アルプスを駆けぬけ、獲得標高4500mガヴィアとモルティローロ峠を越えるグランフォンド 「ラ・カンピオニッシモ」参戦記

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 イタリア北部のアルプス山脈で6月28日、ウェアメーカーのアソスがメーンスポンサーを務めるグランフォンドイベント「ラ・カンピオニッシモ」が開かれた。ジロ・デ・イタリアで有名なガヴィア、モルティローロといった峠をこなすハードな大会。日本からサイクルライターの浅野真則さんが、最長のロングコース(175km)に挑んだ様子をレポートする。

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雄大なアルプス山脈を走るグランフォンドイベント Photo: DIATECH PRODUCTS雄大なアルプス山脈を走るグランフォンドイベント Photo: DIATECH PRODUCTS

グランフォンドはレース?

コースマップコースマップ

 大会のスタート&ゴール地点のアプリカでは、町を挙げての歓迎ムードだった。

 商店のショーウインドウには、自転車とラ・カンピオニッシモの開催を祝う特別なディスプレイが施されていた。イベント会場ではツール・ド・フランスなどでも見かけるバルーンゲートがいくつも立ち、アソスをはじめ、メーカーやショップのブースが立ち並ぶ。大会オリジナルジャージやショーツ、マグカップなどの記念品がずらりと展示即売され、会場内が大会のバナーやジャージのメーンカラーである黄色に染まっていた。

 大会はロング、ミドル、ショートの3つのコースがあり、僕が選んだロングコースは、距離175km、獲得標高4500m。最初にコース最高峰のガヴィア峠(標高2652m)、次にマルコ・パンターニがミゲール・インドゥラインを破ったヨーロッパ有数の激坂モルティローロ峠(標高1851m)、最後にサンタ・クリスティーナ峠(標高1400m)という3つの大きな峠を越える。

85kmコースの高低図85kmコースの高低図
155kmコースの高低図155kmコースの高低図
175kmコースの高低図175kmコースの高低図

 イタリアに来る前は、「グランフォンド」というと、「山岳メーンの過酷なコースで行われるロングライド」というぐらいのイメージだったが、どうやら様子が違うことに気付いた。こちらでのグランフォンドでは、上位集団はロードレースさながらにローテーションをしながらハイペースで巡航し、最後はスプリント勝負になることもあるという。また、各クラスの優勝者には賞金も出る。グランフォンドの大会は毎週のように各地で開催され、専門の雑誌があり、専門に活躍するスター選手もいるという。

175km、獲得標高4500mへの挑戦 緊張のスタート

スタート&ゴール地点には、グランツールのようなゲートが立ち並ぶ Photo: Masanori ASANOスタート&ゴール地点には、グランツールのようなゲートが立ち並ぶ Photo: Masanori ASANO

 大会当日は快晴。気温も高くなりそうだったので、ウェアは基本的に大会記念のジャージと夏用ショーツとインナーとし、アームカバーを装着。峠の下り対策として、身体を温める効果のあるホットタイプのマッサージオイルを身体に塗り込み、少し厚手のジャケットも携行した

 長丁場なので食事も重要だ。ロングコースは175kmで4500mの獲得標高があるため、ハンガーノックにならないよう、朝食は炭水化物を中心にしっかり取った。途中にエイドは3カ所しかなく、エイド間の距離も50km以上あるので、ドリンクと水を入れたボトルのほか、現地でグミやシリアルバーなどを購入し、携行することにした。

現地調達した補給食 Photo: Masanori ASANO現地調達した補給食 Photo: Masanori ASANO
スタート前に、最後の補給をとる筆者 Photo: DIATECH PRODUCTSスタート前に、最後の補給をとる筆者 Photo: DIATECH PRODUCTS
スタートラインに並ぶ出場者たち Photo: Masanori ASANOスタートラインに並ぶ出場者たち Photo: Masanori ASANO
町の目抜き通りがサイクリストで埋め尽くされた Photo: ASSOS町の目抜き通りがサイクリストで埋め尽くされた Photo: ASSOS
緊張の表情でスタートを待つ筆者 Photo: DIATECH PRODUCTS緊張の表情でスタートを待つ筆者 Photo: DIATECH PRODUCTS
参加者が全員が着用した大会ウェア。もちろんアソス製 Photo: ASSOS参加者が全員が着用した大会ウェア。もちろんアソス製 Photo: ASSOS

 スタート地点には、そろいの黄色のジャージをまとったサイクリストの群衆がいた。その数1600人ほど。アプリカの目抜き通りを黄色いジャージが埋め尽くしている。圧巻だ!

