、ナイロアレクサンデル・キンタナ(左)とアレハンドロ・バルベルデ Photo : Yuzuru SUNADAモビスター チームのダブルエース、ナイロアレクサンデル・キンタナ(左)とアレハンドロ・バルベルデ Photo : Yuzuru SUNADA

キンタナはツールとリオ五輪を狙う

 チームは2016年シーズンに向け、11月上旬に27人のロースターを確定。同中旬には、ピレネー山脈に近い、スペイン北部のカスティロ・デ・ゴライスに集合。新たなチームキットの試着や来シーズンのレーススケジュールの確認を行った。

 その際の記者会見の席上で、絶対エースの1人であるキンタナは、今シーズンに続きツール・ド・フランスをメーンターゲットに据えることを宣言した。

クリストファー・フルームと激闘を演じ、自身2度目の総合2位に入ったナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADAクリストファー・フルームと激闘を演じ、自身2度目の総合2位に入ったナイロアレクサンデル・キンタナ(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 山頂フィニッシュを制するなどの活躍で総合2位と、大きな衝撃を与えた2013年のツール初出場から2年。今年も、総合優勝を果たしたクリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)との熱戦の末、2度目の総合2位。要所での爆発的なアタックに加え、勝負どころの山岳ステージが多く含まれる3週目に強さを発揮するなど、グランツール向きのレーススタイルはライバルに対して脅威を与える。

 そして来シーズンはさらなる飛躍を誓う。狙うは総合優勝のみ。2014年に総合優勝を果たしたジロ・デ・イタリアに戻ることはせず、ツールにグランツール制覇を賭けるつもりだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も視野に入れるナイロアレクサンデル・キンタナ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャへの出場も視野に入れるナイロアレクサンデル・キンタナ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 すでにシーズン序盤の予定を明らかにしており、初戦は1月18~24日のツール・ド・サンルイス(アルゼンチン、UCI2.1)。地元コロンビアでの調整を経て、3月21~27日のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、4月4~9日のブエルタ・シクリスタ・アル・パイス・バスコ(ともにスペイン)に参戦する。

 また、ツール後に控えるリオデジャネイロ五輪のコロンビア代表入りも濃厚。クライマーやクラシックハンターに向いているとされる難コースは、キンタナ自身もチャンスがあると見ているようだ。なお、今年総合4位となったブエルタ・ア・エスパーニャについても、出場の可能性は高いとしている。

ジロ初出場初優勝を目指すバルベルデ

 チームの前身は1980年発足のレイノルズチーム。バネスト(1990年~)、イリュスバレアレス(2004年~)、ケスデパーニュ(2006年~)とチーム名が変わり、2011年からはスペイン大手の通信会社テレフォニカがメーンスポンサーを務める。現チーム名の「モビスター」は同社傘下の携帯電話事業会社で、スペインのほか中南米諸国をシェアする。

 プロトンきっての古豪だが、メーンスポンサーが変わる中で常に「チームの顔」が存在していたことが挙げられる。バネスト時代にはミゲル・インドゥライン、アブラハム・オラーノ、フランシスコ・マンセボ(いずれもスペイン)らがグランツールや世界選手権を中心に活躍した。そして、イリュスバレアレス時代からチームの顔として君臨するのが、現在35歳のバルベルデである。

アルデンヌクラシックで2連勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2015) Photo: Yuzuru SUNADAアルデンヌクラシックで2連勝を飾ったアレハンドロ・バルベルデ(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 シーズンを通してハイレベルの走りを見せるバルベルデであるが、今シーズンはその走りが光り輝いた1年でもあった。アルデンヌクラシックでは、アムステル・ゴールドレース2位、ラ・フレーシュ・ワロンヌとリエージュ~バストーニュ~リエージュで連勝。ツールでは総合3位に入り、初のパリ・シャンゼリゼでのポディウムに涙した。その後のブエルタでも総合7位ながらポイント賞のプントスを獲得し、充実のシーズンを送った。

