病気と闘いながらジャパンカップを快走糖尿病の少年に夢と目標を与えたレーサーたち チーム ノボノルディスクの挑戦<前編>

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 宇都宮市で開催された「ジャパンカップサイクルロードレース」において、17日のクリテリウムで10位に食い込んだアンドレーア・ペロン選手(イタリア)、18日のロードレースで15位という好成績を収めたハビエル・メヒアス選手(スペイン)。2人は「チーム ノボノルディスク」という、選手全員が1型糖尿患者で構成されるチームのメンバーだ。チームは昨年に引き続き2度目の出場を果たした。1型糖尿病を抱えながら過酷なレースに挑み、活躍するロードレーサーたちの勇姿は今年も注目を集め、同じ疾患をもつ子どもたちに大きな勇気と夢を与えた。

ジャパンカップクリテリウムの前にパレードランをするチーム ノボノルディスクの選手たち =10月17日、宇都宮市 Photo: Yuzuru SUNADA / Japan Cup Utsunomiyaジャパンカップクリテリウムの前にパレードランをするチーム ノボノルディスクの選手たち =10月17日、宇都宮市 Photo: Yuzuru SUNADA / Japan Cup Utsunomiya

少年に届いたサイクルジャージ

大原慎人くん(右)と父の寛昭さん(中央) Photo: Kyoko GOTO大原慎人くん(右)と父の寛昭さん(中央) Photo: Kyoko GOTO

 18日に行われたロードレース終了後、会場でチーム ノボノルディスクが開いたサイン会に、同じ疾患を抱える1人の男の子の姿があった。大原慎人(まなと)くん、11歳。慎人くんは昨年5月のゴールデンウィーク中、体調が悪い日が続き、病院で診察した結果、1型糖尿病と診断された。

 慎人くんの父、大原寛昭(ひろあき)さん(37)は「病名を聞かされたときは本当にショックで、事実をどう受け止めたらよいのかわからなかった」と当時の様子を振り返る。

チーム ノボノルディスクから大原慎人くんにプレゼントされたチームジャージ。ジャパンカップの会場でサインを書いてもらった Photo: Kyoko GOTOチーム ノボノルディスクから大原慎人くんにプレゼントされたチームジャージ。ジャパンカップの会場でサインを書いてもらった Photo: Kyoko GOTO

 糖尿病を発症する1年前からロードバイクに乗り始めていた慎人くん。寛昭さんが自身の自転車仲間に慎人くんの病気について相談したところ、「チーム ノボノルディスク」の存在を教えられた。寛昭さんはチームに対し、これからの慎人くんの生活について相談し、何らかの意見をもらえればと思い、ダイレクトメールを送った。しかしその返答は、寛昭さんの想像を上回る形で戻ってきた。

 「Welcome to our team!」(ようこそ、私たちのチームへ!)

 返信されたメールにはそう記されてあった。後日、慎人くんのサイズに合わせたサイクルジャージが自宅に届いた。慎人くんは、自分と同じくらいの年齢で同じ病気を発症し、ロードレーサーとして世界トップクラスのレースで活躍する選手たちの存在を知った。

「君がマナトか!」

2014年のジャパンカップで、地元・栃木の1型糖尿病患者を代表して4人も参加。チーム ノボノルディスクの選手にメッセージを贈った =2014年10月19日 Photo: Yoshiyuki KOZUKE2014年のジャパンカップで、地元・栃木の1型糖尿病患者を代表して4人も参加。チーム ノボノルディスクの選手にメッセージを贈った =2014年10月19日 Photo: Yoshiyuki KOZUKE

 昨年10月に開催されたジャパンカップに「チーム ノボノルディスク」が初参戦したのを機に、慎人くんはジャパンカップを訪れ、チームのメンバーと直接会う機会を得た。すると一人の選手から「君がマナトか!」と声をかけられた。チーム設立者の一人、ジョー・エルドリッチ選手(当時32歳、アメリカ)だった。

 “仲間”としてあたたかく迎え入れられ、彼の走りを目のあたりにした慎人くんは、「僕と同じ病気をもっているのにすごい」と、その感動を胸に焼き付けた。将来の夢は「ロードレーサー」という慎人くん。目標とする選手は、もちろん「ジョー」だ。

マッタイン・フェルスコール選手(オランダ)にサインしてもらう大原慎人くん Photo: Kyoko GOTOマッタイン・フェルスコール選手(オランダ)にサインしてもらう大原慎人くん Photo: Kyoko GOTO

 慎人くんのように「チーム ノボノルディスク」のメンバーになりたい子どもたちは世界各国にいる。15歳になったら米国・アトランタで開催される同チーム主催のジュニアを対象としたキャンプに招待されており、慎人くんはその日を心待ちにしながら日々、元気に自転車の練習に励んでいる。

共に戦う18人のロードレーサー

 チーム ノボノルディスクは米国籍のUCIプロコンチネンタルチーム。米国を拠点に活動する1型糖尿病患者の団体「チーム タイプ1」を前身として2005年に設立され、2012年にデンマークの製薬会社「ノボ ノルディスク社」とスポンサー契約した。世界初の糖尿病患者のみのスポーツチームとして、現在世界11カ国で18人のロードレーサーが共に戦っているほか、およそ60人のトライアスリートやマラソンランナーも所属している。

世界5大クラシックレースの一つ「ミラノ~サンレモ2015」を疾走するチーム ノボノルディスクのアンドレーア・ペロン選手 =2015年3月22日 Photo: Yuzuru SUNADA世界5大クラシックレースの一つ「ミラノ~サンレモ2015」を疾走するチーム ノボノルディスクのアンドレーア・ペロン選手 =2015年3月22日 Photo: Yuzuru SUNADA

 プロサイクリングチームに入るためには、表彰台あるいはエリートチームでの優勝経験、3年以上のレース経験を有するなどの条件をクリアすることが必要となる。チーム ノボノルディスクの2015年の成績は、3つのレースで表彰台を獲得し、20以上のレースでトップ10入り。病気をハンディとしない活躍を続けている。

→<後編>を読む

マッタイン・フェルスコール選手(左)、ハビエル・メヒアス選手(右)と記念撮影する大原慎人くん(中央) Photo: Kyoko GOTOマッタイン・フェルスコール選手(左)、ハビエル・メヒアス選手(右)と記念撮影する大原慎人くん(中央) Photo: Kyoko GOTO

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