ツール・ド・北海道2012ツール・ド・北海道の点描 最終ステージを終えて

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初優勝 マッシミリアーノ・リケーゼ(チームNIPPO)

初のステージレース総合優勝を果たしたリケーゼ(中央)初のステージレース総合優勝を果たしたリケーゼ(中央)

 最終ステージのスプリントも圧勝だった。勝利を確信して両手を挙げてゴールラインを切る。しかし今回の勝利は格別。前日のインタビューで「実はステージレースで総合優勝したことがないんだ」と明かしていた。

 「ステージレースではいつもアシストで、ステージでの勝利を託されて走ることはあっても、自分で総合優勝を狙った事はなかった」

 31歳とベテランの域に達しつつあるリケーゼだが、この日の朝はさすがに緊張したという。だがチームキャプテンの大ベテラン、バリアーニを中心に、チームの体制は磐石だった。この日も序盤からNIPPOがコントロールする展開となったが、前日にレースが動いたことで、NIPPOと利害関係が一致するチームが出たのが、最終日は追い風となった。

 「今回のために準備してきて、目標を達成できた。一人一人が機能して、最高の結果を残せて嬉しい」

 総合優勝の表彰台は、どことなく初々しさを感じるものだった。

前進 窪木一茂(マトリックスパワータグ)

最終ステージを前に、黙々とウォーミングアップをこなす窪木最終ステージを前に、黙々とウォーミングアップをこなす窪木

 「行きます、やります」

 毎朝スタート前、この言葉を聞いた。そしてその通り、3日間ともに積極的な走りを見せた。

 第1ステージは逃げグループに入り、その中で最後まで粘り続けた。第2ステージは、先頭争いのグループには入れなかったものの、最後にメーン集団から抜け出して、トップと2秒差まで追い詰めてのステージ5位。総合成績でも4位に付けた。

 迎えた最終日、途中のホットスポット2つをトップ通過し、ボーナスタイムで総合3位を逆転した。総合2位まであと1秒と迫ったが、ゴールスプリントではステージ4位。3位までに与えられるボーナスタイムを惜しくも獲得できず、届かなかった。ゴール後にそれを聞かされ、悔しい表情を浮かべる。

 名門・日大自転車部出身。インカレ総合30連覇を継続中の同校は、昔ながらの体育会系だ。この春大学を卒業したばかり。卒業後は競技生活に区切りを付ける選手が多い中、あえて競技者としての道を選んだ。トラックのオムニアム(複合)でリオ五輪を目指すが、「ロードも大好き。本気でやります」と今夏からロードレースにも参戦している。

 この日はチームの全面的なアシストを受けた。「チームメイトに感謝したいです」と語る。根っからの自転車好き。「また次のレース頑張ります」と明るく話した。

ステップアップ 宇都宮ブリッツェン

チーム総合優勝の宇都宮ブリッツェン。中央が廣瀬佳正チーム総合優勝の宇都宮ブリッツェン。中央が廣瀬佳正

 最終日のレースを前に、増田成幸が個人総合3位に付けていたが、宇都宮ブリッツェンの取った戦略は「チーム総合1位を守ること」だった。一つの想いがあった。

 「廣瀬キャプテンを表彰台の一番上に乗せたい」

 キャプテンで、チームの発起人である廣瀬佳正が、今大会の直前に、今シーズン限りの引退を表明していた。企業お抱えでない地元密着型のプロチームをゼロから立ち上げ、発展させるために、廣瀬は選手としてチームの顔として、昼夜を問わず力を尽くし続けていた。最後の北海道で、廣瀬のために何か形に残る結果を出したいという想いが、チーム全体に存在していた。

 第2ステージを終えてチーム総合トップに立ったが、2位のブリヂストンアンカーとは5秒、3位のNIPPOとは8秒の僅差。一つの逃げで逆転されかねない。最終ステージは総合を脅かしかねない危険な動きを潰した。迎えた大集団でのゴール争い、最後は廣瀬に勝負がゆだねられた。結果はステージ5位と表彰台に届かなかったが、チーム総合では見事1位を守りきった。

 チーム設立4年目。今年は国内ツアーを席巻しているが、栗村修監督は「うちはまだ発展途上のチーム。北海道の総合で表彰台に上がるのも初めてなんです」とチームの成長と、今回のレースでの成功を強調する。

 今年の結果と、創設メンバーである廣瀬の引退で、ブリッツェンは一つの時代の区切りを迎えたと言えるだろう。独立系プロチームの先駆けとして、来季はよりステップアップした活躍が期待される。

陽気なアメリカン ニック・ハミルトン(ジェリーベリー・サイクリング)

なぜか舌を出しながら「ジェリーベリー」をばら撒くハミルトンなぜかいつも舌を出しながら「ジェリーベリー」をばら撒いていたハミルトン

 毎日の表彰式の後には、スポンサーである「ジェリーベリー」がステージから撒かれる。女性や子供にはしっかり手渡し。明るい表情とひょうきんなキャラクターで、ニック・ハミルトンはすっかり表彰台の人気者になった。

 第1ステージの逃げグループに入り、山岳ジャージを獲得した。その日の表彰では「実はこれまで2度、最終日に山岳ジャージを失ったことがあるんだ」と打ち明けた。三度目の正直で、ついに最終日まで山岳トップの座を守り切った。

 最終日の表彰台で「景色が綺麗で素晴らしいコース。ただ、想像以上に苦しかった」とレースを振り返った。大柄な体躯は山岳スペシャリストのものではないが、ポイント争いのスプリントで、そのパワーが生かされた形だ。最終日はステージ2位に入り、オールラウンドな力をアピールした。

 最後にメッセージをと問われて「Eat Jelly Berry!」(ジェリーベリー食べてね!)と言い残した。陽気なアメリカンチームは、今年のジャパンカップで再び日本のレースに参戦する。

しれっと 中尾佳祐(順天堂大学)

得意の「ボルトのポーズ」を表彰台でも見せる中尾得意の「ボルトのポーズ」を表彰台でも見せる中尾

 7年間続いてきた鹿屋体育大学のU23特別賞獲得をついに阻んだのは、今年のインカレチャンプ、中尾だった。これだけ書けば大した選手が現れたかのように思えるが、実際の中尾は自らのカッコ悪さをあえて口にする。

 「僕は後ろでヒラヒラしていただけ」
「何度も千切れかけた」
「総合は難しいのでU23に専念する。守りたい」

 インタビューではあえて意識の高さをアピールする選手が少なくない中、中尾は自らの弱さを隠そうとしない。その一方で、手の届く結果への貪欲さも見せる。得意なパターンは「しれっと行く」。今年のインカレでは、総合優勝を争う日大と鹿屋体大のにらみ合いの隙を突いた。

 最終日は同タイムの3人での順位争いとなり、僅か1位差でU23賞を守り切った。「危なかった」とヒヤリとした表情を浮かべたが、表彰台では満面の笑顔でお気に入りの「ボルトポーズ」を披露した。

 インタビュアーが最後に「次のステップは?」と尋ねた。現在4年生。その質問の意図をはぐらかすかのように「次は国体」と話す。そして「3位以内に入れればいいかな」と“しれっと”付け加えた。

◇     ◇

 UCIが発表した来季のスケジュールによると、来年のツール・ド・北海道は9月14日から16日の3日間で開催される予定とのことである。

(米山一輝)

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