プロの使用アイテムをGET!選手とファンが交流する“公然のヤミ市” ジャパンカップ恒例「ライダーズマーケット」

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 日本人選手が大活躍し、今年も盛り上がった「ジャパンカップサイクルロードレース」。世界のトップライダーたちによる戦いを日本で間近で見られる貴重な大会だ。一方、レース外でも海外トップ選手とファンが楽しく交流するのがジャパンカップの流儀。トップ選手たちが、日本のファンに対してチームウェアやバイクパーツなどを個人販売することも、毎年恒例になっている。そこで、筆者は勝手に「ライダーズマーケット」と命名。選手とファンの取引の場を見せてもらい、大会事務局や宿泊施設はノータッチという“公然のヤミ市”で、販売されるアイテムや、マーケットを楽しむファンの姿に迫った。

部屋いっぱいに並べられたアイテムの数々。種類ごとに陳列されていた Photo: Syunsuke FUKUMITSU部屋いっぱいに並べられたアイテムの数々。種類ごとに陳列されていた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

毎年変わるチームウェアを売買

大勢のファンがイベントを終えた選手たちをホテルのロビーで待ち構えた Photo: Syunsuke FUKUMITSU大勢のファンがイベントを終えた選手たちをホテルのロビーで待ち構えた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ジャパンカップに海外から参戦する選手の宿舎は、チーム関係者のみならずメディア、そしてファンで常ににぎわっている。選手を「出待ち」してイベントやレースへの出発・帰宿を見届けるファンは多く、選手たちも休息時間にふらりと階下のロビーに姿を現してサインや写真撮影に応じるなど、リラックスして過ごしている。各チームが選手を守るために外部との接触を厳しく管理するグランツールなどとは異なり、積極的にファンとの交流を楽しんでいるのだ。

 そんなお楽しみの一つに、出場選手やチーム関係者によるチーム公式アイテム・グッズの個人的な売買が挙げられる。チームウェアやグッズはシーズンごとにデザインが変わることから、選手やチーム関係者にとっては持て余していても仕方がない、というのが本音なのだろう。また、少しでも手荷物を減らして帰国したいという思惑もあるかもしれない(笑)

 ファンにとっては、レース応援や自身のライドに使うためのチーム公式ウェアなどを、トップライダーから直接手に入れられるチャンス。なかには、このために予算を組んで臨む人もいるそうだ。

グッズ販売のためだけに来日

 そんなわけで、「ライダーズマーケット」をのぞいてみることに。何やら、ファン同士でどの選手が販売に積極的かという情報の交換・共有が図られているようだ。偶然にも、これから選手のもとへ行こうというファンと遭遇。一緒に足を運んだ。

自分の目でアイテムを吟味。選手はファンからの質問に丁寧に応じた Photo: Syunsuke FUKUMITSU自分の目でアイテムを吟味。選手はファンからの質問に丁寧に応じた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 取引が行われるのは、選手が寝泊まりする部屋だ。筆者が同行したケースでは、ホテルのロビーで選手自身が購入目的のファンを探し、意思確認ができた時点で部屋へと招く形だった。

 「アイテムやグッズの販売はチームの許可を得てやっているよ。もちろん写真撮影もOKさ」と言うのは、アルベルト・ベッティオール(イタリア、チーム キャノンデール・ガーミン)。部屋一面に販売品を並べる様は、さながらショップのよう。種類ごとに分けられ、ファンが好きなものを手に取れるよう配慮までなされている。

 ジャージやビブショーツ、ベストといったサイクルウェアは、一律5000円に設定。レース外で着用するジャケットやパーカーなどは、1万円前後だという。今シーズンのチームウェア以外にも、昨シーズンのモデルや、2013年にUCIロード世界選手権U23ロードレースに出場した際に使用したイタリア代表のウェアも置かれていた。ベッティオールはファンからの質問1つ1つに丁寧に応対。ときにはおすすめの着用方法なども、実際に着ながら説明するなど、購入を検討する人が理解できるよう親身になって働きかけていた。

