ジャパンカップでは逃げて魅せた!「夢をあきらめないで」とメッセージを発信 チーム ノボノルディスクの挑戦<後編>

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 宇都宮市で10月17、18日に開催された「ジャパンカップサイクルロードレース」に2年連続で出場し、好成績を収めた「チーム ノボノルディスク」。選手全員が1型糖尿患者であるにもかかわらず、世界トップクラスのレースで活躍し、見る人に勇気と感動を与えている。<後編>では、ジャパンカップで逃げ集団に加わってレースをリードしたマッタイン・フェルスコール選手(30、オランダ)へのインタビューを通じ、選手の素顔に迫ります。

ジャパンカップのレース序盤、土井雪広選手(後方)らと共に逃げグループで快走するマッタイン・フェルスコール選手 =2015年10月18日、宇都宮市 Photo: Yuzuru SUNADA / Japan Cup Utsunomiyaジャパンカップのレース序盤、土井雪広選手(後方)らと共に逃げグループで快走するマッタイン・フェルスコール選手 =2015年10月18日、宇都宮市 Photo: Yuzuru SUNADA / Japan Cup Utsunomiya

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血糖値を管理して続ける競技活動

Cyclistのインタビューに応じるマッタイン・フェルスコール選手 =10月17日、宇都宮市内 Photo: Kyoko GOTOCyclistのインタビューに応じるマッタイン・フェルスコール選手 =10月17日、宇都宮市内 Photo: Kyoko GOTO

 1型糖尿病は、小児期に発症することが多く、フェルスコール選手も13歳のときに同疾患を発症した。スピードスケートに打ち込んでいた当時、突然告げられた病名がどのような病気なのかも理解できなかったという。

 しかしフェルスコール選手には、そこでスピードスケートをやめるという判断はなかった。「どうやったら血糖値を管理できるのかを医師に教えられ、それができればスポーツを続けられるとわかったので、前向きに受け止めることができた」という。

ジャパンカップサイクルロードレースで序盤に逃げ集団を牽引するマッタイン・フェルスコール選手 Photo: Team Novo Nordiskジャパンカップサイクルロードレースで序盤に逃げ集団を牽引するマッタイン・フェルスコール選手 Photo: Team Novo Nordisk

 1型糖尿病とは、生活習慣によるものではなく、自己免疫反応の異常やウイルス感染などが原因ですい臓のβ細胞の働かなくなり、体内でインスリンが分泌されなくなる疾患だ。インスリンが分泌されなくなると血中のブドウ糖が分解されないため、体内の血糖値を正常に保つには体外からインスリンを補う治療が必要となる。一方で、インスリンによる血糖コントロールがうまくいかないと低血糖による意識障害、最悪の場合は命の危険に関わる場合もあるため、適切な血糖管理が治療のカギとなる。

アンドレーア・ペロン選手 Photo: Team Novo Nordiskアンドレーア・ペロン選手 Photo: Team Novo Nordisk
ニコラ・ルフランソワ選手 Photo: Team Novo Nordiskニコラ・ルフランソワ選手 Photo: Team Novo Nordisk

 なお、インスリンはドーピングに該当する禁止物質だが、糖尿病患者の場合、世界アンチ・ドーピング機構とTUE(Therapeutic Use Exemption:治療使用特例)国際基準で定められた手続きに則り、治療目的であることを申請すれば使用が認められている。

「プロになれるはずない」に奮起

 「診断された1年目は学ぶことが非常にたくさんあった」というフェルスコール選手。患者個々人によって方法が大きく異なる血糖管理であるだけに、失敗を繰り返しながら自分の体と向き合い、コントロールする術を体得していったという。こうして彼のアスリート人生は糖尿病とともに始まった。

ジャパンカップ当日、ステージで紹介される(左から1人おいて)マッタイン・フェルスコール、ハビエル・メヒアス、シャルル・プラネ、ニコラ・ルフランソワ、アンドレーア・ペロン各選手 Photo: Team Novo Nordiskジャパンカップ当日、ステージで紹介される(左から1人おいて)マッタイン・フェルスコール、ハビエル・メヒアス、シャルル・プラネ、ニコラ・ルフランソワ、アンドレーア・ペロン各選手 Photo: Team Novo Nordisk

