RENの「自転車のススメ」<17>信号のない田舎道を満喫した「益田INAKAライド」 まぶしい緑の中を500人が疾走

すっかり涼しくなりサイクリングの秋到来!…ですが、前回の記事でも書いたとおり、モーターサイクルで足首をけがして思うように走り回れないRENです(完治までもう少しかかりそうです)。今回は島根県益田市で9月7日に行われた、私の秋の恒例参加イベントとなっている「益田INAKA(イナカ)ライド」のレポートをお届けします。
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全国から500人以上がエントリー
私が「益田INAKAライド」を訪れるのは今年で3回目。すでに故郷に帰るような気分になっています。昨年と一昨年の大会には「青春18きっぷ」を使って延々電車に揺られる輪行の旅でしたが、今回は飛行機でバビューンと移動です。眼下に関東地方ではなかなかお目にかかれない赤瓦の屋根を見下ろしつつ、萩・石見空港へ降り立ちました。

益田市は島根県の西に位置し、山と木々に包まれた緑豊かな場所です。日本最西端の豪雪地帯である匹見地区を擁し、河川はとても澄んでいて、国土交通省の水質ランキング1位の川「高津川」があるほどです。天然の鮎が名物であることも納得ですね。
大会は今年で4回目となり、比較的アクセスが楽な関西・中部地方を中心に、知名度と参加人数はどんどん増えています。今年はなんと!全国から500人を超えるエントリー。もちろん私と同じように関東からの参加者もいます。行きの羽田からの飛行機には、座席数が約150と決して大きくはないエアバスA320に、10個以上の輪行バッグが載っていました。
今回、私はまだ走れないため、カメラマンに徹しました。それでも、前回大会の記事を読んでくれたCyclistの読者に、何人もめぐり合うことができました。
益田に少し恩返しをできたかなと思っています。
昨年の大会は台風一過の晴天に恵まれましたが、今回は残念ながら雨に見舞われてしまいました。台風も迫っていましたが、幸いなことにその影響は秋雨前線を刺激する程度で、風が強くならなかったのが救いでした。これなら何とかなりそうだと大会は決行の判断。ホッと一安心です。ただ、事故防止のために難易度の高い下りコースはキャンセルとなりました。
田舎を味わうライドイベント

大会前日の受付で、すでに慌しく奔走する人が…。
「自転車ライドイベントを開催するというのは、とってもハードルが高いんです」と話すのはNPO法人益田市・町おこしの会理事長の吉村修さん。これまでにない参加人数にかなり緊張している様子です。
500人の参加者が走るとなると、落車はもちろん、コースを間違えて行方不明になるトラブルも起きやすくなります。ライドイベント中の迷子って、実はかなり多いのだそうです。疲れてくると判断力が鈍くなり、それで道を間違えてしまうのだとか。
また、益田市の方々がボランティアスタッフとして協力してくれているとはいえ、スタッフの人数には限りがあり、エイドでのおもてなしが行き届くかどうか心配だそうです。来年も再来年もという気持ちでアテンドしようとする姿勢が伝わってきます。嬉しいですね。

大会当日のスタートは午前8時と、ロングライドイベントにしては比較的ゆっくりとしたスケジュールです。かなり雨足は強いのですが、「それでも走る!」と心に決めた沢山のライダーたちが、続々とスタート地点に集まってきます。肌寒い天候となりましたが、スタート地点は熱気であふれかえっていました。NHKの自転車番組「チャリダー」の撮影クルーも準備万端。タレントの堤下敦さんと朝比奈彩さんの姿もありました。
大会の趣旨が「田舎を味わってもらおう」ということなので、参加スタイル(バイク&ウェア)は多種多様。ロードバイクはもちろん、クロスバイクやリカンベントの姿も見られました。かなり自由な雰囲気です。