 近年はキンタナの台頭もあり、グランツールではダブルエース態勢でレースを動かすシーンが目立っている。だが2016年は、再び単独エースの座が約束されている。

 それは、長いキャリアで初出場となるジロ・デ・イタリア。ドーピング問題により、イタリアオリンピック委員会(CONI)がバルベルデに同国内でのレース参戦を禁ずる処分をくだした経緯があり(2009年から2年間)、ジロが縁遠いものとなっていたが、2009年のブエルタに続くグランツール2勝目をかけてイタリアへと乗り込む。

 また、北のクラシックにも本格参戦の意向を示している。2014年にはツールのパヴェ(石畳)ステージを想定し、ドワーズ・ドアー・フラーンデレン(1.HC)とE3ハーレルベーク(ともにベルギー)に出場しているが、今度はツール・デ・フランドルでよい走りを見せたいと意気込む。クラシックに数多く参戦しワンデーレースの勘を養うことは、金メダル獲得を目指すリオ五輪に直結すると見ているようだ。

ツール・ド・フランス2015では、自己最高の総合3位を記録したアレハンドロ・バルベルデ(右) Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス2015では、自己最高の総合3位を記録したアレハンドロ・バルベルデ(右) Photo: Yuzuru SUNADA

 バルベルデも出場予定の主要レースを明言している。3月5日のストラーデビアンケ(UCI1.HC)、同9~15日のティレーノ~アドリアティコ、同19日のミラノ~サンレモ(いずれもイタリア)、4月3日のツール・デ・フランドル(ベルギー)、同17日のアムステル・ゴールドレース(オランダ)、同20日のラ・フレーシュ・ワロンヌ、同24日のリエージュ~バストーニュ~リエージュ(ともにベルギー)、5月6~29日のジロと続く。

 その後は、キンタナとともにツールへ参戦し、リオ五輪へと向かうスケジュール。一方で、ブエルタは参加しない見通しだ。

モレノが“復帰” 次世代のエース候補も

 今シーズンのUCIワールドツアーチームランキング1位となった背景には、キンタナとバルベルデだけに依存しないメンバー編成があったと考えられる。ジロではアンドレイ・アマドール(コスタリカ)が大躍進の総合4位となったほか、ヨン・イサギレ(スペイン)が8月のツール・ド・ポローニュで総合優勝。チーム力の高まりはチームTTにも反映され、9月のロード世界選手権の同種目では、初の表彰台となる3位入賞を果たした。

グランツールやクラシックでアシスト、時にエースとして活躍するダニエル・モレノ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADAグランツールやクラシックでアシスト、時にエースとして活躍するダニエル・モレノ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 そんなタレントぞろいのチームだが、さらに強力なメンバーが加わる。チーム カチューシャから移籍のダニエル・モレノ(スペイン)は、チーム前身のケスデパーニュに2008年から2年間在籍経験があり、晴れて“復帰”となる。これまではホアキン・ロドリゲス(スペイン)の右腕としてグランツール、クラシックと大車輪の働きを見せてきたが、これからはキンタナとバルベルデを支え、時には自身で勝利を狙いにいくことだろう。

新しい環境で復活を期すカルロスアルベルト・ベタンクール(ジロ・デ・イタリア2015)新しい環境で復活を期すカルロスアルベルト・ベタンクール(ジロ・デ・イタリア2015)

 8月20日にアージェードゥーゼール ラモンディアルと双方合意のうえ契約解除し、無所属となっていたカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア)は、同国の友人でもあるキンタナやウィナーアンドルー・アナコナと共闘する意志を固めた。モチベーションの低下や体重増加などあり、レース出場もままならない日々が続いたが、ゼネラルマネージャーのエウセビオ・ウンスエ氏が復活の可能性は高いと判断。新たな環境で走ることによって、2013年ジロ総合5位以上の成績は残せると見込んでいる。

