「まちづくりのプロジェクト」発のUCI公認レース門田基志がMTB「勢和多気国際クロスカントリー」で優勝 “世界基準”の難コースを攻略

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 マウンテンバイク国内シリーズ戦「クップ ドュ ジャポン」クロスカントリー競技第5戦の「勢和多気国際クロスカントリー大会」が三重県多気町で10月3、4日に開催され、門田基志(チーム ジャイアント)が男子エリートを制した。多気町が2012年度から進めている「自転車のまちづくりプロジェクト」の一環として整備された、勢和多気の森マウンテンパークの難コースを攻略しての大会2連覇となった。 (中尾亮弘)

ドロップオフのセクション「古道」を越える門田基志(チームジャイアント) Photo: Akihiro NAKAOドロップオフのセクション「古道」を越える門田基志(チームジャイアント) Photo: Akihiro NAKAO

作り込まれた4つのプロセクション

 勢和多気国際クロスカントリー大会は、昨年に日本自転車競技連盟(JCF)公認大会となり、今年は国際自転車競技連合(UCI)公認大会にステップアップ。勢和多気の森マウンテンパークのコースには、国内でも前例がないほど難しいプロセクションが設けられている。

観戦ポイントでは一際大きな声援が飛んだ Photo: Akihiro NAKAO観戦ポイントでは一際大きな声援が飛んだ Photo: Akihiro NAKAO
並んだ石を上手く抜けることが必要な「岩清水」 Photo: Akihiro NAKAO並んだ石を上手く抜けることが必要な「岩清水」 Photo: Akihiro NAKAO

 プロセクションは4つあり、一つ目の「古道」が石畳からのドロップオフ、二つ目の「キャニオン」は幅2メートルのジャンプ、三つ目は斜度45%の崖から下ってのコーナーという最難関セクションの「猪落」、最後は石階段に障害物としてさらに石を設置した「岩清水」。初めて見た選手が、あまりの難しさに怯む姿がレース中に多く見られた。また、観戦ポイントに観客がアクセスしやすいよう、案内や歩道が整備されていることもこの会場の特徴だ。

大会2連覇の門田「相性がいい」

 男子エリートは、4.8kmのコースを6周回する28.8kmで争われた。一周目をトップで通過したのは、これまで勢和多気で走りこみを重ねてきた沢田時(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)だったが、パンクにより大きく遅れてしまう。同じくブリヂストンアンカーの平野星矢と斉藤亮もパンクに見舞われた。

初の表彰台となった松尾純(ミヤタ・メリダ バイキングチーム) Photo: Akihiro NAKAO初の表彰台となった松尾純(ミヤタ・メリダ バイキングチーム) Photo: Akihiro NAKAO
「猪落」を下る平野星矢(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) Photo: Akihiro NAKAO「猪落」を下る平野星矢(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) Photo: Akihiro NAKAO

 3周目では前田公平(BiORACER)がトップを走っていたが、ここで門田がトップに入れ替わった。平野がホイール交換後に挽回して2番手へ浮上。さらに松尾純(ミヤタ・メリダ バイキングチーム)が3番手に上がってきたものの、レースはこの順位のまま決着。門田が昨年に続いての大会2連覇を達成した。

大会2連覇を達成した門田基志(チーム ジャイアント) Photo: Akihiro NAKAO大会2連覇を達成した門田基志(チーム ジャイアント) Photo: Akihiro NAKAO

 門田はこの日のレースについて「要所要所のテクニカルなセクションをどうクリアするかが重要だった。後続との差を考えて上りで差をつけ、その後に休むということを繰り返した。このコースは上りが短いので相性がいい」と勝因を語った。

男子エリート表彰式に登壇した(左から)平野星矢、門田基志、松尾純。優勝者には米一俵が渡された Photo: Akihiro NAKAO男子エリート表彰式に登壇した(左から)平野星矢、門田基志、松尾純。優勝者には米一俵が渡された Photo: Akihiro NAKAO
UCI公認大会となった勢和多気国際クロスカントリー Photo: Akihiro NAKAOUCI公認大会となった勢和多気国際クロスカントリー Photo: Akihiro NAKAO

 また、近年海外のレースにも積極的に参戦している門田は、コースの印象を「海外のコースに近づけているのがよくわかった。その分、プロやプロを目指す選手と、一般の参加者が同じコースでレースをするのは難しくなる。ジャンプなどをここで練習して、世界のレースに挑戦する足かがりにするのにいい」と語った。コースづくりについては「(同じくUCI公認レースの)八幡浜は失敗があって成功もあって、試行錯誤しながらレースを運営してきたので、多気町もこの土地に合った方法を探して欲しい」とエールを送った。

コースのレベルは「世界に近づいている」

 女子エリートは末政実緒(スラム/ライテック)が制し、2位に小林可奈子(MTBクラブ安曇野)、3位には今春から多気町の自転車技術専門職員としてコース運営などを担っている中島崚歩(maillot SY-Nak)が入った。

キャニオンを飛ぶ末政実緒(スラム/ライテック) Photo: Akihiro NAKAOキャニオンを飛ぶ末政実緒(スラム/ライテック) Photo: Akihiro NAKAO