レベルに合わせて選べるさまざまなコース

コースは参加者それぞれのレベルに応じ、4kmから160kmまでさまざまな距離が用意されています。
景色とコース、益田の全てを味わいたい人には最長の160kmコースがオススメです。日本代表ロードチームの監督も務めるエキップアサダの浅田顕監督が監修するレース「益田チャレンジャーズステージ」のコースも途中で通過します。さらに刺激が欲しい人は、元プロ選手の相川将さん(エキップアサダインストラクター)が牽引する本格的なトレインに加わって、たっぷり身体を追い込むことも可能です。
一方、ロングライドを走ったことがない人や、スポーツサイクルに乗り始めたという人にピッタリなのが、最短の4kmコース。これは萩・石見空港の全長2kmの滑走路を往復するというもの。とっても気軽で、これなら補助輪が外れたばかりの子でも貴重な体験を共有できます。長い人生、楽しく走って自転車を好きになってもらいたいですよね!



そして、そして!
このCyclist読者である女性にオススメしたいのは…今回新たに設定された「ホッとHot70」というコース!
なんと70kmのライドと温泉がセットになっています。ちょうど良い距離を走り、そのままザブンと温泉につかり、帰りはバスに乗って帰ってくる…なんと贅沢な。温泉の後のバス移動では、昼寝必至。これを極楽と言わず何と言いますか?(笑)
乗ってきた自転車は、専用の段ボールで運搬されます。これは流行するかも!
待ちに待った日差しが! コースは秘境へ

100kmを走っても信号が一つもないというコースは、ストップ&ゴーがないおかげで、とても楽に距離を稼げます。
中国地方は平野部が少ない地域。少し走れば住居もまばらになります。緑の中、川は大きくゆったりと湾曲し、わずかな上り勾配が心地よい。いつの間にか雨が上がり、待ちに待った日差しが! 参加者の皆さんの顔も晴れてきました。日頃の行いが良かったからかな?
コースは全体的に整備が行き届いていましたが、匹見峡という渓谷へ突入すると、車1台がやっと通れる程度の道幅となり、ガードレールがプツリと途切れます。眼下に流れる清流日本一の匹見川は、雨で増水し、茶色く濁った荒々しい姿を見せていました。まさに秘境といった趣きに、少し身がすくむ思い。大自然を感じる非日常がここにはあります。





走りに景色に食…田舎を満喫!
「益田INAKAライド」の魅力は、走るだけではありません。大会の名物と言える各エイドステーションでは、トマト、きゅうり、ナス、杏仁豆腐、かき揚げ、うずめめし(豪華な薬味をご飯の下に隠し、慎ましく見せた時代からの郷土料理)といった食べ物が、「これでもか!」とばかりに振る舞われます。
どれくらいかと言うと、周りには食べ過ぎて身動き出来なくなる人がいるほどです(笑)。この手のライドイベントでは補給食を持って走るのが一般的かもしれませんが、もしかしたら必要ないかも…。うっかりすると、カロリーオーバー必至です。
中盤までは上り基調で、帰りは下り基調という嬉しいコースプロフィール。そして、信号がないことは思った以上に所要時間を短縮するようです。ゴール地点は、田舎を満喫しつつ、初めてのロングライドを完走をできたライダーたちであふれかえりました。



皆、いい顔です。迎えるスタッフも同じようにいい顔。田舎で親戚同士が集まるような感覚とでもいうのでしょうか? ゆったりした時間がとても心地いいのです。
来年の開催も楽しみですね! 天気が良くなることを祈って。
「おばちゃん、おじちゃん、おばあちゃん、おじいちゃん、また会いましょう!」

数々のCM・雑誌・ファッションショーで活躍するトップモデル。08年より本格的にスポーツサイクルに乗り始める。自転車媒体で見ない日はないというほどの“乗れるモデル”。アイアンマン北海道完走。特技はウィリー(映像を見る)。身長188cm、体重74kg。千葉県在住。オフィシャルブログ「REN’s World」。取材のお問い合わせはStudioREN(http://studio-ren.jimdo.com)まで
2015年益田INAKAライド公式ムービー