自転車をそのまま乗せて出発進行“都心発着”サイクルトレインの魅力 「Station Ride in 南房総」で味わった景色とグルメ

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 JR東日本が運行するイベント専用列車「サイクルトレイン」で、自転車を輪行袋に入れずそのまま載せて東京・両国駅から千葉を訪れるサイクリングイベント「Station Ride in 南房総」が11月7日に開催された。今年で3回目を迎えた大会で、サイクルトレイン利用のほか、現地から参加することもできる。この大会の目玉である「サイクルトレイン参加者コース」のレポートをお送りする。 (大星直輝)

「Station Ride in 南房総」のサイクルトレイン内の様子。自転車が並ぶ様は壮観 Photo: Naoki OHOSHI「Station Ride in 南房総」のサイクルトレイン内の様子。自転車が並ぶ様は壮観 Photo: Naoki OHOSHI

改札を通らず専用道で直接ホームへ

出発前のサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI出発前のサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI

 サイクルトレインとはその名の通り、自転車を分解したり折り畳んだりしないでそのまま車両に乗せられる電車だ。両国駅では、普段は使用されない専用ホームから乗り降りする。このホームは、かつて貨物の運搬に使われていた歴史を持つだけに、改札や階段を経由することなく専用道から直接アクセスできる。

 2年前の第1回、昨年の第2回は定員が80人だったが、今回はより効率的に作業ができるようになったことから、90人まで増員された。また、千葉県の館山駅に近い北条海岸をスタート・ゴール地とする「現地参加者コース」には104人が参加した。

特設パネルの前で記念写真を撮る参加者 Photo: Naoki OHOSHI特設パネルの前で記念写真を撮る参加者 Photo: Naoki OHOSHI
両国駅の出発ホームに設けられている駅名標。行き先は房総 Photo: Naoki OHOSHI両国駅の出発ホームに設けられている駅名標。行き先は房総 Photo: Naoki OHOSHI
車内の様子。スタッフが自転車の取り付けを手伝ってくれる Photo: Naoki OHOSHI車内の様子。スタッフが自転車の取り付けを手伝ってくれる Photo: Naoki OHOSHI

 サイクルトレインが7時49分に両国駅を出発すると、次の停車駅は千葉駅。ここから乗り込む参加者は通常の改札を通るため、自転車は輪行袋に入れる必要がある。8時27分に千葉駅を出発すると、サイクリングのスタート地点である岩井駅まで約1時間半、ノンストップの旅がはじまった。

高校時代の同級生の深田愛美さん(左)と高島知江さん。「普段は荒川サイクリングロードや秩父の山などを走るので、海沿いを走ってみたくて参加しました」 Photo: Naoki OHOSHI高校時代の同級生の深田愛美さん(左)と高島知江さん。「普段は荒川サイクリングロードや秩父の山などを走るので、海沿いを走ってみたくて参加しました」 Photo: Naoki OHOSHI
移動中の車内をMCの蒲田健さんとトライアスリートの上田藍さんが盛り上げた Photo: Naoki OHOSHI移動中の車内をMCの蒲田健さんとトライアスリートの上田藍さんが盛り上げた Photo: Naoki OHOSHI

 FMラジオ局「bayfm」の番組パーソナリティーや、サッカーJリーグ・ジェフユナイテッド千葉のスタジアムDJなどを務める蒲田健さんが車内放送であいさつし、トライアスロンで2008年北京五輪、2012年ロンドン五輪と2大会連続出場したゲストライダーの上田藍選手を紹介した。

 上田選手は両国駅から乗車したが、なんとその前にすでにトレーニングとして6200mを泳いできたと話し、プロの練習量に車内から驚きの声が上がった。「こまめな補給を心がけて、上手な人の走りをまねてください。私は一定のペースで走るので、あまりチャレンジしてこないでくださいね(笑)」と参加者へアドバイス。車内にはトイレもついており、自分の愛車を眺めながら快適に過ごしていると、ほどなく岩井駅に到着した。

