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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<132>数字で見るサイクルロードレース2015年シーズン データに隠された傾向を分析

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ウインターブレイク中のサイクルロードレース界。各チームや選手は来シーズンに向けた動きを徐々に明らかにしている段階だが、当コーナーではもう少し2015年シーズンを振り返ってみたい。熱き戦いの軌跡を掘り下げるべく、今回は勝利数や年間総レース距離といった数字に着目。データに隠された傾向を分析し、フル稼働した選手たちの活躍をいま一度おさらいしていきたい。

個人勝利数と比例しないUCIランキング

 まずは、今シーズンの個人勝利数とUCIワールドツアーランキング、それぞれのランキングからチェックしていきたい。

2015年シーズン個人勝利数ランキング

1 アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ) 20
2 マルコ・クンプ(スロベニア、アドリア・モービル) 18
3 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル) 16
4 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) 14
5 カレブ・イーウェン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) 11
6 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ) 11
7 ペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) 10
8 ヨーヒム・アリエセン(オランダ、メテク・TKH p/b マンテル) 10
9 アーメト・オルケン(トルコ、トルクセケルスポル) 10
10 マッティア・ガヴァッツィ(イタリア、アモーレエヴィータ・セッレSMP) 10

※同勝利数の場合は2位フィニッシュの回数でランク付け

2015年シーズンUCIワールドツアー個人ランキング

1 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 675pts
2 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、チーム カチューシャ) 474pts
3 ナイロアレクサンデル・キンタナ(コロンビア、モビスター チーム) 457pts
4 アレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ) 453pts
5 ファビオ・アール(イタリア、アスタナ プロチーム) 448pts
6 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ) 430pts
7 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) 407pts
8 フレッヒ・ヴァンアーヴルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム) 324pts
9 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ) 324pts
10 ティボ・ピノー(フランス、エフデジ) 319pts

※同ポイントの場合は勝利数でランク付け

 勝利数がそのままUCIランキングに反映されるわけではないことが、これらを見てお分かりになるだろう。現行のUCIランキングシステムは、ステージレースの総合成績やワンデーレースのフィニッシュ順位がポイントに反映されるようになっており、スプリンターが狙うステージ勝利はポイント付与が少ないというのが実情なのである。

 実際、ツール・ド・フランスで総合優勝すると200ポイント、パリ~ニースなど約1週間のステージレース、パリ~ルーベなど「モニュメント」と言われる歴史あるワンデーレースで優勝すると100ポイント、その他ワンデーレースでの優勝は80ポイントに設定される。一方で、ツールでステージ勝利を収めても20ポイント、約1週間のステージレースにおいては勝利しても6ポイントにとどまる。

8勝を挙げ、上位フィニッシュも多かったアレハンドロ・バルベルデ(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2015) Photo: Yuzuru SUNADA8勝を挙げ、上位フィニッシュも多かったアレハンドロ・バルベルデ(リエージュ~バストーニュ~リエージュ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 今シーズン、圧倒的なポイント差でUCI個人ランキング総合1位となったバルベルデは、シーズン8勝を挙げ、出場したUCIワールドツアーのレースでコンスタントに上位フィニッシュ。ツール総合3位(120pts)、リエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝(100pts)が利いているほか、総合系ライダーでは群を抜くスプリント力を生かし、ステージ上位フィニッシュを繰り返しての「ポイント貯金」も奏功している。

 一方で、グランツールに集中してシーズンを送るタイプのアールやフルーム、コンタドールといった選手たちは、3週間の戦いを制していながらもそれぞれランキング5~7位。グランツール勝利のインパクトとランキングは必ずしも一致しないようだ。とはいえ、ランクインするだけでも十二分に超人クラスではあるが…。

スプリンターとして勝利を量産し、ツール・デ・フランドルでも優勝したアレクサンドル・クリツォフ Photo: Yuzuru SUNADAスプリンターとして勝利を量産し、ツール・デ・フランドルでも優勝したアレクサンドル・クリツォフ Photo: Yuzuru SUNADA

 総合系ライダーに有利に働くUCIランキングシステムだが、近年は石畳系の「北のクラシック」で真価を発揮するスプリンターが増加している。年間最多勝のクリツォフは、20勝のうち15勝がUCIワールドツアーから見て下部カテゴリーのHCクラス、1クラスでの勝利だったが、4月のツール・デ・フランドル優勝(100pts)が生きて4位に。スプリンターでは唯一のトップ10入りとなっている。

