ロードとトラックを両立しながら東京五輪を目指す目標にわずかに届かなかった梶原悠未 世界選手権での走りに手応え「全てを出し切れた」

by 田中苑子 / Sonoko TANAKA
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 2015年のジュニア女子カテゴリーにおいて、梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校)は8月のUCIトラック世界選手権のポイントレースで2年連続となる銀メダルを獲得し、2月のアジア選手権ではロードとトラック合わせて金メダルを5個獲得するなどの活躍を見せている。梶原は9月21日に開催されたUCIロード世界選手権女子ジュニア個人タイムトライアル(TT)では10位以内を目標にスタートし、惜しくも11位に終わったが「ペース配分やライン取りが良くなりました」と2度目のロード世界選手権で自身の成長を実感した。

女子ジュニアの個人タイムトライアルを走る梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKA女子ジュニアの個人タイムトライアルを走る梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKA

本場のコーチが「U23レベルの実力」と評価

 開催地のリッチモンドはアメリカ合衆国の東側、ワシントンから車で約2時間の位置にある、人口20万人ほどの街。タバコ産業が有名なヴァージニア州の州都であり、ダウンタウンにはアメリカらしくさまざまな人種が行き来する。街の南側に雄大なジェームズ川が流れ、郊外は緑が多くて静かだ。街のメーンストリートには大会を歓迎する横断幕が所狭しと下がり、レストランやブティックには自転車をあしらったディスプレイが並んでいる。

 チームタイムトライアルが開催された大会初日の20日は、強い日差しが降り注ぎ気温は30度近くに達したが、一夜明けた21日は朝から曇り空が広がり気温は20度前後、午後には一時的に雨も降った。

リッチモンドの街中を駆け抜けたチームタイムトライアル。ポップな色使いの建物が並ぶ Photo: Sonoko TANAKAリッチモンドの街中を駆け抜けたチームタイムトライアル。ポップな色使いの建物が並ぶ Photo: Sonoko TANAKA
チームタイムトライアルで貨物列車の高架横を通る選手たち。産業都市であるリッチモンドを象徴する場所だ Photo: Sonoko TANAKAチームタイムトライアルで貨物列車の高架横を通る選手たち。産業都市であるリッチモンドを象徴する場所だ Photo: Sonoko TANAKA
高速道路と電車の高架下を抜ける選手たち。沿道では地元の人々が声援を送る Photo: Sonoko TANAKA高速道路と電車の高架下を抜ける選手たち。沿道では地元の人々が声援を送る Photo: Sonoko TANAKA
タイムトライアルのスタートに向けて集中してウォーミングアップをする梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKAタイムトライアルのスタートに向けて集中してウォーミングアップをする梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA

 3日間にわたって開催される個人タイムトライアルの最初のカテゴリーは女子ジュニア。日本からは全日本チャンピオンであり、アジアチャンピオンである梶原が出場した。高校に入って自転車競技を始めたにも関わらず、8月に開かれたUCIトラック世界選手権ではポイントレースで2年連続の銀メダルを獲得するなど、マルチな才能を発揮してトラックとロードレースを両立しながら年々確実に世界のトップに近づき、2020年の東京五輪に向けて期待が高まる選手だ。

 今回、梶原はトラック世界選手権および今回のロード世界選手権に先駆けて、UCIが管轄するスイスのワールドサイクリングセンターで2カ月間トレーニングを積んできた。身体は以前よりも引き締まり、大きな自信を身にまとったような印象だ。会場に駆けつけたワールドサイクリングセンターのコーチは「まだジュニアカテゴリーだけど、U23カテゴリーの女子と同じレベルの実力があるよ」と梶原の力に太鼓判を押す。

スタート台横のスペースで落ち着いてレース準備を進める梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKAスタート台横のスペースで落ち着いてレース準備を進める梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA
UCIのワールドサイクリングセンターでのコーチがレース前に激励に訪れた Photo: Sonoko TANAKAUCIのワールドサイクリングセンターでのコーチがレース前に激励に訪れた Photo: Sonoko TANAKA
集中した面持ちでスタート台へと向かう梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKA集中した面持ちでスタート台へと向かう梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA

ペース配分やライン取りで成長

梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校)が緊張した面持ちでレースのスタートを待つ Photo: Sonoko TANAKA梶原悠未が緊張した面持ちでレースのスタートを待つ Photo: Sonoko TANAKA

 個人TTでの梶原の目標はトップ10入り。「本当は3位以内に入りたいけれど、現実的な目標は10位以内」と梶原。ジュニアカテゴリーは18歳以下の2年間だけで、現在の梶原は2年目にあたる。初めて世界選手権に出場したジュニア1年目の昨年は、苦手なテクニカルなコースだったうえに雨に見舞われ、実力を発揮できずに39位に終わっている。

