第1ステージはトラブルでキャンセルにインドネシアの「ツール・ド・シンカラ」第5ステージで西薗良太が逃げを決めて2位

by 田中苑子 / Sonoko TANAKA
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 10月3日から11日まで、第7回目となる「ツール・ド・シンカラ(UCI2.2)」が、インドネシアのスマトラ島、西スマトラ州のパダンを拠点として開催されている。初開催は2009年と歴史は比較的浅いが、地元の人たちに愛され、また毎年、日本人選手の活躍が目立つことから、日本のファンにとっても代表的な“アジアツアーレース”として定着してきている。ちなみにレース名の“シンカラ”とは、スマトラ島内陸部にある湖の名前に由来する。

第5ステージで区間2位に入った西薗良太(ブリヂストンアンカー)が表彰台に立つ Photo: Sonoko TANAKA第5ステージで区間2位に入った西薗良太(ブリヂストンアンカー)が表彰台に立つ Photo: Sonoko TANAKA

トラブルで第1ステージはキャンセルに

 ツール・ド・シンカラは東南アジアのレースらしく、良くも悪くも日本のレースや世界のビッグレースでは考えられないようなトラブルが付きまとう。今年も、大会初日の第1ステージは、選手数人がミスコースをしたことから、大きな混乱の末に、UCI(国際自転車競技連合)公認レースとしてのステージはキャンセルとなった。

 そのトラブルにより、当初の予定より1ステージ減って全8ステージでの開催となったが、それでも総走行距離は約1164kmと長く、すべてのステージが街から街へと走るラインレース。地形の特徴から上りの比重が高いものの、コースはバリエーションに富んでいるため、「本格的なロードレースができる」という点でチーム関係者からの人気は根強い。過去にはツール・ド・フランスの主催者であるA.S.O.が大会運営を手伝っていた時期があり、そのノウハウも生かされている。

急な登坂区間が続いた第4ステージ。山岳部でも沿道からは観客たちの声援が飛ぶ Photo: Sonoko TANAKA急な登坂区間が続いた第4ステージ。山岳部でも沿道からは観客たちの声援が飛ぶ Photo: Sonoko TANAKA
厳しい登坂区間では、すぐに集団は細分化され、少人数のグループで上っていく Photo: Sonoko TANAKA厳しい登坂区間では、すぐに集団は細分化され、少人数のグループで上っていく Photo: Sonoko TANAKA
レースが通過する街では、大勢の人たちが沿道に集まり選手たちに声援を送る Photo: Sonoko TANAKAレースが通過する街では、大勢の人たちが沿道に集まり選手たちに声援を送る Photo: Sonoko TANAKA
壁のような坂が続いた第4ステージの超級山岳 Photo: Sonoko TANAKA壁のような坂が続いた第4ステージの超級山岳 Photo: Sonoko TANAKA
厳しい第4ステージを走りきったブリヂストンアンカーの選手たち Photo: Sonoko TANAKA厳しい第4ステージを走りきったブリヂストンアンカーの選手たち Photo: Sonoko TANAKA

 ただレース以外の部分では、慣れない食事や長い移動など、選手たちにとって厳しい条件が多い。今年はさらに、インドネシアが直面する“煙害”の影響を大きく受けている。スマトラ島やカリマン島は乾季やフェーン現象の影響で深刻な干ばつに見舞われ、山火事が頻発している。その煙が風に乗って開催エリアまで到達し、一面が煙に覆われてしまっているのだ。

 晴れていても太陽は見えず、沿道にはマスク姿の観客が目立つ。今年の煙害はすでに2カ月が経過するほど長引いており、「根本的な解決は雨季になるのを待つしかない」と現地の人たちは諦めたように語る。ツアー・オブ・北京で、北京の大気汚染を経験している西薗良太(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)は「北京よりは、煙は自然由来のものだし、粒子も大きいと思うので、そこまで苦しくはないですね」と苦笑い。

