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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<128>ジロ・デ・イタリア2016はオランダで開幕 バッソが引退、キッテルは移籍を発表

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 2015年のサイクルロードレースシーズンが終盤に差し掛かり、来シーズンに向けた動きが見られ始めている。10月5日にはイタリア・ミラノでジロ・デ・イタリア2016のコースが発表になった。今回は、注目される「イタリア一周」の全貌をチェック。また、同会場で発表となったイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ)の現役引退、同日に発表されたマルセル・キッテル(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)のエティックス・クイックステップ移籍についてお伝えする。

ジロ・デ・イタリア2016のプレゼンテーションに登場した(左から)アレハンドロ・バルベルデ、ヴィンチェンツォ・ニバリ、イヴァン・バッソ、アルベルト・コンタドール、ペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016のプレゼンテーションに登場した(左から)アレハンドロ・バルベルデ、ヴィンチェンツォ・ニバリ、イヴァン・バッソ、アルベルト・コンタドール、ペテル・サガン Photo: Yuzuru SUNADA

第99回ジロはフレンチアルプス2連戦で決着

ジロ・デ・イタリア2016のプレゼンテーションに登壇したUCIのブライアン・クックソン会長 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2016のプレゼンテーションに登壇したUCIのブライアン・クックソン会長 Photo: Yuzuru SUNADA

 例年、ジロのコース発表は、イル・ロンバルディアの翌日にあたる月曜日に行われる。ロンバルディアを走り終えた選手や、出場が期待される有力選手などが集い、華やかな演出のもとで大会の全容が明らかにされる。今回はミラノの万博会場内で開かれた。

 第99回となる2016年のジロは、オランダ中央部の都市アペルドールンで開幕する。オランダでのジロ開幕は、アムステルダムをスタートした2010年以来6年ぶり。まずは9.8kmの平坦コースにおける個人タイムトライアル(TT)でバラ色の総合リーダージャージ、マリアローザを最初に着る選手が決まる。オランダでは第3ステージまでを開催し、移動日を挟んでイタリア南部へと戦いの場を移す。

ジロ・デ・イタリア2016のルートマップ ©RCS SPORTジロ・デ・イタリア2016のルートマップ ©RCS SPORT

 第2ステージ以降は平坦が続き、アペニン山脈中央部ロッカラーゾで頂上フィニッシュ(標高1572m)となる第6ステージから山岳ステージが本格スタート。第8ステージでは、終盤に未舗装の急坂が待ち受ける。

 大会前半のヤマ場は第9ステージ、ワインで知られるキャンティでの40.4km個人TTだ。いくつかの丘越えが待ち受け、総合争いでタイム差が生まれるポイントとなるはずだ。

 2度目の休息日を経て、舞台はイタリア北部の山岳地帯へ。スロベニアとの国境を行く第13ステージからは山岳3連戦。ドロミテの山々を行く第14ステージ、平均勾配8.3%(最大勾配11%)の10.85km山岳個人TTが控える第15ステージで、マリアローザ争いのメンバーが一気に絞られることとなる。

40.4kmの個人TTで争われる第9ステージ ©RCS SPORT40.4kmの個人TTで争われる第9ステージ ©RCS SPORT
10.85km山岳個人TTの第15ステージ ©RCS SPORT10.85km山岳個人TTの第15ステージ ©RCS SPORT

 3度目の休息日を終えると運命の最終週。中級山岳や平坦ステージをこなしながらイタリア北部を横断する。第17ステージでは、1966年ジロ覇者のジャンニ・モッタの故郷であるカッサーノ・ダッダにフィニッシュ。50年前の勝利を祝う1日に設定された。

 そして、この大会の最終決戦地に選ばれたアルプス山脈へ。第19ステージ中盤に通過するコッレ・デランジェロ(標高2744m)が最高標高地点「チーマ・コッピ」に設定された。ここからはフランス領内に入り、ツール・ド・フランスでも使われるリゾル峠の頂上にフィニッシュする。最後の総合優勝争いとなるであろう第20ステージは134kmと短いが、超級クラスの山岳がフランス領内で3つ登場。最後はイタリアへと戻り、サンタンナ・ディ・ヴィナディオの頂上へたどり着く。ここで総合首位に立っている選手が、2016年のジロ制覇を決定的にする。