 会場ではアナウンサーがイタリア語で早口でまくし立てるようにしゃべっている。刻一刻とスタートの時が近づいてきた。

 午前7時30分、号砲とともにグランフォンドがスタートした。

 最初の15kmは、標高700mのエドロまで一気に下る。集団の密度は非常に高く、先導車がいるはずなのに流れも速い。隙間があると少しでも前へ前へ出ようとする人が多く、位置取りにもレース並みに気を遣う。まるでロードレースのプロトンにいるようだ。

スタート直後は密集した集団での下り Photo: ASSOSスタート直後は密集した集団での下り Photo: ASSOS

 コースが急に狭まっては「オッキオ!(気をつけろ)」、舗装が大きく荒れている付近でも「オッキオ!」…。僕がいたのが、上位をねらう鼻息の荒い選手が多い第1グループだったこともあるだろうが、なかなか激しい集団だ。

 エドロを過ぎると、ガヴィア峠のピークまでは40kmほど上りが続く。最初の20kmほどは平均勾配4%程度、本格的な上りは17kmで平均勾配は10%前後だ。40kmの上りなんて日本ではそうそうないし、この区間だけでも乗鞍ヒルクライムより長く険しい。

 上りに入ると、少しずつ集団の人数が減ってきて落ち着いてくる。そのとき、後ろからカチューシャ所属のゲストライダー、ルーカ・パオリーニが涼しい顔で上ってきた。世界のトッププロの後ろで走れることはそうそうないので、ミーハー心全開でしばらく後ろについて走った。

雄大なアルプスの景色を楽しみながら

 しばらくパオリーニの後ろについて走っていたが、まだコースの序盤。このままではオーバーペースでタレてしまうこと必至だったので、勇気ある撤退としてマイペースで走ることにした。

 いよいよ、ガヴィア峠の本格的な上りが始まる。激坂対策として、今回インナー36T、スプロケットも最大29Tを入れてきた。おかげで、いいペースで上り続けられ、面白いように前から降ってきた選手たちを抜いていける。

開けた景色のなかを進む Photo: Ryosuke AIHARA開けた景色のなかを進む Photo: Ryosuke AIHARA
はるか前方にも集団が Photo: ASSOSはるか前方にも集団が Photo: ASSOS

 眼前には、アルプスの切り立った岩肌が、圧倒的な迫力でそびえ立つ。遠くの稜線を先頭集団が走っていくのが見えた。アルプスの雄大な自然を楽しみながら走るうちに、ガヴィア峠のピークにたどり着いた。

 ここにはコース最初のエイドがあり、アソスのローチ・マイヤー社長がエイドに止まる一人ひとりを温かく迎えてくれた。シリアルバーやバナナだけでなく、ハムやチーズ、ワインまである! ガヴィア峠を制した余韻にこのまま浸っていたいような気もしたが、先を急がなくてはならない。バナナをほおばり、防寒用のジャケットを羽織ってすぐさま下り始めた。

パンターニゆかりのモルティローロ峠へ

 ガヴィア峠から次のモルティローロ峠の上り口までは、基本的に下り基調だ。飛ばせるところではそれなりに飛ばし、景色とともに下りのワインディングを楽しみながら進む。上りではつらそうだったライダーも、下りは涼しい顔ですっ飛ばしていく。信じられないスピードで一気に追い抜かれることもあった。

 標高1200mまで下ってボルミオという温泉リゾート街を通過。さらに川沿いにほぼフラットな道をゆく。脚の合うライダー同士の集団が自然に形成され、ローテーションが回っていく。このあたりは時速40kmオーバーで巡航していた。成熟したサイクリストが多いことがうかがえる。

 ガヴィア峠のピークから55km下ると、モルティローロ峠の麓の町・マッツォにたどり着く。2カ所目のエイドステーションを過ぎたところが峠の始まりだった。あまりにあっさり始まってしまって、ヨーロッパ随一の険しい峠に挑む、という気負いが少し空回りしてしまった。

とにかく急勾配が続くモルティローロ Photo: Ryosuke AIHARAとにかく急勾配が続くモルティローロ Photo: Ryosuke AIHARA

 評判通り、序盤からかなりキツイ。サイクルコンピューターが示す勾配は常に15%前後で、特にきついところでは20%というところも。緩くなることはほとんどなく、常に激坂を上っている感じだった。