 その後、全日本選手権やアジア選手権などを目標にして、一つ一つステップアップを重ねていき、この大会前には課題だった下半身の強化にも取り組んだ。ワールドサイクリングセンターで学んだトレーニングやウォーミングアップ方法なども、良いと思ったものは取り入れていき、今年は万全の体制でスタートラインへと向かった。

 そして梶原の隣には、彼女が自転車競技を始めてから指導を続け、彼女がもっとも信頼する筑波大学付属坂戸高校自転車部の安達昌宏顧問の姿もあった。「世界の舞台に2人で来ることができて、いまは感動している。指導者として夢のような場所」と語る安達顧問。出走前に梶原とがっちりと握手を交わし、もっともキツい最後の登坂区間で応援するために走り去っていった。

筑波大学付属坂戸高校の安達顧問と固い握手を交わし、スタートへと向かう Photo: Sonoko TANAKA筑波大学付属坂戸高校の安達顧問と固い握手を交わし、スタートへと向かう Photo: Sonoko TANAKA
スタート台へと向かう梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKAスタート台へと向かう梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA
スタートのカウントダウンを待つ梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKAスタートのカウントダウンを待つ梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA
世界選手権女子ジュニア個人タイムトライアルを走る梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKA世界選手権女子ジュニア個人タイムトライアルを走る梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA

 女子ジュニアのコースは周回コースを1周する15.0kmのレース。ダウンタウンを抜けて、石畳が敷き詰められたモニュメント通りを抜け、ジェームズ川にかかる大きな橋を往復し、ゴールに向けて急な坂を上るコース。コース図を見るかぎり、コーナーが多い印象だが、道幅が広いためにさほどテクニカルではなく、梶原にとっては好都合だった。

 ゴールラインまで全力で駆け抜けた梶原の結果は11位。優勝選手が圧倒的な強さだったが、あと30秒で表彰台に届く好タイムだった。数字のうえでは惜しくも目標であったトップ10には届かなかったが、レースを終えた梶原の表情は晴れやかで、「去年と比べて、ペース配分やライン取りなどが良くなりました。全てを出し切ることができたので満足しています」と笑顔を浮かべた。

レースを終え笑顔をみせた梶原悠未(筑波大学付属坂戸高校) Photo: Sonoko TANAKAレースを終え笑顔をみせた梶原悠未 Photo: Sonoko TANAKA

男子U23は気持ちを切り替えロードレースへ

 そして、ジュニア女子のレースが終わるとすぐに、男子U23の個人TTがスタートした。周回コースを2周する29.9kmのレースで、日本からはU23カテゴリー2年目の岡篤志(エキップアサダ)と全日本チャンピオンである小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム)の2選手が出走した。

岡篤志(エカーズ)がスタートを待つ Photo: Sonoko TANAKA岡篤志(エカーズ)がスタートを待つ Photo: Sonoko TANAKA
ウォーミングアップをする小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム) Photo: Sonoko TANAKAウォーミングアップをする小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム) Photo: Sonoko TANAKA

 岡はジュニア時代に世界選手権に出場した経験があるものの、U23カテゴリーでの出走は今回が初めて。「全力を出し切ることを目標に頑張りたい」と話してスタート、結果はトップから5分20秒遅れの49位だった。納得できる走りではなく「苦しくてキツくて、思った走りはできなかった」とレース後に肩を落とした。

世界選手権U23個人タイムトライアルを走る岡篤志(エカーズ) Photo: Sonoko TANAKA世界選手権U23個人タイムトライアルを走る岡篤志(エカーズ) Photo: Sonoko TANAKA

 一方の小石も、1周回目のコーナーで落車してしまうアクシデントに見舞われた。ここまで調子がよく、以前アメリカに在住していた小石にとって、ここはホームともいえる場所。そのため悔しさは大きいが、幸いケガは軽傷のため、4日後のロードレースに気持ちを切り替える。

1周回目で落車をした小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム)、左肩に傷が見える Photo: Sonoko TANAKA1周回目で落車をした小石祐馬(CCT p/b チャンピオンシステム)、左肩に傷が見える Photo: Sonoko TANAKA
小石祐馬が所属するCCT p/b チャンピオンシステムの橋川健監督が傷の手当をする Photo: Sonoko TANAKA小石祐馬が所属するCCT p/b チャンピオンシステムの橋川健監督が傷の手当をする Photo: Sonoko TANAKA

 個人TTに出走するすべての選手はロードレースとのダブルエントリーとなっており、梶原もロードレースでは「最後の上りで仕掛けて優勝を狙う」と意気込む。5選手が出走する男子U23はチームプレーを駆使して、エースである小石を最後の勝負どころまで一致団結して連れていく作戦で臨む。

 大会3日目となる22日は、ジュニア男子、エリート女子のレースとなる。エリート女子には全日本チャンピオンの與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が出走する。リオ五輪の出場特別枠がかかった大会となっており、出場権が与えられるトップ10にとどまらず、上位6位に入ることが與那嶺の大きな目標だ。

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