チーマ・コッピが登場する第19ステージ ©RCS SPORTチーマ・コッピが登場する第19ステージ ©RCS SPORT
超級クラスの山岳が連続する第20ステージ ©RCS SPORT超級クラスの山岳が連続する第20ステージ ©RCS SPORT

 最終日はクーネオからトリノを目指す150km。トリノ市街地の周回コースで最後のステージ勝者が生まれ、その後に総合王者へマリアローザが正式に戴冠される。

ジロ・デ・イタリア2016 ステージ一覧(星の数は難易度)

5月6日(金) 第1ステージ アペルドールン(オランダ) 9.8km(個人TT) ★★★
5月7日(土) 第2ステージ アーネム(オランダ)~ナイメーヘン(オランダ) 190km ★★
5月8日(日) 第3ステージ ナイメーヘン(オランダ)~アーネム(オランダ) 189km ★
5月9日(月) 移動日
5月10日(火) 第4ステージ カタンザーロ~プラーイア・ア・マーレ 191km ★★★
5月11日(水) 第5ステージ プラーイア・ア・マーレ~ベネヴェント 233km ★★
5月12日(木) 第6ステージ ポンテ~ロッカラーゾ(アレモーニャ) 165km ★★★
5月13日(金) 第7ステージ スルモーナ~フォリーニョ 210km ★★
5月14日(土) 第8ステージ フォリーニョ~アレッツォ 169km ★★★
5月15日(日) 第9ステージ キャンティ・クラシコ(ラッダ・イン・キャンティ~グレーヴェ・イン・キャンティ) 40.4km(個人TT) ★★★★
5月16日(月) 休息日
5月17日(火) 第10ステージ カンピ・ビゼンツィオ~セストラ 216km ★★★
5月18日(水) 第11ステージ モデナ~アーゾロ 212km ★★★
5月19日(木) 第12ステージ ノアーレ~ビビオネ 168km ★
5月20日(金) 第13ステージ パルマノーヴァ~チヴィダーレ・デル・フリウーリ 161km ★★★★
5月21日(土) 第14ステージ アルパーゴ(ファッラ)~コルヴァーラ 210km ★★★★★
5月22日(日) 第15ステージ カステルロット~アルペ・ディ・シウージ 10.8km(山岳個人TT) ★★★★
5月23日(月) 休息日
5月24日(火) 第16ステージ ブレッサノーネ~アンダロ 133km ★★★
5月25日(水) 第17ステージ モルヴェーノ~カッサーノ・ダッダ 196km ★
5月26日(木) 第18ステージ ムッジョ~ピネローロ 234km ★★★
5月27日(金) 第19ステージ ピネローロ~リゾル(フランス) 161km ★★★★★
5月28日(土) 第20ステージ ギレストル(フランス)~サンタンナ・ディ・ヴィナディオ 134km ★★★★★
5月29日(日) 第21ステージ クーネオ~トリノ 150km ★

総距離 3383km(ステージ平均161km)
平坦ステージ 7
山岳頂上フィニッシュ 6
個人タイムトライアル 3(総距離61km)

ジロ2016出場選手は? コースプレゼン出席者のコメントをチェック

 今回のコース発表には、2015年大会総合優勝のアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、10月4日のイル・ロンバルディアを制したヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ プロチーム)、新しい世界王者のペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)らが出席した。

 明らかになったジロのコースに対するイメージは、おおむね「バランスが重視されている」というもののようだ。山岳・TT・スプリントとまんべんなくステージが設定され、多くの選手に活躍のチャンスが秘めていると、好印象で迎えられている。

プレゼンテーションに登場したアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADAプレゼンテーションに登場したアルベルト・コンタドール Photo: Yuzuru SUNADA