 ちなみに、勝利数ランキング2位のクンプが所属するアドリア・モービルはUCIコンチネンタルチーム。同プロコンチネンタルチームであるコフィディス ソリュシオンクレディ所属のブアニと同じ、UCIヨーロッパツアーが主戦場だ。同ツアー個人ランキングでは、ブアニが1位、クンプは5位と、構図が変わっている。ブアニは1クラスでの勝利(ワンデーレース80pts、ステージ勝利16pts)が多いのに対し、クンプは2クラスでの勝利(40pts、8pts)が多いのが特徴。

 また、クンプは7月に中国で行われた、ツアー・オブ・チンハイレイク(UCI2.HC)でステージ5勝(全13ステージ)を挙げたが、これはUCIアジアツアーランキングに反映されるため、ヨーロッパツアーポイントに加算されていないことも挙げられる(UCIアジアツアーでも6位にランクインしている)。

 そんなクンプだが、今シーズンの活躍が評価され来季のランプレ・メリダ移籍が決定している。2013年から2年間ティンコフ・サクソで走った実績があり、トップカテゴリー返り咲きとなるが、UCIワールドツアーでも勝利量産なるか。

UCIチームランキング上位は“ダブルエース”

 チーム勝利数とUCIチームランキングの関連性はどうだろうか。

2015年シーズンチーム勝利数ランキング

1 エティックス・クイックステップ 54
2 チーム スカイ 44
3 ロット・ソウダル 40
4 チーム カチューシャ 40
5 アスタナ プロチーム 34
6 BMCレーシングチーム 33
7 モビスター チーム 32
8 ランプレ・メリダ 30
9 コルス・BDCチーム 29
10 ティンコフ・サクソ 28

※同勝利数の場合は2位フィニッシュの回数でランク付け

2015年シーズンUCIワールドツアーチームランキング

1 モビスター チーム 1619pts
2 チーム カチューシャ 1614pts
3 チーム スカイ 1378pts
4 エティックス・クイックステップ 1158pts
5 アスタナ プロチーム 1106pts
6 BMCレーシングチーム 1010pts
7 ティンコフ・サクソ 925pts
8 オリカ・グリーンエッジ 845pts
9 ロット・ソウダル 832pts
10 チーム ジャイアント・アルペシン 773pts

 チーム成績も、勝利数がUCIランキングに反映されるわけではないことは確かだ。シーズン最多勝のエティックス・クイックステップは、54勝のうちUCIワールドツアーでは9勝。2位や3位と表彰台を確保するケースは多かったものの、高ポイントが獲得できるグランツールやクラシックレースでコンスタントに上位を押さえたモビスター チームに、UCIワールドツアーチームランキングでは及ばなかった。

バルベルデとキンタナというダブルエースを筆頭に高いチーム力を誇るモビスター チーム Photo: Yuzuru SUNADAバルベルデとキンタナというダブルエースを筆頭に高いチーム力を誇るモビスター チーム Photo: Yuzuru SUNADA

 モビスター チームは、個人ランキング1位のバルベルデやキンタナの活躍度がポイント数に顕著に表れている。また、ヨン・イサギレ(スペイン)のツール・ド・ポローニュ総合優勝も大きな後押しとなった。5ポイント差で惜しくも2位に終わったチーム カチューシャも、傾向としてはモビスターとほぼ同じ。ロドリゲスやクリツォフがビッグレースでポイントを稼いだほか、1週間程度のステージレースを得意とするシモン・スピラク(スロベニア)の貢献度も高かった。

 チーム スカイは、ビッグレースでの戦いに長けている点ではプロトン随一と言えるが、バルベルデとキンタナのモビスター、ロドリゲスとダニエル・モレノ(スペイン)のカチューシャのように、ダブルエース態勢を敷かない点でポイント数の差が表れた印象だ。ステージレースではフルームやリッチー・ポート(オーストラリア)、クラシックではゲラント・トーマス(イギリス)、スプリントではエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)といった、重要局面は絶対エースに託す戦い方が改めて明白となったといえよう。

今シーズンフル稼働した選手は?

