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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<133>フルームはツールと五輪を狙う 大型補強で勝利量産へ チーム スカイ 2016シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ビッグネームの移籍発表などでにぎわいを見せているストーブリーグ。今年の傾向として、UCIワールドチームの多くが早い段階で2016年シーズンに臨む陣容を固めたことが挙げられる。なかでも、9月28日に29人のロースターを発表したチーム スカイは最たる例だ。豊富な資金を軸に大型補強に成功し、勝利の量産体制に入ったトップチームの来季の展望をお届けしたい。

クリストファー・フルームをはじめ高い戦力を誇るチーム スカイは2016シーズンに向けさらなる大型補強 (ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADAクリストファー・フルームをはじめ高い戦力を誇るチーム スカイは2016シーズンに向けさらなる大型補強 (ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

「ツール制覇が五輪への最高の準備」

 チーム スカイにとって2015年シーズンのハイライトは、クリストファー・フルーム(イギリス)による2年ぶりのツール・ド・フランス制覇だ。前年の失意の途中リタイアから1年、シーズン序盤からツール一本に狙いを定め、しっかりと総合優勝をものにした。その後、ブエルタ・ア・エスパーニャでは落車負傷もあって大会途中に離脱したが、休養を経て、すでに来シーズンへの準備をスタートさせている。

ツール・ド・フランス連覇とリオデジャネイロ五輪をターゲットにするクリストファー・フルーム(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADAツール・ド・フランス連覇とリオデジャネイロ五輪をターゲットにするクリストファー・フルーム(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 フルームは2016年シーズンについて、ツール連覇と、8月に控えるリオデジャネイロ五輪に照準を定めると明言。11月初旬にはブラジル入りしてリオのコースを試走し、ロードレース、個人タイムトライアルともに手応えをつかんだ。ロードはクライマーやアルデンヌクラシックを得意とするタイプの選手にピッタリのコースとの評判で、体調やレース展開によってはフルームにもチャンスがめぐってくるだろう。また、TTについても上りの難易度が高く、プロトン内で群を抜く総合力を誇る彼にとっては得意とするところだ。

 チームのコーチであるロッド・エリングワース氏は、「ツール制覇が五輪への最大の準備となる」とコメント。2年連続3度目の総合優勝を狙うフルームは、難易度の高い山岳コースや、山岳TTを含む個人タイムトライアルステージの重要度が高い次回ツールへしっかりと対策を練って臨むことだろう。

 現時点では来季のレースプログラムを発表していないフルームは、ツールと五輪の開催時期から逆算してどのようなスケジュールを組むのか。10月に開催された「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」で来日した際には、「幸せなシーズンだった」と今年を振り返ったフルーム。その再現を果たせるかどうか、期待と注目が集まる。

ランダ、クフィアトコフスキーが加入

 例年、ストーブリーグの主役となるチーム スカイ。今年も7選手の獲得に成功し、戦力アップは間違いない。

 注目は、アスタナ プロチームから移籍するミケル・ランダ(スペイン)と、エティックス・クイックステップから移籍のミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド)の2人。

 ランダは、今年のジロ・デ・イタリアで総合3位。ステージ2勝を挙げたその走りは、エースを務め総合2位となったファビオ・アール(イタリア)をも凌駕するとの評価だった。ブエルタでもアールのアシストに回る格好となったが、ランダ自身、この待遇に満足できなかったことを後に明かしている。チームはジロで総合優勝を狙わせる構えで、本人もキャリア初のエース待遇に意気込みを見せる。フルームに続くグランツールのエース候補の中でも、頭ひとつ抜けている印象だ。またアシストには、同じバスク人ライダーのベニャト・インチャウスティ(スペイン)が就く見通しだ。

ジロ・デ・イタリア2015で総合3位、ステージ2勝を挙げたミケル・ランダ Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2015で総合3位、ステージ2勝を挙げたミケル・ランダ Photo: Yuzuru SUNADA

 クフィアトコフスキーも、現チームでの待遇に満足できず移籍を決意。前・世界王者でもあり、エティックス・クイックステップとしては、高騰する年俸を支払うか否かの判断を迫られた面もあるようだが、それ以上に、グランツールでの総合狙いに首脳陣からのゴーサインが出なかったことに本人の不満が募った様子だ。とはいえ、総合系ライダーが充実しているスカイでは、担う役割が変化してきそうだ。まずは得意のアルデンヌクラシックでエースを務めることになるだろう。こちらも10月中にリオのコースを試走済み。フルーム同様、五輪でも活躍を誓う。

新天地でグランツールでの総合狙いを目指すミハウ・クフィアトコフスキー(イル・ロンバルディア2015) Photo: Yuzuru SUNADA新天地でグランツールでの総合狙いを目指すミハウ・クフィアトコフスキー(イル・ロンバルディア2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のブエルタ第12ステージを制したスプリンターのダニー・ファンポッペル(オランダ)は、トレック ファクトリーレーシングから移籍。2013年に19歳でツール出場を果たし話題となったが、着実にステップアップしており、エーススプリンター候補に名乗りを挙げる。

 来季の加入選手の特徴として、長きにわたって活躍が期待できる若い選手を確保した点が挙げられる。7人中最年長はミハウ・ゴワシュ(ポーランド)の31歳で、あとは20歳代と、将来性を加味しての選手獲得であったと見ることができる。