 19歳で、もともと好きだった自転車競技に転向。体育の教員を目指し、オランダのスポーツ研究所で学んでいたところ、チーム ノボノルディスクの存在を知った。そして自らコンタクトをとり、2010年の卒業時に契約を交わした。プロ1年目は最後まで走れたレースはなかった。

 当初、周囲は彼が糖尿病なのでプロ選手になれるはずがないと思っていたという。しかし、これが彼を奮い立たせる。2011年にツール・ド・ボース(カナダ)第2ステージで優勝を遂げ、世間の評価を覆した。続いてツアー・オブ・サウスアフリカやツアー・オブ・ハイナン(中国)のステージで5位入賞、ツアー・オブ。チンハイレイク(同)、ツアー・オブ・チャイナ(同)、ブエルタ・ア・カスティーリャ・レオン(スペイン)、ツール・ド・リオ(ブラジル)のステージそれぞれ上位10位入賞と好成績を獲得した。

チーム ノボノルディスクが欧州で使用しているチームバス。世界各国のサポーターたちから寄せられた応援メッセージが記されている Photo: Team Novo Nordiskチーム ノボノルディスクが欧州で使用しているチームバス。世界各国のサポーターたちから寄せられた応援メッセージが記されている Photo: Team Novo Nordisk

ライダーにふさわしい存在でありたい

 発症から17年が経過したいま、感覚的に自分の体の調子がわかるようになってきたというフェルスコール選手。逆に調子が悪いときも然り。そんなときは、常にバックポケットに入れているCGM(持続血糖測定)で頻繁にチェックしながらライドに臨む。ただ、その行為もフェルスホール選手にとってはもはや特別なことではない。

サイン会に臨むチーム ノボノルディスクの選手たち Photo: Kyoko GOTOサイン会に臨むチーム ノボノルディスクの選手たち Photo: Kyoko GOTO

 「糖尿病をもつライダーとしてだけでなく、僕はいつでもライダーとして本領を発揮したいし、ライダーにふさわしい存在でありたいと思っている」と話すフェルスコール選手。そして「誰でも調子が良いとき、悪いときがある。それと同じ。病気でない人となんら変わりはない」と続けた。

 「ライド時のエネルギー補充の重要性もみんなと同じで、僕もポケットにたくさんお菓子を入れているよ」

シャルル・プラネ選手 Photo: Team Novo Nordiskシャルル・プラネ選手 Photo: Team Novo Nordisk
ハビエル・メヒアス選手 Photo: Team Novo Nordiskハビエル・メヒアス選手 Photo: Team Novo Nordisk

「笑顔が大事だよ」

チームノボノルディスクの選手たちと、活動を支えるスタッフが記念撮影 Photo: Kyoko GOTOチームノボノルディスクの選手たちと、活動を支えるスタッフが記念撮影 Photo: Kyoko GOTO

 フェルスコール選手はプロサイクリングチーム加入を決める際、2チームの選択肢があったが、チーム ノボノルディスクで走ると決めた理由は「同じ境遇にいる選手たちと疾患とのコントロールについて学び合えるし、走ることを通して同じ疾患を抱える子どもたちにメッセージを伝えたいと思ったから」という。

 その対象は子どもたちにとどまらず、両親や家族、関係者にも、患者でありアスリートとして歩んできた自身の経験を共有したいという思いが込められている。

 「Follow your dream. 夢をあきらめないで、一生懸命努力して、そして達成して」と力を込めるフェルスコール選手。最後に子どもたちへのメッセージを求めると、「“smile”って日本語で何ていうの?」とたずね返し、筆者が伝えた日本語を使って「笑顔が大事だよ」と微笑んだ。

サインに応じるマッタイン・フェルスコール選手 Photo: Team Novo Nordiskサインに応じるマッタイン・フェルスコール選手 Photo: Team Novo Nordisk

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