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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<126>クラシックハンターと上れるスプリンターの優勝争い 世界選手権エリート男子をプレビュー

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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2014年の世界選手権エリート男子ロードレースはミハウ・クフィアトコフスキーが初優勝を飾った Photo: Yuzuru SUNADA2014年の世界選手権エリート男子ロードレースはミハウ・クフィアトコフスキーが初優勝を飾った Photo: Yuzuru SUNADA

 サイクルロードレースシーズン終盤のビッグイベント、UCIロード世界選手権が9月20日に開幕しました。初日のチームタイムトライアルに続いて個人種目も始まっており、世代別の世界王者が誕生しています。今回は、大注目のエリート男子のロードレースと個人タイムトライアル(TT)を中心に、開催地アメリカ・リッチモンドのコースと優勝候補を押さえていきます。

勝負のポイントは石畳の急坂 エリート男子ロード

 大会の最後を飾るエリート男子ロードレースは、27日に開催される。レース距離は261.4kmで、16.2kmの周回コースをおおよそ16周する。

 コースのポイントは、周回後半に待ち受ける石畳の急坂。ここからは急な上りとハイスピードの下りが繰り返し訪れるため、レース終盤に入るとふるい落としに利用されることとなりそうだ。最終局面は300m上り、その後フィニッシュまで680mの緩やかな上り基調に。全体を通して、決定的な動きが起きやすい箇所は少なく、パンチ力に長けたクラシックハンターのほか、上れるスプリンターにもチャンスがあると言われる。

 前回王者、ミハウ・クフィアトコフスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)は、ラファウ・マイカ(ティンコフ・サクソ)ら強力メンバーをしたがえて2連覇に挑む。昨年は前半からレースをコントロールし、エースを頂点に押し上げたポーランド勢だが、今年は出場枠が3つ減って6人になる点がどう影響するか。とはいえ、クフィアトコフスキーの好調が伝えられており、優勝争いに残ってくることが予想される。

世界選手権エリート男子ロードレースで2連覇を狙うミハウ・クフィアトコフスキー(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA世界選手権エリート男子ロードレースで2連覇を狙うミハウ・クフィアトコフスキー(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA
2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ最終第21ステージで勝利したジョン・デゲンコルプ Photo: Yuzuru SUNADA2015年のブエルタ・ア・エスパーニャ最終第21ステージで勝利したジョン・デゲンコルプ Photo: Yuzuru SUNADA

 有利と目される上れるスプリンターでは、ブエルタ最終ステージを制したジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チーム ジャイアント・アルペシン)、シーズン最多の20勝を挙げているアレクサンドル・クリツォフ(ノルウェー、チーム カチューシャ)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が勝機をうかがう。ブエルタでの落車負傷が気がかりなペテル・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)はチームTTで元気な姿を見せており、優勝戦線に名乗りを挙げた。

 充実の戦力を誇るのは、ベルギー、スペイン、イタリア。ベルギーはフィリップ・ジルベール、フレッヒ・ヴァンアーヴェルマート(ともにBMCレーシングチーム)、トム・ボーネン(エティックス・クイックステップ)がリーダー格。スペインは3大会連続銅メダルのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター チーム)が、初のマイヨアルカンシエルを狙う。イタリアはヴィンチェンツォ・ニバリ(アスタナ プロチーム)、ディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ)が中心だが、スプリンターのエリア・ヴィヴィアーニ(チーム スカイ)が最終局面まで残るようだとおもしろい。いずれのチームも、メーン集団のメンバーを絞って、ライバルチームのスプリンターを脱落させておきたいところだ。

勝てば3年ぶり2回目の栄冠となるフィリップ・ジルベール(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADA勝てば3年ぶり2回目の栄冠となるフィリップ・ジルベール(ジロ・デ・イタリア2015) Photo: Yuzuru SUNADA
悲願のマイヨアルカンシエルを狙うアレハンドロ・バルベルデ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA悲願のマイヨアルカンシエルを狙うアレハンドロ・バルベルデ(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA
表彰台を目標に掲げる新城幸也(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA表彰台を目標に掲げる新城幸也(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 日本は別府史之(トレック ファクトリーレーシング)、新城幸也(チーム ヨーロッパカー)、内間康平(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)の3選手で臨む。各選手ともレースやトレーニングをしっかりとこなし、調整十分でリッチモンド入り。新城はブエルタ完走後、「表彰台が目標。最低でも2010年の9位は上回りたい。そのためにはブエルタ後のリカバリーが重要」と述べており、少ないメンバーながらもチャンスを見出す構えだ。