 末政は勢和多気のコース開設時からレースに参加しており、世界のMTBレースにおける経験が豊富な選手。コースの進化について「要所要所で難易度の高いセクションがあって世界に近づいている」と語り、「MTBのスキルをつけたい人は、ウィリーやジャックナイフをして自転車を操る、楽しく遊ぶところから始めてもらいたい。それから競技者のレベルを上げていくには、こういったコースがいい」と、スキルアップできるコースだと評した。

女子エリート表彰式。(左から)小林可奈子(MTBクラブ安曇野)、末政実緒(スラム/ライテック)、中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO女子エリート表彰式。(左から)小林可奈子(MTBクラブ安曇野)、末政実緒(スラム/ライテック)、中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO
子供たちも勢和多気の森マウンテンパークで練習すれば未来はプロ選手? Photo: Akihiro NAKAO子供たちも勢和多気の森マウンテンパークで練習すれば未来はプロ選手? Photo: Akihiro NAKAO

 3日にはXCチームリレーがオープン競技として開催された。男女各カテゴリーの選手がチームを組み、一周ごとに交代してレースをするというもので、今回は男子エリート、女子エリート、男子ジュニアの3人で結成した2チームが参加した。国際レースでは公式種目ではあるものの、国内では初開催で、山田誉史輝・末政実緒・山田将輝チームが勝利した。

国内初開催となったクロスカントリーのチームリレー Photo: Akihiro NAKAO国内初開催となったクロスカントリーのチームリレー Photo: Akihiro NAKAO
リレーはチームの選手がタッチして交代し、一周ずつ走って争う Photo: Akihiro NAKAOリレーはチームの選手がタッチして交代し、一周ずつ走って争う Photo: Akihiro NAKAO

告知の効果で観客増 「応援がすごくてうれしい」

 今大会で印象的だったのは地元住民の観戦が多かったことだ。プロセクションでは選手がクリアするたびに歓声が上がった。選手への参加案内だけでなく、大会前に地元ケーブルテレビやフリーペーパーでの露出を増やし、ポスターを大量に掲示するなど告知に力を入れた結果、多くの人が訪れた。またMTB大会では珍しく観戦料を徴収(多気町民は無料)しており、他のスポーツのような興行としての仕組みを取り入れ、約1200人の観客を動員した。

ポスターが地域全体に掲示された Photo: Akihiro NAKAOポスターが地域全体に掲示された Photo: Akihiro NAKAO
応援のために用意された特製カウベル Photo: Akihiro NAKAO応援のために用意された特製カウベル Photo: Akihiro NAKAO

 自転車のまちづくりプロジェクトは、北京オリンピックMTB監督の西井匠さんと多気町職員の岸川正延さんの出会いがきっかけでスタートした。そしてダウンヒルライダーの清水一輝が、多気町で自転車を活用した町づくりを進める自転車技術専門職員として着任し、西井さんと清水の監修により里山でのコースが造成された。

 清水の後任として専門職員になったのが中島だ。中島は今大会、スタッフとして運営に携わりながらレースに臨み、表彰台に登った。「スタート2時間前まではバタバタしていたけれど、忙しい中でもプロセクションはクリアできたし、3位でゴールできたのでよかった」と振り返った。

自転車技術専門職員として大会を運営しながら、3位に入った中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO自転車技術専門職員として大会を運営しながら、3位に入った中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO
多気町で自転車技術専門職員として働く中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO多気町で自転車技術専門職員として働く中島崚歩(maillot SY-Nak) Photo: Akihiro NAKAO

 また、中島は専門職員としての立場からも「大会の運営やコースの整備をして、初めて経験することばかりで楽しいレースだった。着任して半年、日々学ぶことばかりで、それもすごく楽しい。観戦してくれた皆さんの応援がすごかったことが、なによりうれしい」と充実感を漂わせた。

 来年の勢和多気国際クロスカントリーは、リオ・オリンピックに向けてUCIポイントを獲得できる大会にするため、5月頃に開催される。また、国内オリンピック選考会にも立候補する予定だ。

男子エリート
1位 門田基志(チーム ジャイアント) 1時間24分50秒78
2位 平野星矢(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +15秒99
3位 松尾純(ミヤタ・メリダ バイキングチーム) +1分8秒43
4位 中原義貴(BHレーシング MTBチーム) +1分43秒18
5位 佐藤誠示(USM) +1分48秒16
6位 斉藤亮(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム) +2分27秒40
7位 前田公平(BiORACER) +3分0秒93
8位 國井敏夫(MilePost BMCレーシング) +3分23秒76
9位 大渕宏紀(デコジャ レーシングチーム) +4分1秒58
10位 品川真寛(チーム ユーキャン) +4分41秒96

女子エリート
1位 末政実緒(スラム/ライテック) 1時間7分19秒64
2位 小林可奈子(MTBクラブ安曇野) +3分50秒3
3位 中島崚歩(maillot SY-Nak) +7分24秒53
4位 橋口陽子(チーム ワダチヤ) +9分8秒58
5位 相野田静香(スラム/ライテック ライジング) +9分29秒39

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