MTBジャパンシリーズ DH第4戦・富士見パノラマ清水一輝が快走、大差で今季2勝目 女子は末政が圧勝

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 国内マウンテンバイクレースの最高峰、2012年度のJシリーズも後半戦。9月15日~17日にかけてダウンヒル第4戦、クロスカントリー第5戦が長野県富士見パノラマリゾートにて開催された。

 16日に開催されたダウンヒルでは、オーストリアでのMTB世界選手権から帰国したばかりの清水一輝(AKI FACTORY TEAM)が、2位の井手川直樹(Devinci/SUNSPI.com)に4.045秒の大差をつけて圧勝した。

優勝した清水一輝の決勝ラン。普段は来場者の通路として使われているメインエントランスの階段がコースとして使用され、多くの観客がレースを見守った優勝した清水一輝の決勝ラン。普段は来場者の通路として使われているメインエントランスの階段がコースとして使用され、多くの観客がレースを見守った
2位の井手川直樹はレース期間中、体調を崩していた。「こういう時もありますよね、次は万全で挑みますよ!」2位の井手川直樹はレース期間中、体調を崩していた。「こういう時もありますよね、次は万全で挑みますよ!」
ここ2年、怪我に悩まされて思いきった走りができていなかった永田隼也。それでもワールドカップへの参戦など積極的に海外のレースを経験してきた。久しぶりの表彰台に、その表情は明るかったここ2年、怪我に悩まされて思いきった走りができていなかった永田隼也。それでもワールドカップへの参戦など積極的に海外のレースを経験してきた。久しぶりの表彰台に、その表情は明るかった

 コースは富士見パノラマ常設であるAコース下部からスタートし、昨年のレースで新設された急斜面である「木落とし坂」を経由、さらに通常のレースで使用されるゴールエリアであるゲレンデ区間を通過したあと、パノラマリゾートのセンターハウスである施設の中にあるトンネルのような階段を駆け下りて、正面のエントランスでゴールするというレイアウト。特に階段を使うセクションは2008年のJシリーズでも使われたルートであるが、以前からコースディレクターとして大会に携わっていた元ダウンヒル界のトップエリート、内嶋亮氏のアイデアで今回の復活となった。

富士見パノラマのメインエントランスがフィニッシュエリアとなった富士見パノラマのメインエントランスがフィニッシュエリアとなった
コース最初の見せ場、ビッグドロップを飛ぶ九島勇気。数年前、レース用に作られたセクションだが、今では定番の観戦スポットになっているコース最初の見せ場、ビッグドロップを飛ぶ九島勇気。数年前、レース用に作られたセクションだが、今では定番の観戦スポットになっている

 富士見パノラマリゾートには入笠山への散策などで訪れる軽登山者も多く、ゴンドラによって簡単にアクセスできる事から、小さな子供を連れたファミリーや高齢者の姿も多い。こういった人達がレースを観戦するには、普段のレースコースでは少なからずコースまで歩く必要があったが、今回のレイアウトではゴンドラのチケット売り場や食堂、売店、トイレなど施設の中枢を貫通するため、一般の方々が足を止めて観戦する姿も見られた。内嶋氏が主宰するダイナコは今年からJシリーズの企画運営/大会受付業務を行う事になったが、現役当時から氏がよく口にしていたレースに関わる諸問題(タイムスケジュール、コース設定、ブースエリアの配置、ファンサービス等)に対しての氏の取り組みが、少しずつ形に現れてきていると言えるだろう。

ゲレンデセクションを終え、最後の階段に進入していく末政実緒。当然ながら普段はマウンテンバイクが走れるところではないゲレンデセクションを終え、最後の階段に進入していく末政実緒。当然ながら普段はマウンテンバイクが走れるところではない
ゴール前の階段はストレートではなく、いやらしいところでカーブしていく。ライダーはXCOでもエリートクラスを走る武井怜緒奈。DHとXCOの両カテゴリーでエリートクラスを走っているのは彼だけだゴール前の階段はストレートではなく、いやらしいところでカーブしていく。ライダーはXCOでもエリートクラスを走る武井怜緒奈。DHとXCOの両カテゴリーでエリートクラスを走っているのは彼だけだ