 TTスペシャリストであり、山岳での登坂力も向上しているネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル)はランプレ・メリダから移籍。今年の世界選手権個人TT銀メダルのアドリアーノ・マローリ(イタリア)、同チームTT銅メダルメンバーのホナタン・カストロビエホ(スペイン)、アレックス・ドーセット(イギリス)らに続き、チームTTでの戦いに厚みを加える。

 ベテラン・中堅・若手とバランスよく選手をそろえている点も特徴だ。チーム加入1年目ながら1月のツアー・ダウンアンダーで総合優勝争いを演じた24歳のルーベン・フェルナンデス、若手の登竜門であるツール・ド・ラヴニール総合優勝のマルク・ソレルは、ともにスペイン期待の次世代のエース候補。山岳に強く、将来的にはグランツールの総合エースを担うタイプといわれる。来シーズンはより多くのチャンスを与えられることだろう。

モビスター チーム 2015-2016 選手動向

【残留】
アンドレイ・アマドール(コスタリカ)
ウィナーアンドルー・アナコナ(コロンビア)
ホナタン・カストロビエホ(スペイン)
アレックス・ドーセット(イギリス)
イマノル・エルビティ(スペイン)
ルーベン・フェルナンデス(スペイン)
ヘスス・エラダ(スペイン)
ホセ・エラダ(スペイン)
ゴルカ・イサギレ(スペイン)
ヨン・イサギレ(スペイン)
フアンホセ・ロバト(スペイン)
アドリアーノ・マローリ(イタリア)
ハビエル・モレノ(スペイン)
ダイエルウベルネイ・キンタナ(コロンビア)
ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア)
ホセホアキン・ロハス(スペイン)
マルク・ソレル(スペイン)
ローリー・サザーランド(オーストラリア)
ヤッシャ・ズッターリン(ドイツ)
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)
ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア)
 
【加入】
ホルゲ・アルカス(スペイン) ←リザルテ(アマチュア)
カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア) ←エリート2(無所属)
ダニエル・モレノ(スペイン) ←チーム カチューシャ
ネルソン・オリヴェイラ(ポルトガル) ←ランプレ・メリダ
アントニオ・ペドレロ(スペイン) ←インテハ・MMRドミニカンサイクリングチーム
 
【退団】
イゴール・アントン(スペイン) →未定
エロス・カペッキ(イタリア) →アスタナ プロチーム
ジョン・ガドレ(フランス) →クロスチーム バイ G4(シクロクロス専念)
ベニャト・インチャウスティ(スペイン) →チーム スカイ
パブロ・ラストラス(スペイン) →引退
エンリケ・サンス(スペイン) →未定

今週の爆走ライダー-ホセホアキン・ロハス(スペイン)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ここ数年増加傾向にある、トップライダーの心疾患。場合によってはキャリアの終わりを突然迎えてしまうばかりか、命の危険もはらむことから、選手・チーム・医療スタッフともに慎重な判断が求められる。

 このシーズンオフ、わが身の重大な問題に直面しているライダーが存在する。ホセホアキン・ロハス、30歳。チームが誇る「上れるスプリンター」は、これまでビッグレースでたびたび上位進出を果たしているほか、山岳アシストとしても堅実な走りを見せ、エースたちからの信頼度も高い。

2015年シーズンはツアー・オブ・カタールでステージ優勝を挙げたホセホアキン・ロハス Photo: Yuzuru SUNADA2015年シーズンはツアー・オブ・カタールでステージ優勝を挙げたホセホアキン・ロハス Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな彼に下された診断は、WPW症候群。発作的に不整脈を起こす心疾患で、来シーズンに向けたメディカルチェック中に判明したという。11月18日に手術を終え、その他の問題がなければすぐにでもトレーニングを再開する心積もりだ。シーズンオフの処置だったこともあり、来季のシーズンインには大きな支障はないだろうと述べる。

 2016年は、突如襲ったキャリアの危機に立ち向かい、乗り越えようとするロハスの姿を目にすることができるだろう。そして、同様の疾患に苦しみ、悩む人々の励みとなるべく戦うはずだ。彼にとってのキャリア第2章の幕開けは、間近に迫っている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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