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じてつう物語<7>片道30kmを通う心臓外科医の「楽しみ」と「配慮」 武藤康司さん

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 「東京都町田市から品川区大崎まで、片道30kmを自転車通勤しています」……そんなメールが編集部に舞い込んできた。距離もさることながら、どんなルートを思い描いてみても、自転車で通勤するには少々ハードではないだろうか。しかも職業はハードな日々を過ごす医師だという。さっそく、お話を伺った。

心臓外科医の武藤康司さん(44)心臓外科医の武藤康司さん(44)

幹線道路メインの素直なルートで片道30kmをじてつう

 今回お話しを伺うのは、大崎病院東京ハートセンターに心臓外科医として勤務する、武藤康司さん(44)。冒頭にも書いたように、東京都町田市のご自宅から、品川区大崎までの片道30kmを、ほぼ毎日自転車で通勤している。筆者はかつて東京都町田市から品川駅近くまでオートバイで通勤していたことがあるのだが、当時試したどんなルートを思い返してみても、自転車通勤にぴったりと言えるものが浮かばない。いったいどんなルートを選択しているのかと伺うと、意外?な答えが帰ってきた。

スピードプレイのペダル。「以前膝を悪くしたとき、ペダルをこれに変えたら調子が良かったんです」スピードプレイのペダル。「以前膝を悪くしたとき、ペダルをこれに変えたら調子が良かったんです」

 「基本は、世田谷通り(都道・県道世田谷町田線、津久井道)から246(国道246号)に出て、山手通り経由で大崎までという感じです。今の病院に自転車通勤するにあたって、事前にインターネットでルート検索をしたところ、いちばん速くて最短距離のルートがそれだったのです。それまで自転車で大崎まで行ったことがなくて道も知りませんでした。今ではちょっと飽きも出てきたので、小田急線登戸駅のあたりから多摩川沿いに下るルートなども選びますが、どのルートで行ってもだいたい30km強に収まっていますね」

 東京都町田市内から登戸駅付近までの世田谷通りは、道幅に余裕がなくてあまり走りやすいという印象はないのだが、武藤さんは違う。

 「個人的には、世田谷通りは走りやすいです。世田谷通りが想像していた以上に走りやすかったからこそ、片道30kmの自転車通勤を続けることができたんだと思います」

 実際に毎朝世田谷通りを走っている時間を伺うと「6時半~7時前くらいですね」と武藤さん。なるほど、それくらい朝早ければ渋滞もなく、世田谷通りも走りやすいのだろう。

医者は運動しない、だから自転車通勤

ガーミン エッジ 705をサイクルコンピューターとして利用しているガーミン エッジ 705をサイクルコンピューターとして利用している

 自転車通勤を始めたきっかけについて、武藤さんは次のように話す。

 「医者は忙しいのであまり運動をしないんです。私も運動不足になって、腰を痛めてしまいました。何か運動をしようと思ってフィットネスジムに通ったりもしたのですが、どうしても飽きてしまう。その後、引っ越したことで通勤距離が伸び、ジムに通っている時間がもったいないと感じるようになったんです。そこで、もともと自転車に興味がなかったわけではなかったので、自転車通勤してみたらどうだろう、と。疋田智さんの本を読んでみると、15kmくらいならできそうだとわかり、やってみることにしたんです。当時は、町田市内から神奈川県大和市まで片道12km程度の自転車通勤でした」

 そんなふうにして自転車通勤を始めたのが6年前、38歳のとき。その後、武藤さんはすっかり自転車通勤にはまってしまう。

 「自転車通勤を始めた頃、クルマが壊れて修理している期間がありました。電車通勤は好きではないので、2週間ほど自転車で通勤するしかなかったんです。そうしているうちに、慣れました。すると今度は、自転車に乗らない日がイライラしてくるようになるんです(笑)」

パワーメーターを活用。理由はトレーニングというよりも「体調のバロメーターとして」パワーメーターを活用。理由はトレーニングというよりも「体調のバロメーターとして」

 真っ直ぐ病院と自宅を行き来するだけでは満足できなくなり、20kmコース、30kmコースという具合に寄り道して走るコースを開拓。そのときの経験があって、通勤距離が片道30kmに伸びても臆することがなかった。

 自転車通勤のメリットについて、武藤さんは言う。

 「実は、朝から頭がスッキリするとか、手が良く動くとか、そういう感覚は持っていないんです。ただ、通勤そのものが楽しい。仕事自体はどうしてもストレスがあるものですが、仕事に入る前や仕事の後に楽しいことがあると、それだけで気持ちの持ちようが違ってきます。そういった気持ちの面でのメリットは大きいと思います」

心臓外科医として気をつけていること

 言うまでもなく、心臓外科医の仕事はハードだ。手術になれば何時間も神経をとがらせるし、体力も消耗する。

 「無理しない、怪我をしないことが第一です。雨の日は乗らないようにしていますし、体調にちょっとでも不安があれば、自転車には乗りません。手術で退勤が夜遅くなったときは、無理して帰宅せずに、宿直室に泊まらせてもらうこともあります」

 そして、心臓外科医ならではの工夫が、自転車に乗るときの装備にも現れている。

執刀医としては指先の感覚が大事。保護のため真夏でも指付きグローブだ執刀医としては指先の感覚が大事。保護のため真夏でも指付きグローブだ

 「夏でも必ずフルフィンガーのグローブを着用しています。手術は指先の感覚が重要なので、グローブで守っています。また、通勤時にはドイターのバックパックも手放せません。背中の部分にフレームが入っているタイプなのですが、以前事故にあったとき、バックパックに背中を守られたという感覚があるんです」

 自転車通勤以外にも、ロングライドイベントやヒルクライムレースも楽しむ武藤さんだが、仕事柄、怪我をしたくないという意識は人一倍強いようだ。武藤さんは「今の自転車通勤が、自分としてはハッピーなので、それを続けたい」と言う。続けたいからこそ、気を遣うのだろう。

 最後に、武藤さんと同様にちょっと遠い職場で、それでも自転車通勤してみたいと思う人に対して、アドバイスをお願いしてみた。

 「何も考えずにとりあえずやってみるというのではなく、考えうる準備をきちんとすることが大事でしょう。装備にしても、通勤経路や時間帯にしても、事前にちゃんと検討をすること、そして一度予行演習をしておけば、多少距離があっても自転車通勤はできるでしょう。十分な準備と、踏み出す勇気、その両方ですね」

 毎朝、郊外から都心まで急行電車に30分以上揺られている人も、自転車通勤は決して不可能ではないということ。出来ないと決めつけず、検討してみる価値はありそうだ。

勤務先:大崎病院東京ハートセンター
ルート:東京都町田市~品川区大崎、往復60km
時間:1時間30分(片道)
頻度:ほぼ毎日
マシン:オルベア・オルカ
じてつうの工夫:怪我をしないために、雨の日や体調不良のときは自転車に乗らない

TEXT&PHOTO BY Gen SUGAI

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