マルティンとドゥムランの覇権争いか エリート男子個人TT

 TT種目の最後を飾るエリート男子個人TTは23日に実施される。レース距離は、男女チームタイムトライアル(38.8km)より長い53km。細かなアップダウンの連続ではあるが、TTスペシャリストにとっては問題なくクリアできるレベルのコース設定。何より、長距離TTとあって、スペシャリストにとって独走力とペース配分の巧みさを見せつけるには絶好のコースと言えそうだ。

 女子エリートや男子U23(23歳以下)、男女ジュニアで使用されたリッチモンド市街地の周回コースは採用されていないこともあり、先に実施された競技とは違った楽しみが待っているはずだ。

過去3度の世界選手権個人タイムトライアル優勝を誇るトニー・マルティン(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA過去3度の世界選手権個人タイムトライアル優勝を誇るトニー・マルティン(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 前回王者のブラッドリー・ウィギンス(イギリス、チーム ウィギンス)が不参加。優勝者に贈られるマイヨアルカンシエルの行方は、前回2位で2年ぶり4度目の頂点を狙うトニー・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)と前回3位のトム・ドゥムラン(オランダ、チーム ジャイアント・アルペシン)が中心と予想される。

 マルティンはツール・ド・フランスで総合首位のマイヨジョーヌを着ながら、第6ステージ終盤での落車負傷で大会を去ったが、その後順調に回復。全5ステージで争われた8月下旬のツール・ドゥ・ポワトゥシャラント(フランス、UCI2.1)で総合優勝を飾った。その後のレースではアシストとして活躍し、復調をアピールしている。今大会では、20日のチームTTでも銀メダル獲得に貢献した。

好調で世界選手権に臨むトム・ドゥムラン(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA好調で世界選手権に臨むトム・ドゥムラン(ブエルタ・ア・エスパーニャ2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 ブエルタ・ア・エスパーニャでの総合優勝争いが記憶に新しいドゥムランは、スペインでの3週間の活躍で一気に評価を高めた。独走力はもちろんだが、細かいアップダウンも問題なくこなす脚質だけに、リッチモンドのコースは得意とするレイアウトだ。マルティン同様、今大会のチームTTではリーダーを務め、レース後には絶好調宣言も飛び出した。いま一番勢いのあるライダーが、オランダに初めてこの種目でのマイヨアルカンシエルをもたらすことができるか。

優勝候補の一角を担うローハン・デニス(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA優勝候補の一角を担うローハン・デニス(ツール・ド・フランス2015) Photo: Yuzuru SUNADA

 続くのは、今年のツール第1ステージ個人TTを制したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)や、世界選手権にめっぽう強いヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チーム スカイ)あたりだろう。好調が伝えられるデニスは、チームTT2連覇の立役者となり、よい流れで得意種目を迎える。実績十分のキリエンカは、この3年で3位1回、4位2回。3年ぶりの表彰台を狙う。

 そのほか、けがから復帰した2012年大会2位のテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、アドリアーノ・マローリ(イタリア、モビスター チーム)、アレックス・ドーセット(イギリス、モビスター チーム)らも上位に食い込んでくるだろう。

エリート女子はフェランプレヴォが軸 日本勢も上位進出を目指す

連覇がかかるポリーヌ・フェランプレヴォ(ロード世界選手権2014エリート女子ロードレース) Photo: Yuzuru SUNADA連覇がかかるポリーヌ・フェランプレヴォ(ロード世界選手権2014エリート女子ロードレース) Photo: Yuzuru SUNADA

 26日に行われるエリート女子ロードレース(129.8km)は、2連覇を目指すポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、ラボバンク・リヴ ウーマンサイクリングチーム)を中心に展開するはずだ。シクロクロスのほか、8月にはマウンテンバイク・クロスカントリーでもマイヨアルカンシエルを獲得。フランスが生んだ自転車の申し子は、あらゆる展開に対応する万能さが武器だ。

