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栗村修の“輪”生相談<62>20代男性「出身国の地形や気候によって選手の得意分野は変わってくるでしょうか?」

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 選手が生まれ育った国土の特性(地形や気候)によって選手の得意分野は変わってくるのでしょうか?

 例えばマルセル・キッテルの出身国・ドイツは森林地帯が30%ほどを占めます。ドイツにはキッテルをはじめアンドレ・グライペルやトニー・マルティンといった、スプリンターやタイムトライアルのスペシャリストとしてたびたび耳にする選手が多いように感じられます。

 一方、アンディ・シュレク(ルクセンブルク)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)、ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア)といったクライマーの出身地は、山岳地帯が多かったり、平均標高が高い地域が目立つような気がします。もちろん、100%因果関係があるかどうか断定するのは難しいと思いますが、気になったので質問させていただきます。

(20代男性)

 興味深いご質問をありがとうございます。たしかに、出身国の地形と脚質には一定の相関がありそうですね。特に、標高が高く、山岳が多い地域ではクライマーが輩出される可能性は高いでしょう。

 ただし、そうでないパターンも見られます。たとえば、あのマーク・カヴェンディッシュをチームから押しやり、次世代のスーパースプリンターとして名乗りを上げつつあるフェルナンド・ガリビアはコロンビア出身です。また、国土の大半が平地であるオランダが、たくさんのクライマーを輩出したという事実もあります。

 それでも、出身国と脚質に関係がありそうに見えるのは、地形が、特定の脚質を育むこととは別に、才能選別のための「フィルター」になっているからだと思います。地形には2つの意味があるのです。

 平地ばかりの国のレースは平坦コースばかりですから、活躍して上に行ける若手選手は平坦系が中心になります。ものすごい才能を秘めたクライマーの少年がいても、そもそも勝てるレースがないかもしれません。逆に山がちな国では、当然、クライマーが活躍しますよね。

2014年のツール・ド・フランス、上りでチームメートに守られて走るマルセル・キッテル(中央)。かなり苦しそうな表情 Photo: Yuzuru SUNADA2014年のツール・ド・フランス、上りでチームメートに守られて走るマルセル・キッテル(中央)。かなり苦しそうな表情 Photo: Yuzuru SUNADA

 もし、マルセル・キッテルがコロンビアに生まれていたらどうでしょう? 彼はデビュー当時は上りがからっきしダメでしたから、下手をしたらプロになれなかったどころか、ホビーレースで勝つことすら難しかったかもしれません。このように、国の地形が、特定の脚質以外を振るい落とす「フィルター」になっているのだと思います。もちろん、さっきお伝えしたような例外はありますが…。

 じゃあ、日本はどうか。山がちな地形と小柄な体格を考えると、クライマー向きです。しかし「フィルター」として大きな存在感を放っているのは、スプリンター以外を振るい落とす競輪です。

 つまり、地形が持つ2つの意味である「脚質育成」と「フィルター」が、完全に正反対を向いているんですよ。もし競輪の位置にヒルクライムレースがあれば、育成とフィルターが同じ方向を向きますから、世界的なクライマー天国になるかもしれない…などと考えています。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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