 コンタドールは「個人TTと山岳の難易度が高く、タフなレースになるはずだ。ニバリのようなグランツールレーサー向きのコースだね」とコメント。また、ブエルタ・ア・エスパーニャで大活躍したトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)の名も挙げ、オランダで開幕することや合計61kmある個人TTでタイムを稼げる点に注目しているとした。なお、自身の参戦については「来年のジロはテレビでチェックするよ」とのこと。その後のツールに集中する構えを改めて明確にした。

 ニバリは2016年シーズン、ジロをメーンターゲットにする。このコース発表を受けて「2016年はジロを目標にしたいね」と話した。元々ジロ出場願望があったと強調しつつ、「今度のルートは素晴らしく、クールだ。3つの個人TTが難易度を上げているが、全体的には満足している」と前向きな姿勢だ。ジロ後はリオ五輪に向けた準備に取り組む見通しで、ツール出場についてはファビオ・アール(イタリア)のアシストに回る可能性があるとしながらも、現時点では未定だという。

 コンタドールの“指名”を受けたドゥムランは、個人TTで金メダルが期待されるリオ五輪がターゲットと明言。そのうえで「総合を狙うかは決めていないが、リオ五輪までのスケジュールにグランツールは組み込んでいきたい」と口にする。それがジロになるかは分からないとしながらも、「TTに自信のある選手ならピッタリのルート設定だと思う」と述べている。

バッソはティンコフ・サクソのスタッフに転身

ジロ・デ・イタリア2015ではアルベルト・コンタドールの総合優勝に貢献したイヴァン・バッソ Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリア2015ではアルベルト・コンタドールの総合優勝に貢献したイヴァン・バッソ Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロのコースプレゼンテーションの中で、この大会過去2度の総合優勝を誇るバッソが現役を引退すると発表した。

 37歳のバッソは今シーズン、ティンコフ・サクソに移籍加入し、シーズン当初からコンタドールのアシストを務めてきた。ジロでは山岳にとどまらず、平坦やチームTTでも大車輪の働きを見せ、コンタドールの総合優勝を演出。チーム首脳陣からも全幅の信頼を寄せられていた。

 しかし、続いて臨んだツールで大会序盤から体調不良を訴え、第9ステージのチームTTでは先頭交代のローテーションに加わることができないシーンが見られた。直後に医療検査を行ったところ、精巣がんが発覚。ツールを離脱し、7月15日に手術。治療に専念し、8月下旬にライドを再開、9月下旬にはがんを克服したことを明らかにしていた。

イル・ロンバルディアの会場に現れたイヴァン・バッソ Photo: Yuzuru SUNADAイル・ロンバルディアの会場に現れたイヴァン・バッソ Photo: Yuzuru SUNADA

 ミラノのステージに立ったバッソは、「今日は特別な日だ。ただ、今後もサイクリングとはつながりを持ち続けるので、今日は悲しい1日ではない」と明るく話した。

 チームのプレスリリースを通じ、「どの選手もいつかはキャリアの光が弱まるときがやってくる」と述べ、「ファンやすべての人々を裏切るつもりはないし、その理由も存在しない。レースを続けることは可能だが、(かつてのような)競争力がもうない」と引退の理由を明らかにしている。

 今後については、スタッフに就任する見通しであることをチームが発表している。「キャリアを終えることに後悔はしていない。サイクリングは家族による情熱でもあることから、活動をストップすることなく、新たな試みにチャレンジできる機会を与えてくれるチームがあることは本当にラッキーだと思っている」と語り、これまでとは異なる立場から選手たちをサポートしていく意欲を見せている。

キッテルは「新たな環境で挑戦」

 10月5日、エティックス・クイックステップがキッテルの2016年シーズンからの移籍加入を発表した。契約は2年で、エーススプリンターとしての待遇を受けることは間違いないだろう。

