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栗村修の“輪”生相談<58>30代男性「Jプロツアーの選手達は国内レース以外で勝つ意欲がないのでしょうか?」

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今年のツアー・オブ・ジャパンで総合成績を見ると、増田成幸選手の16位が日本人最高位です。ジャパンカップに関しても、1997年に阿部良之選手が優勝して以来、日本人は勝っていません。もちろん、勝つことを意識して走っている選手はいると思います。

 しかし、母国開催の国際レースでこうも日本人の勝利がないと寂しく思います。Jプロツアーの選手達は国内レース以外で勝つ意欲がないのでしょうか?

 素人の自分が上から意見を言うのは失礼かと思いますが、日本人がグランツールでリーダージャージを着ている姿を見たい思いでメールしました。

(30代男性)

 非常に重要な問題ですね。僕は、現在、ツアー・オブ・ジャパンの大会ディレクターですし、過去には監督経験もあるので、当事者として残念な気持ちとともに危機感も持っています。「国際レースでの日本人の活躍をみたい」という観点から、コースの難易度や招待する海外チームのレベルをもっと下げるべき、というごもっともな要望もありますが、闇雲に全てを現状の日本人選手のレベルに合わせてしまうことに対する反対意見も存在しています。

 まずは原因を探りたいと思います。なぜ勝てないのでしょうか?

 よく言われるのは、日本人選手には「根性」や「ハングリー精神」が足りない、という精神論的なものです。たしかに否定できない部分も若干あるかもしれません。ですが、それらを改善しただけで連勝記録がスタートするほどレースというものは甘くはありません。

 もうひとつ、本場での経験(先端のトレーニングも含む)が重要ということもよく言われます。それももっともだと思います。しかしやはり、すべてではありません。近年は海外で年間を通して活動し、科学的なトレーニングを取り入れている若い選手の数は増えていますが、それでも、強くなる選手もいれば、そうではない選手もいるのが現実です。

 最後に、とても重要な項目として肉体的資質というものがあります。スポーツは残酷で、突出した肉体的資質さえあれば、極端な話、やる気や経験が多少足りなくても、いきなりレースで勝ってしまう、ということは十分に起こり得ます。逆に、肉体的資質が不十分ならば、どれだけやる気や経験が豊富でも、なかなか勝利に手が届きません。

2015年のツアー・オブ・ジャパンで総合日本人最高位だった増田成幸(宇都宮ブリッツェン) Photo: Syunsuke FUKUMITSU2015年のツアー・オブ・ジャパンで総合日本人最高位だった増田成幸(宇都宮ブリッツェン) Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 理由を探っていけばもっと多くの要素がありますが、今回はスペースも限られていることから細かい要素は割愛し、上記の3項目で考えてみます。

 ざっくり言えば上記の3項目の合計点が高い選手が、まずは「レースに勝つためのスタート台」に立てることになります。そして、チーム戦術や、運、レース展開などの様々な要素が絡み合い、勝利者が決まることになります。

 どうしても「なぜ日本人は勝てない?」というネガティブな表現に陥りがちですが、もっとシンプルに考えてみましょう。上記3項目の総合点の高い日本人選手の数が増えていけば、日本人がレースで勝つ確率は上がっていきます。

 先天性の高い項目の順番としては、「肉体的資質」⇒「根性」⇒「経験値」という順になるでしょうから、まずは、才能を発掘し、ロードレースの選手になるための基本的な心構えを教え、そして、徐々に経験を積ませる、という作業を根気よく時間をかけて続けてさえいけば、必ず勝てる日本人選手は現れるでしょう。

 ちなみにいまの国内ロードレース界で一番欠落してしまっている要素というのは、間違いなく「才能の発掘」となります。一部のチームなどが独自にトライアウトなどは行っているものの、総合的なプログラムはほとんど機能していません。
 
現状の日本人選手たちも、もちろん勝つ意欲を持って走っていますし、とても大きな努力と多くの犠牲を払って活動を続けています。ですが、繰り返しになりますが、勝利者というのは、対象となるレースで勝つために必要な項目の合計点で、ある程度決まってしまいます。

 したがって、勝てる選手を生み出すための総合的な取り組みを続けていかなければ、安定的にチャンピオンを輩出できる国になることは難しいのだと思います。

(編集 佐藤喬)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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