アルベルト・ベッティオールが着用したイタリア代表のキャップとグローブをセット購入。選手との値段交渉も無事成立 Photo: Syunsuke FUKUMITSUアルベルト・ベッティオールが着用したイタリア代表のキャップとグローブをセット購入。選手との値段交渉も無事成立 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
あらかじめ販売価格を設定し、プライスカードを用意していた選手も Photo: Syunsuke FUKUMITSU あらかじめ販売価格を設定し、プライスカードを用意していた選手も Photo: Syunsuke FUKUMITSU 

 別の選手は、「契約の都合上、名は伏せておいてほしい」と前置きした上で話を聞かせてくれた。各アイテムにプライスカード(値札)を添付。あらかじめ価格を設定しているあたり、販売慣れしているイメージだ。チームウェア一つをとっても、グランツール用にデザインがマイナーチェンジされたモデルもあることから、プライスカードにはどのレースで着用したものかがきっちりと記載されていた。グランツールで使用したウェアやシューズ、国際大会の代表ジャージなどは、少々高めの価格設定となっていた。やはり、ツール・ド・フランスをはじめグランツールで使用したものは、ほかと比較して値打ちがあるようだ。

 また、前所属チームのアイテムを中心にファンへ提供していた選手の姿も。「旧モデルのデザインの方がよかった」などと思っている人にとっては、朗報だったに違いない。

 さらに極めつけは、このライダーズマーケットのためだけに来日した選手が存在したことだ。この選手は、過去にジャパンカップ出場経験があるものの、今年は所属チームが招待を得られず、レースには出場していない。しかしバッグいっぱいにかつて使用したウェアなどを詰め、購入希望のファンとコミュニケーションを図っていた。

販売を禁止しているチームも

 こうした動きについて、ジャパンカップ出場経験が豊富で、2007年に優勝を果たしているマヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)に質問をぶつけてみた。彼自身も「ファンとの取引は行ったことがある」といい、「選手にとっては、ファンと交流するよい機会でもあるんだ」と思いを語った。

 モーリの場合、日本人によるファンクラブがあり、現在は彼らへのプレゼント用にウェアなどを用意して来日しているそうだが、「ファンへの販売行為は現在、チームから禁止されている」という。ベッティオールのようにチームから許可を得て行っている例もあるので、個人売買への対応はチームによって異なっているようだ。

ツール・ド・フランスで実際に使用したというサングラス Photo: Syunsuke FUKUMITSUツール・ド・フランスで実際に使用したというサングラス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ファンの立場で言えば、選手と直接対話ができるチャンスでもある。ツール・ド・フランスで選手が実際に使用したサングラスを購入したというファンは、受け渡しの際にその選手に着用してもらい記念撮影を行ったのだとか。また、別のファンは、キャップとグローブをセット購入。英語と日本語を織り交ぜながら価格交渉にトライするなど、普段の生活ではなかなか味わえない経験も楽しんだようだ。

収益の使い道は「シークレット!」

 ただし、チームアイテムを販売して得た収益の使い道は教えてもらえなかった。オープンな姿勢で話してくれたベッティオールも、この質問には「シークレット!」と返答。他の選手からも、口に指を当てて「秘密」のジェスチャーで返されてしまった。選手たちは、おつり用の紙幣や硬貨まで準備するなど、アイテム販売には用意周到に臨んでいることは確かだ。

 このようなアイテム販売は、ジャパンカップだけに限った話ではない。シーズンオフを迎えるこの時期には、さまざまな手段でファンに“還元”する取り組みが見られる。これらの行為には賛否両論があるかも知れないが、選手とファンをつなぐと同時に、ファンによるチーム・選手への応援・支援における1つのあり方として捉えてもよいのではないか。

 筆者およびCyclistは、選手とファンの個人売買を推奨するものでも、否定するものでもない。選手とファンが節度を持って楽しく交流していくことを願っている。

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