初参加の後藤さん夫妻。「景色と地元の食べ物が楽しみ」 Photo: Naoki OHOSHI初参加の後藤さん夫妻。「景色と地元の食べ物が楽しみ」 Photo: Naoki OHOSHI
固定された自転車が並ぶ車内 Photo: Naoki OHOSHI固定された自転車が並ぶ車内 Photo: Naoki OHOSHI
江戸川サイクリングロードをよく走るという多川衛さんは、昨年の大会レポートを読んで参加したという。「千葉県出身だけどなかなか房総には行かないので、サイクルトレインは良い機会になります」 Photo: Naoki OHOSHI多川衛さんは昨年の大会レポートを読んで参加した Photo: Naoki OHOSHI

アップダウンのある83kmのコース

 岩井駅前で催されたオープニングセレモニーのあと、参加者は15人程度のグループでスタートした。自己申告に基づいて上級者・中級者・初心者に分かれ、各グループにボランティアがリーダーとして先頭と最後尾につく形がとられた。

岩井駅に到着。自転車を持って降りてくる参加者たち Photo: Naoki OHOSHI岩井駅に到着。自転車を持って降りてくる参加者たち Photo: Naoki OHOSHI
岩井駅のホームに降りた参加者 Photo: Naoki OHOSHI岩井駅のホームに降りた参加者 Photo: Naoki OHOSHI
スタートする参加者 Photo: Naoki OHOSHIスタートする参加者 Photo: Naoki OHOSHI
サポートの「JRIDERS CHIBA」の皆さん。普段はJRの社員として働いている Photo: Naoki OHOSHIサポートの「JRIDERS CHIBA」の皆さん。普段はJRの社員として働いている Photo: Naoki OHOSHI

 ボランティアのなかに「JRIDERS」という目立つジャージを着たサイクリストたちがいて、話を聞いてみるとJRの職員たちだという。その一員である長谷川さんは「社内にも自転車好きがたくさんいて、部活という形でみんなで走っています。今回は非番の5人でボランティアとして参加しました」と話し、「これからも千葉に走りにきてください。輪行の際には車体に傷をつけたり、周りの人の迷惑になったりしないように気をつけて」と職員ならではの気遣いも見せた。

景観のいい川沿いを走る Photo: Naoki OHOSHI景観のいい川沿いを走る Photo: Naoki OHOSHI

 昨年はスタートから薄暗く、すぐに雨が降ってきてしまったが、今年は青空が見えて気温もちょうどいい。コースは毎年少しずつ異なり、今年は83kmの道のりが設定された。内房の岩井駅をスタートして、国道258号線を東に向かう。千葉県は平らだと思っている人が多いかもしれないが、実際に走ってみると意外に起伏は多く、出発してからしばらくは体が温まっておらず意外にきつい。

 グループで走っていると上りで周りのペースから遅れる人も出てきてしまう。無理せずにマイペースで走っていいのだが、グループから離れてはいけないと思うのか、みんな一生懸命だ。小さなアップダウンを繰り返しながら南下していくと、第1エイドステーションの道の駅「三芳村鄙の里」に到着。地元三芳産みかんを使用した「みかんドーナツ」が提供された。とても甘く、柑橘系の香りとジューシーさが美味しい。ここ三芳は日本酪農発祥の里ともいわれており、外房に向かって走っていると牛舎を見かけることがあった。

三芳産みかん使用のドーナツ。香りがよくジューシーで美味しい Photo: Naoki OHOSHI三芳産みかん使用のドーナツ。香りがよくジューシーで美味しい Photo: Naoki OHOSHI
グループで走る参加者 Photo: Naoki OHOSHIグループで走る参加者 Photo: Naoki OHOSHI

ワイルドなアジの香り「さんがバーガー」

 北東の風との予報通り、外房に近づくと向かい風が強くなってきた。潮風をより強く感じるようになってくると、すぐに太平洋に出た。スタートから26km地点にある道の駅「和田浦WA・O!」が第2エイドステーションだ。