 レースは富士見パノラマには珍しいほどのドライ路面となった。特に今回のために新設された区間は、ライダーの走行によって踏み固められておらず、タイヤが半分埋まってしまうほどのバフバフ路面。前走者が巻き上げた砂塵がしばらく消えないほどで、ライダー達は普段よりも神経を使って、スリップダウンする限界を見極めながら試走に取り組んだ。

コースはドライでライダーが通過する度に砂塵が舞うようなコンディションだったコースはドライでライダーが通過する度に砂塵が舞うようなコンディションだった
富士見のコースは走り固められたハードパックな路面が多い。しかし新設されたセクションは土が柔らかく、里山トレールのような路面の場所もあった富士見のコースは走り固められたハードパックな路面が多い。しかし新設されたセクションは土が柔らかく、里山トレールのような路面の場所もあった

 まずは予選。世界選手権の勢いをそのままに走る清水一輝が「僕は予選でも全開走行です」との言葉通り、後続を4.457秒引き離す快走で予選をトップ通過した。以下井手川直樹、九島勇気(玄武/Ninjya TV)、永田隼也(A&F/RockyMountain)、井本はじめ(LOVE BIKES)の順となった。

バームと呼ばれるバンク角がつけられたコーナーを曲がっていく清水一輝バームと呼ばれるバンク角がつけられたコーナーを曲がっていく清水一輝
コース上部にはゲレンデ区間もある。この後、森の中のシングルトラックへと入って行く。ライダーは塚本岳コース上部にはゲレンデ区間もある。この後、森の中のシングルトラックへと入って行く。ライダーは塚本岳

 予選上位30人による決勝でも清水の勢いは衰えず、昨年までは課題とされていた安定感をも感じさせる結果となった。常設コースとして走り込まれている富士見パノラマでは、コンマ差で勝負が決することも珍しくない。この日清水が付けた4秒という大差に、2位となったベテランの井手川も「今日の一輝は速かったね」とコメントする程だった。3位には久しぶりの表彰台となる永田隼也が入り「(足の)怪我をしてからホントに長かったですね。ようやく戻ってきた、という感じです。残りのレースも攻めますよ!」と2年前の全日本選手権以来となる表彰台の感想を語った。

富士見常設ではBコースと呼ばれているルートもコースの一部に加えられていた。ライダーは4位となった黒沢大介。自身初の表彰台まであと一歩のところまできた。今シーズン中の達成はあるだろうか富士見常設ではBコースと呼ばれているルートもコースの一部に加えられていた。ライダーは4位となった黒沢大介。自身初の表彰台まであと一歩のところまできた。今シーズン中の達成はあるだろうか
激戦のエキスパートクラスで優勝したのはベテラン高松健二。彼の実力を持ってしても、エキスパートクラス優勝まで4戦を費やした。次戦ウイングヒルズからはエリートクラスに昇格する激戦のエキスパートクラスで優勝したのはベテラン高松健二。彼の実力を持ってしても、エキスパートクラス優勝まで4戦を費やした。次戦ウイングヒルズからはエリートクラスに昇格する
野沢大会のエキスパートクラスで優勝、今大会からエリートクラスに特別昇格した浦上太郎。初のエリートクラス参戦であったが見事に予選通過を決めた。遠く九州からの参戦だがTシャツにデニムパンツ、ベルトの代わりに靴ひも、そしてノーグローブとかなり個性的なライダーだ。ダウンヒルは自転車競技の中でも特にエクストリームスポーツの色合いが濃い。ダートジャンプを得意とする彼は決勝の階段で特大のジャンプに挑戦、多くの観客を沸かせたが着地に失敗し転倒、決勝は30位だった野沢大会のエキスパートクラスで優勝、今大会からエリートクラスに特別昇格した浦上太郎。初のエリートクラス参戦であったが見事に予選通過を決めた。遠く九州からの参戦だがTシャツにデニムパンツ、ベルトの代わりに靴ひも、そしてノーグローブとかなり個性的なライダーだ。ダウンヒルは自転車競技の中でも特にエクストリームスポーツの色合いが濃い。ダートジャンプを得意とする彼は決勝の階段で特大のジャンプに挑戦、多くの観客を沸かせたが着地に失敗し転倒、決勝は30位だった