 2015年シーズンを通して、最も“突っ走り続けた”選手を、年間総レース距離と総レース日数の観点から押さえてみよう。

2015年シーズン総レース距離ランキング

1 クリスティアン・スバラーリ(イタリア、MTN・クベカ) 15996km
2 イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル) 15875km
3 マルティン・ケイゼル(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) 15834km
4 パヴェル・ブルット(ロシア、ティンコフ・サクソ) 15686km
5 トマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー) 15421km
6 ピエール・ローラン(フランス、チーム ヨーロッパカー) 15131km
7 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 15042km
8 ルイ・メインティス(南アフリカ、MTN・クベカ) 14885km
9 ミヒャエル・シャール(スイス、BMCレーシングチーム) 14802km
10 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ) 14753km

※途中リタイアの場合は、レース距離の50%を加算

2015年シーズン総レース日数ランキング

1 マルティン・ケイゼル(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) 101
2 クリスティアン・スバラーリ(イタリア、MTN・クベカ) 98
3 パヴェル・ブルット(ロシア、ティンコフ・サクソ) 98
4 イェンス・デビュッシュール(ベルギー、ロット・ソウダル) 95
5 ピエール・ローラン(フランス、チーム ヨーロッパカー) 95
6 ミヒャエル・シャール(スイス、BMCレーシングチーム) 95
7 トマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー) 94
8 ルイ・メインティス(南アフリカ、MTN・クベカ) 94
9 ベアトヤン・リンデマン(オランダ、チーム ロットNL・ユンボ) 94
10 サーシャ・モドロ(イタリア、ランプレ・メリダ) 94

※同数の場合は総レース距離でランク付け

 ここから、レース日数と総レース距離とがおおむね関係していることがうかがえる。傾向としては、エースクラスかアシストクラスか、さらには脚質に関係なく、チーム事情や出場するレースのタイプなどに合わせながら選手たちは数多くのレースをこなしてきた点にある。

シーズンを通してスプリンター、クラシックレーサーとして活躍したイェンス・デビュッシュール(パリ~ルーベ2015) Photo: Yuzuru SUNADAシーズンを通してスプリンター、クラシックレーサーとして活躍したイェンス・デビュッシュール(パリ~ルーベ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 総レース距離1位のスバラーリは、1月29日のトロフェオ・サンタニー(スペイン、UCI1.1)でシーズンインし、10月11日のGPブルーノ・ベゲッリ(イタリア、UCI1.HC)まで、毎月コンスタントにレースに出場。ほぼ休みなくシーズンを送っている。同2位のデビュッシュールも、1月から10月までレース出場を繰り返している。ともに、チームではエーススプリンター格であり、しっかりと結果を残している点も見逃せない。

 総レース日数で1位となったケイゼルは、ツール期間中は休暇を取っているが、ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャはアシストとして参戦し完走。その他レースでもリタイアが3レースと、離脱の少ない点が挙げられる。

 これら数字は、選手たちのタフさを表す指標としてあることは確かなようだ。一方で、過去には120日以上レースをこなす選手がいたこともあり、近年は総レース日数が多くても100日前後に抑えられるよう、チームがしっかりと管理している側面も理解しておきたい。

データ参考
ProCyclingStats http://www.procyclingstats.com/
Cycling Quotient http://www.cqranking.com/

今週の爆走ライダー-クリスティアン・スバラーリ(イタリア、MTN・クベカ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 前述のデータから、「2015年シーズン最もタフなライダーだった1人」として、スバラーリを推したい。プロ3年目の25歳で、プロトンで台頭する1990年生まれ“ゴールデンエイジ”の1人。チームが誇る、生え抜きスプリンターだ。

 アマチュア時代は自国のレースを中心に活躍。2013年のプロ入り以降は、順調に成長を遂げてきた。そして飛躍の2015年。次々と上位進出を果たし、エーススプリンターとして臨んだブエルタで大仕事を果たした。第10ステージで混戦のスプリントを制したのは、キャリアのハイライトなのはもちろん、今シーズン唯一の勝利が大舞台での1勝だったことも大きい。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第10ステージでスプリントを制し拳を振り上げたクリスティアン・スバラーリ Photo: Yuzuru SUNADAブエルタ・ア・エスパーニャ2015第10ステージでスプリントを制し拳を振り上げたクリスティアン・スバラーリ Photo: Yuzuru SUNADA

 来シーズンは、カヴェンディッシュがチームに加入。よきお手本の合流に歓迎の意思を示す。ビッグレース出場をかけたチーム内での争いが激化するが、チームが大きくなる歩みを進める中で、より責任ある立場を任されるはずだ。

 群を抜く“タフさ”で、今後もあらゆるチャンスをつかむことだろう。クリスティアン・スバラーリの名をみなさんも覚えておいてほしい。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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