 出発前、「今年のジロでモルティローロ峠に挑んだ別府史之選手がフロント36T、リア32Tを入れていた」という記事を見て、自分も楕円チェーンリングの36T、12-29Tのスプロケットを用意してきたのだが、このチョイスで本当によかったと思った。再び上りでは面白いように先行のライダーを抜いていける。

パンターニの像の前では多くのサイクリストが休憩中 Photo: Ryosuke AIHARAパンターニの像の前では多くのサイクリストが休憩中 Photo: Ryosuke AIHARA

 峠の途中でマルコ・パンターニの彫像があり、そこにツール・ド・フランス総合5連覇のミゲール・インドゥラインがいた。前日にウェルカムパーティーの席で記念撮影と握手に応じてもらっていたので、話しかけようかと思ったが、モルティローロを止まらずに上りきりたいという誘惑に勝てず、あいさつだけして通過した。

 勾配は確かにきつかったが、意外なほどあっさりモルティローロ峠も制覇。麓からピークまでは12.4km、平均勾配10.5%。冷静に考えたら、乗鞍1本上った後で、富士あざみラインを上っているようなものか。ゴールまでは、まだ50km近くある。

実はきつい!? サンタ・クリスティーナ峠

 モルティローロ峠のピークを過ぎると、アルプスの稜線上のなだらかなアップダウンを縦走し、スタート地点のアプリカに戻る。道幅は狭く、舗装も荒れていたが、ここでも脚の合う選手たちとローテーションしながら進む。アプリカの町に下りてくると、ゴールのバルーンゲートが見えてくるが、ロングコースには最後の峠が残っている。ゴールゲートを迂回し、最後の山場であるサンタ・クリスティーナ峠に向かった。

 距離7km、平均勾配8.5%、標高差600m。これまで上ってきたガヴィア、モルティローロ両峠に比べたらかわいらしいプロフィールだが、150km以上走り、3500m以上の獲得標高を稼いだ後に上るのだから、そのパンチ力は想像以上だった。

 ギアはほぼインナー×ローに入りっぱなしになっていた。景色も味気なく、慰みになるものもない。キツイのは誰もが同じようで、自転車を押しながら歩いたり、途中で休憩している人もいた。

 それでも脚さえ止めなければ、必ず前には進む。ピークでは「これでもうキツい上りから解放されるのだ」という安堵感に包まれた。ガヴィアやモルティローロといった名だたる峠より、この峠が一番きつく感じられた。

いよいよゴール地点のアプリカだ Photo: DIATECH PRODUCTSいよいよゴール地点のアプリカだ Photo: DIATECH PRODUCTS

歓喜のゴールへ!

ついにフィニッシュラインをくぐった Photo: DIATECH PRODUCTSついにフィニッシュラインをくぐった Photo: DIATECH PRODUCTS

 サンタ・クリスティーナ峠からはモルティローロの下りで通った稜線の道を経てアプリカに戻る。一度通った道ゆえ、気持ちよく攻めていたら、あっという間にアプリカの町へ。緩やかな上りの先に、ゴールゲートが見えてきた。今度こそゴールのバルーンゲートを通過できるのだ。

 ひと漕ぎひと漕ぎ、ゲートが近づいてくる。ようやく長くて厳しかった“レース”が終わるという安堵の気持ちと、夢のような時間が終わってしまう寂しさがない交ぜになっていた。片手を挙げてフィニッシュラインを通過! タイムは6時間47分を示していた。

 結果は、ロングコースの完走者およそ600人中92位、エイジグループではおよそ110人中19位。不思議なもので「また来年走りに来たい」と思った。もし来年も参加できるとしたら、コースもイベントの雰囲気も経験してもう少しいい走りができそうなので、エイジグループでベスト10を目指したい。

厳しい峠を複数こなしてのゴールは喜びもひとしお Photo: DIATECH PRODUCTS厳しい峠を複数こなしてのゴールは喜びもひとしお Photo: DIATECH PRODUCTS
ゴールでは参加者同士がお互いの健闘をたたえ合う Photo: DIATECH PRODUCTSゴールでは参加者同士がお互いの健闘をたたえ合う Photo: DIATECH PRODUCTS
ゴールした参加者のジャージ表面は汗が蒸発して塩で白くなっていた Photo: ASSOSゴールした参加者のジャージ表面は汗が蒸発して塩で白くなっていた Photo: ASSOS
表彰式もビッグレースのように華やかに行われた Photo: DIATECH PRODUCTS表彰式もビッグレースのように華やかに行われた Photo: DIATECH PRODUCTS

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