地元のさんが焼きをはさんださんがバーガー。アジの香りが濃厚で、参加者に大好評 Photo: Naoki OHOSHI地元のさんが焼きをはさんださんがバーガー。アジの香りが濃厚で、参加者に大好評 Photo: Naoki OHOSHI

 ここでは、「さんがバーガー」と「ピーナッツソフト」が振る舞われた。さんがバーガーとは千葉の郷土料理である「さんが焼き」(アジのたたきに香味野菜や味噌を混ぜて焼いたもの)をハンバーガーにアレンジしたグルメだ。もともと漁師が作っていたさんが焼きだけに、口に入れた瞬間、ワイルドなアジの香りが口一杯に広がる。参加者からは「アジをそのまま食べている感じ!めっちゃアジ!」「レンコンと大葉がアクセントになっていておいしい」などの声が聞かれた。初めて食べる人も多く、大好評だった。

第2エイドステーションの和田浦WA・O!にてピーナツソフトを食べる参加者 Photo: Naoki OHOSHI第2エイドステーションの和田浦WA・O!にてピーナツソフトを食べる参加者 Photo: Naoki OHOSHI
和田浦WA・O!は巨大な骨格標本が目印 Photo: Naoki OHOSHI和田浦WA・O!は巨大な骨格標本が目印 Photo: Naoki OHOSHI

 すぐに出発しますとの声がかかったけれど、まだピーナッツソフトに手を付けていなかったため、今まで一緒に走ってきたグループを見送ることになってしまった。ここでゆっくり昼食にしようと思った参加者も多かったと思うのだが、15分の休憩時間しか予定していなかったらしく皆あわてた様子。

さんがバーガーをほおばる参加者 Photo: Naoki OHOSHIさんがバーガーをほおばる参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 後から参加者に話を聞いても、エイドではもう少しゆっくりしたかったとの声が多く聞かれたので、ゴールまで余裕が見越せるならば、臨機応変な時間調整をしてもよかったのではと思う。とはいえサイクルトレインというイベントでは帰りの電車に乗り遅れるわけにも行かないので、グループリーダーも皆をゴールまで届けようと必死なのかもしれない。

 結局、筆者は次のグループに加わって出発することに。追い風に乗って海岸線を快調に南下する。この国道410号線は通称「房総フラワーライン」と呼ばれている。この季節は残念ながら花を見ることはできないが、それでもクルマも信号も少なく、サイクリングには快適なおすすめのコースだ。

海沿いを追い風に乗って走る Photo: Naoki OHOSHI海沿いを追い風に乗って走る Photo: Naoki OHOSHI
フラワーラインは見通しがよく走りやすい Photo: Naoki OHOSHIフラワーラインは見通しがよく走りやすい Photo: Naoki OHOSHI

海岸沿いを走って景観を堪能

海の大パノラマを前にエイドを食べる参加者 Photo: Naoki OHOSHI海の大パノラマを前にエイドを食べる参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 第3エイドステーションの「ちくら・潮風王国」では「サザエコロッケ」をほおばった。ここで時間的に余裕ができたので、ここから先は他の参加者と景観を楽しみながら走ることになった。高校時代からの同級生で2年前から同時に自転車を始めたという深田愛美さんと高島知江さんは、普段は埼玉県の山を走ることが多く、「海沿いを走るのはとても新鮮」といつもとは違う景観に満足した様子。

景観を眺める高島知江さん(左)と深田愛美さん。遠くには房総半島最南端の野島崎灯台も見える Photo: Naoki OHOSHI景観を眺める高島知江さん(左)と深田愛美さん。遠くには房総半島最南端の野島崎灯台も見える Photo: Naoki OHOSHI
橋を上る参加者 Photo: Naoki OHOSHI橋を上る参加者 Photo: Naoki OHOSHI
黒くゴツゴツとした岩肌が特徴的な海岸沿いを走る Photo: Naoki OHOSHI黒くゴツゴツとした岩肌が特徴的な海岸沿いを走る Photo: Naoki OHOSHI