 この移籍決定に際しキッテルは、「幸せと悲しみが混在している」と述べる。プロキャリアをスタートさせたチーム ジャイアント・アルペシン(2011年のプロデビュー当時はスキル・シマノ)には、感謝の気持ちでいっぱいだとした。一方で、「新たな環境で挑戦する必要性」にも触れ、新チームでの活躍を期して準備すると宣言している。

ツアー・オブ・カタールで体調を崩して以降、不本意なシーズンを過ごしたマルセル・キッテル Photo: Yuzuru SUNADAツアー・オブ・カタールで体調を崩して以降、不本意なシーズンを過ごしたマルセル・キッテル Photo: Yuzuru SUNADA

 今年は1月のツアー・ダウンアンダーでシーズンインしたものの、2月のツアー・オブ・カタール出場時に体調を崩したことから戦線を離脱。5月にレース復帰したものの復調せず、ツール出場を逃した。その後もブエルタ出場を断念するなど、かつてなく苦しんだシーズンとなってしまった。ただ、現チームを離れる理由がツール欠場にあったのではないかとの見方については完全否定。「あくまでもめぐり合わせであって、ツールに出られなかったことが理由だったわけでない」と答えている。

 キッテルは同郷の先輩でもあるトニー・マルティンを「サイクリストとして最高の友人」と慕っており、アンダー23カテゴリー時代の2007年以来のチームメートとなることに大喜び。エティックス・クイックステップは、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のMTN・クベカ(2016年のチーム名はチーム ディメンションデータ)移籍が決まっており、新たなエーススプリンター獲得に成功。マルティンやトム・ボーネン(ベルギー)らビッグネームが、キッテルをリードアウトすることだろう。

 完全復活を期して新たな環境に飛び込むジャーマンスプリンターの走りに、期待が高まる。

今週の爆走ライダー-ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ プロチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 10月4日のイル・ロンバルディアでエースのニバリをアシスト。フィニッシュまで残り20kmを切って迎えたチヴィリオの上りで再三ペースアップを試み、ダウンヒルでのニバリのアタックをお膳立てした。その後もライバルたちの追撃の芽を摘み、自らも5位入賞。シーズン終盤とあり、有力選手が軒並みコンディションを落としていたこともあったが、それを差し引いても十分な働きぶりだった。

ヴィンチェンツォ・ニバリをアシストしながら自らも上位に入ったディエゴ・ローザ(イル・ロンバルディア2015) Photo: Yuzuru SUNADAヴィンチェンツォ・ニバリをアシストしながら自らも上位に入ったディエゴ・ローザ(イル・ロンバルディア2015) Photo: Yuzuru SUNADA
10月1日に開催されたミラノ~トリノを制したディエゴ・ローザ Photo: Yuzuru SUNADA10月1日に開催されたミラノ~トリノを制したディエゴ・ローザ Photo: Yuzuru SUNADA

 プロキャリア3年目の26歳。2013年から2年間はアンドローニジョカットリで走り、グランツールデビューの同年ジロは総合22位と健闘した。ビッグレースでの実績こそ少なかったが、将来性を買われてアスタナ入りし、同じイタリアンライダーであるニバリやアールのアシストとして今シーズンを送った。ジロでは総合23位、ブエルタでは総合20位。ロンバルディア前哨戦の1つである10月1日のミラノ~トリノ(UCI1.HC)では、うれしいプロ初勝利を飾った。

 好走を見せたロンバルディアでは、フィニッシュ後に「レース内容には満足している。まだまだ経験が浅いし、これからもっと上を目指せる。将来的に何ができるかを示すことができたと思う」と、今後に向けた手応えをつかんだ。

 来シーズンは、引き続きニバリやアールを支える。アールについては「何も考えずとも理解し合える間柄」といい、ニバリとは「ロンバルディアのレースを通じてさまざまな意見交換をし、方向性がはっきりした」と信頼関係も良好だ。

 2人のエースを中心にチーム力を高めるアスタナ勢でまた1人、大化けを予感させるクライマーが存在感を発揮した。チームが目指す「グランツール全制覇」実現に向け、ローザの貢献度に注目が集まることだろう。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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