マスクをして走る地元インドネシアの選手。煙害が大きな社会問題になっている Photo: Sonoko TANAKAマスクをして走る地元インドネシアの選手。煙害が大きな社会問題になっている Photo: Sonoko TANAKA
美しい棚田が広がる場所だが、煙害により視界は狭い Photo: Sonoko TANAKA美しい棚田が広がる場所だが、煙害により視界は狭い Photo: Sonoko TANAKA
第5ステージに組み込まれた「ケロック9」。旧道部分を使って上り、Uターンをして新しい立派な橋を下っていく Photo: Sonoko TANAKA第5ステージに組み込まれた「ケロック9」。旧道部分を使って上り、Uターンをして新しい立派な橋を下っていく Photo: Sonoko TANAKA
たくさんの観客たちに見守られながら、レースは進んで行く Photo: Sonoko TANAKAたくさんの観客たちに見守られながら、レースは進んで行く Photo: Sonoko TANAKA
沿道に集まるたくさんの子どもたち。初めて外国人を見る子どもも多く、興味津々だ Photo: Sonoko TANAKA沿道に集まるたくさんの子どもたち。初めて外国人を見る子どもも多く、興味津々だ Photo: Sonoko TANAKA
小さな集落を抜ける選手たちの後ろを犬が喜んで追走する Photo: Sonoko TANAKA小さな集落を抜ける選手たちの後ろを犬が喜んで追走する Photo: Sonoko TANAKA

日本から過去最多の4チームが参戦

 そんな「ツール・ド・シンカラ」に今年は日本から過去最多となる4チームが参戦している。前半戦を終えて、落車や体調不良などにも見舞われながらも勝利を目指してたくましく戦う各チームの戦いぶりと、監督からのコメントを紹介したい。

●愛三工業レーシングチーム

早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)が力強く超級山岳を越える Photo: Sonoko TANAKA早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)が力強く超級山岳を越える Photo: Sonoko TANAKA

 第1回大会から出場し、過去2大会はスケジュールの都合で出場できなかったものの、レースを熟知している。これまでに多くのステージ優勝を挙げ、3年前の大会では、伊藤雅和がリーダージャージを着用した。今大会では第3ステージで、チームのキャプテン綾部勇成が集団ゴールスプリントで3位入賞。第5ステージを終えて、伊藤が9分42秒差の総合13位につけている。

西谷泰治テクニカルディレクター
「クライマーの伊藤と早川朋宏をメーンに総合成績を狙っていきたい。イラン勢が強烈な強さを発揮しており、難しいレースとなっているが、2人の調子は良く、今後は山頂ゴールのステージもあるので、最後まで諦めずに、UCIポイント圏内(総合8位)を目指したい」

愛三工業レーシングチームのエースとして走る伊藤雅和と、山岳賞ジャージを着た初山翔(ブリヂストンアンカー)が超級山岳を越える Photo: Sonoko TANAKA愛三工業レーシングチームのエースとして走る伊藤雅和と、山岳賞ジャージを着た初山翔(ブリヂストンアンカー)が超級山岳を越える Photo: Sonoko TANAKA
第4ステージ終了後に疲労困憊の表情を浮かべる中島康晴(愛三工業レーシングチーム) Photo: Sonoko TANAKA第4ステージ終了後に疲労困憊の表情を浮かべる中島康晴(愛三工業レーシングチーム) Photo: Sonoko TANAKA

●ブリヂストンアンカー サイクリングチーム

レース前に作戦会議をするブリヂストンアンカー Photo: Sonoko TANAKAレース前に作戦会議をするブリヂストンアンカー Photo: Sonoko TANAKA

 チームとしての出場は2009年の第1回大会以来となる。しかし、昨年は初山翔と内間康平がナショナルチームとして参戦し、内間が区間2勝を挙げた。今大会は第2ステージで初山が区間3位、また山岳ポイントを独走で通過し、山岳賞ジャージを獲得した。厳しい山岳が組み込まれた第4ステージでは、イラン勢と競り合ったすえにトマ・ルバ(フランス)が区間2位、そして第5ステージでは、西薗良太が逃げ切りで区間2位でフィニッシュしている。