 対抗馬は、今シーズン好調のヨリエン・ドーレ(ベルギー、ウィグル・ホンダ)やリジー・アーミステッド(イギリス、ボエルス・ドルマンス サイクリングチーム)ら。ドーレはスプリント、アーミステッドは一瞬のアタックで優位な展開を作り出したい。そのほか、エマ・ヨハンソン(スウェーデン、オリカ・AIS)、ジョルジャ・ブロンツィーニ(イタリア、ウィグル・ホンダ)、リサ・ブレナウアー(ドイツ、ヴェロシオ・スラム)らも優勝争いに加わってくるだろう。日本勢は、與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が出場。萩原麻由子(ウイグル・ホンダ)は鎖骨骨折により欠場する。

 25日の男子U23ロードレース(162.2km)は、今シーズン並み居るスプリンターを次々と撃破しているフェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)に注目が集まる。イギリスやイタリアがガヴィリア包囲網を敷いてくるはずだ。日本勢では、小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム)、徳田優(鹿屋体育大学)、岡篤志(エカーズ)、小橋勇利(JPスポーツテストチーム・マッサ・アンデックス)、面手利輝(エカーズ)がエントリーしている。

 ロードレース種目で最初に行われるジュニア女子(25日、64.9km)には、アジア女王の梶原悠未(筑波大学附属坂戸高)が出場。翌日のジュニア男子ロードレース(129.8km)には、アジア王者の沢田桂太郎(東北高)のほか、石上優大(横浜高校)、小野康太郎(スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ)、渡邉歩(学法石川高校)が参戦する。

 なお、日本とアメリカ・リッチモンドとの時差は13時間(日本が13時間早い)。レースの観戦は、スカパーまたはケーブルテレビの「SPEEDチャンネル」のほか、国際自転車競技連合(UCI)オフィシャルYouTubeチャンネルでチェックすることができる。

今週の爆走ライダー-テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシングチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 華麗な復活劇だ。復帰第1戦となった8月3日のツアー・オブ・ユタ(アメリカ、UCI2.HC)第1ステージ、終盤の逃げに乗ると、ゴールスプリントで敗れたもののいきなりの3位。続く8月17日のUSAプロチャレンジ(UCI2.HC)第1ステージでは、フィニッシュ手前で敢然とアタック。追い上げを振り切り優勝を果たし、自身も驚く完全復活となった。

 悪夢は昨年5月のアメリカ選手権ロードレース。時速70kmを超えるスピードで下っていた彼の前を横切ったモトバイク。これに気を取られバイクコントロールを失うと、道路脇のガードレールへ一直線。膝蓋靭帯の断裂、左脛骨骨折など複数箇所をけがする重傷を負った。再起不能との声まで聞かれるほどだったが、本人は前向きな姿勢でリハビリに専念。その過程をSNSや動画に収め、ファンにアピールし、明るい表情を絶やさなかった。

BMCレーシングチームの優勝に貢献したテイラー・フィニー(ロード世界選手権2015男子エリートチームタイムトライアル) Photo: Yuzuru SUNADABMCレーシングチームの優勝に貢献したテイラー・フィニー(ロード世界選手権2015男子エリートチームタイムトライアル) Photo: Yuzuru SUNADA

 15カ月経っての復活は、ただレースに戻るだけでなく、戦える状態にあることも示すものとなった。現在開催中の世界選手権では、チームTTで優勝に貢献。リハビリ中もアメリカナショナルチームの一員としてキャンプに参加し、若い世代とともに汗を流すなど、早くから今大会への並々ならぬ意気込みを見せてきた。残る個人TTとロードレースは、その思いをぶつける最高の舞台となる。

 1984年ロサンゼルス五輪銅メダリストのデイヴィス氏を父に、同金メダリストのコニー氏を母に持つサラブレッド。パーキンソン病の闘病に励む父を支える家族の姿は、自転車界ではおなじみ。ジュニア時代からロード、トラックのタイトルを総なめにしてきた彼にとって、偉大な両親を超えるための長い道のりは、今また始まったばかりなのである。

福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、気がつけばテレビやインターネットを介して観戦できるロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。2011年、ツール・ド・フランス観戦へ実際に赴いた際の興奮が忘れられず、自身もロードバイク乗りになる。自転車情報のFacebookページ「suke’s cycling world」も充実。本業は「ワイヤーママ徳島版」編集長。

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