エース候補たちのチーム内争いが激化

 順調に強化が進んだ結果、エースクラスの実力をもつ選手がひしめくことから、各レースにおけるメンバー構成に注目が集まることになりそうだ。

アシストを務めながら総合上位をキープしたゲラント・トーマス(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADAアシストを務めながら総合上位をキープしたゲラント・トーマス(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 フルームがツールでエースを務めることはほぼ間違いないが、ジロ総合優勝が期待されるランダを含め、グランツールのリーダー候補は数多い。今年のツールで終盤まで総合上位を走ったゲラント・トーマス(イギリス)、ジロ総合6位のレオポルド・ケニッグ(チェコ)、ブエルタ総合8位のミケル・ニエベ(スペイン)、それにセルジオルイス・エナオ(コロンビア)、ヴァウテル・プールス(オランダ)など、活躍が計算できる選手がそろうだけに、誰をどのレースに送り込むかはコーチ陣の手腕の見せどころだ。加えて、フルームら総合エースを務める選手がアシストに誰を指名するかも注視したい。

 クラシック路線ではトーマスに加え、イアン・スタナード、ルーク・ロウ(ともにイギリス)らの台頭が目覚ましく、石畳系レースでは優勝争いの常連となるだろう。アルデンヌ系レースではクフィアトコフスキーを筆頭に、エナオやラーシュペッテル・ヌールハウ(ノルウェー)らが上位をうかがう。

エーススプリンターに成長したエリア・ヴィヴィアーニ(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADAエーススプリンターに成長したエリア・ヴィヴィアーニ(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 2015年にシーズン8勝を挙げたエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)は、押しも押されもせぬエーススプリンターに成長した。来シーズンはロードでの快進撃はもとより、トラック・オムニアム(6種目の混成競技)での五輪メダル獲得にも期待が膨らむ。上れるスプリンターのベン・スイフト(イギリス)は、ミラノ~サンレモ優勝を狙う。

タイムトライアルではマイヨアルカンシェルをまとうヴァシル・キリエンカ(ロード世界選手権2015 男子エリート 個人TT) Photo: Yuzuru SUNADAタイムトライアルではマイヨアルカンシェルをまとうヴァシル・キリエンカ(ロード世界選手権2015 男子エリート 個人TT) Photo: Yuzuru SUNADA

 そして忘れてはならないのが、現・個人タイムトライアル世界王者のヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)。ひときわ晴れやかなマイヨアルカンシエルでTTステージを駆けるだけでなく、安定感抜群の山岳アシスト、自らも勝負できる山岳での逃げなど、いぶし銀の走りでチームに貢献する。彼の存在を押さえておけば、よりレース観戦が楽しめることだろう。

チーム スカイ 2015-2016 選手動向

【残留】
イアン・ボスウェル(アメリカ)
フィリップ・ダイグナン(アイルランド)
アンドルー・フェン(イギリス)
クリストファー・フルーム(イギリス)
セバスティアン・エナオ(コロンビア)
セルジオルイス・エナオ(コロンビア)
ピーター・ケノー(イギリス)
ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)
クリスティアン・クネース(ドイツ)
レオポルド・ケニッグ(チェコ)
ダビ・ロペス(スペイン)
ミケル・ニエベ(スペイン)
ラーシュペッテル・ヌールハウ(ノルウェー)
ヴァウテル・プールス(オランダ)
サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア)
ニコラ・ロッシュ(アイルランド)
ルーク・ロウ(イギリス)
イアン・スタナード(イギリス)
ベン・スイフト(イギリス)
ゲラント・トーマス(イギリス)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)
ハビエル・サンディオ(スペイン)
 
【加入】
ミハウ・ゴワシュ(ポーランド) ←エティックス・クイックステップ
ベニャト・インチャウスティ(スペイン) ←モビスター チーム
ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド) ←エティックス・クイックステップ
ミケル・ランダ(スペイン) ←アスタナ プロチーム
ジャンニ・モスコン(イタリア) ←ザルフ(アマチュア)
アレックス・ピータース(イギリス) ←SEGレーシング
ダニー・ファンポッペル(オランダ) ←トレック ファクトリーレーシング
 
【退団】
ネイサン・アール(オーストラリア) →ドラパック・プロフェッショナルサイクリング
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア) →チーム ディメンションデータ(旧MTN・クベカ)
ダニー・ペイト(アメリカ) →オプトゥムp/bケリーベネフィットストラテジーズ
リッチー・ポート(オーストラリア) →BMCレーシングチーム
カンスタンティン・シウツォウ(ベラルーシ) →チーム ディメンションデータ
クリストファー・サットン(オーストラリア) →未定

今週の爆走ライダー-ハビエル・サンディオ(スペイン、チーム スカイ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 今年9月、2016年シーズンをもって現役を退くことを表明した。「いつ引退してもおかしくはなかった」状態ながら、シーズンを迎えるたび最初のレースで自身のモチベーションが高いことを認識し、競技生活を続けてきたのだという。それでも、気持ちの部分で限界が来ていることを察したといい、来シーズンでキャリアを終えると決めた。

 2000年にバネスト(現・モビスター チーム)でプロ入りし、来季で17年目のシーズンとなる。長いキャリアのほとんどが山岳アシスト。堅実な走りでエースに仕えてきた。役割を果たす姿勢や、年齢を重ねてもレース数を多くこなすことのできるタフさをウリにしてきた。

2000年にプロ入りし、2011年からスカイで走ってきたハビエル・サンディオ。2016シーズンでの引退を決意した(ツール・ド・フランス2011) Photo: Yuzuru SUNADA2000年にプロ入りし、2011年からスカイで走ってきたハビエル・サンディオ。2016シーズンでの引退を決意した(ツール・ド・フランス2011) Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな彼だが今シーズン、13年ぶりにグランツールへの出場を逃した。39歳を迎える来シーズンは、チームにとって勝利が至上命題となる3週間の戦いに名を連ねることができるだろうか。

 まもなく始まる引退へのカウントダウン。長いキャリアの集大成となる1年が待ち受けている。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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