水谷壮宏監督
「総合優勝は厳しいと考えており、今回は区間優勝狙いで戦っている。これまでのステージで山岳でも勝負できることがわかったので、しっかりと勝利を狙っていきたい。2つのイランチームが牽制し合う動きがあるので、最後まで攻める気持ちを忘れなければ、勝つチャンスは大きいと考えている。ゴールまで諦めないことが大切になる」

第4ステージのスタート地点にて山岳賞ジャージを着用してスタートを待つ初山翔(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA第4ステージのスタート地点にて山岳賞ジャージを着用してスタートを待つ初山翔(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA
第4ステージで、序盤から単独で先行した内間康平(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA第4ステージで、序盤から単独で先行した内間康平(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA
第5ステージでイランチャンピオンと逃げ続ける西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA第5ステージでイランチャンピオンと逃げ続ける西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA
第4ステージのチーム区間成績3位の副賞として大きな石が埋め込まれた指輪を受け取ったブリヂストンアンカーの選手たち Photo: Sonoko TANAKA第4ステージのチーム区間成績3位の副賞として大きな石が埋め込まれた指輪を受け取ったブリヂストンアンカーの選手たち Photo: Sonoko TANAKA

●キナン サイクリングチーム

スタートラインに並んだキナン サイクリングチームのメンバー。左から阿曽圭佑、ジャイ・クロフォード(オーストラリア)、リカルド・ガルシア(スペイン) Photo: Sonoko TANAKAスタートラインに並んだキナン サイクリングチームのメンバー。左から阿曽圭佑、ジャイ・クロフォード(オーストラリア)、リカルド・ガルシア(スペイン) Photo: Sonoko TANAKA

 今年発足した新しいコンチネンタルチームで、国外のアジアツアーレースは初参戦となる。アジアツアーでの経験豊富なクライマー、ジャイ・クロフォード(オーストラリア)が第4ステージを区間3位でゴールし、現在総合成績で3分13秒差の6位につけ、総合4位以下は接戦となっている。また第2ステージでは、もう一人のクライマー、リカルド・ガルシア(スペイン)が先行して区間4位に入っている。

石田哲也監督
「総合成績と区間優勝、両方狙っており、UCIポイントの獲得がチームの目標。ジャイとリカルド、2人のクライマーの調子は良く、最初は体調を崩してしまった日本人選手(野中竜馬、阿曽圭佑)もリタイアせずに頑張っている。今後、総合4位のジャイへのマークは厳しくなると予想されるが、6分56秒差の12位につけるリカルドは動きやすい位置にいる。またアップダウンを繰り返してからのゴールスプリントでは、野中で狙いたい。5選手と他のチームより少ない人数でのエントリーだが、戦力として劣っているという印象はない。今後に向けていい経験を積みたい」

●シマノレーシングチーム

肘を負傷しながらもテーピングを施して懸命に走る入部正太朗(シマノレーシングチーム) Photo: Sonoko TANAKA肘を負傷しながらもテーピングを施して懸命に走る入部正太朗(シマノレーシングチーム) Photo: Sonoko TANAKA

 日本人選手5人での参戦。過去にナショナルチームとして、秋丸湧哉、横山航太らが出場した経験をもつ。第3ステージでは、終盤に入部正太朗を含む3選手がアタックを仕掛けて先行したものの、惜しくも残り1kmで猛追したメーン集団に吸収された。チームのエースとして走る入部は第4ステージで落車に巻き込まれて肘を負傷し、レース後に病院で精密検査を受けたが幸い骨折はなく、レースを続けている。

野寺秀徳監督
「総合成績もチャレンジしたいけれど、まずは区間優勝を狙いたい。第3ステージで、終盤に入部が先行したシーンでは、集団がかなり焦って彼らを吸収した印象を受けた。自分たちにもチャンスが十分あると思えたので、そのような勝ち方をしたい。8日の第6ステージは平坦基調で、勝利を狙いたいステージの一つになる」