 南房総最南端の野島崎灯台を左手に眺めつつ、最後のエイドステーション「ふれあいショップ平砂浦」では疲れた体にうれしいラーメンが。併設する障がい者支援施設の利用者が手作りした麺とチャーシューを使っており、とても優しい味わいのする醤油ラーメンだった。ここまでの盛りだくさんのエイドステーションの食べ物で、実はあまりおなかは空いていなかったのだが、するっと食べてしまった。

第四エイドステーションで振る舞われたラーメン。麺とチャーシューは手作り Photo: Naoki OHOSHI第四エイドステーションで振る舞われたラーメン。麺とチャーシューは手作り Photo: Naoki OHOSHI
疲れた体にラーメンが沁みわたる Photo: Naoki OHOSHI疲れた体にラーメンが沁みわたる Photo: Naoki OHOSHI
ゴールする参加者 Photo: Naoki OHOSHIゴールする参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 心も体も満たされて、残る距離は21km。海岸沿いの20mほどのアップダウンをいくつか越え、クルマの数が増えてきたな…と感じた所で北条海岸にゴール。記念のピンバッジと館山駅前のパン屋「中村屋」のクリームパン、地元の老舗喫茶店「サルビア」のコーヒーなどが振る舞われた。早くゴールして、帰りのサイクルトレイン乗車まで時間が余った人のためには、ヨガ教室やマッサージなどが行なわれた。

ライド中に仲良くなってゴール後に談笑する参加者 Photo: Naoki OHOSHIライド中に仲良くなってゴール後に談笑する参加者 Photo: Naoki OHOSHI
「館山駅前の老舗パン屋、中村屋のクリームパンをどうぞ」 Photo: Naoki OHOSHI「館山駅前の老舗パン屋、中村屋のクリームパンをどうぞ」 Photo: Naoki OHOSHI
ゴール後のじゃんけん大会では、トライアスロン元日本代表の山本淳一さんも参加 Photo: Naoki OHOSHIゴール後のじゃんけん大会では、トライアスロン元日本代表の山本淳一さんも参加 Photo: Naoki OHOSHI
参加者の自転車 Photo: Naoki OHOSHI参加者の自転車 Photo: Naoki OHOSHI
ゴール後にリラックスして談笑する参加者 Photo: Naoki OHOSHIゴール後にリラックスして談笑する参加者 Photo: Naoki OHOSHI

電車の揺れと心地よい疲れで夢の中へ

 17時07分館山駅発のサイクルトレインがホームに入ってくる頃、辺りは暗くなりかけていた。全員が無事に間に合い、電車に揺られながら、半数以上が心地よい疲れのもと夢の中で帰路についた。

サイクルトレインに乗り込む参加者 Photo: Naoki OHOSHIサイクルトレインに乗り込む参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 2年前に始まったStation Ride in 南房総は、毎回進化を遂げていて、第3回にして一皮むけた素晴らしい大会になったと感じる。コースの景観や走りやすさはもちろん、エイドステーションの充実ぶりは地元の魅力を十分に参加者へ伝えられたのではないか。運営する人たちは他のイベントに参加するなど積極的に研究をしていて、参加者が何を求めているのかを実体験としてわかっているのだろう。

さざえコロッケはサザエの食感を感じられた Photo: Naoki OHOSHIさざえコロッケはサザエの食感を感じられた Photo: Naoki OHOSHI
海が輝いて美しい Photo: Naoki OHOSHI海が輝いて美しい Photo: Naoki OHOSHI
館山駅に入駅するサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI館山駅に入駅するサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI

 都心から発着するサイクルトレインという、他にはない魅力的なコンテンツと、11月でも快適に走れる温暖な南房総の組み合わせは、誰にでも一度は体験して欲しい。JR東日本では数年後をめどに春のサイクルトレインの運行も計画中で、現在は北総地域や外房地域が候補に挙がっているという。春と秋のサイクルトレイン、今からとても楽しみである。

両国駅に到着。サイクルトレインから降りる参加者 Photo: Naoki OHOSHI両国駅に到着。サイクルトレインから降りる参加者 Photo: Naoki OHOSHI

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