 女子エリートクラスは出走が6名と寂しいレースとなったが、見所もあった。

 王者、末政実緒(FUNFANCY/INTENSE)が危なげなく勝ったレースではあったが、3位には九島賛汰、九島勇気の妹である九島あかね(KHS)が入り自身初の表彰台。2位となった中川弘佳(Ringo Road.com)や中村美佳(福井和泉MTB PARK/KOWA)、服部良子(FUST)といったベテラン勢に対して、今回は6位だった中川綾子(GDR/髑髏団)や九島あかねといった若手が食い込むレースが続いており、女子にも世代交代の流れがやってきている。「現役である間は勝ち続けたい」と語る全日本選手権13連覇中の末政実緒に追いつく選手が現れる事に期待したい。

通常のレースではゴールエリアだったゲレンデ区間を走る清水一輝。最後の階段セクションへ繋がるコーナーは特に滑りやすくなっていた通常のレースではゴールエリアだったゲレンデ区間を走る清水一輝。最後の階段セクションへ繋がるコーナーは特に滑りやすくなっていた
富士見パノラマから八ヶ岳を望む。レース期間中は晴天に恵まれた富士見パノラマから八ヶ岳を望む。レース期間中は晴天に恵まれた
メカニックにとってもレースは戦いである。「キャサリン」の愛称で知られる笠原氏はTransitionチームのメカ。井本はじめのスタートをサポートするためにスタート地点に向かう。装備を聞くと「今回はローラー台、ポンプ、チューブ、チェーン、工具一式ぐらいかな」との事だった。雨ならこれに大きな傘が加わるメカニックにとってもレースは戦いである。「キャサリン」の愛称で知られる笠原氏はTransitionチームのメカ。井本はじめのスタートをサポートするためにスタート地点に向かう。装備を聞くと「今回はローラー台、ポンプ、チューブ、チェーン、工具一式ぐらいかな」との事だった。雨ならこれに大きな傘が加わる
クラックが入った九島勇気のホイール。ダウンヒルはどうしても車輪の消耗が激しいクラックが入った九島勇気のホイール。ダウンヒルはどうしても車輪の消耗が激しい

 今年のJシリーズもいよいよ終盤。ダウンヒルはウイングヒルズ大会(岐阜県)と白山一里野大会(石川県)で今年のシリーズチャンピオンが決定する事になる。清水と青木はレバノンで開催されるアジア選手権に参加する方向で、一里野大会は欠場が濃厚だ。次戦の結果によってはシリーズチャンプの行方も見えてくるだろう。また、ウイングヒルズ大会には元全日本チャンプ、安達靖の現役復帰もアナウンスされており、彼の復帰戦での走りにも注目したい。

表彰式を待つ清水一輝。勝ち慣れたか?表情には余裕が伺える表彰式を待つ清水一輝。勝ち慣れたか?表情には余裕が伺える
ダウンヒル女子エリート表彰式。優勝は末政実緒、2位中川弘佳(左)、3位九島あかね(右)ダウンヒル女子エリート表彰式。優勝は末政実緒、2位中川弘佳(左)、3位九島あかね(右)

男子エリート結果
1 清水一輝(AKI FACTORY TEAM) 2:26.160(54.18km/h)
2 井手川直樹(Devinci/SUNSPI.com) 2:30.205
3 永田隼也(A&F/RockyMountain) 2:32.531
4 黒沢大介(Team GT/FUST) 2:34.009
5 青木卓也(TEAM GIANT) 2:35.084
6 小山 航(BANSHEE) 2:35.443

女子エリート結果
1 末政実緒(Team FUNFANCY/INTENSE) 2:54.192
2 中川弘佳(Ringo Road.com) 3:03.228
3 九島あかね(KHS) 3:05.940

大会リザルトページ

(文・写真 中川裕之)

中川裕之中川裕之(なかがわ ひろゆき)
’06年、大きな病気を乗り越える課程で写真を撮り始める。
’11年からは活動の場を海外に広げ、山の中を走る自転車レースを追いかけている。
MTBのコアな部分にフォーカスした雑誌SLmの発行人。
http://www.slmedia.jp/slm-mtbphotojournal/

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