第4ステージ、トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー)が区間2位、ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナン サイクリングチーム)が区間3位でフィニッシュ Photo: Sonoko TANAKA第4ステージ、トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー)が区間2位、ジャイ・クロフォード(オーストラリア、キナン サイクリングチーム)が区間3位でフィニッシュ Photo: Sonoko TANAKA

西薗良太が第5ステージで逃げ切って2位

 レースは、ディフェンディングチャンピオンのアミール・ザルガリ(イラン)擁するピシュガマン・ジャイアントがリードする形で進んでおり、現在総合成績のトップ3を同チームが占める。彼らに対抗する同じイラン籍のタブリーズ・ペトロケミカルは第3ステージから第5ステージまで区間3勝し、イラン勢が圧倒的な強さをみせている。

レース前に熱心にリザルトをチェックするレースリーダーのアミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマン・ジャイアント) Photo: Sonoko TANAKAレース前に熱心にリザルトをチェックするレースリーダーのアミール・ザルガリ(イラン、ピシュガマン・ジャイアント) Photo: Sonoko TANAKA
第5ステージのスタート地点は切り立った崖に囲まれた「ハラウ」という場所 Photo: Sonoko TANAKA第5ステージのスタート地点は切り立った崖に囲まれた「ハラウ」という場所 Photo: Sonoko TANAKA
第5ステージで100km以上逃げ続けた西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA第5ステージで100km以上逃げ続けた西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA

 7日にハラウからパヤクンブまでの164kmで開催された第5ステージでも、序盤からイラン勢同士がアタックを掛け合う展開となったが、その動きが落ち着いた隙を突いて、西薗良太がアタック。それに3選手が続き、4人の先頭集団が形成された。その後の登坂区間で2選手が脱落したものの、西薗はイランチャンピオンのベナム・マレキ(タブリーズ・ペトロケミカル)とともに逃げ切る展開となった。

 西薗はレース後、「体格のいいマレキは下りと平坦が得意で、自分は上りが得意だった。お互いに長所を生かして協力しながら、最後までうまく回すことができた。牽制してしまうと、集団の追い上げが強かったので、最後まで協調しあった。ゴール前は下ってから平地というコースプロフィールだったので、その地形が相手に向いていた。自分が作ったチャンスで、最後まで逃げ切ることができ、2位という結果に満足している」とコメントした。

今大会で好調な走りを見せる西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA今大会で好調な走りを見せる西薗良太(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA
美しい伝統衣装を身にまとった女性。表彰式前に踊りを披露したり、表彰式でのプレゼンターを務める Photo: Sonoko TANAKA美しい伝統衣装を身にまとった女性。表彰式前に踊りを披露したり、表彰式でのプレゼンターを務める Photo: Sonoko TANAKA
雄牛のツノをイメージした独特な屋根をもつ伝統的な建物が並ぶ小さな集落を抜ける Photo: Sonoko TANAKA雄牛のツノをイメージした独特な屋根をもつ伝統的な建物が並ぶ小さな集落を抜ける Photo: Sonoko TANAKA
大勢の観客たちに見守られて走る選手たち Photo: Sonoko TANAKA大勢の観客たちに見守られて走る選手たち Photo: Sonoko TANAKA

◇      ◇

 第5ステージを終えて、残すは4ステージ。第6、第7ステージは距離が比較的短く、アップダウンはあるものの1級山岳が組み込まれないステージが続く。第8ステージは大会名物の「ケロック44」、1級山岳での山頂ゴールとなるクイーンステージ。そして最終日は州都のパダンにゴールする平坦ステージとなっている。

沿道では水牛の親子もレースを楽しんでいる Photo: Sonoko TANAKA沿道では水牛の親子もレースを楽しんでいる Photo: Sonoko TANAKA
レース後にプールで涼む井上和郎(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKAレース後にプールで涼む井上和郎(ブリヂストンアンカー) Photo: Sonoko TANAKA

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